2013年05月31日

非ニコマス定期消化 2012.11月下旬〜12月中旬



いわゆる「忙しい人向けシリーズ」。すばらしい不自然の無さ。



がんばりすぎ超大作。



すば日々MAD。にじみ出る狂気が非常にそれっぽくてよい。



必殺,歌わない。



深刻な素材過多によるゴリ押し。メジャーすぎずマイナーすぎない,かゆいところに手が届く音MADが集結しているような気が。エルシャロイドあたりでお腹いっぱいになるが,残念ながらそこでまだ6分(=半分)である。




早速始まる,友人マリオ3に対するTAS。しかし,今回の友人マリオは(どうやら作者は意図していなかったようだが)TAS対策がなされており,なかなか難航した。これが友人マリオ3TASの最初期のものだが,まだまだ普通。



苦戦が予想されたスカイツリーだが,逆にこうしたステージのほうが壊しやすいらしい。



ヨッシー生存ルート。この後,さらに最適化が進んだ後もヨッシーの生死はどちらが早いか議論がなされた。だが,全体の完成はまだまだ遠かった。



ヨッシーを生存させればこんなことができる。青甲羅があれば,羽根と同じで強制スクロール以外は対処可能。



けいえむ氏の作品。この,走ればいいのか(ラジオ体操を)踊ればいいのかわからない絶妙さ。もやもやして,いいから走らせろ!と言いたくなる。



  

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2013年05月29日

『文明崩壊(ジャレド・ダイアモンド)』で気になったところ

書評自体はこちら。私の指摘が合っているという自信もあまりないので,正誤表というよりは「ひとまず私が気になったところ」を列挙しておいた。読者からのさらなる指摘を待ちたい。論がひっくり返りかねないものから定訳でないものの指摘まで,とりあえず並べておいた。ページ数は文庫版に準拠,第三刷で見ている。引用文中の強調は全てブログ主による。


上巻
p.39 「ギリシアのミュケナイ文明や青銅時代地中海沿岸社会の滅亡と”海の人”の侵入」
→ 定訳は”海の民”である。というよりも海の人という表記は初めて見た。この表記で,途端に本書の訳に対する信用が下がったのだが,上巻ではこの種の翻訳ミスが意外と少なかった。


p.358 「ヴァイキング自身の言語(古ノルド語)でも,呼び名の語源となった”ヴィーキンガー”という単語は”襲撃者”を意味する」
→ 自分の言語学は全くの専門外だが,ヴァイキングの語源は古ノルド語の「入り江」を意味するヴィーク(Vik)を語源とするのが一般的な学説のはず。

p.370 「一〇六六年は,ヴァイキングによる襲撃が終焉を迎えた年としても知られる」
→ 要するにノルマン朝イングランド成立をもってヴァイキング襲撃の終焉としているわけだが,両シチリア王国の建国(1130年)は……それは遠すぎるとしても,ロベール・ギスカールとその弟ルッジェーロによるシチリア征服が11世紀末なので,そこまではヴァイキングの征服活動に含めるのが一般的ではないか。
→ もっとも,本書はその数ページ前でヴァイキングのイタリア進出に極めて短いながら触れているので,この段落を書く際にすっぽ抜けただけではないかと思う。

p.401 「写真15 紀元1300年ごろ,ノルウェー人がグリーンランド東入植地のフヴァルセーに建築した石造りの教会」
→ どう考えても紀元後である。文庫版にこんなひどい誤植が残ってるとは思わなかった。

p.540 「シーグリズ・ビョルンドッター」
→ これも自分はアイスランド語に詳しくないという前提で。中世アイスランド人の名前だが,この表記はひどい。中世と現代に発音の差はあるだろうということを鑑みても,せめて現代の発音に近いものにしておくべきで。dottirと綴るんだから”ドッター”はなかろう。この場合は「ビョルンドッティル」や「ビョルンドゥフティル」あたりが適切ではないか。
→ あと,この女性人名のみならず本書全体で勘違いされているっぽいのだが,ビョルンドッティルは姓ではなく父称である。姓のように扱って書いてはいけない。



下巻
p.48〜70
→ 日本を扱った章だが,全体的にかなり苦しい。江戸幕府の日本が17世紀後半以降飢饉が多発するようになった理由を森林伐採による環境破壊に求めていながら,一方で崩壊せずに250年続いた理由を森林管理・人口調整をするようになったからとしている。これだけ読むと筋は通っているのだが,一通り日本史をやった人なら違和感を覚えるはずだ。
→ 一つずつやっていく。18世紀以降,森林管理をするようになってから飢饉の多発が止まったかというと,全くと言ってそうではない。むしろ18世紀後半になるほど多くなっていき,最大の被害が出たのは天明の大飢饉(1782〜84)。原因は気候の寒冷化と火山の噴火。まさに本書のテーマの一つ,非人為による環境変動に当てはまるはずだが,本書はこの点を全く指摘していない。意図的に無視しているのにせよ勘違いにせよ,これは大問題だ。幕府による森林管理自体はあった施策だと思うが,本書の指摘するような治水的意味合いは強くなかっただろう。
→ もう一つ,人口調整は確かにそうした面もなくはないもので,本書の「江戸時代の出生率の上昇と下降が,米価の上昇と下降に連動している」という指摘はまあそうだろうと思う。が,どちらかというと江戸時代の人口成長が2700万人付近で停滞した原因は経済統制と鎖国による社会矛盾の増大が原因であるはずだ。結果として農村人口が大量に都市に流入するも,劣悪な環境下で都市は平均寿命が極端に下がり,結果として人口が一定以上に増えなかったといういびつな構造である。鎖国と米本位の経済体制をやめれば状況は大きく変わっていただろう。

p.50 「平和と繁栄は,日本の人口と経済を一気に押し上げた。戦国時代の終わりから一世紀のうちに,以下に挙げるさまざまな要因がうまく重なり合って,人口が倍増した。平和な世が続いたこと,(中略)二種類の生産性の高い作物(ジャガイモとサツマイモ)の新たな伝来によって農業の生産力が向上したこと,(後略)」
→ サツマイモの伝来は確かに1600年頃ながら,普及は18世紀の享保の改革以降なので外れる。ジャガイモも同じで,伝来は1600年頃だが普及は18世紀に入ってから。サツマイモのほうは青木昆陽の有名なエピソードじゃないか?
→ ちなみに同様の勘違いはしばしば起こる。日本同様,中国も清朝の康煕帝から乾隆帝までの約150年間(1661〜1796)で急激に人口が増加し,その原因として新大陸産の救荒作物が挙げられる。これ自体は事実だが,そのジャガイモ,サツマイモが伝播したのは清代ではなく明末にあたる。そもそも,ヨーロッパでも16世紀に伝播してすぐには普及していない。結局伝播から普及までは時間がかかる,という話で。

p.59 「(森林を破壊する)農業への圧力を緩和するため,(食糧生産が多角化され)魚介類やアイヌとの貿易で得た食料への依存を増やしたことだ。」
→ これも勘違いではないかと思う。食料生産の多角化は幕府が望んだものではなく,単純に経済成長による産業発展の結果であるはずだ。そもそも幕府としては実質的な貨幣を果たす米の増産が第一であったはずで,一部有力な藩が藩政改革の一環で商品作物の専売はしていたものの,主導は商人や富農であった。これにより農村に貨幣経済が浸透して自作農の没落・貧富の差の拡大が発生し,江戸の農村社会が不安定になっていく。そりゃ耕す田畑の無い貧農の次男坊三男坊は都会へ出ますわな。で,その多くは若いうちに死んで,江戸時代の人口”安定”に寄与するわけだ。
→ さらに草木灰から金肥(魚粉)への肥料転換が指摘されており,これ自体は事実だ。しかし,これも森林破壊防止というよりは単純にそのほうがよく育ったからではなかったかと思う。金肥は高価だったので,綿花など高価で採算の取れるものにしか使われなかったはずだが,うろ覚えなので誰かに補足を頼みたい。なお,草木灰利用の普及は江戸初期ではなく鎌倉時代だったはずなので,いずれにせよ草木灰を江戸時代の森林破壊の要因と見なすのは苦しいのではないか。

p.60 「十七世紀末には,木の代替燃料として,石炭の利用が始まった」
→ 確かに石炭利用の開始はそのあたりだが,急激に普及したかというとそうでも……臭いで嫌われて地元の北九州以外では流通しなかったはずである。薪炭不足が原因なので,指摘自体は正しいものの,森林管理の一環といえるほど大規模ではなかったかと思う。

p.66 「(日本の)南西部は亜熱帯気候,北部は温帯気候に属するが」
→ これはひどい。すぐ確認できるんだから誰か指摘してやれよ。北海道のみ冷帯,本州他大部分は温帯,そして南西諸島・小笠原諸島のみ亜熱帯に属する。今ぐぐったら「北東北も冷帯とする」説も見つけてしまったが,いずれにせよ南西部が亜熱帯はありえない。


p.121 「フランス領サン・ドミング」
→ フランス語なんだからサン・ドマングが定訳では。


以下は「追記 アンコールの章」の記述。

p.472 「現カンボジアに位置する”扶南”という土地で」
→ 扶南は確かにクメール人の王朝だが,場所は現ベトナム南部のメコン川デルタ地帯を中心とするので,「現カンボジアに位置する」と言い切っていいかどうかは怪しい。私的には苦しいと思う。また,この場所に関する問題はp.475の項でも取り上げる。

p.475 「東隣りの南ベトナムのチャム族」
→ これは個人差があるので,人によっては誤解でもなんでもないと言うかもしれない。というか,「南ベトナムに位置したチャンパー」と書いてある歴史の本は多数あるので。ただ,厳密に言えばチャンパーが存在したのはベトナム中部(もしくは中南部)のはずである。(Wikipedia:チャンパーの版図
→ どういうことかと言えば前項にも書いた通り,現ベトナム南部は長らくクメール人の居住地で,これをベトナムの王朝が征服したのは黎朝の18世紀頃のことになる。この征服以前の現南ベトナムは”当時はベトナムではなかった”と見るなら,確かにチャンパーが南ベトナムで,ベトナム人の王朝(李朝・陳朝)があったのが北ベトナム,ということになる。
→ ただし,私はこの見方に同意できない。なぜなら,この観点で平等を期すならば,チャンパーが存在した地域は「チャンパー」としか表現できないはずで,現北ベトナムだけを指してベトナムと言うべきである。にもかかわらずチャンパーを”当時の南ベトナム”と言ってしまうのは「チャム人は将来的にベトナムに吸収されて少数民族に転落するのだから過去に遡及して無視しても良い。ただし,クメール人は現在カンボジアという独立国家を持っているのだから配慮すべき」という浅慮が透けて見えるからだ。
→ 話がややこしくなるので,現在の諸国の版図を基準にすべきで,少なくとも陳朝・黎朝によるチャンパー侵略が始まる以前のベトナムは「ハノイ王朝があるのが北部,チャンパーがあるのが中部,クメール人居住地域が南部」でよいのではないか。
→ もっとも,この著者,もしくは訳者がどういう意識でチャンパーを南ベトナムとしたのか,推測できないが。ただし,本書のp.484に「ベトナムは1700年代にメコン・デルタをクメール人から奪った」という記述があるので,史実は押さえているようだ。

p.476 「(前近代の人口高密度都市の代表例として)七世紀のバグダッド」
→ これもひどい。バグダードの建設はアッバース朝二代目カリフ:マンスールによるもので,アッバース朝の建国自体が750年なのだから七世紀は絶対にありえない。

p.477 「十三世紀ミャンマーのバガン
→ パガン朝の首都を指しているならパガンが正しい。BとPの見間違えはなさそうなので,パとバか。
  
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第223回『文明崩壊』ジャレド・ダイアモンド著,楡井浩一訳,草思社(文庫)

『銃・病原菌・鉄』のジャレド・ダイアモンドの著作である。あちらは「文明の発祥・発展とその条件」とポジティブな方向で文明を分析したものであったが,こちらは「すでに滅んでしまった文明,及び現代社会の環境破壊におけるその要因」が主なテーマとなる。ここで”現代社会”と入っているところが一つポイントで,前作のノリで読むと少々苦しい思いをすることになると思う。というのは,確かに本書は歴史上の諸文明の滅亡理由にも焦点を当てているものの,それは現代社会分析で応用するためであって,本書の主眼はあくまでも現代社会の環境破壊が現代文明崩壊を早めているのではないか,という極めて現代的なところにある。私は歴史物だと思って読み始めたから,現代社会の比重が大きく,少し拍子抜けしながら読むことになってしまった。読書をする上で読み始めの心構えは大事であるから,これはこれからの読者のために警告しておきたい。

また,前著はそうでもなかった気がしたが,本書はアメリカ国民向けへ向けられた視線が強い。環境問題を扱った本であり,現在の地球環境を破壊している最大派閥はアメリカ人であるから,著者がアメリカ人であることを差し引いてもその判断は正しかろう。しかし,それを日本人の私が読むという観点で見ると,勝手ながら少々ピントがずれた話をしていると思える箇所は何箇所かあった。それはあまりにも基礎知識すぎやしないか,と思える部分も。特に第1章のモンタナ州の話はこの欠点が強いので,読破に自信がないなら読み飛ばすことをお勧めする。この辺は,実はアル・ゴアの『不都合な真実』を6年ほど前の流行った時にも全く同じ感想を抱いたので,アメリカ人の意識・知識なんてそんなものかもしれない。少なくとも2005年頃は。本書も英語で最初に出版されたのは2005年のことだったか。

あと書いておくべきこととして,若干の用語の不適切ないし誤解が見られる。章によってはかなり多い。自分が指摘できるくらいなのだから,世の中でもっと騒がれているだろうと思って検索したが,意外にも指摘がほとんど無かった。どういうことなんだよと首を傾げながら,以下自分が気づいたものをささいな点から重大な点まで列挙しておく。著者が悪いのか翻訳が悪いのか……。本当はこの記事の最下部につけておく予定であったが,あまりにも多くなってきたので別記事を立てることにした。→ 『文明崩壊(ジャレド・ダイアモンド)』で気になったところ


とはいえ,本書には美点もある。本書は文明が崩壊する理由を5つの要因に分類して分析している。すなわち,「(人為・非人為によらず)環境の変動」,「(短期・長期によらず)気候の変動」,「近隣の敵対集団の存在」,逆に「友好的な集団の存在」,そして「変化に対する社会の対応」の5つである。この分析項目は的確で,過去の崩壊した文明,崩壊しなかった文明の説明は整然となされていたように思えた。特に力が入っていたと見えて,大きく取り上げているノルウェー領グリーンランドの事例はとてもおもしろく読めた。ただし,比較すると現代社会に対する分析は前述の事情もあってやや新鮮味を欠くものが多い。

本書の特質は,訳者あとがきにもある通り安易な古代社会賛美に走らず,極めて公平な目で古代社会を評価している点だと思う。そう,人間は古代だろうと現代だろうと,環境を破壊し続けており,そのコントロールがうまく行かなければ崩壊するのだ。また安易な人類批判に走ってもいない。環境の変化は人類自身が引き起こしたものもあれば,地球自体の長期的な変化が及ぼしたものもある。これに対する社会の対応も様々なで,一概に崩壊した社会の成員だけが原因だとは決め付けることができない。原因は大体複合的なのだ。この視点が貫かれているのは美点であった。

総じて,前書『銃・病原菌・鉄』ほどのおもしろさはなく,お勧めしづらい。


文明崩壊 上: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫)文明崩壊 上: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫) [文庫]
著者:ジャレド ダイアモンド
出版:草思社
(2012-12-04)

文明崩壊 下: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫)文明崩壊 下: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫) [文庫]
著者:ジャレド ダイアモンド
出版:草思社
(2012-12-04)



  
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2013年05月28日

例大祭10参加記録

第10回例大祭に行ってきた。ひき続いて例大祭は参加者のマナーが割りと高く維持され,天気も良好で過ごしやすく,良いイベントだったのではないかと思う。以下,私の一日の行動を記しておく。


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2013年05月26日

大関陣奮起

久々に内容と熱い優勝争いの双方が伴った場所であったと思う。自分の中では13日目まで上の中であったが,最後二日で少々微妙な展開が細部で見られ,上の下に下がったがそれでも十分に評価できる。自ブログを検索してみたところ,前に上の下より上の評価を下したのは2012年の初場所らしいので,1年以上「上」の場所がなかったことになる。これは悲しい。

優勝争いは早々に上位陣に絞られ,中位・下位のダークホース候補が早々に消滅した点で少し珍しかった。把瑠都と琴欧洲を除いた上位陣が揃って好調で,その煽りを受けて関脇以下前頭4枚目あたりまでの勝ち星が壊滅してしまったが(勝ち越しが妙義龍のみ),これが良い緊張感を生んでいたと思う。連日の強敵という意識になるか,強敵難敵の間にボーナスゲームがあると捉えられるかで大きく変わってくる。今場所は前者であった。鶴竜と稀勢の里は大関以上にしか星を落としておらず,日馬富士も終わってみれば取りこぼしは栃煌山だけ,琴奨菊も豪栄道戦くらいなものである。それだけに,この日馬富士と琴奨菊の両方を破っている妙義龍に殊勲賞が行かないのは納得がいかない。技能賞では安い。

そうして10日目の段階で上位5人が残り,11日目に琴奨菊が脱落,12日目に日馬富士が脱落,13日目に鶴竜が脱落して,14日目に全勝の稀勢の里と白鵬の直接対決となった。この取組が事実上の今場所の優勝決定戦であった。その取組は一言で言えば画竜点睛を欠くもので,悪くはないし盛り上がったが文句が全くないわけではなく,かと言って文句を言えば盛り上がっている界隈に水を差しかねず,という具合であった。要するに,白鵬の張り差しである。というよりも,張り差しで稀勢の里の勢いを殺し,実質的に変化するような形で左上手を取った。白鵬必勝法が左上手をとらせないことなのだから,この時点で大勢は決してしまっている。この大一番にそれは無いだろと思わなくもないものの,自分なりに二点で擁護しておく。まず,白鵬は張り差しを常習的に使っていたが,今場所は稀勢の里戦の伏線として中盤戦使用を控えていたこと。だからこそあの場面での張り差しは意外性があり,極めて有効であった。この点,15日間を戦い抜く術を知り尽くした横綱らしい戦術ではある。もう一点は,張り差しに威力がありすぎて稀勢の里の動きが一瞬完全に止まったがゆえに,白鵬は半ば変化気味の左上手を取りに行く立ち合いになってしまったのではないか,という点。稀勢の里がもう少し踏ん張っていれば,白鵬は左に動かず,正面から上手を探りに行かざるを得なかったであろう。

そして千秋楽,稀勢の里が琴奨菊に勝ち,白鵬が日馬富士に負ければ決定戦,それ以外なら白鵬の優勝という状況で,稀勢の里があっさりと負けて白鵬は取組の前に優勝を決めた。さらに白鵬は日馬富士に完勝し,二場所全勝優勝である。これは超メモリアル優勝なので,記録を列挙しておく。

・白鵬自身の持つ最多記録を塗り替える10回目の全勝優勝。
・大相撲史上通算100回目となる全勝優勝。
・外国人横綱としては朝青龍と並んで最多タイとなる25回目の優勝。
・自身4度目の30連勝。これも大鵬と並んで最多タイ。

なんかもう,白鵬は記録の塊になってきた。ついでにこれに付け加えると,白鵬は今場所までで横綱通算471勝で,これは歴代4位にあたる。この上には大鵬・北の湖・千代の富士しかおらず,この3人は600勝超えなので当分この話題は出まい。



個別評。まず白鵬は決して好調ではなかった。不調のバロメーターであるとったりが見られ,少し慌てるような場面もなくはなかった。が,にもかかわらず全勝優勝してしまうあたり,地力が抜群というほかない。ただし,今場所に限って言えばどっしりとるというよりも,朝青龍的な当意即妙な返し技でなんとかしてしまう場面が見られ,ある意味では「老獪」になったと言えるかもしれない。白鵬の良さはやはり王道の横綱相撲にあると思うので,あえて厳しい注文をつけるとすると型を元に戻してきてほしいところである。日馬富士は9勝にならなかっただけマシ,とだけ。

大関陣。まずは稀勢の里であろう。彼の三大弱点:精神の脆さ,腋の甘さ,腰高が場所中長らく解消され,これはいよいよ本気で覚醒したかと思われた。それが千秋楽の一日だけ戻ってしまったのは残念至極であるが,14日間弱点なく取り切ったところは素直に褒めて良い。白鵬戦は力負けというか,前述の通り白鵬の作戦勝ちであろう。ここは優勝争いの経験の差が出たのではないか。来場所,三大弱点がどうなっているか,注目である。鶴竜は終わってみれば10−5ながら,優勝戦線に長らく残ったこと,負けたのは全て大関以上であることは評価されてよい。本人の言うように,精神的な落ち着きがあり,安心して見ていられた。一方で負けた相撲を見ると力負けであり,伸びしろ的な不安も大いにある。実は琴奨菊も以下同文で,今のところ二人とも実力で二桁勝っているからいいものの,将来的に魁皇と千代大海にならないかは不安である。


三役……は壊滅していて何も言うことが。豪栄道は持ち前のセンスでなんとかなる場面もあればならなかった場面もあり,いい加減それに頼らず安定して勝て,と言いたい。この際だからばっさり言うが,はたき込みとすくい投げと首投げじゃ大関にゃなれん。把瑠都は膝に負担をかけない勝ち方をしよう,ほんとに。隠岐の海はせせこましく取ってないで,旭天鵬を真似た取組をしたほうが成績が上がるのではないか。もろ差しに言って自分の腰が高くなり寄り負ける展開が多すぎる。栃煌山には本当に掛ける言葉がない。

前頭上位。壊滅状態に近いが,唯一の光が妙義龍である。妙義龍は豪栄道的なとっさの相撲センスには欠けるものの,代わりに立ち合いの絶妙さが身についてきており,今後これが大きな武器になるかもしれない。次の大関最有力な豪栄道,栃煌山が伸び悩む中で明確に見える成長,安定した成績と好材料が多い。ただ大関になるにはあと一つ何かが欲しいというか,じゃないと琴欧洲の陥落待ちになってしまいかねない。残りの勝ち越しは松鳳山と高安だが,高安は印象が全くない。松鳳山はつっぱりが小気味良く引き続き好感が持てる。

前頭中位。富士東は6場所連続の勝ち越しだそうで,見ていてもそれなりに馬力が強く他の押し相撲力士との取組はなかなかおもしろい。佐田の富士は一発の突きが重いが回転は悪いのでかいくぐって組まれやすく,そのなかではうまくとっているように見えた。時天空は不思議と10勝しているが,なんと足技の決め技が無い。一応二日目に内掛けで崩してから寄り切っているがそれくらいである。無理に足技にいかないほうがよかったりして。勢は抱きつく展開が多いことがネット上でネタにされていた。今場所はその印象しかない。千代大龍は二桁ながらそんなに印象がない。来場所かなり番付が上がりそうだが,不安しかない。

前頭下位。舛ノ山は毎回死にそうになりながらも7−8で負け越し。これほど見ていて応援したくなる力士もそういまい。最近スタミナ切れを狙った取組を相手に取られている感はあり,それをどう打破していくかが課題。魁聖は鈍重な動きから脱却できていない。今場所は8−7だが,低迷が長くなりそう。千代の国は相撲にはそれほど印象がないが,「チヨスランド」という渾名が定着していて笑ったのでそのことを記録しておく。それにしても「負けたら閉園」はすごい。誉富士は馬力があるが,負けた相撲は脆い。両極端という点ではおもしろく,もう少し見ていたかったが5−10と負け越しの幅がひどく,次いつ幕内で見れるかわからない状況である。


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2013年05月25日

例大祭10チェックリスト

前回と大きく配置が違う。特に音楽系サークルの配置が大きく移動しているので,参加者の皆さんは注意されたし。

しかし,皆さんHP更新されてない→pixiv更新されてない→twitterで告知「サンプルはとらのあなさんの通販ページで!」とかいうパターンが増えてきた。情報インフラが整うと更新労力がかかるものほど放棄されていくという実例をまざまざと見せつけられた作業でった。もうHPとかいらないんじゃないの。でもpixivくらい更新してくれると,探す側は楽です。お願いします(切実)。

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2013年05月22日

最近読んだもの(DIVBとか咲とか)

・ダイブインザヴァンパイアバンド2巻。今後は短篇集的な感じでやっていくのかな。本編の補完,佐治先生や「ゴス」といった本編では目立たないキャラにスポットライトを当てて話を進めていくところは同人誌的。というよりも今までコミケで出してた本編補完話を公式にしたようなところがある。確かに,同人誌なんて集めてない人からすればこいつ誰,というキャラは多い。そういうふうにいろいろ含めると,随分と重層的な話になってきたなと思う。本編はあくまでミナ姫とアキラの物語であって,バンド全体の話ではない。
→ 「ゴス」ちゃん好きなのでメインに昇格して嬉しいが,それだけにこの先本編と合流するときどうなるのかがとても心配である。アルフォンスがああなるわけで。
→ ストーリーにボスニア紛争がかかわってきていて,説明がなされているわけだが,「セルビア人がカトリックになっている」という致命的なミスがあった。あと「ユーゴ」と表記すべきところ「ユーロ」になっている誤植。これ初版なんだけど,二版だと直ってるんかな……直ってないなら作者に伝えたほうがいいような気がしている。

・DIVB スレッジハマーの追憶1巻。同時発売。こっちは第二部とのつなぎで,浜さんの話である。確かにアキラくんは正式入隊後いきなり飛び級するレベルで大活躍しすぎたので,ちょっと休ませてあげたいところである。
→ こっちも本編の第一部と第二部をつなぐ意図のほか,これまでの他の媒体との話をつなげる意図があるのか,クラリッサやバンクロフト伯が出てきている。前者はまだしも,後者が本編で出てくるとは思ってなかった。同人誌だと完全にちょい役だったから。キャラは立ってたけど。
→ こっちはこっちで,コロンビアのFARCが登場する。『ブラックラグーン』と同時期のはずだが,某フローレンシアの猟犬がいないといいね……彼女は一人でヴァンパイアや人狼と戦えそうな戦闘力だからなぁ。


・痕3巻。1巻出てから2巻は随分と間が開いて,本当にこれ続刊するのかという疑惑がわいたが,2巻から3巻は比較的早かった(とは言っても丸一年かかってるけど)。内容はまだなんとも言い様がないが,原作をうまいこと一本道にしている感はあるものの,進行ペースが遅く不安である。1ルートならともかく,全編まとめようとすると多分膨大な長さになるが大丈夫か。

・東方鈴奈庵1巻。こう言ってしまってはなんだが,絵の綺麗さが三月精に匹敵する久々の漫画なので,それだけで狂喜乱舞している。話の系統としては東方茨歌仙によく似ているかな。儚月抄の反省が活かされているのか,そもそもZUNが書きたかった方向性の漫画がこっちだったのか。まあ,おもしろいのでこの路線でいいと思います。


咲11巻。咲については別記事であーだこーだ言ってるので,どうでもいいことを短めに。
→ まとめて読むと2回戦大将戦やっぱめちゃくちゃおもしろいわ。姉帯さんのわかりやすい能力麻雀ありーの,それを塗りつぶす霞さんの強烈な支配,凡人末原の意地があり,それを全て蹂躙していく咲さん。あれだけいろいろあった能力も凡人の意地も,それ自体魅力的でありつつ,最後は咲さん活躍の礎でしかなかった。これは漫画として美しい。「主人公がラスボス」だの「こわい」だのひどい言われようだが,なんだかんだ言っても宮永咲が我らの主人公で,彼女の嶺上開花が全てをなぎ倒していくのを見るのは気持ちがいい。それが(能力)麻雀としての理屈に沿っていて嶺上開花自体が活かされているのだから尚更。咲ちゃんこわかわいい。
→ 末原さんは,やっぱり全得点移動に絡む程度の能力じゃないかな。だとしたら咲の天敵なのはわかる。
→ ところで,はるるのおっぱいでっかなってない?いや,9巻でも十分ロリ巨乳だったけど。永水だとはるるが一番好きです,はい。無口ならなんでもいいらしいよ。わかりやすい。

咲阿知賀編5巻。同上,短めに。
→ 何度読んでもリザベーションスリーのところで吹く。その発想はなかった。ところで,リザーべションってどこまで行けるんだろうか。リザベーション13とかで上がれば,姫子はダブル役満になるのか(無論ダブル役満有のルールで)。多分なるんだろうけど,配牌がえぐそうだなぁ。もしくは地和字一色とかになるのかも。その場合,哩さんは13本の輪で縛られることになるわけですが,どこが縛られるのか大変興味深い。これは咲界隈が総力を挙げて研究すべき(他力本願寺)
→ フナQが哩さんを「エースにしてはあんま癖がない」と評しているが,能力の有無とは別に実際そういうのが一番困り者ではあるだろう。似たようなところだとセーラとか洋榎ちゃんとか。対策の立てようがない。  
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2013年05月20日

意外と広くて大きい幻想郷

・ガルパンサントラを入手。amazonでけっこう待たされた。漫画や小説版を含めて全体的にどの商品も品薄感が強く,後追い・口コミで広まった作品だなぁというのを強く感じる。
→ 何が良いって基本曲が良いから,アレンジはどれもすばらしい。中でもアンセムが一番好き。


・「ブラック・ラグーン」のその後を妄想してみる(Kousyoublog)
→ これはとてもいい妄想。あの作品は前世紀の出来事で,我々はその後の史実の展開を知っているので,割りと確度の高い妄想ができるのだと思う。最近はむしろそういう,90年代後半に対する郷愁含みでこの作品を読んでいる。
→ やっぱり911事件の影響は大きい。あと,特定の事件というか冷戦終結10年経過というのも大きいと思う。冷戦後の世界を皆つかみ出したので。
→ チャベスの下りは本当にそうで,これは作者が意図的に仕掛けたものだろう。ガルシア・ラブレスの未来は重苦しい。
→ ロックは日本に帰ってくるんだけど,日本社会になじめず……的なエンディングが物悲しくていいかな。


日本異様難読山名コンテストで選ばれた山の名前26選、読めますか?(2ch登山部ログ)
→ 梅花皮岳は陶磁器に詳しければ読める(高麗茶碗@Wikipedia)。雲母峰はうんも以外の読みを知ってれば。阿哲台はまんま,なんで難読?天狗角力取山と鰻轟山は訓読みしましょうってことのようだ。
→ ここまでは理解が及んだが,残りはどうにも。皇海山で「すかいさん」はどこのキラキラネームだ。


・幻想郷の交通・運搬手段について(2ch東方スレ観測所)
→ 幻想郷の面積は考察界隈で時々話題になるが,割りと一致を見ていて1000km2くらいっぽい。要するに30km四方ちょい。根拠が知りたい人は,各種同人誌を探して読んでみてください。個人的な考えでもこのくらいの広さか,もうちょい広いくらいだと思っている。長野県の北半分を覆うくらいまではありうるんじゃないかと。
→ 一方,人間人口は各種研究の間でもまちまちで,数千人説から数万人説まで。個人的には数万人説を取りたい。実際は,「人里」というより地方都市なんじゃないかと思っている。あまりにも職業が分化しているし,意外と現実の社会に近くて交流があるっぽいので,それだけの人口を養うだけの産業があるんじゃないかな。
→ あと,食糧が人間と異なる,つまり人間と異なる生業で生計を立てられる(人型・知能指数の高い)妖怪の存在はやはり大きい。本気で人口統計を考察するなら,そうした妖怪の数もカウントしないと意味が無いのではないか。で,人妖合わせた人口は十万(人)単位になるんじゃなかろうかと。
→ いずれにせよ人間はほぼ一箇所に固まってるし妖怪は飛べるから,交通機関は発展しないと思う。魔理沙や霊夢のような飛べる人間は人里離れて妖怪に混じって生活しているし,人里の人間が遠方に行く用事も少なかろう。一般人は人里と周辺の農地に集住していて幻想郷の大部分を知らないまま生活しているのではないか。  
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2013年05月16日

入村して約4年

・ヒートテック、常夏の東南アジアで人気 室内寒すぎて…(朝日新聞)
→ これはあるかもしれない。タイに行ったとき,至る所で冷房効きすぎで寒かった。
→ シンガポールもそうなのかも。今度シンガポールに行ったことがある人に聞いてみる。


・はてな揉め事史(日毎に敵と懶惰に戦う)
→ こうして見るとけっこう追えていた自分がいた。自分の記憶にあるのは原初がコミケ襲撃未遂事件(2007年8月)なので,その頃からはてな見てたらしい。実際にはてな村を認識したのは「軽く紹介するための10本」(2008年7月)で,本当に入村したのは2009年7月だけど。
→ よく言われるhashigotan事件あたりは全く知らない。その辺で自分は決して古参ではないなー。
→ 印象的だったのは,東浩紀の東工大授業事件,ソラノート事件,611反原発デモ事件,Midas-D_Amon事件くらいかな。幸か不幸か積極的にかかわった事件は一つもない。


・日本社会=体育会体質/爲末大学(日刊スポーツ)
→ 何から何までその通りすぎて同意以外の言葉が出てこない。一番重要なのは「人間に限界はない」が誤りという点で,「強制されないとやれないから体罰はある」というのが体罰賛成者の根本だと思う。
→ 「それでも強制されて結果が出れば,後からよかったなと思える」というのが反論に来ると思うが,じゃあ「強制されたものって効率良いの?本当に結果に直結してるの?」というところで,話がかみ合わなくなるのだと思う。結果が出るかどうかは未来予知でもしないとわからないし,それこそ結果論なので。彼らは彼らの手法を信じるし,我々は懐疑する。
→ ただまあ,強制されてもされてなくても結果がわからず,有意な確率的な差がないのであれば,されないほうがいいよなと。


・UFO over Russia? Video of meteorite shower that stirred panic in Urals region(YouTube)
→ 大概の自然現象は見慣れている現代人でも,さすがにメテオストライクは驚いた。
→ 古代・中世の人間なら世界が滅ぶと勘違いしかねない映像である。


・キリストが魚を武器にゾンビを無双する映画『フィスト・オブ・ジーザス』公開(ニンゲン判別機)
→ スプラッタ注意。イエス様ノリノリ。ラザロの復活からそうつなげてくるとは,というのが予想外。
→ いやまあ,言われてみるとラザロってゾンビですよね,としか。あと,魚は初期キリスト教でキリスト教の象徴として扱われており,最初期の「最後の晩餐」を描いたものでは,食事が魚だったりする。ペテロとかは「人間を漁る者になれ」と言われてイエスの弟子になってるし,武器になるだけのキーワードだよね!と強引に。
  
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2013年05月14日

主権国家と国民国家

某所で「国民国家という統治システムはウェストファリア条約のときに原型が整った」という文章を読み,それはどこの別世界だよと思ったのだが,本題でなかったこともあって,自分以外特に誰からもツッコミが入っていなかった。冷静に考えるとえらい錯誤である。「国民国家というのは国境線を持ち、常備軍と官僚群を備え、言語や宗教や生活習慣や伝統文化を共有する国民たちがそこに帰属意識を持っている共同体のこと」と国民国家を定義しているわりに,「以後400年ほど国際政治の基本単位であった」と書いているから,この方は主権国家と国民国家を取り違えているように見える。それほど長くなく,この記述に関して思うところを書いておく。

言うまでもないが,ウェストファリア条約で成立したのは主権国家体制という国際秩序であり,はじめは西欧だけであったのが,西欧の世界進出とともに20世紀初頭までに全世界に広まっていったものだ。1648年にウェストファリア条約が締結された時点で,西欧に国民国家が存在したかと言われるとほとんどの歴史家は首を傾げるところだろう。当時の西欧国家は絶対王政の政体を取っており,社会体制としては国民国家ではなく社団国家であったからだ(絶対王政・社団国家については手前味噌ながら過去記事を参照のこと)。

ウェストファリア条約によって封建社会的な,国境や権力の所在の曖昧な領域は消滅し,主権を持つものと持たざるものが強制的にすぱっと分けられ,ある領主は一社団に据え置かれた一方で,ある領主は突然国家元首と認定された。そうして超小国から大国までが,権利の上では平等な国際秩序が(少なくとも形式上は)成立したのである。だからこそ「社団国家」の成立と「主権国家(体制)」の成立はほぼ同期するのであり,この観点から言えば王権は政府と同化することで国内唯一の主権となったのだから,”絶対”王政というネーミングは正しい。そして,だからこそウェストファリア条約は”国家なのかそうでない連合体なのか判然としない”ことがアイデンティティとなっていた神聖ローマ帝国にとって,「国家としての死亡証明書」だったのである。これが国民国家では意味がまるで通じない。

ついでに言うと,封建社会から絶対王政(社団国家)への移行・主権国家体制の”完成”がウェストファリア条約であって,移行期自体はもっとその手前である。おおよそ百年戦争,イタリア戦争がそれぞれの端緒であると言ってそれほど異論は出まい。その意味で,冒頭の文は「原型が整った」の部分もおかしく,誤りが二重である。無論,「ウェストファリア条約によって国民国家が完成した」でも十分におかしい。

一方,国民国家は(西欧においては)社団国家の発展形態であるから,当然ウェストファリア条約よりも後代になる。社会形態なんてものは明確に何年からこうだ,と切り替わるものではないから,すぱっと切ることは難しいが,アメリカ独立とフランス革命,産業革命がそろってゆっくりと切り替わっていったとして,これも異論はほとんどあるまい。確認のため定義を書いておくが,社団国家では国家(政府)と国民の間に社団という中間団体が入り込み,国家が国民を把握しきっておらず,そもそも国民の範囲も曖昧であった。これに対し,国民国家は社団を排し,国家が国民を直接把握している状態を指す。逆に言って国民は国家への帰属意識を持っている。

最後に,再度冒頭の元記事の方の定義を検討しておく。「(国民国家というのは)国境線を持ち、」→これは主権国家のこと。「常備軍と官僚群を備え、」→これは中央集権的な国家であれば多くで共通する事象。「言語や宗教や生活習慣や伝統文化を共有する国民たちがそこに帰属意識を持っている共同体のこと」→この辺は国民国家の定義と言っていい。要するに最後の部分を言いたかったがためにいろいろ盛ったはいいけれど,最初の「国境線を持ち」の起源から思わずウェストファリア条約のことを挿入してしまったのではなかろうか。あとは国民国家の前提として主権国家の存在があるとして,ウェストファリア条約を国民国家の原型が整った瞬間としたのかもしれない。が,これも絶対王政を無視した言葉の使い方であって,適切ではない。

なお,元記事の本題は「グローバリズムが国民国家を壊す」という話題である。この記事では元記事の本題の話はスルーした。それゆえにリンクも張っていないが,どうしても読みたい方はこの記事の引用部分でぐぐればすぐに出てくるのではないかと思う。
  
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2013年05月11日

咲ファンへのガルパンの勧め

ゴールデンウィークを使って,ガールズ&パンツァー,いわゆるガルパンをまとめて見た。非常におもしろかった。見たタイミングとしてはギリギリ第一波に乗れたんじゃないかと思う。私の場合,流行は後追いが多く,東方は第二次東方ブーム(2006年末)組に入るし,『咲-Saki-』も阿知賀編アニメ化参入組に分類されることになると思う。どちらも第一波からは2・3年遅れだ。ガルパンがこれらのような息の長いコンテンツになるかはわからないが,第二波が来るとしたら映画化後になると思う。

さて,お勧めしたい本作だが敷居が高い(ように見える)のもまた確かであろう。作品の方向性として,「スト魔女の戦車版」というたとえが一番素直な一方で,「咲の戦車版」という例示をよく見る。ついでに「咲とストパンを融合したアニメ」だの「あと大正野球娘」だの。実際に「咲の戦車版」かと言われると,「重なる部分もあれば,そうでない部分も」という感じである。そこで,主に『咲』ファンに向けてガルパンを勧めるという形を取りつつ,ガルパンを紐解いてみたい。スト魔女は私自身が未視聴なのでノーコメントというか,別の有識者の方がんばってください。スタッフ重なってんだから似てるに決まってるだろ,で終わりかもしれないけど。

さて,どの層の咲ファンならガルパンに乗れるか。咲の魅力といえばかなり多様であり,それ自体が咲の強みであろう。ゆえに,咲のどこが好き(特に)好きか,でガルパンに乗れるかどうかは変わってくる気がする。無論,全く別のところからガルパンに惹かれる可能性はあるが。

・麻雀漫画としておもしろい → ○麻雀ではなく戦車だが深さは同じ
・麻雀がわからなくてもそれなりに楽しめる → △戦車のことを知らなくてもなんとかなる……かなぁ
・意外とまっとうなスポ根的展開 → ○むしろガルパンのほうが直球で熱いかも
・練られた能力バトル → ×キャラ自体に固有の能力はあまり無い
・とりあえず女の子いっぱい → ○ガルパンもキャラの数は多い
・百合 → △女の子しか出てこないけど,思ってたほど百合百合しくなかった

以下,個別に話題を展開。(ガルパンの)ネタバレはないはず。
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2013年05月08日

非ニコマス定期消化 2012.11月上旬〜11月下旬



カメ五郎シリーズ第三弾。今までと異なり海沿いであるため,「真水」の大切さがよくわかる動画となっている。食べているものは今まで通りカエルとヘビが中心で,たまに虫。ムカデが一番きつそうだった。これ以後は短編が多くなり,テレビ出演へ。




「発想はあった」な異種格闘技戦だが,勝負として成立させているのはすごいところだ。今度の超会議ではプロ同士でやるようだが,どうなるやら。
→ 将棋が勝った。ただ,あれは1分交代で,しかも進行の遅れから巻きが入っており,持久戦なら勝ち目が出る囲碁には極めて不利な状況であった。できれば再戦してほしい。




将棋は全く見ないんだけども,さすがにハッシーは知っている。これは大爆笑した。良いファンサービスだと思う。





友人マリオ第三弾。今回はさらに苛烈なステージが多く,上がり続ける難易度に対応する友人の腕に視聴者は賛嘆の声を上げた。




毎回よくもまあこんな鬼畜ステージを,と思うわけだが,今回特に視聴者を驚かせたのはPart6の「スカイツリー」,Part9の「てんごく」の2つではないだろうか。しかし,どれを見ても孔明ブロック,ブラックパックン,ブルゲートの使い方が絶妙だ。



ギャグからかっこいいシーンまで,短い間に全部押さえた名作MAD。
  
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2013年05月06日

語感が良い>デデキント切断

・民主 大敗の原因“トップの失敗連鎖”(NHK)
・選挙が終わると届く請求書の数々 落選議員が語る【民主党崩壊】の理由Vol.1(日刊SPA!)
→ 彼らがここまで自分たちの敗因がわかってないとは予想外だった。野田さんになすりつけて終わり,では”次”はなかろう。
→ マニフェスト詐欺と,自民党政治からの刷新を期待されたのに自民党となんら変わりない派閥政治。そして予想されていた通りの実務能力の欠如である。マニフェスト詐欺を認め,多少なりとも実務の立て直しを図った野田政権を評価できず,自殺的選挙を「時期尚早」だったとしか評せないのが彼らの限界である。衆参同時なんてことをやっていたら,党が今以上に壊滅していたことがなぜわからないのか。
→ にしても,下の記事にあるこれはひどい>「高橋是清が戦後のハイパーインフレを起こしたって言う方だったから。」いかに高橋是清が天才でもそれは時空を超越しないと無理だ。いやまあ自民党にも探さなくても似たような見識の人はいるでしょうが。誰か正せよ。


・大至急!!!!!お願いしますテーマ政治経済で小論文を書いてください 1500字程...(Yahoo知恵袋)
→ 6行目からチャンドラセカール限界やデデキント切断など怪しげなワードが登場し,すぐに真意に気づかされる。そして最後にソーカルで明示。
→ あまりの完成度に「これマッチポンプなんじゃねーの」という疑惑さえ漂う。
→ マジだとしたら,これ提出したのかどうか,そしてその後の展開が非常に気になる。


・「殴り合う貴族たち」繁田 信一 著(Kousyoublog)
→ 穏和に見える平安貴族たちも,意外と荒ぶっているという話。
→ 言われてみると花山法皇襲撃事件とかあったわけだが,そんなレベルではなかった。あれが伊周失脚の直接的な原因だったよね。
→ 武家と貴族の分離(と武家による官僚制の発達)は本邦の特殊性だと思うが,本格的にそうなってったのは鎌倉時代以後で,意外とゆるやかな変化だよなぁと。清盛以後の平家が逆流して貴族化したのも納得が行く。
→ 中国も軍人と貴族は分離したが,軍人は地方軍閥化(藩鎮)して中央政府から離れて乱立し,貴族は内戦で消滅したので,日本のようにはならなかった。そこで藩鎮は取り潰し,貴族社会の代わりに科挙を本格化させて士大夫社会を形成したからこそ,その後の中国があり,北宋が本邦との歴史のあらゆる分岐点だなぁと改めて思う次第である。趙匡胤は偉大。
→ この本はいつか読みたい。


・楽器で殴り合ったら誰が勝つの?(VIPPERな俺)
→ 殴り合いというところが味噌で,何してもいいならチャイコフスキーの1812年に使われている大砲が最強すぎてこれしか結論がない。だが,「殴り合い」となるとちょっと。同様の理屈でパイプオルガンなども重量的には優勝候補だが,殴り合いには使えなさそう。
→ あとは現代音楽にヘリコプターを使ったものがあるが,操縦しての体当たりは殴り合いに入るのかどうか。
→ マーラー交響曲第6番に使用される「ハンマー」という説も有力だが,実際のところ金管楽器に勝てるかどうか。意外と盛り上がりそうな話題である。私もそうクラシックに詳しいわけではないので,これくらいしか知らないから,私には無理な話題だ。
→ なお,ヘリコプター協奏曲はこれ。
  
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2013年05月04日

いっそ服を着せたらどうか

・世界最強かもしれない日本の500円玉を世界中の通貨と比較してみた(GIGAZINE)
→ 硬貨としては最も高価ってことで(ドヤァ
→ まあ日本円がすごいということは言えなくとも,500円玉がすごいのは確かかと。極めて日本人的な感覚だが,500円程度の価値で紙幣になられてもありがたみに欠ける,という感覚が私にもしみついている。
→ この記事を書いている五月上旬時点で,コスタリカあたりにいるっぽい。南米走破まであとどのくらいかかるだろうか。昨年の10月にカナダを出発して今北米が終わりかかってるから,同ペースなら年内に最南端行けるかどうか,かな。ルートにもよるけど。


・わかむらPは何の第一人者なのかという議論(Togetter)
→ 抜きピカヤスタカ(古)とかいうマジレス。実際そうだと思うんよ本気で。彼はそれでニコマスに一時代を築いたし,ニコマスの流れ,特に七夕革命以後の流れを決定づけた。良くも悪くも,そういう評価だろう。
→ ところで,並ぶ名前が新旧のニコマス頂点P勢揃いすぎて豪華である。てつろーP,しーなP,でっぶるさん,hさん,おくるだP,エコノミーP,さきかけP,ゆうパックP,6歳児P。目についたところでこんな感じ?漏れてたらごめんなさい。ルサンチマンで作品作って。
→ 「全盛期のわかむらの画像」のあまりの懐かしさに思わず嘘泣き。 艶さんは素材。


・公園のダビデ像「下着をはかせて」…町民が苦情(読売新聞)
→ 「下着はかせて」など地元住民でも極少数だろうに,インパクトでこうなってしまった感。あまり踊らされたくない感じである。
→ 案外住民の意見に賛成なのは,確かに,街角の裸婦の違和感ぱないなというのがあるからである。我が地元である豊橋にも,裸婦によらず謎の銅像が駅前のアーケード街にあるけど,あれは違和感しかないと思う。あれで環境美化だと本気で思っているなら鼻で笑う。


・民主・海江田氏、レーダー照射「公表遅れただす」(日経新聞)
→ どうしても「遅れたダス」に読める。
→ 閑話休題。「お前が言うな」案件ではあるのだが,与野党の立場が入れ替わっているので,他の案件に比べるとあまりブーメラン扱いはしないでおきたい。これが与野党の役割というものではあるだろう。
→ もっとも,次政権が入れ替わったときに攻撃されないためにも,あまり言ってやるなよという気のほうが強いが。もっとも,”次”がないかもしれないけどね……


・会田誠展について(MORI ART MUSEUM)
→ これに対して,「これを回答として終えるのは双方に残念感が漂うので,批判側は「回答になってない」と噛み付くべき。ただでさえ退屈と言われてるんだからもうちょっとがんばれ。」とブコメに書いてからすでに三ヶ月。とっくの昔に会期が終わっており,抗議団体からの追撃も無かった。双方なんだったんだろう……いろいろと残念感しかない結末であった。
→ あえて言えば,もはや世間は現代アート的な論争に興味がないし,アートの側も論争を起こす気がないんだろう。そうとしか言い様がない。
  
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2013年05月02日

咲関連の気になったもの(12年12〜13年1月頃)

・シャンテン数とホーラ率から分かる亦野がレギュラーに登用された本当の理由(麻雀漫画まとめ)
→ 阿知賀5人の能力も派生順番が考察されてたし,これも割りとしっくり来る。淡や照が混じってることによって,適応できる能力・できない能力があって,一般的な実力評価からは歪みが生じた可能性は否定できない。
→ この後,白糸台のチーム別で代表を決めるという特殊な決め方が明らかになった。
・亦野は本当に弱いのか? フーロ数別の放銃率まとめ(麻雀漫画まとめ)
→ こっちの記事も参考になる。体感的には3フーロするとすごく降りづらいけど,統計上はそうでもないらしい。体感もあてにならない。
→ 加えてアニメの描写から,放銃の大半は失着ではないことが判明。彼女は運が無かっただけのようだ。


・ゆみちんの闘牌スタイルは愛宕洋榎に近いんだなー(咲グラフ)
→ 長野県予選決勝・大将戦の点数移動を表・グラフ化したもの。
→ こうして見ると,衣と咲:魔物特有の嗅覚で放銃しない,ゆみ:データの示す通りの神回避。つまり,衣が池田を狙ってたというよりも,放銃”してくれる”のが池田しかおらず,放銃が偏った結果がこれ,なのかも。
→ 特殊な事例を除き「相手の当たり牌が大体わかる」のが魔物の基本性能のような気がするので,魔物が二人そろうとこうなるのだろう。魔物(咲+天照大神の5人)が同卓したのは意外にもまだ長野県決勝だけで,次はインハイ決勝での淡VS咲まで無いだろうから,検証にはまだまだ時間がかかりそう……と思ったら,淡さんが普通に放銃していた。リザベーションとか怜ちゃんとか魔物並に卑怯くさい能力とはいえ。どゆこと。
→ しかもシズが能力を発揮するとさらにわけがわからないことになるので,本当に検証材料になるのは決勝・大将戦・前半戦の半荘だけとか,ありうる。極めて貴重なデータになりそう……


・圧倒的な実力差を見せつける咲さん 〜末原さん蹂躙編〜(咲グラフ)
→ こちらは主に全国大会二回戦・大将戦について。
→ 咲さんの符が明らかに不自然な件について。不自然というか,明らかに操作している。これについては読んでて全く気づかず,この記事を読んでとても驚いた。
→ 自らが出せない20符については末原さんに上がらせて達成というあたり,もうわけがわからない。やはり点数調整とリンシャンの間に符の操作が仲立つのだろう。


・臼沢塞と塞の神、そして咲−Saki−の中に隠された柳田国男の初期の著作へのリスペクトについて(私的素敵ジャンク)
→ これはすばらな考察。確かに塞さんなんでチャイナドレスなん?とは思ってた。
→ そういえば八雲さんちの紫さん@東方projectも幻想郷の境界を守る塞の神みたいなものだが,中国の道士服だなぁ。あっちはどうなんでしょう。
→ この間会ったtoppoiさんが「道の字と言えば二重影」と言っていたが,そんな彼がこの間書いていたものにリンクを張っておく。 → ・咲-Saki-から始めるエロゲー(とっぽい。)


・準決勝先鋒戦東一局第一打が各キャラの個性を表していた可能性について(麻雀アニメ&麻雀ゲームあれこれ)
→ これも良い考察。偶然だとしてもすばら。というか,こういう深読みはどんどんなされるべき。
  
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