すでにやった方はおられるし(
「麻雀アニメ&麻雀ゲームあれこれ」さん),シミュレーターまであったようだが,何事も自分でやってみないと,ということで実験検証。
やり方は上記のブログとほぼ同じだが,鳴いても続行することにしたため,その点だけ異なる。槓ドラもできる限りやってみた。
1.赤ドラ4枚を抜いた状態で,まず1つだけ山を作ってサイコロを振り,ドラを確定させる。これが常に親の山になる。
2.ドラになった牌を引っこ抜き,ドラ8枚+通常牌23枚=31枚で「松実玄山」を作る。
3.残りの3つの山は普段通り積む。
4.裏ドラについては考慮しない。槓ドラは,槓をした段階で”すでに河に流れた牌”及び”すでに他人の手の中にいる牌”については考慮しない。通常の山3つに残っている場合は,松実玄山のドラではない牌と交換。
5.誰かor自分が鳴いても,松実玄役のツモ牌はずれないものとして進行する。
4の槓ドラの作業はけっこうめんどくさかった……が,槓ドラが松実玄役に与える影響は大きい(後述)。
ルールは『咲 -Saki-』のものに則る。赤牌4枚,東南戦,アリアリ。牌譜なんてものはとっていないので,結果だけ。
松実玄役: +44
下家: −31(ハコ)
対面: +6
上家: −19
結論:とてつもなく強い。
一般人(というか無能力者)相手なら,相当下手でない限り毎回圧勝できると思う。+44でとどまったのは,最初の2局くらい慣れてなくて一般人の思考回路で打ったため。「そのうちドラは勝手に手の中に入ってくる」という未来予知打法を身につけないと松実玄の能力は使いこなせない。この無駄になった2局のうち1局はあがれていたと思う。
松実玄役が上がったのは2回で両方子の倍満(16000)。というよりも,倍満以下にはならないと思う。ほとんどの場合,配牌時点でドラ4はあって,ツモっていくうちに最低ドラ6くらいまでは増える。ドラは字牌が2回,老頭牌が1回,中張牌が5回。流局1回(東場親流れ),親の連荘1回。
松実玄役の放銃なし。後述するが,狙い撃ちとか無理だから。役の形はある程度推測がつくものの,当たり牌を読むのはできない。守備面もはっきり言ってほとんど問題ない。作中で松実玄が大炎上してたのは,おそらく別の理由である(これも後述)。
利点1.未来予知打法ができる
できる,というかこれをやらないと上がれない。欠点1にも通じるが,あらかじめ特定の牌(特に赤牌)は手に入ってくることを前提に計画を組まないと,配牌だけ見た最短ルートを突き進んでいくと破綻する。逆に言って,5p2枚と5s5m1枚ずつはほぼ必ずツモってくるのだから,「三色確定」とか「嵌張待ちでツモ頼り」とか,通常ではあまりない手が組めるし,折り込んでさえいれば手作りはそれなりに早い。ドラが字牌でしかも三元牌だったときなんてウハウハで,上がった倍満のうち1回は「白のみドラ7」というひどい手であった。もっとも,予定していた5pが来ないので予測外れ等の状況に陥ることもあるが……(欠点2を参照)
利点2.打点がとても高い
なによりの利点は言うまでもなくこれ。倍満2回で平均16000の打点……と言い切ってしまうには無論のことながらデータ不足だが,他家の上がりにせよ流局にせよ,テンパイにせよノーテンにせよ,局が終わった段階では最低ドラ5はあったし,当たり前の話だが流局したときはドラ8の状態であった。これに最低でも役が1つは付くわけで,どうやっても平均打点は倍満くらいになるだろうと思う。
利点3.相手の打点が著しく下がる
前述の先駆者も指摘していたが,案外見過ごされているこれ。さぞかし宮永照もしんどかったに違いない。今回の実験でも他家の上がりは親のメンタンピン5800が最高で,あとは3900が2回と2600,1000しかない。そもそも私の打ち方がメンタンピン狙いの打点低め和了率重視ではあるので,私が普段通り打った他家3人分は打点が低くなる,というのは考慮すべきだろう。しかし,それでも私とて普段は1000や2000じゃ上がらないので,相当しんどい上がり方であったというのは想定してほしいところだ。というか,早上がりしないと松実玄役がでかいのを作ってしまうので,どうしてもこうなる。そういう意味では,おそらく松実玄は新子憧との相性は悪い。
欠点1.作れる役が極めて限定される
おそらく最大の欠点がこれ。赤牌3種が来るので清一色・混一色は無理,当然チャンタ・純チャン・一気通貫も無理。なお,ほとんどの役満も無理で,いけそうなのは数え役満と四暗刻くらいである。
ドラが4枚そろうことを考えるに七対子も事実上不可能だ。同様の理屈で平和も苦しい。”23444456s”というように使ってドラを無理やり雀頭にすればいけなくはないが,そんな状況自体作るのが困難である。タンヤオなら行けるだろうと思いきや,ドラが么九牌になった瞬間死ぬし,確率的に考えれば8回中3回はそうした回があることを想定しておくべきだ。
そして何よりリーチがなかなかかけられない。すでにドラが8枚手の中にある,もしくはまだ来てないドラが当たり牌という状況でない限り,リーチをかけたら能力の縛りに違反するからだ。これがかなりきつい。
結果的に,ツモのみ・タンヤオのみ・特急券あたりが主戦力になり,ちょっとがんばって三色・イーペーコー・対々和あたりが狙えそうな役になる。実際のところ,打点が高くなると言っても三倍満までが限界で,数え役満を作るのは相当きついと思う。原作の松実玄はしばしばツモ・ドラ7などで上がっているが,あれは仕方がない。上がれる役が非常に少ないので,手作りのパターンはどうしても少なくなる。松実玄ご本人のように長く打ってなれてるならまだしも,一般人がいきなりこの能力で打ったら窮屈で仕方ない(と思う)。
欠点2.テンパイを作りづらい
配牌を開いてみると「どう考えてもこれは5mが一枚も必要がない……」という手だったときの絶望感。そしてツモでも延々と萬子の中張牌が来ないときの焦燥感。しかもこれがよくあるから困る。利点1の完全な裏返しで,そこにも書いた通り「未来予知打法」以外の打ち方ができず,しかも
上がれる世界線がなかったりするので,とても徒労感を感じる麻雀になると思う。これが普通の麻雀なら浮いた牌を捨てて終わりなんだが。もっとも,テンパイまでいけば利点1を利用して高確率で上がれる。
また,松実玄の能力の場合,
槓せざるをえない上に槓すると自分が苦しいという状況が多発するはずである。というのも,ドラ4枚のうち4枚目がツモの後ろの方に隠れていてツモらずに済むというパターンは,やってみるとわかるがさして多くない。しかも上記のようにドラ4枚を分解して複数の面子に使うことは難しく,結局のところ暗槓として使うしか無い。しかし,槓をすれば当然表ドラが増えるわけで,そこで欲しい牌の付近が開けばよいが,大概の場合は配牌から鑑みてさして欲しくもないところが開く。しかもこれで赤牌4+ドラ8で最悪の場合手のうち12/13が埋まり,身動きがとれないどころか赤牌4枚が完全に浮いてしまい,絶望的な状況になる。槓をするならせめて終盤に。
これは作中の描写としておかしな点で,阿知賀編3巻までで本人自身が槓した状況が一度もないはずである。
欠点3.守備面は弱い?
言われているほど弱くない。ここが原作の松実玄が必要以上に炎上している点で,無理なら無理でさっさとベタオリすればいい話である。仮に手の中のドラがすでに8枚あっても,残り5枚でなんとか降りられるだろう。実際やってみればわかるが,ノーテン罰符覚悟でがんばればそう無理でもない。少なくとも狙い撃ちされるということはなく,そんなことができるのは宮永照とか園城寺怜くらいなので,そういう魔物に遭遇したらあきらめましょう。
松実玄に足りないのはさっさとベタオリする勇気と魔物に遭遇しない運気である。
他キャラとの相性考察
未来予知打法で行けばステルスモモはあまり影響を受けずに上がれるだろう。まこもさすがに「ドラが全く来ない麻雀」なんて記憶に無いだろうし,撹乱できそう。井上純の流れ操作にも無関係にドラだけは集まってくるだろうし,原村和のイマジンブレイカーも初美の裏鬼門を無効化にできなかったのと同様に消せないだろうし,このあたりとはうまく戦えそう。
逆に言って,早上がりされるとどうしようもないので池田華菜,新子憧あたりには相性が悪い。天江衣の場合,海底を槓でずらして邪魔できそうだが,打点高めの食い仕掛けモードで対処されると逆に玄の側が沈むから対応される。キャップや部長,かじゅあたりにも能力に気づかれると対処されそうで。何より早上がりのまま打点だけが上昇していく宮永照とは相性が悪い。松実玄の能力はとても内向きなので,対処のしようがない。また,
未来予知打法という点で上を行く園城寺怜との相性が一番悪い。なぜぶつかってしまった……というところだが,まあ『咲 -Saki-』にはよくあることである。
相性という観点で一番見たいのは宮永咲との槓対決で,咲が先に槓をすれば嶺上開花で上がらないとしても,ドラを増やして玄の手を窮屈にできる。逆に玄が先に槓した場合には嶺上牌を横取りしてしまう戦略がとれる。でも原作でそんな場面が訪れることはまずないだろなぁ。インターハイの個人戦でもぶつからないし。