先人の意志を受け継ぎそれを発展させるのは、実は並大抵の才能と努力ではできない。そもそも託す相手を間違えては実現しない。そういった意味でカエサルはさすがだったと思う。一番の適任、アウグストゥスとアグリッパを見つけ出したのだから。この二人によって大胆かつ慎重に、ローマが帝政へと移っていく。前述の通り人は選ぶものの、個人的には戦争史に負けないおもしろさがここにあると思う。
余談だが、尊敬するかどうかを別とすれば、個人的にはカエサルよりもアウグストゥスよりもアグリッパのほうが好感が持てる。頭もよく体も強く戦争がうまい。そしてアウグストゥスの意図、ひいてはカエサルの意図を汲んで政治をしつつ、自分はけして表に出ない。黒幕に徹する。全ては育て親に対する感謝の念と、親友を助けたいという気持ちである。こんなに気持ちのいい人間は、世界史広しといえども、なかなかいないのではないだろうか。惜しむらくは、若くして死んだことか。
