2024年12月31日
2024年12月09日
登山記録36(焼岳,那須岳)
No.91 焼岳
〔標高〕2444m
〔標高差〕約850m(新中の湯から)/約300m(ロープウェー西穂高口駅から)
〔百名山認定〕百名山
〔ヤマノススメ〕ー
〔県のグレーディング〕2B(新中の湯から)/3C(西穂高口駅から)
〔私的な難易度と感想〕2B/3C
北アルプスの最南端。道を挟んで反対側が乗鞍岳になる。主な登山道は南側斜面の新中の湯から登る直登ルートが最も利用者が多い。次に東側の上高地から登るルート,これは途中にはしごが数本あって険しい。よりマイナーなのが西側斜面から登るルートと,北側の新穂高ロープウェー山頂駅から登るルートである。我々は新穂高ロープウェーに乗って西穂山荘の様子を見に行くという目的もあったので,北側から登って新中の湯に向かって下山した。
この北側からのルートはロープウェーで標高が稼げるから楽かというと,全くそうではない。新穂高ロープウェイ山頂駅から西穂山荘までの道は木材が敷いてあり整備が行き届いていた。しかし,西穂山荘から少し焼岳に向かうと途端に道が悪くなり,笹が繁茂しだして藪漕ぎになる。加えて道の谷側が切れ落ちていて,足下が笹で見えないのは非常に危ない。もっとも,転倒したところでその笹に助けられて滑落はしないのだが。稜線歩きとは言い難いが完全な樹林歩きでもない,なんとも言えない道を小刻みなアップダウンを繰り返しながら歩いていく。たまに樹林が切れて上高地や霞沢岳が見えるのが救いだが,総合的に言ってこの道はあまりお勧めしない。
焼岳山荘と中尾峠を過ぎてからは焼岳への本格登山が始まる。焼岳の真の姿は中尾峠をわずかに過ぎた小ピークから見る姿であって,中の湯温泉から登るとこの風景が見えないのはもったいない。道は少しザレているが,四つ足になるような急登ではない。むしろいたるところから火山ガスが噴出していて,常に温泉街のような硫黄臭がするので,人によっては気分が悪くなってしまうかもしれない。岩を触ると地熱で温かくて驚く。完全に生きている火山である。噴火のリスクがあるのでヘルメットは持っていった方がいいだろう。それにしても,この山を登るのは許されていて草津白根山の登山が禁止されているのは不思議でしかない。
帰りに使った新中の湯温泉ルートは道が平凡で,眺望も優れているわけではなく,魅力に乏しいように思われた。紅葉が綺麗とのことなので秋にはいいかもしれない。とはいえ新穂高ロープウェイから行くのも前述の理由からお勧めしづらく,はしごを苦にしないのなら上高地から登るのが正解だったりするのではないだろうか。また,中の湯温泉登山口から中の湯バス停はかなり離れていて,1時間以上の車道歩きを要求されるので注意が必要。タクシーを呼んだ方がいいが,繁忙期はタクシーも来ない。
焼岳を登るのではなく眺めるのであれば上高地に行くべきで,自らが噴火で作り出した大正池からは非常に綺麗に見える。
深田久弥は『日本百名山』で焼岳を北アルプス唯一の活火山としていたが,これは当時と今で活火山の定義が違うためだろう。現在の定義では弥陀ヶ原を数えるので唯一ではない(ついでに言うとアカンダナ山も活火山だが北アルプスに含めるかが微妙か)。彼の紀行文を読んでも火山ガスは噴出していて,100年近く変わらない姿のままのようだ。
No.92 那須岳(茶臼岳・朝日岳・三本槍岳)
〔標高〕1915m(茶臼岳),1896m(朝日岳),1917m(三本槍岳)
〔標高差〕約230m(ロープウェー山頂駅から茶臼岳まで)
〔百名山認定〕百名山
〔ヤマノススメ〕21巻
〔県のグレーディング〕3B(三本槍岳)
〔私的な難易度と感想〕1A(茶臼岳まで),2B+(朝日岳まで),3A+(三本槍岳まで)
山域が非常に広い那須岳は主峰が五座あり,そのうち三座を周った。それぞれ個性が全く異なって面白い。ロープウェーで上がってまず向かうのが茶臼岳。混雑していたが渋滞が発生するほどではなく,道も広かったため,そこで苦戦することはなかった。茶臼岳は溶岩ドーム型で丸っこく,道はややザレているが岩は小さめで奇岩が転がっているというわけでもない。総合的には歩きやすい。登山客ではない観光客ならここだけ登っても十分に満足感があるだろう。続いて朝日岳に行くと途端に風景が変わり,赤色や黄色の巨岩・奇岩がひしめく。眺望も良く,三座の中では最も面白かった。
そこから三本槍岳に向かって北上するとまたしても風貌ががらりと変わり,湿地帯を挟んで植物が生い茂り,紅葉が美しい山々となる。最初に見える1900m峰は実質的に名もなきピークであるが,なかなか立派な風格で,名前がついていないのはもったいない。1900mちょうどということで切りがよく,かえって誰も名付けていないのであろうか。最後に到達するのが三本槍岳である。名前に反して全く尖っていない,平らな山頂を持つ山で,那須岳の北端だけあって眺望が全く違う。郡山市,安達太良山,猪苗代湖が一望でき,なるほど栃木県と福島県の県境である。朝日岳と同じ稜線上にあるとは思えない。三本槍岳の命名の由来は江戸時代初期に周辺の三藩がここに集まって槍を立て,境界を定めたという故事に由来するとのことで,エピソードが格好いい。難易度は易しく,栃木県のグレーディングでは3Bになっているが,これは朝日岳を含んでいるからだと思われる。朝日岳を迂回するならA+程度の難易度しかない。逆に朝日岳はけっこう危ない。Bでも難しい方ではないか。
今回はその後に朝日岳の脇から下山したが,逆に朝日岳から奥に進むと三斗小屋温泉がある。名湯らしいので,次に行くときはこちらに泊まってみたい。また茶臼岳も裏側の方は噴煙が上がっているとのことなので,それも見に行きたい。
深田久弥は『日本百名山』で,那須岳は歴史や伝説について紙幅を費やしており,那須国造碑,那須与一,殺生石と一通り言及している。殺生石は2022年3月に割れてしまったことで話題になった。登山紀行としてはやはり茶臼・朝日・三本槍で風情が全く違うことに感動している。もちろん温泉街にも言及しているが,現在の那須高原は深田が嫌いそうな完全なオーバーツーリズムであり,行く人は気をつけた方がいい。
『ヤマノススメ』では倉上家の3人で登っており,両親は茶臼岳で帰って,ひなただけが朝日岳まで縦走していた。そのように体力に応じて登る山を分けられるという点でも那須岳は良い山である。
〔標高〕2444m
〔標高差〕約850m(新中の湯から)/約300m(ロープウェー西穂高口駅から)
〔百名山認定〕百名山
〔ヤマノススメ〕ー
〔県のグレーディング〕2B(新中の湯から)/3C(西穂高口駅から)
〔私的な難易度と感想〕2B/3C
北アルプスの最南端。道を挟んで反対側が乗鞍岳になる。主な登山道は南側斜面の新中の湯から登る直登ルートが最も利用者が多い。次に東側の上高地から登るルート,これは途中にはしごが数本あって険しい。よりマイナーなのが西側斜面から登るルートと,北側の新穂高ロープウェー山頂駅から登るルートである。我々は新穂高ロープウェーに乗って西穂山荘の様子を見に行くという目的もあったので,北側から登って新中の湯に向かって下山した。
この北側からのルートはロープウェーで標高が稼げるから楽かというと,全くそうではない。新穂高ロープウェイ山頂駅から西穂山荘までの道は木材が敷いてあり整備が行き届いていた。しかし,西穂山荘から少し焼岳に向かうと途端に道が悪くなり,笹が繁茂しだして藪漕ぎになる。加えて道の谷側が切れ落ちていて,足下が笹で見えないのは非常に危ない。もっとも,転倒したところでその笹に助けられて滑落はしないのだが。稜線歩きとは言い難いが完全な樹林歩きでもない,なんとも言えない道を小刻みなアップダウンを繰り返しながら歩いていく。たまに樹林が切れて上高地や霞沢岳が見えるのが救いだが,総合的に言ってこの道はあまりお勧めしない。
焼岳山荘と中尾峠を過ぎてからは焼岳への本格登山が始まる。焼岳の真の姿は中尾峠をわずかに過ぎた小ピークから見る姿であって,中の湯温泉から登るとこの風景が見えないのはもったいない。道は少しザレているが,四つ足になるような急登ではない。むしろいたるところから火山ガスが噴出していて,常に温泉街のような硫黄臭がするので,人によっては気分が悪くなってしまうかもしれない。岩を触ると地熱で温かくて驚く。完全に生きている火山である。噴火のリスクがあるのでヘルメットは持っていった方がいいだろう。それにしても,この山を登るのは許されていて草津白根山の登山が禁止されているのは不思議でしかない。
帰りに使った新中の湯温泉ルートは道が平凡で,眺望も優れているわけではなく,魅力に乏しいように思われた。紅葉が綺麗とのことなので秋にはいいかもしれない。とはいえ新穂高ロープウェイから行くのも前述の理由からお勧めしづらく,はしごを苦にしないのなら上高地から登るのが正解だったりするのではないだろうか。また,中の湯温泉登山口から中の湯バス停はかなり離れていて,1時間以上の車道歩きを要求されるので注意が必要。タクシーを呼んだ方がいいが,繁忙期はタクシーも来ない。
焼岳を登るのではなく眺めるのであれば上高地に行くべきで,自らが噴火で作り出した大正池からは非常に綺麗に見える。
深田久弥は『日本百名山』で焼岳を北アルプス唯一の活火山としていたが,これは当時と今で活火山の定義が違うためだろう。現在の定義では弥陀ヶ原を数えるので唯一ではない(ついでに言うとアカンダナ山も活火山だが北アルプスに含めるかが微妙か)。彼の紀行文を読んでも火山ガスは噴出していて,100年近く変わらない姿のままのようだ。
新穂高ロープウェイから焼岳(北峰)へ / 稲田義智さんの活動データ | YAMAP / ヤマップ
No.92 那須岳(茶臼岳・朝日岳・三本槍岳)
〔標高〕1915m(茶臼岳),1896m(朝日岳),1917m(三本槍岳)
〔標高差〕約230m(ロープウェー山頂駅から茶臼岳まで)
〔百名山認定〕百名山
〔ヤマノススメ〕21巻
〔県のグレーディング〕3B(三本槍岳)
〔私的な難易度と感想〕1A(茶臼岳まで),2B+(朝日岳まで),3A+(三本槍岳まで)
山域が非常に広い那須岳は主峰が五座あり,そのうち三座を周った。それぞれ個性が全く異なって面白い。ロープウェーで上がってまず向かうのが茶臼岳。混雑していたが渋滞が発生するほどではなく,道も広かったため,そこで苦戦することはなかった。茶臼岳は溶岩ドーム型で丸っこく,道はややザレているが岩は小さめで奇岩が転がっているというわけでもない。総合的には歩きやすい。登山客ではない観光客ならここだけ登っても十分に満足感があるだろう。続いて朝日岳に行くと途端に風景が変わり,赤色や黄色の巨岩・奇岩がひしめく。眺望も良く,三座の中では最も面白かった。
そこから三本槍岳に向かって北上するとまたしても風貌ががらりと変わり,湿地帯を挟んで植物が生い茂り,紅葉が美しい山々となる。最初に見える1900m峰は実質的に名もなきピークであるが,なかなか立派な風格で,名前がついていないのはもったいない。1900mちょうどということで切りがよく,かえって誰も名付けていないのであろうか。最後に到達するのが三本槍岳である。名前に反して全く尖っていない,平らな山頂を持つ山で,那須岳の北端だけあって眺望が全く違う。郡山市,安達太良山,猪苗代湖が一望でき,なるほど栃木県と福島県の県境である。朝日岳と同じ稜線上にあるとは思えない。三本槍岳の命名の由来は江戸時代初期に周辺の三藩がここに集まって槍を立て,境界を定めたという故事に由来するとのことで,エピソードが格好いい。難易度は易しく,栃木県のグレーディングでは3Bになっているが,これは朝日岳を含んでいるからだと思われる。朝日岳を迂回するならA+程度の難易度しかない。逆に朝日岳はけっこう危ない。Bでも難しい方ではないか。
今回はその後に朝日岳の脇から下山したが,逆に朝日岳から奥に進むと三斗小屋温泉がある。名湯らしいので,次に行くときはこちらに泊まってみたい。また茶臼岳も裏側の方は噴煙が上がっているとのことなので,それも見に行きたい。
深田久弥は『日本百名山』で,那須岳は歴史や伝説について紙幅を費やしており,那須国造碑,那須与一,殺生石と一通り言及している。殺生石は2022年3月に割れてしまったことで話題になった。登山紀行としてはやはり茶臼・朝日・三本槍で風情が全く違うことに感動している。もちろん温泉街にも言及しているが,現在の那須高原は深田が嫌いそうな完全なオーバーツーリズムであり,行く人は気をつけた方がいい。
『ヤマノススメ』では倉上家の3人で登っており,両親は茶臼岳で帰って,ひなただけが朝日岳まで縦走していた。そのように体力に応じて登る山を分けられるという点でも那須岳は良い山である。
茶臼岳(那須岳)・朝日岳・1900m峰・三本槍岳 / 稲田義智さんの活動データ | YAMAP / ヤマップ
2024年11月28日
2024年大相撲九州場所の感想
理想的な優勝争いの展開に充実した土俵内容で,非常に良い九州場所であった。同体取り直しやそれに近い際どい決着,両者のスタミナが切れるまで続いた取組等が多く,優勝争い意外にも見応えがあった。また,私はあまり番付の重みを重視しないが,それでも最高位の関取同士の相星決戦,それも13勝同士というのは喜ばしい。激闘の果てに初優勝と年間最多勝を勝ち取った琴櫻を祝福したい。
琴櫻は好角家によく知られている通り祖父が横綱,父が関脇という相撲一家のサラブレッドで,良くも悪くも坊っちゃん気質と言われる。今場所の優勝インタビューやサンデースポーツ,一夜明け会見等を見ていてもそれは伝わってきて面白かった。真面目でおおらかな性格なのだろう。「もっと土俵の鬼になれ」と言われて,ルーチンとして仕切りの最後に鬼の形相をするようになったというところにも生真面目さが現れているが,実際にあれで気合が入っているだろうことはその出世が物語っている。本人はいつから始めたのかと問われて「よく覚えていないが三役に上がった頃」と答えていたが,私が気づいたのは大関に昇進してからであった。
取り口はやはり受けに回ると強く,押されてもはたかれてもなかなか崩れず,押し返すか四つに組んで逆転してしまう。隆の勝・大栄翔・阿炎でも押しきれない。右四つ主体だが左四つでも取れるし,まずまず技巧もあるので万能である。足腰が強いのはもちろんのこと,取組の中で攻守の切り替えを支配する(後の先を取りに行く)のが上手いのだろう。近年の上位陣で足腰が強かったのはもちろん白鵬で,柔らかく受け止めるところは似ているかもしれない。千秋楽の豊昇龍との決戦も,豊昇龍に喉輪で攻められ上手投げで投げられと散々攻め込まれたが,豊昇龍の足が流れるまで耐え切って機敏にはたき込んだ。身体が大きく足腰が強い力士は鈍重になりがちだが,当てはまらない琴櫻の反応の良さは大きな武器だろう。
個別評。大関陣。2024年の豊昇龍は,投げを主体に戦えば呼び込むことがありケガも誘発し,寄りや押しを主体に戦うと馬力不足になり,相撲に迷いが生じてどっちつかずの相撲をとって調子自体も狂っていくことが頻繁に見られた。今場所の豊昇龍はやっとその帳尻があって,押し・寄りと投げのバランスが良くなったように見えた。千秋楽で足が滑ったのは不運とも言える。来年は期待が持てそう。大の里は,立ち合いの圧力が削がれた時の対処として,先場所は左からおっつけて何とか右四つに持っていくという新技を出せていたが,今場所はそれができずにまっすぐ引いて呼び込むという2場所前までの隙が多い取り口に戻ってしまっていた。結果として両大関と若隆景以外に,阿炎・隆の勝・大栄翔と見事に押し相撲の力士相手に負けている。再び取り口を修正してほしい。
関脇・小結は霧島だけ。霧島は先場所の評に「根拠はないが来場所も調子が持続しそう。再大関は近いのではないか。」と書いていたのだが,全くの的外れになってしまった。場所ごとの出来が違いすぎる。九月場所が無かったかのような五月・名古屋と同じ出来で,やはり名古屋の時に書いた「ボタンの掛け違いとでも言うような相撲のリズムの狂いが悪化し」のままである。途中で立ち直ったところを見るとケガが原因というわけでは無さそうで(場所中に痛めた左足首等の影響は一部あるにせよ),リズムの狂い方がよくわからない。少し前に豊昇龍も同じような調子の落とし方をしていたが,共通点はあるのだろうか。
前頭上位。小結以上の成績が良かったので大敗した力士が多い。その中で10勝した若隆景はやっと戻ってきたという感じ。阿炎の11勝も立派である。宇良は十一日目の平戸海との大熱戦,二回の取り直しで計三番取ったことを特記しておこう。六日目の王鵬戦の足取りも良かった。相変わらずの名勝負製造機である。星数は5勝にとどまっているので来場所は幕内中盤に下がるか。王鵬は三日目に琴櫻を破った相撲はすごかったが,それで力尽きた感もある6勝であった。勝ち越していれば殊勲賞間違いなしだったので惜しい。
前頭中盤。面白い相撲は多かったが,力士単位で見るとそれほど書くことがない。高安は,彼にしては安い家賃の地位だが,今場所はとうとう押し負ける場面も見られて8勝に終わった。加齢による衰えなら上位は厳しいかもしれない。
前頭下位。玉鷲は40歳以上での幕内勝ち越しが史上4人目とのことで,まだまだ記録が伸びそうである。獅司は完全に家賃が重かった。四つにさせてくれないし,四つになってもあまり勝てない。重量で鍛え直しである。尊富士は高い期待からすると10勝止まりという印象になってしまう。実際にまだ優勝した時のような立ち合いにはなっておらず,相手に研究されて止められているというよりは単純に本調子ではなく,こわごわ取っているようにも見えた。ケガが感知していないのなら来場所に改善するかもしれない。それはそれとして阿炎戦で変化を食って負けていたところを見ると,やはり研究されてもいて,変化には弱そうなところが露呈した感がある。この点にも注目かもしれない。
続きを読む
琴櫻は好角家によく知られている通り祖父が横綱,父が関脇という相撲一家のサラブレッドで,良くも悪くも坊っちゃん気質と言われる。今場所の優勝インタビューやサンデースポーツ,一夜明け会見等を見ていてもそれは伝わってきて面白かった。真面目でおおらかな性格なのだろう。「もっと土俵の鬼になれ」と言われて,ルーチンとして仕切りの最後に鬼の形相をするようになったというところにも生真面目さが現れているが,実際にあれで気合が入っているだろうことはその出世が物語っている。本人はいつから始めたのかと問われて「よく覚えていないが三役に上がった頃」と答えていたが,私が気づいたのは大関に昇進してからであった。
取り口はやはり受けに回ると強く,押されてもはたかれてもなかなか崩れず,押し返すか四つに組んで逆転してしまう。隆の勝・大栄翔・阿炎でも押しきれない。右四つ主体だが左四つでも取れるし,まずまず技巧もあるので万能である。足腰が強いのはもちろんのこと,取組の中で攻守の切り替えを支配する(後の先を取りに行く)のが上手いのだろう。近年の上位陣で足腰が強かったのはもちろん白鵬で,柔らかく受け止めるところは似ているかもしれない。千秋楽の豊昇龍との決戦も,豊昇龍に喉輪で攻められ上手投げで投げられと散々攻め込まれたが,豊昇龍の足が流れるまで耐え切って機敏にはたき込んだ。身体が大きく足腰が強い力士は鈍重になりがちだが,当てはまらない琴櫻の反応の良さは大きな武器だろう。
個別評。大関陣。2024年の豊昇龍は,投げを主体に戦えば呼び込むことがありケガも誘発し,寄りや押しを主体に戦うと馬力不足になり,相撲に迷いが生じてどっちつかずの相撲をとって調子自体も狂っていくことが頻繁に見られた。今場所の豊昇龍はやっとその帳尻があって,押し・寄りと投げのバランスが良くなったように見えた。千秋楽で足が滑ったのは不運とも言える。来年は期待が持てそう。大の里は,立ち合いの圧力が削がれた時の対処として,先場所は左からおっつけて何とか右四つに持っていくという新技を出せていたが,今場所はそれができずにまっすぐ引いて呼び込むという2場所前までの隙が多い取り口に戻ってしまっていた。結果として両大関と若隆景以外に,阿炎・隆の勝・大栄翔と見事に押し相撲の力士相手に負けている。再び取り口を修正してほしい。
関脇・小結は霧島だけ。霧島は先場所の評に「根拠はないが来場所も調子が持続しそう。再大関は近いのではないか。」と書いていたのだが,全くの的外れになってしまった。場所ごとの出来が違いすぎる。九月場所が無かったかのような五月・名古屋と同じ出来で,やはり名古屋の時に書いた「ボタンの掛け違いとでも言うような相撲のリズムの狂いが悪化し」のままである。途中で立ち直ったところを見るとケガが原因というわけでは無さそうで(場所中に痛めた左足首等の影響は一部あるにせよ),リズムの狂い方がよくわからない。少し前に豊昇龍も同じような調子の落とし方をしていたが,共通点はあるのだろうか。
前頭上位。小結以上の成績が良かったので大敗した力士が多い。その中で10勝した若隆景はやっと戻ってきたという感じ。阿炎の11勝も立派である。宇良は十一日目の平戸海との大熱戦,二回の取り直しで計三番取ったことを特記しておこう。六日目の王鵬戦の足取りも良かった。相変わらずの名勝負製造機である。星数は5勝にとどまっているので来場所は幕内中盤に下がるか。王鵬は三日目に琴櫻を破った相撲はすごかったが,それで力尽きた感もある6勝であった。勝ち越していれば殊勲賞間違いなしだったので惜しい。
前頭中盤。面白い相撲は多かったが,力士単位で見るとそれほど書くことがない。高安は,彼にしては安い家賃の地位だが,今場所はとうとう押し負ける場面も見られて8勝に終わった。加齢による衰えなら上位は厳しいかもしれない。
前頭下位。玉鷲は40歳以上での幕内勝ち越しが史上4人目とのことで,まだまだ記録が伸びそうである。獅司は完全に家賃が重かった。四つにさせてくれないし,四つになってもあまり勝てない。重量で鍛え直しである。尊富士は高い期待からすると10勝止まりという印象になってしまう。実際にまだ優勝した時のような立ち合いにはなっておらず,相手に研究されて止められているというよりは単純に本調子ではなく,こわごわ取っているようにも見えた。ケガが感知していないのなら来場所に改善するかもしれない。それはそれとして阿炎戦で変化を食って負けていたところを見ると,やはり研究されてもいて,変化には弱そうなところが露呈した感がある。この点にも注目かもしれない。
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2024年11月17日
ニコ動・YouTubeの動画紹介 2024.10月下旬〜2024.11月上旬
たいたぬさん。プレイングスキルはともかく,バスのゲーム,洋の東西を問わずピーキーすぎるw
これもたいたぬさん。そういえばまだそこに着陸してなかったな。無から登場したタラップに笑う。
セルフレジを使えない客が出てきて詰まるの,欧米でもあるんだなというのが面白かった。
治安悪すぎて笑う。この状況でピザ配達させるシュールさは嫌いじゃない。
このシリーズ,「普通に起こりそうなのに見つかってなかったんだ」と思うバグが出てくるのが面白い。
どうしたって小木曽雪菜が歌っているのを想起してしまう。
平坂さん。熟した部分はシュウ酸カルシウムが薄れるなら食べてみたい。
これも平坂さん。本当に真っ黒である。深海魚なので,食べた魚が発光しており,その光がお腹から透けて周囲に漏れるのを防ぐためらしい。面白い。
わかりみが深い話だった。これからも自信を持ってモンベルおじさんをやっていこう。個人的には,おまけで出てくる社会貢献も気に入ってモンベル使ってる。
SASUKE選手が近代五種に採用されたオブスタクルに挑む話の続編。男性の部でいきなり好成績を残した山本良幸さんもすごいが,女性の部で優勝した大嶋あやのさんもすごい。
2024年10月29日
代表的な「日本百低山」4種類を集計して,真・日本百低山を選抜する
世は空前の(?)低山登山ブームである。その火付け役はNHKの「にっぽん百低山」であろう。ただし,吉田類さん(以降敬称略)曰く「百は自分が百歳まで続けるの意味で,百座で終わりというわけではない」と言っており,実際に番組内でも登った山の数はさして気にしていないようであった(そもそも二回登っている山がいくつかあって,重複カウントを許すならとっくの昔に百座を超えている)。
ともあれ,このブームに乗って雑誌『山と溪谷』が11月号で「決定! 日本百低山」と銘打つ特集を組み,日本各地の登山家たちにアンケートをとって独自の百座を定めていた。この百座はNHKのものと全く異なっている。NHKのものは吉田類が決めており,「最初は小林泰彦さんの『日本百低山』を参考にしていたが,調べていくうちに,(地元の)人とのかかわりが深い場所を選定するようになった」と違いが生じたことを述べている。この小林泰彦の『日本百低山』こそ,そもそも「百低山」という概念を生み出した本で,1979年から『山と溪谷』で連載が始まり,2001年に単行本化された。その後2009年に文庫化している(連載時は単に「低山徘徊」のコラム名で387座に登り,百座を選抜して単行本化した)。しかし,本書について小林自身が「関東に偏っている欠点がある」「他の人にも百低山を選出してほしい」と述べていて,果たしてその通りになった。2017年,日本山岳ガイド協会が独自に『日本百低山』を幻冬舎から出版しており,これは小林の『日本百低山』と大きく異なる選抜であった。本書が出版されたことで小林版が神格化せず,良くも悪くも日本百低山が乱立した雰囲気がある。
というわけで,数多あると思しき百低山だが,ある程度権威がある人が選んだ知名度の高い日本百低山は4種類ある。以降は煩雑な表記を避けるためそれぞれ小林版,山岳ガイド版,NHK版,2024年版で通す。
小林泰彦『日本百低山』(2001):実は101座ある
日本山岳ガイド協会『日本百名山』(2017)
NHK「にっぽん百名山」(2022-24)
『山と溪谷』2024年11月号「決定! 日本百低山」(2024)
さて,名低山の条件とは何だろうか。この4種類の選出は定義した条件が似ているが,細部が少しずつ違うので説明しておこう。低山の定義で最も重要なものは,言うまでもなく標高である。小林版は深田久弥が1500m以上を百名山の基準としたため(例外が4座有),1500m以下から百座を選抜したと述べている。NHK版は小林版の定義に沿っている。山岳ガイド版はそれよりも少し緩く,標高がはみ出る山が含まれている。個人的にはこれはかなり問題があると思っている。さすがに1827mの社山(栃木)や1660mの日向山(山梨)を低山とは呼ぶまい。2024年版は逆に制限を強めていて,1200m前後を理想とし,1300mまでは許容範囲としていた。その上で,標高が低いことのメリットは大きく分けると次の3つである。
・アクセス性が良い(駅やバス停から近い傾向が強い)
・日帰りしやすい(時間や体力に問題がある人でも登りやすい)
・難易度が低い
しかし,実は3つ目は怪しい。妙義山を挙げるまでもなく,標高1500m以下で難易度が高い山はいくらでもある。このため,選出の際に難易度を考慮するかどうかは個性が出るところになる。難易度が高い低山は低山の良さを殺しているとも言えるし,逆に気軽に高難易度に挑めるというメリットがあると考えることもできる。4つの中では,吉田類が登れないと企画が成立しないという意味でNHK版が最も難易度を考慮しており,山岳ガイド版と2024年版は一切難易度を考慮していない。むしろ堂々と妙義山が載っている。
次にその他の項目として,日本百名山を模倣した企画である以上,「品格(風格)」「歴史」「個性」はどの選出でも概ね重視されている。品格(風格)は実質的に山容の良さとほぼ同義語であるが,低山の山容を評価するのは難しく,強調しすぎると単独峰ばかりを選ぶことになる。また,低山の「歴史」を考えると,高山に比べて圧倒的に人との距離が近く,必然的に里山的な存在として地元の信仰や生活に根ざしていたかどうかが考慮するポイントになる。この点を強調しているのは元祖の小林版と,吉田類が自分で述べている通りのNHK版である。一方,2024年版は登山家目線が強く,他の3つに比べると「歴史」をあまり重視しない選出がちらほらある。このため「品格」「個性」(と登って楽しいかどうか)を重視する形になり,結果的に標高の低い単独峰や離島からの選出が多い。三原山・天上山・八丈富士の3座を全て選出したのは2024年版だけである(その割に沖縄の離島は1座も選んでいない)。
最後に知名度について。日本百名山への対抗である以上は,あまり知られていない山の紹介に徹するべきと考えているのが山岳ガイド版である。逆に「名山」と銘打つ以上は知名度の高い山が含まれているべきで,二百名山や三百名山との重複を気にしてはいけないとしたのが小林版である。この点でも先発の2つは好対照である。知名度を気にしていないのはNHK版も同じ。2024年版は中庸といった様子で,知名度の高さを気にしないのであれば絶対に入っている有名な山がいくつか落とされている。これらをまとめるとこうなる。
小林版:厳格に1500m以下。元祖なだけあって手探りで選抜している雰囲気。知名度の高さ,登りやすさ,地元民の親しみを重視。
山岳ガイド版:標高は厳格に縛っていない。知名度の低い隠れた名山を選抜。難易度の高さも個性として許容,登って楽しい登山家目線の選抜。
NHK版:標高は小林版に準じているが,500m以下の完全な低山も多い。歴史や信仰,地元民の親しみを特に重視。登りやすさも重要。
2024年版:標高は1200m以下(1200m台は一部許容)。歴史と親しみはあまり考慮せず。個性・品格・景観が重要。難易度は個性。登山家目線は最も強い。
こうした条件設定の違いにより,4種類の百低山はそれぞれ半分程度ずつしか重なっていない。この違いが面白かったので,試しに集計してみた。思っていたよりも膨大な時間がとられたが,面白かったのでこれを公開する。例によってライブドアブログはExcelで作成した表を直接貼れないので,元データははてなブログの方に掲載しておく。この場はjpgになる点,ご容赦いただきたい。転載は転載元を記載してくれれば自由である。誤記や集計等があればコメント欄で指摘してほしい。まずは単純に合算したもの。2024年版は「惜しくも入れなかったもの」について言及があったので,それらは△で示した。その上で2種類以上から選出されたものは行全体を赤字にし,3種類以上から選出されたものは山名を黄色で塗りつぶした。ついでに日本百名山・二百名山・三百名山にも選出されているものはそれも記載した。
日本百低山・全集計(かなり巨大な画像なので注意!)
文字データ版
総数は300座で,ちょうど「日本三百低山」にできそうである。この三百低山の状態で簡単に分析をして感想を述べたい。地域単位で比べると圧倒的に関東が多く,70座を占める。これは前述の通り小林版が自己批判している通り関東から多く選出している影響が大きいが(40座),実は2024年版も多い(30座)。地域差に気を使っているのは山岳ガイド版で15座,NHK版は19座である。加えて小林版は西日本が非常に少なく,そんなところまで本家「日本百名山」をリスペクトしなくていいのにと思ってしまう。一方,山岳ガイド版は地方に散らせることを徹底しすぎていて,中国・四国が不自然に多いという反動もある。この点,地域のバランスが最も良いのはNHK版で,やや沖縄県が多すぎる傾向がある点以外は気にならない。吉田類かNHKスタッフの配慮だろうか。
地域別に見ると,北海道では各選出ともニセコから何かを選出したいが,何を選出するかは意見が一致していないのが面白い。素直にニセコアンヌプリにしないのはなぜなのか。その中で2024年版は唯一ニセコを入れなかった。登って楽しい山は他にもあるからそちらを優先したか。2024年版では「北海道は低山なのに火山が多いのが特徴」と語られていて,実際に14座のうち7座が火山である。確かに火山そのものは本州や九州にも多いが,標高が高くなりがちだったり登れなかったりするものが多いので,低山・登頂可の火山は貴重かもしれない。
東北は意見の割れ具合がすごい。「東北の百名山といえばこれ!」という定番が少ないようである。その中で4種類全てから選ばれた姫神山と泉ヶ岳は,それぞれ二百名山と三百名山でもあり,よほど名山なのだと思われる。いつか登りに行きたい。その他では縫道石山と大尽山はどちらも下北半島の山で,大尽山は恐山の外輪山,縫道石山は青森湾・津軽海峡に面した山である。白神山地からは,二百名山の白神岳を外して二ツ森と田代岳が選ばれた。このどちらも外して白神山地自体を入れなかった2024年版はやはり少し奇をてらっている気はする。NHK版は遠野の石上山や,男鹿・本山を選んでいるところが非常に吉田類らしいセンスで,地元の信仰の登山である。
関東は前述の通り小林版と2024年版の影響で数が非常に多い。一方で定番と思しき山も多く,各選出での重なりも多い。低山の重要性の一つにアクセス性があり,アクセス性が悪い低山は低山の良さを損ねていると考えると,関東・関西が多くなるのはやむを得ないとも言える。特に定番の山はアクセス性が極めて良い。丹沢大山も御岳山も高尾山も筑波山も,都心からすぐに中腹まで着いてしまう。私自身登った山がかなり多く,金時山も棒ノ嶺も鋸山も,いずれも名低山であった。疑問があるのは伊豆ヶ岳と高水三山である。特に伊豆ヶ岳が4分の3から選ばれているのは信じがたい。どのガイドを読んでも「山頂の展望が抜群」と書かれているが,今の伊豆ヶ岳は樹木が繁茂していて何も見えない(正丸峠や子ノ権現の方が眺望が良い)。2001年版や2017年版はまだしも2024年版はちゃんと登ったのか聞きたくなる。高水三山はまだ理解できるが,同じような眺望なら御岳山や棒ノ折でも良くて,重複して選出する意味を感じない。ついでに言うと2024年版が選出した日和田山は間違いなく良い低山だが,伊豆ヶ岳・棒ノ折と合わせて飯能から3つも出す意味を感じない。2024年版は秩父・奥多摩にリテイクの要望を出したい。同様の文句を言うなら,山岳ガイド版が選出している日の出山は非常に良い低山であるが,通常は御岳山からの縦走で行く山なのであえて御岳山ではなくこちらを選出する意味を感じない。奇をてらわず素直に御岳山を選出すべきだろう……と秩父・奥多摩は細かく意見を言い出したら切りが無さそうなのでこの辺で終いにする。
中部もかなり多く,かつばらけている。中部の山といえば日本アルプスであり,わざわざ低山を登りに行く人は少ないから,定番の低山が少ないとは言えそうである。中でも日本ガイド版は北陸での独特の選出が目立つ。やや驚いたのは岩殿山を選んでいるのが後発の2つだけ,昇仙峡を選んでいるのはNHK版だけという点で,これらは歴史も眺望も個性もアクセス性もあっていかにもな名低山だが,近年まではあまり注目を浴びていなかったということだろうか。愛知県については猿投山以外全て東三河であることに驚きつつも納得の選抜であり,特に神石山を入れている2024年版は慧眼。あれは葦毛湿原をセットでもっと推していくべきで,宣伝をサボっている豊橋市と湖西市が悪い。
関西は滋賀県と奈良県が多い。長く日本の中心地だったこともあって「歴史」で点を稼いでいる山が多く,関東と同様にアクセス性が良い山も多いため,定番の山が固まりやすいという傾向も強そうだ。その上で奇岩景勝の地を求めると,近すぎる大阪や京都よりも奈良や滋賀ということになるのだろう。御在所岳はその名山っぷりに反して4種完全制覇を逃しているが,山岳ガイド版の知名度の高い山を避ける傾向に泣かされた形。武奈ヶ岳も名高い山であるが,まだ吉田類が登っておらず,惜しい。賤ヶ岳はアクセス性と登りやすさ,「歴史」を考えると山岳ガイド版1種類のみが選んだというのはやや意外である。さすがに平坦すぎて山らしくなさすぎるのが嫌われたか。また,このリストを眺めていて自分が大文字山に登りそびれていることに気づいた。関西の他の山に登るついでにさっと登頂しておきたいところ。
中国・四国。自分が登ったことがある山が全然無いのだが,歴史が古くて説得力がある選出が並ぶところは関西に似ている。蒜山は小林版が上蒜山,2024年版が下蒜山という指定だったが,集計上は蒜山でまとめた。同様に琴平山も2017年版は大麻山,NHK版は象頭山という指定だったが,集計上は琴平山でまとめた。特に琴平山は普通縦走すると思われるので,分ける意味がないだろう。例によって,こういう歴史の古い山は2024年版だけが選出していない。三瓶山は二百名山である上に4種類をコンプリートしていて,これは岩手の姫神山と2座だけである。それはほぼ百名山格なのではないだろうか。弥山は百名山〜三百名山に全く入っていないが4種類全てから選出された唯一の山で,名低山の中の名低山と言っていい。
九州も東北同様に意見が割れている。定番の山が多くないということかもしれない。宝満山は2024年版が惜しくも選ばなかった山に挙げており,正式に選出されていれば広島の弥山と並んで三百名山指定の無い4種コンプリートの山になっていた。惜しい。英彦山は知名度の割に正式な選出は小林版のみという意外な結果。宝満山との差はどこにあるのだろうか。あとは離島が多いのはやはり特徴的で,対馬から3座選ばれているほか,平戸もあれば天草もあり,甑島列島に屋久島もある。西南諸島は吉田類のおかげで多く,最西端は西表島となった。
ここからさらに100座を選抜して,真・日本百低山を作ってみたい。まず,山岳ガイド版の1500m超からの選出は反則であるからこれは全て除外する。次にニセコの3座はニセコアンヌプリだけ残す等,あまりに近いものは統合する作業をした。そしてやはり多くの百低山に選ばれているのが第一で,1・2種類からしか選抜されていないものは削っていった。すると削れすぎてしまったので,
日本二百名山・三百名山と重なっているものを優先して残した。それでちょうど100座となったので完成とした。
真・日本百低山(こちらも巨大な画像につき注意!)
文字データ版
結果的に地域のバランスが良いものが誕生したと思われる。完全にデジタルな集計に基づくものであるから私の主観は入っていないが,主観を加えるとしても,前述の通りに伊豆ヶ岳を外して別のものを入れる(神石山か陣馬山)を入れるくらいでほぼ異論がない(登った山が少ないので意見を出しようがないというのはあるが)。異論・反論はこの記事のコメント欄に書かれても反応しようがなく困るので,何かある方は是非自分で真・日本百低山を作ってみてほしい。
さらに絞る場合,4種類全てから選ばれたのは姫神山・三瓶山・泉ヶ岳・丹沢大山・弥山の5座で,このうち姫神山と三瓶山は二百名山,泉ヶ岳と丹沢大山は三百名山,弥山のみ三百名山以内に入っていない。筑波山・開聞岳の2座は百名山ながら知名度が高い山をあえて外した山岳ガイド版から漏れた。御在所岳・蒜山も二百名山ながら同様の理由で3種類からの選出,武奈ヶ岳は二百名山ながらNHK版から漏れて3種類からの選出となった。ここまでで10座で,これが「日本十低山」と呼ぶべき山々だろう。読者の登る山の選択に貢献できれば幸いである。
ともあれ,このブームに乗って雑誌『山と溪谷』が11月号で「決定! 日本百低山」と銘打つ特集を組み,日本各地の登山家たちにアンケートをとって独自の百座を定めていた。この百座はNHKのものと全く異なっている。NHKのものは吉田類が決めており,「最初は小林泰彦さんの『日本百低山』を参考にしていたが,調べていくうちに,(地元の)人とのかかわりが深い場所を選定するようになった」と違いが生じたことを述べている。この小林泰彦の『日本百低山』こそ,そもそも「百低山」という概念を生み出した本で,1979年から『山と溪谷』で連載が始まり,2001年に単行本化された。その後2009年に文庫化している(連載時は単に「低山徘徊」のコラム名で387座に登り,百座を選抜して単行本化した)。しかし,本書について小林自身が「関東に偏っている欠点がある」「他の人にも百低山を選出してほしい」と述べていて,果たしてその通りになった。2017年,日本山岳ガイド協会が独自に『日本百低山』を幻冬舎から出版しており,これは小林の『日本百低山』と大きく異なる選抜であった。本書が出版されたことで小林版が神格化せず,良くも悪くも日本百低山が乱立した雰囲気がある。
というわけで,数多あると思しき百低山だが,ある程度権威がある人が選んだ知名度の高い日本百低山は4種類ある。以降は煩雑な表記を避けるためそれぞれ小林版,山岳ガイド版,NHK版,2024年版で通す。
小林泰彦『日本百低山』(2001):実は101座ある
日本山岳ガイド協会『日本百名山』(2017)
NHK「にっぽん百名山」(2022-24)
『山と溪谷』2024年11月号「決定! 日本百低山」(2024)
さて,名低山の条件とは何だろうか。この4種類の選出は定義した条件が似ているが,細部が少しずつ違うので説明しておこう。低山の定義で最も重要なものは,言うまでもなく標高である。小林版は深田久弥が1500m以上を百名山の基準としたため(例外が4座有),1500m以下から百座を選抜したと述べている。NHK版は小林版の定義に沿っている。山岳ガイド版はそれよりも少し緩く,標高がはみ出る山が含まれている。個人的にはこれはかなり問題があると思っている。さすがに1827mの社山(栃木)や1660mの日向山(山梨)を低山とは呼ぶまい。2024年版は逆に制限を強めていて,1200m前後を理想とし,1300mまでは許容範囲としていた。その上で,標高が低いことのメリットは大きく分けると次の3つである。
・アクセス性が良い(駅やバス停から近い傾向が強い)
・日帰りしやすい(時間や体力に問題がある人でも登りやすい)
・難易度が低い
しかし,実は3つ目は怪しい。妙義山を挙げるまでもなく,標高1500m以下で難易度が高い山はいくらでもある。このため,選出の際に難易度を考慮するかどうかは個性が出るところになる。難易度が高い低山は低山の良さを殺しているとも言えるし,逆に気軽に高難易度に挑めるというメリットがあると考えることもできる。4つの中では,吉田類が登れないと企画が成立しないという意味でNHK版が最も難易度を考慮しており,山岳ガイド版と2024年版は一切難易度を考慮していない。むしろ堂々と妙義山が載っている。
次にその他の項目として,日本百名山を模倣した企画である以上,「品格(風格)」「歴史」「個性」はどの選出でも概ね重視されている。品格(風格)は実質的に山容の良さとほぼ同義語であるが,低山の山容を評価するのは難しく,強調しすぎると単独峰ばかりを選ぶことになる。また,低山の「歴史」を考えると,高山に比べて圧倒的に人との距離が近く,必然的に里山的な存在として地元の信仰や生活に根ざしていたかどうかが考慮するポイントになる。この点を強調しているのは元祖の小林版と,吉田類が自分で述べている通りのNHK版である。一方,2024年版は登山家目線が強く,他の3つに比べると「歴史」をあまり重視しない選出がちらほらある。このため「品格」「個性」(と登って楽しいかどうか)を重視する形になり,結果的に標高の低い単独峰や離島からの選出が多い。三原山・天上山・八丈富士の3座を全て選出したのは2024年版だけである(その割に沖縄の離島は1座も選んでいない)。
最後に知名度について。日本百名山への対抗である以上は,あまり知られていない山の紹介に徹するべきと考えているのが山岳ガイド版である。逆に「名山」と銘打つ以上は知名度の高い山が含まれているべきで,二百名山や三百名山との重複を気にしてはいけないとしたのが小林版である。この点でも先発の2つは好対照である。知名度を気にしていないのはNHK版も同じ。2024年版は中庸といった様子で,知名度の高さを気にしないのであれば絶対に入っている有名な山がいくつか落とされている。これらをまとめるとこうなる。
小林版:厳格に1500m以下。元祖なだけあって手探りで選抜している雰囲気。知名度の高さ,登りやすさ,地元民の親しみを重視。
山岳ガイド版:標高は厳格に縛っていない。知名度の低い隠れた名山を選抜。難易度の高さも個性として許容,登って楽しい登山家目線の選抜。
NHK版:標高は小林版に準じているが,500m以下の完全な低山も多い。歴史や信仰,地元民の親しみを特に重視。登りやすさも重要。
2024年版:標高は1200m以下(1200m台は一部許容)。歴史と親しみはあまり考慮せず。個性・品格・景観が重要。難易度は個性。登山家目線は最も強い。
こうした条件設定の違いにより,4種類の百低山はそれぞれ半分程度ずつしか重なっていない。この違いが面白かったので,試しに集計してみた。思っていたよりも膨大な時間がとられたが,面白かったのでこれを公開する。例によってライブドアブログはExcelで作成した表を直接貼れないので,元データははてなブログの方に掲載しておく。この場はjpgになる点,ご容赦いただきたい。転載は転載元を記載してくれれば自由である。誤記や集計等があればコメント欄で指摘してほしい。まずは単純に合算したもの。2024年版は「惜しくも入れなかったもの」について言及があったので,それらは△で示した。その上で2種類以上から選出されたものは行全体を赤字にし,3種類以上から選出されたものは山名を黄色で塗りつぶした。ついでに日本百名山・二百名山・三百名山にも選出されているものはそれも記載した。
日本百低山・全集計(かなり巨大な画像なので注意!)
文字データ版
総数は300座で,ちょうど「日本三百低山」にできそうである。この三百低山の状態で簡単に分析をして感想を述べたい。地域単位で比べると圧倒的に関東が多く,70座を占める。これは前述の通り小林版が自己批判している通り関東から多く選出している影響が大きいが(40座),実は2024年版も多い(30座)。地域差に気を使っているのは山岳ガイド版で15座,NHK版は19座である。加えて小林版は西日本が非常に少なく,そんなところまで本家「日本百名山」をリスペクトしなくていいのにと思ってしまう。一方,山岳ガイド版は地方に散らせることを徹底しすぎていて,中国・四国が不自然に多いという反動もある。この点,地域のバランスが最も良いのはNHK版で,やや沖縄県が多すぎる傾向がある点以外は気にならない。吉田類かNHKスタッフの配慮だろうか。
地域別に見ると,北海道では各選出ともニセコから何かを選出したいが,何を選出するかは意見が一致していないのが面白い。素直にニセコアンヌプリにしないのはなぜなのか。その中で2024年版は唯一ニセコを入れなかった。登って楽しい山は他にもあるからそちらを優先したか。2024年版では「北海道は低山なのに火山が多いのが特徴」と語られていて,実際に14座のうち7座が火山である。確かに火山そのものは本州や九州にも多いが,標高が高くなりがちだったり登れなかったりするものが多いので,低山・登頂可の火山は貴重かもしれない。
東北は意見の割れ具合がすごい。「東北の百名山といえばこれ!」という定番が少ないようである。その中で4種類全てから選ばれた姫神山と泉ヶ岳は,それぞれ二百名山と三百名山でもあり,よほど名山なのだと思われる。いつか登りに行きたい。その他では縫道石山と大尽山はどちらも下北半島の山で,大尽山は恐山の外輪山,縫道石山は青森湾・津軽海峡に面した山である。白神山地からは,二百名山の白神岳を外して二ツ森と田代岳が選ばれた。このどちらも外して白神山地自体を入れなかった2024年版はやはり少し奇をてらっている気はする。NHK版は遠野の石上山や,男鹿・本山を選んでいるところが非常に吉田類らしいセンスで,地元の信仰の登山である。
関東は前述の通り小林版と2024年版の影響で数が非常に多い。一方で定番と思しき山も多く,各選出での重なりも多い。低山の重要性の一つにアクセス性があり,アクセス性が悪い低山は低山の良さを損ねていると考えると,関東・関西が多くなるのはやむを得ないとも言える。特に定番の山はアクセス性が極めて良い。丹沢大山も御岳山も高尾山も筑波山も,都心からすぐに中腹まで着いてしまう。私自身登った山がかなり多く,金時山も棒ノ嶺も鋸山も,いずれも名低山であった。疑問があるのは伊豆ヶ岳と高水三山である。特に伊豆ヶ岳が4分の3から選ばれているのは信じがたい。どのガイドを読んでも「山頂の展望が抜群」と書かれているが,今の伊豆ヶ岳は樹木が繁茂していて何も見えない(正丸峠や子ノ権現の方が眺望が良い)。2001年版や2017年版はまだしも2024年版はちゃんと登ったのか聞きたくなる。高水三山はまだ理解できるが,同じような眺望なら御岳山や棒ノ折でも良くて,重複して選出する意味を感じない。ついでに言うと2024年版が選出した日和田山は間違いなく良い低山だが,伊豆ヶ岳・棒ノ折と合わせて飯能から3つも出す意味を感じない。2024年版は秩父・奥多摩にリテイクの要望を出したい。同様の文句を言うなら,山岳ガイド版が選出している日の出山は非常に良い低山であるが,通常は御岳山からの縦走で行く山なのであえて御岳山ではなくこちらを選出する意味を感じない。奇をてらわず素直に御岳山を選出すべきだろう……と秩父・奥多摩は細かく意見を言い出したら切りが無さそうなのでこの辺で終いにする。
中部もかなり多く,かつばらけている。中部の山といえば日本アルプスであり,わざわざ低山を登りに行く人は少ないから,定番の低山が少ないとは言えそうである。中でも日本ガイド版は北陸での独特の選出が目立つ。やや驚いたのは岩殿山を選んでいるのが後発の2つだけ,昇仙峡を選んでいるのはNHK版だけという点で,これらは歴史も眺望も個性もアクセス性もあっていかにもな名低山だが,近年まではあまり注目を浴びていなかったということだろうか。愛知県については猿投山以外全て東三河であることに驚きつつも納得の選抜であり,特に神石山を入れている2024年版は慧眼。あれは葦毛湿原をセットでもっと推していくべきで,宣伝をサボっている豊橋市と湖西市が悪い。
関西は滋賀県と奈良県が多い。長く日本の中心地だったこともあって「歴史」で点を稼いでいる山が多く,関東と同様にアクセス性が良い山も多いため,定番の山が固まりやすいという傾向も強そうだ。その上で奇岩景勝の地を求めると,近すぎる大阪や京都よりも奈良や滋賀ということになるのだろう。御在所岳はその名山っぷりに反して4種完全制覇を逃しているが,山岳ガイド版の知名度の高い山を避ける傾向に泣かされた形。武奈ヶ岳も名高い山であるが,まだ吉田類が登っておらず,惜しい。賤ヶ岳はアクセス性と登りやすさ,「歴史」を考えると山岳ガイド版1種類のみが選んだというのはやや意外である。さすがに平坦すぎて山らしくなさすぎるのが嫌われたか。また,このリストを眺めていて自分が大文字山に登りそびれていることに気づいた。関西の他の山に登るついでにさっと登頂しておきたいところ。
中国・四国。自分が登ったことがある山が全然無いのだが,歴史が古くて説得力がある選出が並ぶところは関西に似ている。蒜山は小林版が上蒜山,2024年版が下蒜山という指定だったが,集計上は蒜山でまとめた。同様に琴平山も2017年版は大麻山,NHK版は象頭山という指定だったが,集計上は琴平山でまとめた。特に琴平山は普通縦走すると思われるので,分ける意味がないだろう。例によって,こういう歴史の古い山は2024年版だけが選出していない。三瓶山は二百名山である上に4種類をコンプリートしていて,これは岩手の姫神山と2座だけである。それはほぼ百名山格なのではないだろうか。弥山は百名山〜三百名山に全く入っていないが4種類全てから選出された唯一の山で,名低山の中の名低山と言っていい。
九州も東北同様に意見が割れている。定番の山が多くないということかもしれない。宝満山は2024年版が惜しくも選ばなかった山に挙げており,正式に選出されていれば広島の弥山と並んで三百名山指定の無い4種コンプリートの山になっていた。惜しい。英彦山は知名度の割に正式な選出は小林版のみという意外な結果。宝満山との差はどこにあるのだろうか。あとは離島が多いのはやはり特徴的で,対馬から3座選ばれているほか,平戸もあれば天草もあり,甑島列島に屋久島もある。西南諸島は吉田類のおかげで多く,最西端は西表島となった。
ここからさらに100座を選抜して,真・日本百低山を作ってみたい。まず,山岳ガイド版の1500m超からの選出は反則であるからこれは全て除外する。次にニセコの3座はニセコアンヌプリだけ残す等,あまりに近いものは統合する作業をした。そしてやはり多くの百低山に選ばれているのが第一で,1・2種類からしか選抜されていないものは削っていった。すると削れすぎてしまったので,
日本二百名山・三百名山と重なっているものを優先して残した。それでちょうど100座となったので完成とした。
真・日本百低山(こちらも巨大な画像につき注意!)
文字データ版
結果的に地域のバランスが良いものが誕生したと思われる。完全にデジタルな集計に基づくものであるから私の主観は入っていないが,主観を加えるとしても,前述の通りに伊豆ヶ岳を外して別のものを入れる(神石山か陣馬山)を入れるくらいでほぼ異論がない(登った山が少ないので意見を出しようがないというのはあるが)。異論・反論はこの記事のコメント欄に書かれても反応しようがなく困るので,何かある方は是非自分で真・日本百低山を作ってみてほしい。
さらに絞る場合,4種類全てから選ばれたのは姫神山・三瓶山・泉ヶ岳・丹沢大山・弥山の5座で,このうち姫神山と三瓶山は二百名山,泉ヶ岳と丹沢大山は三百名山,弥山のみ三百名山以内に入っていない。筑波山・開聞岳の2座は百名山ながら知名度が高い山をあえて外した山岳ガイド版から漏れた。御在所岳・蒜山も二百名山ながら同様の理由で3種類からの選出,武奈ヶ岳は二百名山ながらNHK版から漏れて3種類からの選出となった。ここまでで10座で,これが「日本十低山」と呼ぶべき山々だろう。読者の登る山の選択に貢献できれば幸いである。
2024年10月27日
ニコ動・YouTubeの動画紹介 2024.9月下旬〜2024.10月中旬
再生数が伸びていないが,面白かった。約8千歩で終わるのはバグなしFF6の低歩数に近い数で,不思議な一致。またけっこうレベルが上がってバッツは30まで到達する。エンカウントを粘ると通常プレーとそれほど遜色がないところまで上がるものだというのは意外だった。それもあって低レベルプレーとはならず,ほぼ買い物できないのも盗むやドロップアイテム厳選で必要なものはそろうため,ボス戦はほぼ苦戦しなかった。最大の敵はpart14のエクスデス城のルーレット床だったのは笑った。あんな低歩数の敵が潜んでいるとは。
どう見てもスーパーマーケットのシミュレーターのパクリゲーだが,後発なだけあってプレイアビリティが上がっているのがある種の見どころ。実況者が飽きたっぽく未完結。
おやつ氏。7種類もあるのは多すぎる。最初の方の比較的実用性がある方法の方が面白い。
元ネタがあまりわからずに見ていたが,わかるとさらに面白かった。調べてみると各国の航空会社で面白い機内ビデオを作っているので,興味がある人は探してみるとよいかも。
平坂さんが面白いことをしていた。2600mの深海まで釣り糸を伸ばして,かつ引き上げられるものなのだなぁ。
藤井七冠の将棋ではたまにあることとはいえ,対局者の永瀬九段も解説者たちも全く気づかないうちに逆転しているのは恐ろしい。今回のはとりわけ切れ味が尋常ではなかった。
2024年10月22日
都道府県ごとに「地歴はこれをやるべき」という指導に特色があったりするのだろうか
・「野蚕」死なせずに糸をとる方法考案 小学生が文部科学大臣賞(NHK)
→ 単なる小学生がすごい発明をしたニュースかと思いきや,ブコメに「通常のシルクは蛹を殺すのでヴィーガンNG。蚕を殺さない倫理的なシルクとしてプレミアを付けて売れるかもしれない。」とあり,なるほどと。実用化できればビジネスチャンスなのかもしれない。
・“世界一クールな独裁者”が取り戻した“平和” 中米エルサルバドル現地ルポ(NHK)
→ 中米の治安維持の困難さを考えるとギャングを鎮圧した成果は大きいが,それだけに報復の危険で辞めづらいし国民の人気も高すぎる,さりとて長期政権を敷くには本人が若すぎる。現状は良いが将来的には独裁政権になっていかざるを得なさそうなのが,本人にも国民にも不幸なポイントかもしれない。腐敗しない長期政権・独裁政権はほぼ存在しない。それはこの大統領自身も聡いのでわかっていそうではあり,この先の軟着陸を考えていそうな気はするが,一方でそれが失敗した時は数十年指導者をやり続ける覚悟もありそうに見えた。
→ なお,エルサルバドルの民主主義指数は2023年で4.71で混合政体という評価。2018年頃までは6.5前後を行き来する欠陥のある民主主義という評価であったので,大幅に独裁方向に触れたと評価されている。民主主義指数を維持したまま治安の強化はできなかったのか,それは誰にもわからない。
・ローマ字表記、ルール改定へ 実態そぐわず、約70年ぶり(共同通信)
→ 訓令式という言葉自体を久しく聞いた気が。ヘボン式の方が普及しているのはそうだが,これはこれで違和感がある表記になる語があったり,長母音・短母音の区別が無いといった問題点はあるので,ヘボン式を基盤に新しい表記法を作るということなら歓迎したい。
→ あくまで個人的な意見として。撥音便のb,p,mの前だけnではなくmを使うルールも,この際なので撤廃してはどうか。もはや皆理屈がわからないまま規則として丸暗記しているか,気にせずnを使っている気がするので。その他も含めて,完全一致にはしないにせよ,キーボードのローマ字入力に近い形をとるのが現代人には合う気がする。
・駿台ベネッセが出している2023年の共通テスト5教科平均全国ランキングがかなりエグいことになっていた(Togetter)
→ 純粋な都道府県間の学力差データではないから意味がないという意見があるが,逆に 越境進学や志望動向の違いによって純粋ではないランキングになっているからこそ,分析要素が多くて面白いものになっていると思う。Togetter内で触れられているように奈良県なんかは典型例で,強い私立が所在しているから優位に平均点が高くなっている。私にこの分析に必要な知識がないので全然何も言えないが,沖縄県がイメージより高い理由や,岩手県・宮崎県辺りが異常に低い理由(他の東北・九州の県や人口密度が低い県と比較しても低い)等も,ちゃんと分析できる人が分析したら面白いのではないか。
→ Togetter内にリンクのある元ソースにある地歴公民や理科の科目間の差も面白い。たとえば受験生全体では日本史・世界史の受験者数は9:5くらいの割合だが,北海道では3:1と日本史優位が強まる。これが日本史・地理だと全体の受験者数は1:1に近いが,地方ほど地理が優位で都会ほど日本史が優位である。日本史・地理の割合差は都会の方が私大専願層や記念受験者層が厚く,彼らは日本史を選択しがちという理由が想像できるが,世界史・日本史の偏りは他の都道府県も含めて考えたところで理由が全く見えない。こういうのは誰か調べてないだろうか(他力本願)。
→ 単なる小学生がすごい発明をしたニュースかと思いきや,ブコメに「通常のシルクは蛹を殺すのでヴィーガンNG。蚕を殺さない倫理的なシルクとしてプレミアを付けて売れるかもしれない。」とあり,なるほどと。実用化できればビジネスチャンスなのかもしれない。
・“世界一クールな独裁者”が取り戻した“平和” 中米エルサルバドル現地ルポ(NHK)
→ 中米の治安維持の困難さを考えるとギャングを鎮圧した成果は大きいが,それだけに報復の危険で辞めづらいし国民の人気も高すぎる,さりとて長期政権を敷くには本人が若すぎる。現状は良いが将来的には独裁政権になっていかざるを得なさそうなのが,本人にも国民にも不幸なポイントかもしれない。腐敗しない長期政権・独裁政権はほぼ存在しない。それはこの大統領自身も聡いのでわかっていそうではあり,この先の軟着陸を考えていそうな気はするが,一方でそれが失敗した時は数十年指導者をやり続ける覚悟もありそうに見えた。
→ なお,エルサルバドルの民主主義指数は2023年で4.71で混合政体という評価。2018年頃までは6.5前後を行き来する欠陥のある民主主義という評価であったので,大幅に独裁方向に触れたと評価されている。民主主義指数を維持したまま治安の強化はできなかったのか,それは誰にもわからない。
・ローマ字表記、ルール改定へ 実態そぐわず、約70年ぶり(共同通信)
→ 訓令式という言葉自体を久しく聞いた気が。ヘボン式の方が普及しているのはそうだが,これはこれで違和感がある表記になる語があったり,長母音・短母音の区別が無いといった問題点はあるので,ヘボン式を基盤に新しい表記法を作るということなら歓迎したい。
→ あくまで個人的な意見として。撥音便のb,p,mの前だけnではなくmを使うルールも,この際なので撤廃してはどうか。もはや皆理屈がわからないまま規則として丸暗記しているか,気にせずnを使っている気がするので。その他も含めて,完全一致にはしないにせよ,キーボードのローマ字入力に近い形をとるのが現代人には合う気がする。
・駿台ベネッセが出している2023年の共通テスト5教科平均全国ランキングがかなりエグいことになっていた(Togetter)
→ 純粋な都道府県間の学力差データではないから意味がないという意見があるが,逆に 越境進学や志望動向の違いによって純粋ではないランキングになっているからこそ,分析要素が多くて面白いものになっていると思う。Togetter内で触れられているように奈良県なんかは典型例で,強い私立が所在しているから優位に平均点が高くなっている。私にこの分析に必要な知識がないので全然何も言えないが,沖縄県がイメージより高い理由や,岩手県・宮崎県辺りが異常に低い理由(他の東北・九州の県や人口密度が低い県と比較しても低い)等も,ちゃんと分析できる人が分析したら面白いのではないか。
→ Togetter内にリンクのある元ソースにある地歴公民や理科の科目間の差も面白い。たとえば受験生全体では日本史・世界史の受験者数は9:5くらいの割合だが,北海道では3:1と日本史優位が強まる。これが日本史・地理だと全体の受験者数は1:1に近いが,地方ほど地理が優位で都会ほど日本史が優位である。日本史・地理の割合差は都会の方が私大専願層や記念受験者層が厚く,彼らは日本史を選択しがちという理由が想像できるが,世界史・日本史の偏りは他の都道府県も含めて考えたところで理由が全く見えない。こういうのは誰か調べてないだろうか(他力本願)。
2024年10月21日
こう言ってはなんだが謬説は受容史自体が面白い
・「源泉徴収はナチスの発明」というウソ(現代ビジネス)
→ 田野大輔先生がTwitterでちまちまと研究結果をつぶやいていたもの。まとまって一つの記事になったのは喜ばしい。源泉徴収を批判する文脈で日本がナチス=ドイツに倣って導入したことが,それを強調するうちにナチスが発明したことになり,さらに合理的な制度としてナチスを称揚するために使われるようになったと。源泉徴収の歴史が掘り起こされたのが35年ほど前というのは意外と歴史が浅い。そこから15〜20年ほどで上述の展開を遂げ,すっかりナチスの発明になってしまったのがここ15年ということのようだ。アウトバーン等の古典的な謬説に比べると謬説としての歴史の浅さが目立ち,源泉徴収の歴史自体がよく発掘されたものだ。
・イタリア最後の国王の息子、死去 ビットリオ・エマヌエレ氏(共同通信)
→ 今年の2月のこと。世が世ならヴィットーリオ=エマヌエーレ4世だった人。イタリアは国民投票の割りと僅差で王政を廃止したが,Wikipediaをさらっと読んでもわかるレベルであまりに風聞が悪く,まあ即位していても大変なことになっていた気はする。フアン=カルロス1世のようなことにはならなかっただろう。なお,ヴィットーリオ=エマヌエーレ(4世)は貴賤結婚をしているので王位継承権を失ったと見なすことができるため,王党派の一部は分家のサヴォイア=アオスタ家に継承権が移ったと主張し,イタリアの王党派は分裂している。完全に他人事として言えば,サヴォイア=アオスタ家はヴィットーリオ=エマヌエーレ2世まで遡らないと本家と合流しない(両家とも5世遡らないと合流しない)ので血がかなり離れており,これはこれで継承権が移ったと見なすのは難しいように見える。
・「寺院かモスクか」続く法廷闘争 ヒンズーとイスラム、聖地住民に亀裂も―インド(時事通信)
>議論を呼んでいるのはバラナシにある「ギャンバピ・モスク」。17世紀にインドを支配したイスラム王朝、ムガール帝国の皇帝が建設したとされる。1991年、モスクがヒンズー教寺院の跡地に建てられたとして、同教聖職者らが敷地内での礼拝などを求め、裁判所に訴えを起こした。
→ と読んでギャーンヴァーピー・モスクを調べてみると,建てたのはアウラングゼーブなのは確かなようだった。日本語版Wikipediaにはヒンドゥー教寺院を破壊して建てられたとあるが,当然Wikipediaなので信用できない。日本語ではろくな情報が見つからなかった。英語版Wikipediaは冷静で,ヒンドゥー教寺院が破壊されて建てられたというのはヒンドゥー教徒側の主張としてまとめられていた。こうしたヒンドゥー教徒の主張が胡散臭いにせよ(後述のアヨーディヤー事件に鑑みても),ここで出てくる名前がアウラングゼーブというのはやはり面白い。彼の事績がいろいろな意味でイギリスに付け込まれる原因となり,イギリスが分割統治を行って今のインドがあるわけで,不思議な”因縁”を感じる。ヒンドゥー過激派からすると罪を押し付けやすい便利な存在かもしれない。
→ ググると当然,アヨーディヤー事件を思い出した人がいた(というよりも時事通信の記事にアヨーディヤー事件が引かれていない方が不自然である)。あちらは建てたのがバーブルであり,当地がヒンドゥー教の聖地であったという主張は歴史家や考古学者により否定されているようだ。ヒンドゥー教徒側が無理筋を通した事件であるが,今回はどうなるか。
・「ポリネシアンセックス」という単語の起源(ハンガーの巣)
→ 全然知らなかったので面白かった。記事中にある通り「「スローセックス」などの単語で置き換え可能なので、「ポリネシアンセックス」という単語をわざわざ使う理由は無いと感じた。実在する地域の人々にまつわる単語に対してはやや慎重に扱うのが良い」,おっしゃる通りである。熱帯ポリネシアのエキゾチックさに乗っかった,一種のオリエンタリズムかもしれない。
→ 田野大輔先生がTwitterでちまちまと研究結果をつぶやいていたもの。まとまって一つの記事になったのは喜ばしい。源泉徴収を批判する文脈で日本がナチス=ドイツに倣って導入したことが,それを強調するうちにナチスが発明したことになり,さらに合理的な制度としてナチスを称揚するために使われるようになったと。源泉徴収の歴史が掘り起こされたのが35年ほど前というのは意外と歴史が浅い。そこから15〜20年ほどで上述の展開を遂げ,すっかりナチスの発明になってしまったのがここ15年ということのようだ。アウトバーン等の古典的な謬説に比べると謬説としての歴史の浅さが目立ち,源泉徴収の歴史自体がよく発掘されたものだ。
・イタリア最後の国王の息子、死去 ビットリオ・エマヌエレ氏(共同通信)
→ 今年の2月のこと。世が世ならヴィットーリオ=エマヌエーレ4世だった人。イタリアは国民投票の割りと僅差で王政を廃止したが,Wikipediaをさらっと読んでもわかるレベルであまりに風聞が悪く,まあ即位していても大変なことになっていた気はする。フアン=カルロス1世のようなことにはならなかっただろう。なお,ヴィットーリオ=エマヌエーレ(4世)は貴賤結婚をしているので王位継承権を失ったと見なすことができるため,王党派の一部は分家のサヴォイア=アオスタ家に継承権が移ったと主張し,イタリアの王党派は分裂している。完全に他人事として言えば,サヴォイア=アオスタ家はヴィットーリオ=エマヌエーレ2世まで遡らないと本家と合流しない(両家とも5世遡らないと合流しない)ので血がかなり離れており,これはこれで継承権が移ったと見なすのは難しいように見える。
・「寺院かモスクか」続く法廷闘争 ヒンズーとイスラム、聖地住民に亀裂も―インド(時事通信)
>議論を呼んでいるのはバラナシにある「ギャンバピ・モスク」。17世紀にインドを支配したイスラム王朝、ムガール帝国の皇帝が建設したとされる。1991年、モスクがヒンズー教寺院の跡地に建てられたとして、同教聖職者らが敷地内での礼拝などを求め、裁判所に訴えを起こした。
→ と読んでギャーンヴァーピー・モスクを調べてみると,建てたのはアウラングゼーブなのは確かなようだった。日本語版Wikipediaにはヒンドゥー教寺院を破壊して建てられたとあるが,当然Wikipediaなので信用できない。日本語ではろくな情報が見つからなかった。英語版Wikipediaは冷静で,ヒンドゥー教寺院が破壊されて建てられたというのはヒンドゥー教徒側の主張としてまとめられていた。こうしたヒンドゥー教徒の主張が胡散臭いにせよ(後述のアヨーディヤー事件に鑑みても),ここで出てくる名前がアウラングゼーブというのはやはり面白い。彼の事績がいろいろな意味でイギリスに付け込まれる原因となり,イギリスが分割統治を行って今のインドがあるわけで,不思議な”因縁”を感じる。ヒンドゥー過激派からすると罪を押し付けやすい便利な存在かもしれない。
→ ググると当然,アヨーディヤー事件を思い出した人がいた(というよりも時事通信の記事にアヨーディヤー事件が引かれていない方が不自然である)。あちらは建てたのがバーブルであり,当地がヒンドゥー教の聖地であったという主張は歴史家や考古学者により否定されているようだ。ヒンドゥー教徒側が無理筋を通した事件であるが,今回はどうなるか。
・「ポリネシアンセックス」という単語の起源(ハンガーの巣)
→ 全然知らなかったので面白かった。記事中にある通り「「スローセックス」などの単語で置き換え可能なので、「ポリネシアンセックス」という単語をわざわざ使う理由は無いと感じた。実在する地域の人々にまつわる単語に対してはやや慎重に扱うのが良い」,おっしゃる通りである。熱帯ポリネシアのエキゾチックさに乗っかった,一種のオリエンタリズムかもしれない。
2024年10月08日
歴史的に古い基準を現代に当てはめる遊びは面白い
・遙嶽図(Togetter)
→ 全体的に面白かった。個人的には石高で見る衆院選・参院選が良い。現代の百万石大名は東北地方の大名だ。日本の石高の中心,やはり20世紀後半のうちにかなり北に引っ張られているのだな。幕末の表高と実高の差を見ても東北地方は激しいし,日本の東北地方の開拓は19-20世紀になって進み,何なら開拓し終わらないうちに減反が始まったと言えそう。
・東京で育った子供はドラクエみたいな「町という点が道で繋がっている図」が理解できないことがある→関東平野はかなり異常(Togetter)
→ 私は全く東京育ちではないが,割りとわかる。東京でなくとも東海道新幹線沿いは割りとずっとコナーベーションが起きている自治体が多いように思われ(熱海・三島間のような山脈が挟まっているものを除くと),京阪神も当然そう。山梨県のような盆地も都市間に切れ目が無いし,富山県のような散居村のパターンもあるから,人口密度が低い県でも「町が点」ということにならない場所もある。いろいろ含めて大雑把に言えば,現代の日本人の半数くらいは「都市が点」という感覚が無いのではないか。
→ ヨーロッパの方がよくわかるのはその通りで,フランスやドイツで高速鉄道に乗っている時,車窓からの風景で,田園地帯と都市があまりにも綺麗に分かれていて,これがJRPGの風景かとけっこう感動した。日本でももちろん都市間に平原が広がっている場所もあるが,それ以上に山脈が挟まっていて,それなら当然都市間に切れ目があるなと思ってしまうパターンが多い気がする。
・ネット広告は「みんなに見てもらう」から「見たくないなら金払え」になってしまってなんだかなってなる話…『にぎやかな未来』の世界に来てしまった(Togetter)
→ 本当に。「Webページの維持費は広告により支えられているから広告が貼ってある,見たくないなら会員になって金払え」までは理解できるし,仕方がないと思う。しかし,広告の内容が不快で絶対買わないものや詐欺ばかりになり,「消すために金払え」とプラットフォームが要求してくるのは話が違う。最近はもうターゲット広告も機能しているとは思えず,全く興味もないものばかりが表示される。質の低い広告が氾濫することで,より課金圧が強まるから,プラットフォーム側がそれらを取り締まるモチベーションは低く,取り締まられる気配はない。新聞社のホームページですら詐欺広告が出る始末であるが,大体のサイトには通報先がないというのもふざけている。この点では通報できるGoogleの広告はまだマシかもしれない。「見たくないなら金払え」がここまで急進化するとは予想してなくて,プラットフォーム側の邪悪さを見誤っていたところは自分自身あるし,皆そうなのではないか。どうしてこんなインターネットになってしまったのか。
・「パンドラの箱」を開けてしまった「囲碁将棋チャンネル」判決(Yahoo)
→ 最近はちょっと観る将をしているので,気になっていた話題。『エセ著作権事件簿』でも取り上げられていた通り,棋譜自体に著作権は存在しないので囲碁・将棋チャンネル側の敗訴は大方の予想通り。で,今後はどうなるかという話がこのYahoo記事と,リンク先の動画である。たややん氏の解説動画は非常にわかりやすいの必聴。利用規約で縛る方向になっていく(著作権ではなく民法上の不法行為として争うようにできるようにする)のではないかという予測が立てられている。
→ さて,この判決が出てから9ヶ月ほど経った現在であるが,YouTube上で堂々と盤面を表示するようになったチャンネルが多少目立つようになっただけで,思われていたよりも変化が無い印象。主催者が利用規約を変えたという話も聞かないし,案外このままなあなあになっていくのかもしれない。この裁判が控訴されたという話も聞かないが,どうなったのか。知っている方がおられたら教えてください。
→ 全体的に面白かった。個人的には石高で見る衆院選・参院選が良い。現代の百万石大名は東北地方の大名だ。日本の石高の中心,やはり20世紀後半のうちにかなり北に引っ張られているのだな。幕末の表高と実高の差を見ても東北地方は激しいし,日本の東北地方の開拓は19-20世紀になって進み,何なら開拓し終わらないうちに減反が始まったと言えそう。
・東京で育った子供はドラクエみたいな「町という点が道で繋がっている図」が理解できないことがある→関東平野はかなり異常(Togetter)
→ 私は全く東京育ちではないが,割りとわかる。東京でなくとも東海道新幹線沿いは割りとずっとコナーベーションが起きている自治体が多いように思われ(熱海・三島間のような山脈が挟まっているものを除くと),京阪神も当然そう。山梨県のような盆地も都市間に切れ目が無いし,富山県のような散居村のパターンもあるから,人口密度が低い県でも「町が点」ということにならない場所もある。いろいろ含めて大雑把に言えば,現代の日本人の半数くらいは「都市が点」という感覚が無いのではないか。
→ ヨーロッパの方がよくわかるのはその通りで,フランスやドイツで高速鉄道に乗っている時,車窓からの風景で,田園地帯と都市があまりにも綺麗に分かれていて,これがJRPGの風景かとけっこう感動した。日本でももちろん都市間に平原が広がっている場所もあるが,それ以上に山脈が挟まっていて,それなら当然都市間に切れ目があるなと思ってしまうパターンが多い気がする。
・ネット広告は「みんなに見てもらう」から「見たくないなら金払え」になってしまってなんだかなってなる話…『にぎやかな未来』の世界に来てしまった(Togetter)
→ 本当に。「Webページの維持費は広告により支えられているから広告が貼ってある,見たくないなら会員になって金払え」までは理解できるし,仕方がないと思う。しかし,広告の内容が不快で絶対買わないものや詐欺ばかりになり,「消すために金払え」とプラットフォームが要求してくるのは話が違う。最近はもうターゲット広告も機能しているとは思えず,全く興味もないものばかりが表示される。質の低い広告が氾濫することで,より課金圧が強まるから,プラットフォーム側がそれらを取り締まるモチベーションは低く,取り締まられる気配はない。新聞社のホームページですら詐欺広告が出る始末であるが,大体のサイトには通報先がないというのもふざけている。この点では通報できるGoogleの広告はまだマシかもしれない。「見たくないなら金払え」がここまで急進化するとは予想してなくて,プラットフォーム側の邪悪さを見誤っていたところは自分自身あるし,皆そうなのではないか。どうしてこんなインターネットになってしまったのか。
・「パンドラの箱」を開けてしまった「囲碁将棋チャンネル」判決(Yahoo)
→ 最近はちょっと観る将をしているので,気になっていた話題。『エセ著作権事件簿』でも取り上げられていた通り,棋譜自体に著作権は存在しないので囲碁・将棋チャンネル側の敗訴は大方の予想通り。で,今後はどうなるかという話がこのYahoo記事と,リンク先の動画である。たややん氏の解説動画は非常にわかりやすいの必聴。利用規約で縛る方向になっていく(著作権ではなく民法上の不法行為として争うようにできるようにする)のではないかという予測が立てられている。
→ さて,この判決が出てから9ヶ月ほど経った現在であるが,YouTube上で堂々と盤面を表示するようになったチャンネルが多少目立つようになっただけで,思われていたよりも変化が無い印象。主催者が利用規約を変えたという話も聞かないし,案外このままなあなあになっていくのかもしれない。この裁判が控訴されたという話も聞かないが,どうなったのか。知っている方がおられたら教えてください。
2024年10月06日
ニコ動・YouTubeの動画紹介 2024.8月下旬〜2024.9月下旬
投稿するタイミングを見失って18年ほどが経過してしまい,ニコニコ動画の停止からの復活に契機を見出したのだろう……というマジレスを横においておくと本当になんで今更。アリマリというカップリング自体に懐かしさを感じてしまう。
名曲2つ。結局「風あざみ」が何なのかは井上陽水すらわからない。
たいたぬさん。政治的には過去一危ない……ような気がしたが,よく考えたらハワイで米海軍すれすれに飛んでいた方が危ないかもしれない。
始まってしまったSeason3。part2からいきなり講義。視聴者から「講義だこれ」と言われ続けた結果,本当に講義形式になってしまった。まだ講義が終わっていないが,カメラバグは確かに革命的にとんでもないものが見つかってしまったのは伝わる。
あまりにマニアックな藤子・F・不二雄作品が出てくることで話題になった,ドラえもんとカイロソフトのコラボ作品の実況。かく言う私も常識的なレベルまでしか藤子・F・不二雄作品を知らないわけだが,マジで見たことがない作品がぽんぽん出てきて笑ってしまった。圧倒的な物量の時点でもう面白い。
豊橋駅内のストリートピアノが過去一有効活用されたシーン。なお,実は通りがかると誰かしら弾いていて,あのピアノ自体はかなり人気だったりする。
YAMAPユーザーだけど,このヤマレコ社長の解説シリーズはめちゃくちゃ面白くて勉強になった。実際,登山届は別のところで全く同じ話を聞いてから出さないようになった。
本当にセットがかなりSASUKEに似ている。ただ,タイムアタックの要素が強いために動きが全然SASUKEと違うのが非常に面白い。これが五輪の種目なのは良い。