2024年04月30日

2024年04月23日

2023年の視聴アニメの感想

去年の。4ヶ月遅れながら,書かないと2023年が終わらないので書いておく。感想コメントをつけられるものはつけ,何も思い浮かばなかったものは作品タイトルだけ。全般的にネタバレは回避していない。フリーレンと薬屋は2024年扱いとすると,2023年は2022年に比べて原作付もオリジナルも不作だった。

<冬>
『もういっぽん!』
 2023年面白かったアニメ1位。というよりも,続き物を除くと,2023年で推せるアニメ(2022年の4位までと遜色がないアニメ)がこれしかない。女子柔道のスポ根。原作者が柔道物の漫画を描こうとするも,柔道物という時点で連載会議の俎上に上がりにくく苦心惨憺,いっそのこと女子柔道にするかと描いたらこれが当たったというような経緯がpixivに投稿されていた。それでも女の子が上手く描けないと悩んでいるようだが,原作の絵柄もアニメの絵柄も十分に可愛いと思う。
 スポ根アニメが好きな人は絶対好きなタイプのアニメではあるが,高校授業等の影響か柔道だから見ないという意見が私の周囲では散見され,アニメのクオリティの割に話題にならなかったように思われた。かく言う私も高校授業の柔道は辛かった記憶しかないので,割り切る気持ちが起きなかった人たちの気持ちもわかってしまう。また,しいて言えば1話,部活で失神はちょっと……と引いている人が多かった印象で,正直私もここで切った人の気持ちがわかる側の人間なので,原作通りとはいえ導入としてはもったいなかった。この世間の反応では,出版社も柔道漫画という時点で突っぱねるわなと納得してしまった。とは言うものの,柔道のそういうイメージを何とか現代調のスポーツ作品と調和させているのは,けっこうすごいバランス感覚で,実際に見てみると思わず感心すると思う。私が年度代表作にしているのは信用してほしい。




『ヴィンランド・サガ Season2』
 デンマーク奴隷編にしてトルフィン改悛編。原作で一番面白い章なだけあってよく出来ていた。Season1から3年半かかったが,Season3が作れるのかどうかだけが心配。

『虚構推理 Season2』
 漫画版は途中で推理パートについていけなくなって脱落したのだが,このSeason2は原作でも微妙だったうなぎ回とピノキオ回以外はよくアニメ化できていて割と面白かった。雪女編が最高。雪女がかわいいのは当然として(悠木碧はこういう妖艶な役もこなせるのだな),虚構推理の世界観で人妖の共存のあり方を示したという点でも深みがあったし,虚構推理の”虚構”部分がちゃんとあって,なおかつしっくり来るミステリになっていた。遺産相続編もけっこう楽しめた。1期が終わった時に2期を見ようかかなり迷ったが,3期をやるなら迷わず見ると思う。



『吸血鬼すぐ死ぬ2』
 毎週爆笑しながら見ていた。

『転生王女と天才令嬢の魔法革命』
 評価に困るアニメ。キャラは非常に良く,百合としては見る価値があったが,メインストーリーがちょっと寒い。かっこよくバトルや政治劇をやろうとして上滑りしている感じがややいたたまれなかった。邪気眼をネタではなくそのままお出しされているような……それをそのまま受け取れる層が対象で(私も自分が高校生だったら期にしてなかったと思う),お前はもう顧客じゃないと言われたら肯定するしかないので,あまり文句は言えない。ここまで書いて気付いたが『リコリコ』の読後感に近い。




<春>
『アイドルマスターU149』
 原作未読。小学生アイドルという題材で,背伸びしがちな子供と,大人になりきれない大人を描いたという点で成功していたと思う。11話が白眉で,ちゃんと橘さんに感情を爆発させてあげることができた良い回である。その代わり,作品全体として大人社会を露悪的かつやや無能寄りの集団に描きすぎている感じはあって,個人的には鼻についた。米内Pを困らせるなら,直接の上司ではなくてもっとどうしようもない物理的・経済的な理由でよかったと思うし,それに抗ったり妥協したりするラインを探るのが大人という姿勢の見せ方で良かったのではないかと。




『機動戦士ガンダム 水星の魔女』
 2期の途中まではかなり面白く高評価をくだしていたが,締め方を失敗したのは否めない。シナリオが破綻しているということはないが,ないからこそ手ひどく批判することもできず,中途半端な評価しかできない。最後に巨大な建造物を出して壊して終わりというのは,ガンダムの伝統というには唐突感が強く受け入れがたい。フェンシングも唐突ならジェターク家の兄弟喧嘩も唐突で,終盤になって突然の雑の連続は残念であった。唐突感なく巨大建造物を出すにせよ,巨大建造物を出さない終わりを迎えるにせよ,3クール目が必要だったのだろう。これだけ商業的に成功するとは読めなかっただろうから仕方がないが,もったいない。
 とはいえ,女性主人公で同性婚という決着を主として,多種多様な毒親の登場,細かいところでは太っているが気立ての良さでモテるリリッケ等々,いろいろと現代的なフックがあり,このチャレンジはほぼ全面的に成功していたように思う。シェイクスピアの『テンペスト』を悲劇調にアレンジしたのは,随所に散りばめられたネーミングや小ネタも含めて楽しめた。親子の世代間対決というお題自体がシェイクスピア作品によくあるテーマ設定で,喜劇調なら和解,悲劇調なら全滅(に近い)エンドになるのがシェイクスピア作品だが,悲劇調に進めて和解で終わらせたのが『水星の魔女』であった。成功していたかどうかは別にすれば,このチャレンジ自体は評価したいところ。だからこそ小ネタを差し挟むのも無理がなく,またシェイクスピア作品から先の展開を予想して楽しんでいた人は私の周囲ではそれなりにいて,やっぱりこういうのは(本筋じゃないところでいいので)やってもらえると少し嬉しい。その他,細かいところはtoppoiさんが書いてくれているので,丸投げしておこう。

『鬼滅・刀鍛冶の里編』
『夜は猫といっしょSeason2』

『BIRDIE WING』:積み。1期を見終わったら見ます。
『女神のカフェテラス』:原作は嫌いじゃないので毎週『マガジン』で読んでいるが,アニメまでは追う気力が起きなかった。
『推しの子』:多分趣味に合わないと判断して回避。


<夏>
『好きな子がめがねを忘れた』
 1話を見た時の衝撃。酔うかと思ったが,意外と慣れて2話以降は問題なかった。原作がベタベタに男性向けのラブコメだが,アニメでがらっと絵柄を変えて,視点がやや三重さん寄りになった結果,一気に少女漫画っぽくなった。結果として物語の筋は全く変わってないのに雰囲気が違うという,やや特殊なアダプテーションであり,原作読者にも飽きさせない工夫で面白かった。ただ,雰囲気でチャレンジするならカメラでチャレンジする必要は無かったんじゃないかなというのと,あれで離れた視聴者は多かったのではないだろうかという心配が残った。



<他>
『オッドタクシー』
 傑作。2021年の春アニメ。評判が良いのに見そびれており,夏アニメが『好きメガ』以外見るものがなく余裕があったのでこの機会にと。評判通りで非常に面白かった。群像劇としての完成度が高く,登場人物たちの思惑と人間関係が重なり合っていく。こういう作品は伏線を張りすぎてどうやって回収するのかと不安になることも多いが,『オッドタクシー』は登場人物の数の割に複雑すぎず,無理なく回収される見込が立って安心感があった。夜の街の不穏さがよく描写されていて,ヤクザたちの行動や私怨で動く田中を原動力として不穏さに不穏さを重ねていき,緊張感が高まっていく中終盤の雰囲気が非常に良い。小戸川と一緒に視聴者も不安になってしまう。1話ではこんなに不穏さを楽しむアニメになるとは思っていなかったので,良い意味で裏切られた。これは皆に見てほしい。


<秋>
『アイドルマスター ミリオンライブ!』
 やっぱり39人もいると紹介だけで終わるよね感。私は前からこのブログで,総花的なデレマスと違い,ミリオンライブはプロデューサーにアイドル全員に対して愛着を持ってもらう構造なのに39人は多すぎると何度か書いているが,アニメでもその欠陥を感じてしまった。
 一応,紹介はそれなりで諦めて信号機トリオを主人公に立ててメインストーリーを流していこうという意識は見られたものの,それも中途半端に終わっていて,もうちょっとどちらかに振り切ってもよかったのではないかと思われた(どうでもいいけど他のアイマスブランドと異なって信号機トリオのユニット名が全く定着していないのは不思議かもしれない)。デレマスは約190人もいたため,全員紹介するのを最初から全く考えておらず,メインを14人選抜して1期を作り,2期では少しずつアイドルを足していって最終的に30〜40人くらいには登場機会を与えるという形をとっていて,苦肉の策ではあれ上手く機能していた。それに比べると1期しか作れないというハンデを背負いながらも39人全員何とか登場させようとした努力は買いたいが,それに足る工夫があったかは疑問である。せめて単調だった3・4話を圧縮して1話に収めて5話の手作りの武道館ライブ回を4話に持ってくる,謎のギャグ回7話を消す(単発ギャグとしては面白かったけども)等で,信号機トリオにフォーカスを当てた話をもう2・3話あればストーリーの厚みが違ったような気がする。しずしほを掘り下げてもいいし,信号機の先輩アイドルともっと会話させてもいい。その辺をやった9〜11話は面白かった。反面,機材トラブルで締めた12話は食傷気味の展開で,もうそれはいいでしょうという気分になった。アイドルアニメ,そろそろ機材トラブルと荒天以外でライブのトラブルを作ってほしい。
 とはいえ,世の中のミリマスPは割と喜んでみていた印象がある。最大の顧客にはちゃんとフィットしたものを提供できたアニメだった,ということだろうか。

 
『SPY×FAMILY Season 2』
 感想は1期と同じ。映画はちょっと見に行く気になれなかった。

『私の推しは悪役令嬢。』:『転天』と同じ感想になりそうだったので,途中で切った。
『薬屋のひとりごと』・『葬送のフリーレン』・『シャングリラ・フロンティア』:感想は2024年のまとめで。一言だけ書くなら3つともすばらしい出来で,原作から好きだが,想定を越えて面白く仕上げてもらったと思う。  
Posted by dg_law at 08:30Comments(0)diary(2)

2024年04月12日

ニコ動・YouTubeの動画紹介 2023.2月下旬〜2024.3月下旬





カードを縛っておらず「G.F.はケツァクウァトルのみ」なので,実質的にジャンクションを解禁した一人旅縛り。どうせなら忘れ草をした方がさらに戦略を練る必要が出てきて良かったような気も(次回のためのネタ提供)。




これは要するにサイファーが全部悪いのでは???




パルワールドののんびりした実況プレー。このくらいのペースでのプレーが一番楽しそうではある。




共産主義国家のあれやこれやが再現された都市経営ゲーム。面白い実況シリーズだったのだが,元ネタの国が非常にアレなことになってしまって実況再開できない様子なので,未完結ながら紹介。


minusTさん作。


栗林みな実の姿を久しぶりに見た。お元気そうで何より。


美術ネタをやってくれるVTuberなので最近ちらちら見てるけど,実際,儒烏風亭らでんちゃんにネタ枠は無理だと思うw。諦めて教養人枠でがんばってほしい。


順調に美術館との協力関係になっていて何よりです。  
Posted by dg_law at 12:00Comments(0)diary

2024年04月06日

『絶対に解けない受験世界史4』が出ます

出版社による告知記事はこちら。




すでにAmazon,honto等で発売中です。シリーズ存続のためにもご購入いただけると幸いです。

以下は3巻同様に,本書の紹介をFAQ形式で。

よくわかる! 『絶対に解けない受験世界史4 悪問・難問・奇問・出題ミス集』FAQ

Q.目的や内容は前巻までと同じなの?
A.全く同じです。大学入試における悪問や超難問,出題ミスを収録・解説した本です。本気で難しくて解けない問題から,日本語の崩壊した問題,単なる誤植,笑える問題,珍しい問題など,多岐にわたって収録しています。
1.入試問題作成の杜撰さを世の中に訴えること
2.出題ミスの事例を集めて,出題者へ提供すること
3.悪問を笑い飛ばして当時の受験生の無念を供養すること
4.世の中の世界史マニアに難問を提供すること
を主な目的としています。


Q.収録範囲は?
A.2021〜22年の全大学,2023年の早慶・国公立大です。2023年の国公立大まで入れたところで400ページをオーバーしてしまい,打ち止めにしました。2023年の私大その他や2024年の早慶・国公立は原稿を作成しているものの4巻には未収録です。5巻が出版されればそっちに入ります。


Q.対象読者は?
A.世界史が好きな人全般,歴史教育に関心が深い高校教員・予備校講師や大学教員,また作問の参考にしたい大学教員,出題ミスや難問の見分け方を学びたい受験生などです。1巻を出版する前はどちらかというと世界史が好きな人全般が読む本なのかなという思っていましたが,巻を重ねるごとに高校教員や大学教員からの関心が高まっている印象があります。また,受験生から「普通に早慶対策で役に立つ」という声もよく聞きます。本書が役に立ってしまうような出題がまだまだ多いという意味では残念な話ですが。


Q.本巻の収録範囲の印象は?
A.3巻と同じになりますが,日本語が崩壊している系統の悪問や,意味が二通りに解釈できるために解答が出せない系統の悪問,歴史の問題とは見なしがたい奇問は引き続き減っていて,もうほとんど見かけない印象です。一方で,選抜性が機能していない超難問や,作問者の知識不足に起因する出題ミスは減っていません。また,共通テストの傾向に引きずられているのか,受験生の思考力を試そうとしてかえって事故になってしまった問題も増えている気がします。


Q.今回はどんな問題が収録されてるの? 見どころは?
A.帯に入れた例題は以下のような様子です。東京都市大の『ジョジョ』の問題は,私の当初の印象よりも校正者たちや編集の濱崎さんからは圧倒的に不評で,考えが変わりました。実際にどういう問題だったのか,なぜ不評だったのかは本編をお読みいただければと思います。

・大半が設問と関係ない『ジョジョの奇妙な冒険』のリード文(東京都市大 2022年)※番外編
・引用文献を大幅改変、変換ミス、挙句の果てに著者名を誤植(名古屋大 2023年)
・中学生でも知ってる「勘合貿易開始時に足利義満は将軍」ミス(早稲田大 2023年)
・範囲外から出題して盛大に誤植するというクソダサ行為(慶應義塾大 2021年)
・大河ドラマに掛けて「麒麟」の絵画を出すも問題が崩壊(大阪大 2021年)
・センシティヴな問題で「歴史にif」を答えさせる(産業能率大  2021年)※番外編

その他ですと,以下のような問題が見どころかと思います。

・真面目に解くとタイムパラドックスが生じる論述問題(京都府立大 2023年)
・今時ナポレオン3世無能説が前提になっている論述問題(神戸市外大 2023年)
・スパルタの鉄銭を金属貨幣と見なすかどうかで正解が変わる問題(中央大 2022年)
・グラックス兄弟のファーストネームを問う問題(明治大 2022年)
・2課程前,10年以上前の教科書・用語集を参照している疑惑(法政大 2021年)

私的にはスパルタの鉄銭を金属貨幣と見なすかどうかで正解が変わる2022年の中央大・法学部の問題は,受験世界史の歴史に残る悪問だと思っています。詳細はぜひともお読みください。また,恒例の東京女子大や神戸学院大等の面白いと思った問題は番外編として多数収録しています。問題以外ではコラム4の「2021 年度大学入学共通テスト騒動の記録」とコラム5「新科目『歴史総合』が誕生するまで」はアーカイブとして長く読まれてほしいという願いを込めて書きました。


Q.今回の書き下ろしの割合は?
A.半分くらいが書き下ろしです。ブログ版を熟読された方でも楽しめると思います。


Q.Amazon等で表示される書影と,実際の表紙が違わない?
A.これに気づいた人は非常に鋭い。上智大の収録が無いのに表紙に「上智」と入っているのはおかしいだろうということで,「国立」に差し替えているのですが,通販サイトの書影では「上智」のままになっています。詳しいことは聞いていませんが,パブリブ側のちょっとした手違いとのことです。すみません。


Q.収録されている大学のバリエーションが減ってない?
A.パブリブの宣伝ページにも書かれていますが,一般入試で高校の履修科目からの出題をやめて,「総合問題」や「小論文」の出題に変えている大学が増えています。上智大・青山学院大が典型例で,早稲田大もこれに続こうとしています。その影響で世界史で受験できる入試日程が難関私大を中心に減少傾向です。一般入試の合格者枠を減らして推薦入試を増やすのは世の中の流れから言って仕方がないかなと思っていましたが,一般入試の総合問題化は予想していませんでした。4巻に上智大や青学の入試問題がほとんど載っていないのはこのような理由です。
 一応,私は世界史の内容が含まれていそうな総合問題は解いて確認しています(たとえば上智大の神学部や青学の国際政治経済学部)。何かまとまった成果になれば,ブログか5巻かで発表するかもしれません。


Q.間に日本史版とか現代文版とか挟めなかったの?
A.必死に執筆者募集中です。我こそはという方,私かパブリブにご連絡ください。自分で言うのもなんですが,社会的に意義がある出版だと思っていますし,日本語が崩壊している系統の悪問・出題ミスが減っただけでも世界史はやったかいがあると思って私は4巻までがんばっています。


Q.そもそも現行の大学入試制度自体が間違ってるんだから,その中で悪問を糾弾しても意味がないのでは?
A.序文で言及していますが,本書ではその点を問題としていません。あくまで現行の大学入試の世界史において,適正か否かを問題としています。


Q.難関大学は選抜性のために,意図的に難問を出しているのでは? それを批判してもしょうがないのでは?
A.いいえ。通常の受験勉強で触れる範囲からの出題だけで十分に選抜性があります。国公立大でも私大でも,本書にほとんど収録されることがない難関大学の入試日程はあるのです。旧帝大や早慶レベルだと範囲外からの出題は必要悪であるという言説は根拠がありません。加えて,本書が糾弾しているような難易度の問題は極めて少数の受験生しか解答できないため,入試問題の本旨である選抜性が機能していないものが多いです。選抜性を捨ててまで杜撰な,あるいは趣味に走った出題をすることを批判しています。
 また,本書が難問を糾弾している意図の一つには,難問は出題ミスや悪問を生みやすい傾向があるためです。受験生が通常の受験勉強で触れないようなマイナーな歴史事象は,作問者である大学教員も詳しくなく,非常にミスが起きやすいです。その実証例は本シリーズ4冊に多く収録されています。この点にも注目してお読みいただければ幸いです。


Q.1巻がずっと絶版なんだけど?
A.1巻と2巻以降で出版社が違い,1巻を出した社会評論社とは縁が切れているので,再販が極めて困難な状況です。また収録している入試問題がすでにかなり古くなっており,出版社を今のパブリブに変えて再販したとして,本当に売れるのか私も編集の濱崎さんも疑問視しています。電子書籍化もパブリブ側の都合で難しいです。電子書籍化以外の解決方法が無いかは協議中です。
 なお,2巻もパブリブの倉庫からはほぼ払底している状況です。パブリブ出版物ではあるものの,ほぼ1巻と同じ状況だと思ってもらってかまいません。


Q.今回も正誤表を作るの?
A.作ります。この記事に正誤表を作る&重版がかかった際に直す予定ですので,見つけたら教えていただけると幸いです。よろしくお願いします。  
Posted by dg_law at 21:00Comments(4)introduction

2024年03月27日

110年ぶりというべきか,史上初というべきか

2024年の春場所は新入幕の尊富士が優勝した。年六場所制史上初,大相撲史上110年ぶりの新入幕優勝であり,所要10場所は史上最速である。青森県出身力士の優勝は貴ノ浪以来26年半振り。ついでに伊勢ヶ濱部屋は別人による連続優勝で,1999年九州場所・2000年初場所の武蔵川部屋(武蔵丸・武双山)以来とのこと。記録尽くめである。なお,個人的には110年前と大相撲の日程が違いすぎるので,史上初の方がふさわしいように思われる。ただし,尊富士はすでに24歳,大学卒であるから若くない。大の里も同様であるが,学生出身が増えているのとアマチュアのレベルが上がっていることの相乗効果で,これからも新入幕で大活躍して一気に番付を駆け上がるパターンはよく出てくると思われる。

尊富士は14日目で右足を痛め,車椅子で医務室に直行した後,すぐに病院に行った。これは休場やむなしかと思われたが,逆説的に即座の治療が功を奏したか,翌日には歩けるようになっていた。千秋楽の相撲は見るからに馬力が出ていなかったが,極力右足を使わないまま勝ってしまった。クレバーである。ただ,稀勢の里もクレバーな形で優勝した後,ケガの回復が思わしくなく長く引っ張り,復活できないまま引退してしまった。尊富士も慎重に直してほしい。

尊富士の取り口は,日馬富士を彷彿とさせる突き刺さる立ち合いで,その後の動きも日馬富士にやや似ており,突き押してもいいし組んでもいい。組んだら投げにいかないところは日馬富士と異なるが,そのまま寄り切るだけの力がある。143kgであるから小兵とは言えないがそこまで大きくもないのに,機敏さとパワーを高水準で両立させている。しかし,それが両立するということは身体に負担がかかっているということであり,見るからに上半身に筋肉が偏っている。下半身の細さがやや不安材料で,初場所前に照ノ富士から「ウェイトトレーニングばかりやっていないで,四股とすり足で下半身を鍛えろ」と注意された,それから下半身を鍛えるようになったら十両優勝したという報道があったが,照ノ富士に完全に同意である。あと攻め方が直線的で,回り込まれたり翔猿のようなタイプに絡まれたり,投げの打ち合いのような場面になったらどうなるかは未知数である。あの機敏さなのでそうならないうちに今場所は決着がついていたが,研究されるとそうもいかないだろう。来場所は取組時間に注目したい。


個別評。照ノ富士の休場は場所前から調整不足と言われていたので予想されていた。来場所か名古屋で元気なら文句は言われないだろう。大関陣,貴景勝はまだ27歳なのだが,満身創痍である。全力でぶちかませなくてもリズムのよい突きといなしで勝ててしまうから,しばらくは大関陥落や引退ということはないだろうが,苦難の大関にはなりそう。できればカド番最多記録を塗り替えるまでがんばってほしい。豊昇龍は11勝で大関陣では最も良いが,実は調子が良くなかったのではないかと思う。事情がなければあれだけ変化気味の立ち合いをする力士ではない。極端に悪かったのが霧島で,目立ったケガがあったわけでもなく,勝った相撲が強かった。にもかかわらず負けが込んだのは,相撲のリズムが狂っていたか,傍目にはわからない故障があったか。いずれにせよ来場所は大丈夫だと思いたい。琴ノ若は,星数こそ10勝と豊昇龍に及ばなかったが,内容は堂々たるものを見せてくれた。尊富士が優勝し,次点が大の里だったために,また序盤に黒星が集中したために誤解されがちだが,終わってみれば今場所の大関陣は(霧島が絶不調だったことを加味しても)十分に番付の名誉を守ったのではないか。全般的に内容は良かった。

三役。大栄翔は今場所は立ち合いの威力を欠き,生来攻めが直線的で貴景勝のような左右のいなしが無いため,苦しい場所になった。むしろよく6勝できた。若元春と阿炎は普通。錦木は大敗したが,彼は元から場所ごとの出来の差が激しく,今場所は悪い方だっただけだろう。

前頭上位陣。朝乃山はやっと来場所三役に戻れる成績となったが,相撲ぶりは陥落前とさして変わっておらず,今場所も9勝,今の上位陣相手に3場所33勝は非常に難しい。右四つになれば無類の強さだが,不十分な右四つのまま攻めようとしたり,右四つになれないと脆い。もう少し工夫するか,甘い右四つでも攻めきれるようになってほしい。宇良は6勝,翔猿は8勝に終わったが,それぞれ持ち味を存分に発揮する相撲で面白かった。いつ見ても翔猿の相撲はうざったい。宇良はもっと肩透かしを多用してもいいかもしれない。翠富士が切れ味鋭くすぱっと決まるのとは対照的に,宇良は鈍いが力強く,後背地が大きい場所から思い切って大きく引くから見応えがあり,これはこれでよく決まっている印象。平戸海がしれっと9勝していた。上位総当たりで勝ち越したのは初めてなのでは。立ち合いのあたりが良く,左前まわしをよくとれていた。熱海富士も悪くなかったが,大の里に加えて尊富士も出てきてしまい,早く三役に上がらないと話題にならなくなりそう。その大の里は上位初挑戦で11勝,強すぎて笑ってしまう。琴ノ若もそうだが,最近の日本人の若者,普通にパワーがある。

前頭中盤。豪ノ山は10勝で来場所は上位に再挑戦になる。力強い押しを見せてほしい。彼も25歳でまだ幕内5場所目の新鋭なのだよな。今の大相撲,回転が早すぎないか。高安は11勝だが番付を考えれば妥当だろう。そういう意味では正代が8勝,御嶽海が9勝にとどまっていて,大関復帰は遠い。正代は押し相撲に立ち合いで押し負ける相撲が多く,大関時代にはあれがのけぞりながら踏みとどまっていた。逆に御嶽海は立ち合い一発で持っていく相撲が陰りを見せていて,パワーが落ちている。

前頭下位……は面白い相撲は多かったものの力士個別では特筆すべきことがない。しいて言えば遠藤がとうとう5勝に終わって十両に下がることくらいか。近年は見るからにパワー不足で一度下がったら引き技を決める余裕もなく土俵を割っていた。今の大卒新入幕ブームを作ったのは遠藤であろうから,少し寂しい。大卒のベテランが下がるという意味では妙義龍も同様か。


北青鵬が引退した。大相撲でも稀に見る巨漢で,棒立ちでも肩越しの上手さえ取っていれば相手が押せないという尋常ではない足腰の強さであったが,逆に言えばそれ以外の光るところが少なかった。攻め方が寄りも投げも雑で磨かれていかず,そのうちに巨漢力士の弱点を突かれて中に入って押されたり足技で刈り取られたり,鈍重であるがゆえに横に揺さぶられたりして,入幕の頃の勢いが失われていった。それでも技が磨かれれることを期待していたが,先場所は右膝を痛めて途中休場という触れ書きであったところ,実際には弟弟子への暴力行為が発覚しての謹慎であり,そのまま引退に至った。彼が相撲が好きだったのか,上に行く気があったのかは聞いてみたい。

照強が引退した。阪神大震災の日に淡路島で生まれたことや,大量の塩撒きパフォーマンスでも知られる。小兵にしては突進力があり,横に動いたり潜って足取りにいったりというような小兵らしいことも当然できた。ちょうど彼が幕内で活躍しだした2019-20年頃は石浦・炎鵬とそろって小兵旋風を巻き起こしていた。一方,幕内上位としてはスピードとパワーがどちらも中途半端でどうも上手くいかず,跳ね返されるうちにケガが増えて2022年頃には幕内残留が厳しくなっていった。伊勢ヶ濱部屋の関取として2020年の名古屋場所では朝乃山を破って照ノ富士の優勝を援護した。照強自身,引退会見で最も記憶に残る一番にこれを挙げていた。お疲れ様でした。
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Posted by dg_law at 01:31Comments(5)sports

2024年03月22日

ニコ動・YouTubeの動画紹介 2023.2月中旬〜2024.2月下旬




身体を動かす系のRTAを投稿しているピザモスさん,リズムゲーのRTAもできることが判明。面白かった。




おやつさん。オクトラは1より2になってさらに敵味方の技が極端になって,行動させないうちに倒すのが重要になった印象だった。RTA的には特に神聖魔法のため走りやすそうだった。



たいたぬさん。これはさすがに空母に着艦できてしまうMSFS側に問題があると思うw



もっと広い盤面でやっても面白そう。誰か新ルールを考案しないだろうか。



将棋にギャンブル性を足すためのお手本のようなルール。10面サイコロでもできそうではある。



やたらと有名な桑の実の料理再現。確かに普通に美味そう。



オーイシマサヨシ,何歌わせても上手いなー。



それぞれ似ているのがすごい。



この子たちはどれもこれも美味い。バンド名はAltar Kleeで,名古屋の向陽高校の軽音部らしい。  
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2024年03月17日

2024受験世界史悪問・難問・奇問集 その3(国公立大)

昨日の続き。本日は国立大をお届けする。一番困惑したのは受験世界史の改革を訴えているあの大学である。

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2024年03月16日

2024受験世界史悪問・難問・奇問集 その2(早稲田大)

昨日の続き。本日は早稲田大をお届けする。入試は7学部で収録した問題は16問であるが,そのうち2つの学部が10問を占めた(教育と商)。昨年もそうだったが,偏りが激しい。

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2024年03月15日

2024受験世界史悪問・難問・奇問集 その1(慶應大)

今年も書き上げることができたので公開する。いきなり告知から入るが,もうすぐ4巻が発売する予定なので,お買い求めいただけると幸いです。4巻の校正作業はほぼ終わっているが,この2024年の記事と作業時期が重なったので,今年は少し大変だった。




<収録の基準と分類>
基準は例年と同じである。

出題ミス:どこをどうあがいても言い訳できない問題。解答不能,もしくは複数正解が認められるもの。
悪問:厳格に言えば出題ミスとみなしうる,国語的にしか解答が出せない問題。
→ 歴史的知識及び一般常識から「明確に」判断を下せず,作問者の心情を読み取らせるものは,世界史の問題ではない上に現代文の試験としても悪問である。
奇問:出題の意図が見えない,ないし意図は見えるが空回りしている問題。主に,歴史的知識及び一般常識から解答が導き出せないもの。
難問:一応歴史の問題ではあるが,受験世界史の範囲を大きく逸脱し,一般の受験生には根拠ある解答がまったく不可能な問題。本記事で言及する「受験世界史の範囲」は,「山川の『用語集』に頻度,任發いいらとりあえず記載があるもの」とした。


<総評>
 昨年は早慶で28個で,今年は33個であるから微増した。ただし,これは慶應大・法学部が一つで13個も収録になった影響が大きく,他の慶應大の学部や早稲田大は例年通りだったように思われる。内容も昨年と同様で,あからさまな校正ミスや意味不明な日本語による悪問・出題ミスが減った。一方で,調べの足りない単純な知識的なミスが増えた。早慶のミスの出し方の傾向も例年通りで,慶應大は教科書に依拠しすぎていて重箱の隅の隅から出題したり,教科書表現を微細に変えて問題文にした結果としてミスが生じていた。これに対し,早稲田大は教科書を雑にしか読んでおらず,作問者の史実誤認がストレートに出る出題ミスが多かった。また,「暗記科目ではない,考える世界史」を志向するのはよいが,派手に失敗するケースが私立・国公立によらず年々増えている印象である。高い目標を掲げるならミスなく作ってほしい。
 早稲田大の人間科学部と社会科学部は,地歴で受験できる最後の年であった。来年からは人科は英語・国語のみ。社学は総合問題を課すとのことである。最後の年の問題がどうだったかは,本編を御覧いただきたい。
 最大のトピックは,早慶の解答速報から早稲田予備校と増田塾が撤退したことかもしれない。これで残ったのは河合塾・駿台・代ゼミ・東進の4つであるが,河合塾と駿台は早慶の一部学部に不参加で,全学部の解答を出しているのは代ゼミと東進だけである。解答速報は,その予備校が受験生の解答確認による宣伝効果,難関大学の解答を作成する能力があることの証明,提携する新聞社へのPV数や分析の提供を目的として実施するものであり,出題ミスの指摘という社会的貢献は副次的なものでしかない(私の場合は個人での活動になるが,過去の経験上ありがたがられる大学と嫌がる大学に二極化する)。しかし,有名予備校の場合は今更能力の証明もなく,解答ミスがあると逆効果になる。駿台は新聞社との提携を断っている(だからホームページ上に問題の掲載がない)ということから見ると利益もさして上がらず,最近は大学が公式解答例を比較的早く発表するようになったから受験生が予備校のホームページで確認する必要性も薄まった。完全撤退や宣伝効果が薄そうな日程の取りやめ判断もやむを得ないところだろう。出題ミスの指摘という社会的貢献を考えると,可能な限り続けてほしい。

以下,本編。本日は慶應大のみ。二日目が早稲田大,三日目が国立大である。  続きを読む
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2024年03月11日

出光美術館の池大雅展(2024年2月)

出光美術館の池大雅展。儒学知識豊富にして豪放磊落な文人であるが,記録上で少なくとも富士山,立山,白山,浅間山,伊吹山と後の百名山を五座登頂している。特に日本三霊山の完登は当人もそれを誇っていて「三岳道者」を名乗っていたらしい。前近代の日本の登山は修行や巡礼の意味合いが強く,近代登山のようなピークハントや眺望は重視されなかった。池大雅は早すぎた近代登山家だったのかもしれない。画業は登山の成果であろう,大量のスケッチを書き残している。登山は基本的に親友の儒学者・篆刻家の高芙蓉,書家の韓天寿の3人で行ったそうで,「仲良三人組」とまで書かれていた。美術館のキャプションらしからぬ砕けた表現に笑ってしまった。三人とも博覧強記であり,この三人の旅行は絶対に楽しかったに違いない。なお,3人の合作として旅行で描いたスケッチや韓天寿が作っていた旅程・旅費のメモを屏風に貼り付けた作品があり(《三岳紀行図屏風》),今回はそれも展示されていた。3人の感じた楽しさがほとばしっていたという点で非常に良い。それによると1760年(宝暦10年),6/27に突然思い立って旅立ち,7/3-5で白山登山,7/10-14で立山登山(途中で暴風雨に遭う),7/27に浅間山登山,8月に富士山登山(詳細不明),9月中旬に帰宅している。なお,富士山はこの翌年と翌々年にも登っていて,少なくとも3回登っている。

池大雅は日本を舞台とした山水画が多いが,瀟湘八景をはじめとする江南舞台の山水画も多く描いている。実地検証した日本の風土と異なり,日本の山岳と中国から取り寄せた地理書からの想像である。相互の海禁下でなければさぞ渡航したかったことだろう。国宝指定されている《楼閣山水図屏風》は江南が舞台であるが,浅間山の山頂から見た風景を描いた《浅間山真景図》の方が生き生きとしていて良い作品のように見えた。

技術的な面では中国画の遠近法である三遠(六遠)への関心が強く,それを研究した作品が多く展示されていた。西洋絵画の透視図法にも関心があったそうで,山水画を描くためには遠近法が最重要と考えていたのかもしれない。もろもろ考えると池大雅の代表作が山水画ではない《十便十宜図》というのはよくわからない選出である。与謝蕪村との合作であるとか川端康成が所有していたといった付加情報でかなり得点を稼いでいるのはわかるが,画業の頂点としては《楼閣山水図屏風》の方が適切なのでは。

トータルで満足度が高い面白い展覧会ではあったが,目玉展示《十便十宜図》がなんと4日に1回の展示替えで2枚ずつしか展示されず,全点を生で見るには10回来場する必要があったのだった。それだったらいっそこれを外して,どうせなら仲良三人組にクローズアップして高芙蓉と韓天寿の作品も展示してほしかった気はする。なお,高芙蓉は青木木米の師匠であり,池大雅は木村蒹葭堂の師匠であるから(中国の地理書は木村蒹葭堂の蔵書だったようだ),京都の知識人人脈がつながる。


  
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