2023年10月31日

更新連絡用記事

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2023年10月02日

さしづめ猪地獄と命名すべきだろうか

・那須の殺生石にイノシシ8頭死骸 九尾の狐伝説の地、有毒ガスか(下野新聞)
→ 殺生石の伝承で言えば,2022年3月に真っ二つに割れたことで九尾の狐の妖力が解消されたことになるはずだが,自然現象は空気を読まないのであった。
→ 野生動物も(当然ながら)火山性ガスには野生の勘は働かずあっさり死ぬ。この間,福島県の東吾妻山麓の浄土平に行った際,そのビジターセンターの展示で,「一切経山の中腹はよくキツネが死んでいるので狐地獄と命名された」とあり,狐が死んでいる写真も掲示されていて,あまりにもそのままな命名に笑ってしまった。日本各地で同じような命名の窪地がありそう。


・【報告】ねとらぼを退職しました(&この10年でやってきたこと振り返り)(てっけん|note)
→  確かにねとらぼがジャーナリズムをすごくがんばっているなと思う記事がいくつかあった。その事情がここに。漫画村と香川県ゲーム条例以外だと,とらのあな大量店舗閉鎖の取材とか,サントリーグループ残業代未払い問題とか。
→ それ以外にも,「ネコとジャーナリズムのバランス」問題等,示唆に富む記事で,古巣に迷惑をかけていない内容であることも含めて良い退職かくあるべしという記事。


・【アップデート】現役小学生にインタビューして、令和の小学校あるあるを完成させよう(オモコロ)
→ オモコロらしい傑作。「うんこを茶化す人がいない」「教室がうるさすぎて先生が職員室に返ってしまうことがなくなった」辺りは改善されていて,良い感じ。それでも改善されない黒板消しクリーナー,企業努力で何とかならないものだろうかw。「ランドセルがカラフル」なのはいかにも現代的。逆に「鬼ごっこでバリアを張られる」「体操服袋を蹴りながら帰る」が全く変わっていないのは,小学生の精神の不易を感じてよい。  
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2023年09月29日

優勝の代わりに失くしたものは

土俵の充実に反して,締まらない結末となった。11勝で優勝が決まったこともさることながら,優勝決定戦の片方が平幕,しかも優勝した大関は決定戦で変化したとあっては盛り下がるのはやむをえまい。貴景勝本人は変化自体で決めるつもりは無かったと言っていたが,そういう問題ではあるまい。困るのは来場所の綱取りである。裏ルール的に片方が準ずる成績なら概ね27勝が求められ,過去の実績があれば1勝おまけされて26勝でも昇進が認められる傾向にある。貴景勝の場合はすでに優勝4回であるから実績十分として1勝おまけするとしても,全勝優勝以外ではこの条件を満たさない。14勝優勝は議論の末に昇進となるように思われる。確実に揉めるのは14勝で優勝同点と13勝優勝で,揉めた挙げ句来場所に12勝等の緩い条件で持ち越しになるのではないか。12勝優勝や13勝の優勝同点・次点あたりも来場所に持ち越しという議論になりそうである。


個別評。大関陣。貴景勝は優勝できるような体調であるようには見えず,霧島と豊昇龍の乱調,照ノ富士の休場に助けられた形である。これで優勝というのも不思議な感覚というのは本人も感じているのではないか。豊昇龍は相撲の歯車が噛み合っておらず,自滅する相撲が多かった。やはりメンタルは叔父ほど強くない。それでも最終盤に吹っ切れて強さが戻ってきたのは立派で,プレッシャーから解放される来場所に期待したい。霧島はよくわからない。押し相撲に付き合って負けた相撲が多く,結局のところ器用貧乏という弱点を突かれたのかなと思う。大関昇進前から押し相撲には意外と負けているので,そもそも意外と押し相撲に弱いのかもしれない。

関脇・小結。大栄翔は何とか二桁に乗せた。さすがにこれを起点に大関取りを決めたいところだが,さすがにツラ相撲の傾向が強すぎる。連敗に入ると急激に押す力が弱くなるのは何とかならないか。若元春と琴ノ若と翔猿は可も不可もない出来。錦木は急に元の強さに戻った。霧島と豊昇龍が大関に昇進したことで,急速に新大関誕生の気運がしぼんでおり,琴ノ若以外はさして若くないから強い危機感を持つ人が多かろう。

前頭上位。北勝富士は3大関撃破の出だしであったが,プレッシャーからかその後に相撲が縮んでしまった。3つの貯金でなんとか勝ち越した感じで,これでは優勝も大関も遠い。朝乃山は攻め急ぎすぎて前のめりに倒れる悪癖が大関時代から全く治っておらず,前の昇進時よりも関脇・小結が詰まっていて,勝ち越す地力はあるものの大関再昇進はかなり厳しい。右四つにがっちり組めれば強いのだが,対策されてしまっている。宇良は今場所もよく動いていた。本当に上手く土俵を使って回り込むものだ。湘南の海はそれほど印象に無かったが,終わってみると7勝で善戦した。前頭5枚目の位置ながら役力士との対戦がほとんど組まれず,ほぼ中盤の力士と同じ対戦表になったという幸運はあるが,巨体を生かした相撲で勝ち星を集めた。左四つで,寄りではなく投げで決める点で琴ノ若と違う。対して豪ノ山は同じ5枚目なのに頻繁に上位と組まれたが,なんと9勝で勝ち越した。早くも上位定着の様子である。すでに押す力は貴景勝・大栄翔・北勝富士に次ぐ。

前頭中盤。高安は今場所こそ優勝がありうる展開だったが,本当にメンタルが弱い。どうしたものか。平戸海は左前まわしをとっての相撲が冴えていた一方,体格差で当たり負けしたり,まわしを切られて相撲にならなかったりする場面も多く,6勝という結果は地力が出たように思われた。翠富士は好調で10勝のうち6勝が肩透かしである。来るとわかっていても回避できないのだから相当な切れ味で,相手からすると浅い差し手が入るだけで恐怖であるから,副次的な効果も出ている。今場所はさらに湘南の海相手に巻き落としも決めていて,これで技能賞が受賞できなかったのは意味不明である。これ以上どう技能を示せというのか。選考委員会は何を見ていたのか。金峰山も9勝,四つ相撲を覚えようとしている過渡期のように見え,その割にはよく白星を稼いだ。十分な素質を見せたと言えよう。

前頭下位。遠藤・御嶽海は登りエレベーターのはずだが9勝で終戦した。御嶽海は日毎の出来が異なり,その辺は上位にいた頃と変わらないというべきか,不調だと前頭下位でも勝てないということが判明したというべきだろう。遠藤は負けた相手も見ると好調な力士が多く,仕方がないという気も。北青鵬は肩越しの上手をとってなんとかしてしまおうとするところは直っていないが,肩越しの上手をとってからの動きがスムーズになって負けにくくなった。これを貫くなら上位戦でも見てみたい。来場所に期待したい。妙義龍は10勝で,久々に前傾姿勢のまま当たってすっと右四つかもろ差しとなり形をつくる一連の美しい動きが見られた。かなり体調が良かったのではないか。最後に熱海富士。琴ノ若や湘南の海に続き,これまた恵まれた体格であるが,右四つの四つ相撲を基本としつつも押し相撲でも割りと取れる。ただ,異常に好調だっただけのようにも見えたので,来場所に真価を見たい。
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2023年09月28日

ニコ動・YouTubeの動画紹介 2023.8月下旬〜2023.9月上旬



ピロ彦氏。今まで実践されてされていなかったのが不思議な感じの装置。任意半挿しでバグらせるのは他のゲームにも転用できそう。




ダークドレアム撃破によるエンディングを目指すTAS。効率的な種集めや熟練度上げが見どころで,条件が通常のラスボス撃破と違うために相違点が多くて面白い。なお,glitchlessとあるがドラクエ6はそもそも大幅短縮につながるようなglitchがさして見つかっていないそうで。




ぅな〜氏の全裸一人旅シリーズ,FF6が完結。約4年半の長旅。FF6は難易度が低いRPGながら,全裸になると途端に厳しくなる度合いが強く,難易度が低い原因は装備が強すぎることにも一端があるのだなという気づきがあった。魔法がそろわない序盤,強い装備がこちらにそろっている前提の終盤がきつそうで,中盤はさくさく進んだというギャップがあった。この縛りだとラスボスもちゃんと強い。




基地防衛シミュ。プレイヤー側が人間ではなくミツバチ,敵がスズメバチやトンボという違いがあるが,途中から両陣営ともに銃火器で武装しだす。割りと面白そうなゲームながら,味方の砲兵が偏差射撃をしてくれないので最終的には物量で押すしかないのは欠点か。



たいたぬさん。上海や香港の高層建築物をコンコルドで通過すると,近づく前に人民解放軍に撃ち落とされそうw。上海で通ろうとした建物の隙間がゲーム上ふさがっていて見えない壁に跳ね返されていたのは笑った。




これはめちゃくちゃエモい。この3人が歌うからこそという質感がある。



スポーツ名場面集。今回の最後は小錦。
  
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2023年09月07日

ニコ動・YouTubeの動画紹介 2023.7月下旬〜2023.8月下旬



自分が行った日も奇跡的に晴れていたが,大台ケ原の晴れている日は珍しいそうで。めちゃくちゃ良い秘境なので関西在住の方は是非。動画でも言われているが,最大の難所は登山ではなく大台ケ原までの道が長すぎること。




MSFSはヘリコプターも運転できるのだな。そして,たいたぬさんがヘリを運転すればまあこうなる。




低レベルクリアの中でも,特定のキャラに経験値を集めて強くしないようにするという少し特殊な縛りを加えている。ドラクエ4の場合,レベル15のキャラが数人できるのが最高レベルになる。低レベル攻略になるのもさることながら,ラスボス以外の必須戦闘は経験値受け取り要員一人だけを残して死んだ状態で敵を倒さないといけないという縛りが地味にきつそうだった。単純な低レベル攻略としてもボス撃破のための戦略の詰め方が精密で非常に面白い縛りプレー動画。





卵と石鹸に続いて風船。浮いて進むのでゲーム性が違う。風船だからつらいステージも,風船だから厳しいステージもあって特性の違いが出ている。プレイヤーとしては卵や石鹸よりも楽だったらしい。



詐欺広告ゲーを改良してこれだけ面白くできるというのがすごい。ゲーム性は大事。




下半期20選選出。傑作メドレーだった。ニコマスにはまだこれを作れるだけのPが(力量的にも人数的にも)いるというおとに感動してしまった。



美琴は好きなだけごろ寝しないでしょwという出オチ。



やっぱりM@STERPIECEは特別感のある曲で,アイマスを代表する一曲だなと思った。  
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2023年08月16日

ニコ動・YouTubeの動画紹介 2023.7月上旬〜2023.7月下旬




Papers, Please自体も赤いやんけ,というツッコミから入る実況動画タイトルだが,実際にこのゲームの国情はひどい。最初はPapers, Pleaseライクの検問官を担当するゲームとして始まるが,途中から反乱軍との戦闘要素が入ってきて,明らかに検問官ではない職務が増えていく。ゲームのエンディングは国家の側に立って反乱軍を鎮圧するものか,反乱軍に寝返るものの2種類あるらしいが,実況者たるもの偽悪者ぶりたいらしく,前者のルートをたどる実況の方が多く,後者をめったに見ない。




橋としての無茶苦茶さは2とそれほど変わらなかった印象。



夏と言えばこの曲。


無月めもりさん,歌が上手いので聞いてあげて。オカルト・会談Vtuberの彼女らしい選曲。


藤井竜王名人がリラックスしていて良いラジオ。武富礼衣女流初段の司会が上手い。


ホモサピくんがまた変なものを作って食っている。


硫酸にいろいろなものを漬けてみる実験集。結果に予想はつくが見た目のインパクトが強くて面白い。  
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2023年08月14日

2023年7月に行った美術館・博物館(ガウディ展,古代メキシコ文明展)

近美のガウディ展。前回の展覧会の感想のマティス展でも書いたが,19世紀末の芸術家は修業時代が面白く,ガウディもやはりいろいろなものに触れて広く勉強している。歴史主義建築が流行った時代であるから過去の建築の勉強をみっちりしておくのには意味があり,特にスペインであればムデハル建築に触れられるのは強みであった。その中でガウディが関心を持ったのはゴシック建築らしく,ガウディの建築業のベースはネオ・ゴシック建築になっていったようだ。と同時に発想が理系よりと言えばいいのか,幾何学模様にも関心が強く,これが合わさって「両端を固定した紐を吊り下げて放物線上の形の建築物を構想する」パラボラ・アーチという奇抜な発想に至ったのだろう。その流れがよくわかる展示になっていた。

それがわかったところで展示の後半はガウディの超大作,サグラダ・ファミリアに焦点が当たる。このサグラダ・ファミリアも最初はガウディ以外の設計者がネオ・ゴシック建築として構想したところから始まり,ガウディ自身もネオ・ゴシック建築として引き継いだはずであった。しかし,ガウディがそれで終わる人物ではなく,すぐに魔改造が始まる。この流れはガウディ自身がネオ・ゴシック建築から離陸して独自の作風を築いた流れと重なっていて,この観点でもサグラダ・ファミリアはガウディの代表作と言って差し支えないのだろうと気付き,展示の配置が絶妙である。言われてみるとサグラダ・ファミリアは骨組みやゴテゴテした外装にネオ・ゴシック建築の面影があり,それがわかるのが本展覧会の効果だろう。手っ取り早いところで下のTweetに貼った画像を参照してほしい。

ガウディ自身が「サグラダ・ファミリアの建設はゆっくりとしている。なぜなら,この作品の主人(神)が急がないからだ。」と述べている通り,建築の長期化は明らかであったが,ガウディは交通事故で不慮の死を遂げた。その後も彼が残した資料を元に建設が進んだが,元のコンセプトが「寄付金で建てる」であったところにスペイン内戦とフランコの独裁政権があり,寄付金が集まらず,しかもスペイン内戦の戦火でガウディの資料が燃えるという最悪の事件もあって,建設は神でも苛立ちそうなほど遅々として進まなくなった。20世紀末以降に急速に建設が進んでいるのは技術革新と観光地として開花して寄付金が急増したためである。展示の最後にあった寄付金のグラフも面白かったので,ぜひ確認してきてほしい。会期は長く,9/10まで。




東博の古代メキシコ文明展。高校世界史でも学習する通り,古代メキシコ文明は紀元前10世紀頃のオルメカ文明から始まり,メキシコ高原のテオティワカン文明,ユカタン半島のマヤ文明,最後にメキシコ高原に戻ってアステカ王国と続く。本展はオルメカ文明はさらっと触れるのみであったが,その他の3つは展示物が多く,珍しいものを見ることができた。展示の順は成立した時代順に沿ってテオティワカン→マヤ→アステカであったが,地理的に異なるため文化が少し異なるマヤ文明が挟まれて差異が強調される形になっていた。

改めて見るにテオティワカン文明は血生臭すぎる。トウモロコシで人が生えてくるから人が安く,マヤと比べても技術発展の方向性が偏った感じはした。少しずれるがメソポタミアに対するエジプトが比較的近い対比かもしれない。これに比べるとマヤは文字があって装飾品も繊細優美で,しっかりとした都市文明だなという印象になる。これだけいろいろと発展したのに鉄器も車輪も釉薬も無いのは不思議に思えてしまうが,それは旧大陸目線かもしれない。最後のアステカ王国はメソアメリカ文明の集大成になるが,地理的に当然ながらマヤよりはテオティワカンの影響の方が強そうに見えた。

今回の展示で気づいたのは釉薬が無いことの特異さである。鉄器や車輪が無い,文字もマヤ文字以外は無いか絵文字の段階というのは有名だし私も知っていたが,釉薬も無いというのは意外であった。3つの文明に共通して建築・彫刻・土器の成型技術が非常に高く,それぞれ同時代の旧大陸の文明と比べても遜色がない。にもかかわらず,である。鉄器が無いのも合わせると炉に関心が無かったのだろうか。インターネットで簡単に調べただけだと有力な情報は出てこなかったので,詳しい専門書を読まないとわからないのかもしれない。それにしても,土器だという認識で展示物を見ると,よくもまあ割れやすい土器でこれほどの造形を驚かされる。これを知ってしまうと縄文土器は世界史スケールでそこまで特異ではないのかもしれないと思わされた。と同時に,釉薬が鉄器や車輪ほど強調されない理由も気になった。釉薬が無いという言い方だと伝わりにくいかもしれないが,要するに陶器が無いというのは文明の比較として大きいと思うのだが,どうか。


  
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2023年08月12日

2023年6月に行った美術館・博物館(ブルターニュ展2つ,マティス展)

SOMPO美術館のブルターニュ展。偶然か作為かはわからないが(事情を知っている人がいればコメント欄でご教示いただけるとありがたい),2023年の6月に西美とSOMPO美術館でブルターニュ展がかぶった。ブルターニュはフランスの辺境で独自の文化を維持した地域であり,近代になって鉄道が通ると観光地として人気を博すことになった。そこには都会化し,過度に洗練化されたパリとは異なる,粗野で素朴で敬虔な人々と,波高く険しい断崖に代表される荒々しい風景が都会に疲れた人々を出迎えてくれるのであった……という説明だけで気づく人は気づくところで,数々の絵画を鑑賞して感じたのは,どう考えてもこれは身近なオリエンタリズムである。しかも距離が近すぎるがゆえに当事者たちが気づきにくいたぐいの。とするとそこを批評するのが展覧会の役目なのではないかと思うのだが,どちらの企画展もその方向性での批評性は高かったとは言いがたい。SOMPO美術館の方はブルターニュのカンペール美術館から借りてきた作品がほとんどであるから忖度が働いたのかもしれない。一応,SOMPO美術館は画家たちの注目がブルターニュ人の粗野なイメージに集まった点をクローズアップした展示になっていて,その方向性でゴーガンやポン=タヴァン派が登場する構成になっていた。ゴーガンだからこそ説得力がある。

これに比べると西美のブルターニュ展はまだ薄っすらとしたオリエンタリズム批判が見えていたように思われる。パリジャン目線のブルターニュを「国内的異郷」と表し,ミュシャのポスターや当時の観光案内等も展示し,またブルターニュの先にタヒチや日本があることはより明示的であった。また黒田清輝や藤田嗣治などブルターニュに赴いた日本人画家の作品を展示していた点は西美らしく,彼らの作品は特徴のないフランスの一地方を描いたものにすぎなかった。実際にはブルターニュの先に日本はないということを暗示した仕掛けなのかもしれない。これが深読みでないなら良い仕掛けである。しかしながら,やはり西美ならばもっと学術的な展示にできただろうと思う。

なお,旧称Twitterで検索すると,自分と同じ気付きを得た人はいないわけではないという程度に少数であった。私としては気にする方が過敏すぎるとは思われないものの,ブルターニュ展を聞いて心惹かれて美術館に行く層で,かつそれをTwitterに書く人となると,オリエンタリズムに関心がある人はそれほど重なっていないということなのかもしれない。それにしても少なく,正直に言えばやや残念である。ブログまで拡張すると東京藝術大学お嬢様部の人が全く同じ感想を書いていた。「もしドイツや英米の美術館が「日本美術における東北展」をやったら、描かれる対象についてだけではなく、東京に対する権力勾配や見られるものとしての東北など、かなり政治的な部分まで確実に踏み込むでしょう。」という指摘はお見事。




都美術館のマティス展。言わずと知れたフォーヴィスムの大家。19世紀末・20世紀初頭頃の画家の個展で面白いのは,新ジャンルを切り開く以前,すなわち画家たちの修業時代の作品である。彼らは概ね写実主義(自然主義)辺りから印象派・ポスト印象派と単線的な美術史の発展をたどるのだが,マティスも例外ではなく,ポスト印象派から次第に個性を出してフォーヴィスムに向かっていく。これがもう少し後の時代のデュシャンやモンドリアンになると,学習過程が少し伸びてフォーヴィスムやキュビスムに一度かぶれてから自己流になっていく。それにしてもマティスの場合は思っていたよりも強くポスト印象派にかぶれていて,もろに点描だったりセザンヌだったりする作品が多かったのが面白かった。同時にセザンヌからフォーヴィスムに変わっていく過程も見て取れたのも本展の収穫であった。回顧展の面目躍如である。

下に貼った旧称tweetにも書いたが,自分としてはこの辺が勉強ではなく楽しみとして鑑賞できる限界ラインであるところ,マティス自身が「極限まで要素を削ぎ落として,どこまで絵として成立するか」を攻めて成立したのがフォーヴィスムらしく,図らずもマティスと感覚が近いのかもしれない。ただ,最近は自分もいろいろと見て理解度が上がってきたのか,歳を取って寛容性が上がってきただけなのか,確かにこれを極限と思わずに一歩踏み出すとキュビスムやモンドリアンになるわけで,守備範囲が広がってそこくらいまでは許容できるようになってきた自分もいるな……というような自己の振り返りになった点でも,このマティス展はなかなか思い出深いものになった。

一方でマティス自身も本当にフォーヴィスムが絵画の極限かという自問自答があったようで,大家となっても晩年に至るまでキュビスムを取り入れたりセザンヌに戻ってみたりとマイナーチェンジが忙しく,それを追っていくのは勉強になる以上に単純に面白かった。画家の様式を細かく追えるという点でも回顧展らしい回顧展だったと言えよう。会期は8/20まで。

  
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2023年08月08日

自分もYAMAPがなければ何度か遭難していると思う

・「私は10日遭難した きっかけは道標だった」(NHK)
・相次ぐ山岳遭難 「道標」で道を間違えるケースも 奈良(NHK奈良県のニュース)
・奈良・弥山 遭難事故の記録|小さな火、絶やさなかった10日間(YAMAP MAGAZINE)
→ 3記事合わせて読みたい。NHKの方に
>自己責任が原則の登山において、道標は遭難の言い訳にはならないと前置きしたうえで、今回の遭難はこの道標がきっかけになったと指摘します。
 とあるが,そうは言っても自治体の設置した看板の誘導ミスはさすがに例外だと思う。地方自治体によって程度に大きな差があるものの,けっこうな頻度で間違っていて,その都度YAMAPや山と高原地図と比較する羽目になるのは勘弁してほしい(私が今までで一番ひどいと思ったのは関八州見晴台)。自己責任の範囲を超えている。この遭難についても,地図をなくしていたり,スマホの地図アプリを入れていなかったりという過失はあるものの,道標の間違いが第一の原因と言っていい。だからこそ,他の自治体につながる道だからという理由で誤りがあると言いうるような道標を作り,責任逃れのコメントを出している五條市はひどい。無い方がマシな道標で,五條市に登山客を誘導するために人命を軽視していると言われても仕方がない。NHK奈良県のニュースの動画を見ると,YAMAPのデータによって他の登山者も散々この道標に迷わされていることがわかる。現在では正しい道も書き加えられているとのこと。
→ YAMAPの方の記事を読むとより詳細な状況が語られている。久々の登山で登山靴のソールが剥がれてしまったこと,迷ったら登るの鉄則に反して沢筋に下ってしまったことの二点が遭難を悪化させた原因だろう。一方でベテランなだけあって遭難時の対応は適切だった。食料が当初の予定が一泊二日だったにしては多かったこと,サバイバルシートを持っていたこと,焚き火を起こしたこと,飲み水を確保しやすいところに避難できたこと,コンパスを持っていっていたこと等は生還要因で,示唆に富む遭難記録である。


・東北の男性と結婚した外国人女性たちの経験。「不可視化」の理由と託された言葉の数々。#移住女性の声を聴く(ニッポン複雑紀行)
→ 全然知らない話だった。00年代まであったとのことなので,かなり最近の話である。記事の最初の方を読んだだけでも失敗するケースが多いように思われる政策だが,上手くいった事例もそれなりにあって「一概には言えない」らしく,私にも偏見があったかもしれない。上手くいったところはちゃんと嫁側に丁寧に説明をして,来てもらう側の家庭も両親含めて納得して……という感じなのだろうか。確かに困っている人の事例ばかりを喧伝されるのも上手くいっている人たちが困ってしまうし,それでは誰も幸せにならない。
→ 記事中にも「日本と出身国の経済的な差がどんどん縮まっていく時期でもありました。」とあって,これが10年代になると東北への結婚移住が減った東北大震災と並ぶ二つの理由として挙げられていた。私が00年代まで結婚移住が存在していたことに驚いた理由がまさにこれで,00年代だとまだ韓国や中国から日本が魅力的に見えていたのだろう。日本に住んでいると00年代と10年代にそんなに違いがあったかと思ってしまうが,その頃に経済成長が著しかった中国や韓国から見た際には相対的な地位の変化が大きいのかもしれない。


・「近代五種」 馬術を除外し障害物レース採用 IOCに変更提案へ(NHK)
→ SASUKEを長らく見ているので,近代五種にSASUKEを参考にした障害物レースが採用されるかもしれず,IOCから欧州版Ninja Warrior(SASUKEの海外版の名称)が調査を受けたという話はけっこう前から知っていた。それでも本当に採用されたのは驚いた。なお,SASUKEのYouTubeチャンネルがそのテスト大会を取材している。これを見るとSASUKEよりはやや易しいがよく似ていて,最後が「反り立つ壁」である。SASUKEよりはやや易しいせいか,フランス版Ninja Warriorの選手が爆速で優勝していて笑った。
  
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2023年08月06日

マーク・ロスコも天地逆で気づけない作品が多そう

・巨匠モンドリアンの抽象画が75年以上にわたって逆さに展示されていたことが判明(GIGAZINE)
→ 所蔵している美術館の学芸員が気になって調べてみたところで発覚したらしい。モンドリアンの作品なら75年以上天地がひっくり返っていても誰も気づかなかったのは不思議ではない。どちらかというと,現代アートの作品は,作中の微細な仕掛けが作者の意図したものなのかの読解が非常に難しいということを再認識させられた事件だったのではないかと思う。本件について言えば,まず間違いなく,本作について「下部に線が密集していることで画中の安定感が……」というような解説をしてしまった専門家や美術ファンが何人もいたと思われる。間違いに気づいた学芸員の「正しい向きや間違った向きなんてものはないのかもしれません」というコメントは現代アートの面白さを示すと同時に,私の嫌いな現代アートのいい加減さも詰まっている。


・見分けが不可能な偽サイトがGoogle検索最上位に堂々と表示されてしまう、「i」をURLに含む全てのサイトが信用できなくなる極悪手法(GIGAZINE)
→ GIGAZINEのページ内にリンクが張られているえきねっとの詐欺もすごかったが,これもすごい。回避不可能ではないか。Google検索にせよYouTube広告にせよ詐欺や胡乱な広告が多すぎるのだが,審査が緩すぎるのか何なのか。ネット広告は代理店同士のつながりが複雑化していて責任の所在がロンダリングされているという話は昔から聞くが,Google検索くらいはGoogleが最終的な責任を持ってほしい。野放しすればGoogle広告の信頼性を毀損し,アドブロックを入れる正当性が高まるだけだと思うのだが,まだ胡乱な広告を放置するメリットの方が上回っている状況なのだろうか。


・「そのエコ、本当ですか?」企業に正面から聞いてみると……(NHK)
→ 良い報道だと思う。材料から石油を排したり材料を再利用可能なものにすれば環境に良いかというと輸送や洗浄・再生があるからそうでもないだろう……というのは薄々わかっていつつも指摘は難しい。私を含めて大衆は環境保全自体よりも,「グリーンウォッシュ」をしているだけなのに自分たちの方が倫理的に正しいという態度をとられる詐欺的な状況や,「やっている感」のために不便を強いられていることに苛立っていると思われる。だからこそ,こういう検証は有効だろう。


・南ア最大民族ズールーの王、正式即位 盛大な式典開催(AFP)
→ アフリカではたまに見る国家を持たない王族。ズールーは人口が約1,000万人とさすがに規模が大きい。それだけに即位は一筋縄ではいかなかったようで,関連記事を読むと継承権争いが起きており,即位直後に新王の顧問が殺されている。2021年3月に先代王が亡くなり,3番目の妻にして隣国エスワティニの国王の姉であった人物が摂政に就いた。しかし翌4月に摂政も急死,その際に遺言で自らの長男ミスズールーを次代の王に指名。これに他の異母兄弟が反発している中で2022年8月に即位,10月末に即位式となったようだ。聞けば聞くほど揉める要素しかない……  
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