
それに比べて、常設展はかなり見劣りがする。なんか現代の芸術家らしいのが多かったが、はっきり言って知らん。豊橋市美術館とそこら辺は大差なかった。トヨタも建物までは金が出せたが、飾る作品までには根回しできなかったということか。
もともと常設展には期待してなくて、見に行ったのは建物と特別展の「黒田清輝展」。黒田の作品といえば、個人蔵のものもそれなりにあるが、大部分は東京の文化財研究所が所蔵している。文化財研究所は1年に1回だけ、それも夏休みに、黒田の作品のほとんどを「避暑」に出す。文化財研究所に直接出向かずに黒田の作品を見る唯一の方法は、このタイミングを狙うことだ。
この「避暑」は1年に1回な上に、当然1年に1ヵ所で、1県に1回なのですべての県を巡回しきるのには47年かかるという、意外にも遠大な計画だったりする。1977年から始まったらしいので、愛知県は30番目。けっこう遅いほうだ。次に愛知県に来るのは47年後ということを考えると、二度と黒田の作品を愛知県で見る事は無いと言ってもいい。
黒田の作品の代表的なものはすべて先学期の授業でスライドで見ており講義も受けているので、今回の展示はすいすいと頭に入ってきた。やはり黒田の絵から一番感じるのは、いかに西洋の文化を明治の時代人としての責務だと思う。夏目漱石の小説あたりと同じにおいがする。
代表作はやはり「湖畔」だ。このさわやかな風景と、物憂げな女性は、見事に西洋的な風味と日本的な雰囲気がマッチしていると思う。これを生で見れただけでも、遠路はるばる豊田市ま来たかいがあったなと思えた。