2013年09月30日

それでも白鵬が優勝する

仕事が糞忙しい中なんとか見た秋場所が終わった。そんな中見たせいか内容に乏しかった気がしたのだが,twitterのTLを見ても同じような反応の人もいたので,気のせいではなさそうだ。一方好角家には高評価の人もおり,よくわからない。もっとも,その人でも「幕内上位は低調」という評なので,少なくとも上位陣がひどかったのはそれなりに共通見解が取れそうである。

とりあえず,NHKを含めて世のマスコミに言いたいのは,安易に白鵬盤石というのはやめないか。どう見ても今場所の白鵬は盤石でなく,力量の低下というよりも単純に不調でもあり,完全にだましだまし,それも省エネで取っていた。どちらかというと,それでも優勝できてしまったことのほうが問題であろう。白鵬の省エネ相撲の弱点を突いて完勝したのは豪栄道だけであり,情けないことに琴奨菊・鶴竜・稀勢の里・日馬富士と全員秒殺に近い状態であった。白鵬が万全で勝率の高い勝ち方をするときはがっちりと右四つで捕えるはずである。無論それで結果的に秒殺になることもあるが,それは相手の問題だ。逆に省エネで行こうとする時は離れて取りたがり,特にとったりとはたきを多用する。依然難易度は高いが,がっちり右四つよりはまだしも隙がつける取り方で,実際今場所の豪栄道はとったりを外させたことで形勢を有利に進めることができた。他はそろいもそろって「白鵬は組みに来るものだ」という想定でとるからあっさり腕をたぐられ,またははたかれて落ちている。どうにかならないか。優勝した白鵬の「豪栄道戦で目が覚めた」は半分は本当であろう。半分ウソなのは,その後も結局省エネ相撲っぷりが全く変わらなかったからだ。

そうそう,物言いについては書いておかねばなるまい。今場所の物言いはつけるタイミングがひどかった。特に勝ち名乗りの真っ最中に物言いは最悪であろう。しかもこれ先場所からの継続案件であるから,組織として全く改善されていないことになる。確かに進行は遅くなるが,気にせずどんどん「確認のため」に物言いをつければよい。つけずに疑惑の判定になるほうがよほど悪い。審判部は猛省してほしい。

来場所の展望としては,白鵬の5連覇の可能性は高い。いくらなんでも今場所よりは調子を上げてくるであろうし,逆に周囲が白鵬を上回る力量を示す予想も立てづらい。しいて言って期待できるのは,なんだかんだ言って日馬富士であろうが,どうなるか。最大の目玉は,いよいよ豪栄道の大関取りが真実味を持ってきた点になろうだろうか。とは言っても3場所連続のうち2場所目なので来場所のうちに決まるわけではない。あとは遠藤の番付が上がることと,大砂嵐の新入幕が確実なことくらいか。それなりに目玉は多いので,来場所に期待したい。

把瑠都については別個に記事を立てる。一方栃ノ心は幕下から再起を図るつもりだろうか。膝のケガの直接の原因になった名古屋場所五日目の相撲は本人が勝っており,それほど強烈な記憶もないので,そんなに悪かったとは思えなかった。早い復帰を祈りたい。


個別評。白鵬については前述の通りである。また,先場所の評をコピペしておく。「逆に言えばこれが後期型白鵬の発展形ではあり,この型であと5場所優勝(通算31回)までいけるかどうかはハラハラしながら見守る他無い。」1回減ってあと4回になった。本人の希望は35歳までとって,現役のまま東京五輪を見ることらしいが,けっこう難しいと思う。日馬富士も引き続き重症で,これも先場所の評に「(もう)突き刺さる立ち合いができなくなっているのではないか」と書いたが,やっぱりできなくなっているのだと思う。日馬富士の原動力とはあの立ち合いの破壊力であって,全勝優勝はこれが15日間続いた結果である。あれがない日馬富士は白鵬はおろか稀勢の里・鶴竜に伍するのも怪しく,実際ここ数場所は大関戦黒星が目立つ。今はものすごく彼のことが心配だ。

稀勢の里はいつもの稀勢の里であった。琴奨菊も可も不可もなく,この二人はコメントしようがない。鶴竜は絶不調まっただ中であるが,それでも9勝はしたことを評価するべきか。一方で幕内上位陣の内容がぱっとしなかった戦犯としては最大なので,あまり評価したくない気も。技巧がまるで見られず,淡々と取っているように見えた。三役陣は今の鶴竜を倒せないようではまずく,特に豪栄道が鶴竜戦あせって自滅したのが残念でならなかった。琴欧洲は比較的好調そうではあったが,ケガで休場は惜しい。彼が最後までとれていれば,雰囲気が違ったかもしれない。

関脇。妙義龍は先場所に引き続き,どうしちゃったのというくらい不調であった。この人,不調でもそれなりに勝って6−9くらいでまとめてしまうからインパクトがないが,内容だけ見ると場所ごとの調子の波が激しいことに今場所気づいた。今場所は立ち合いに威力を欠き,どうもうまいこと寄れていなかった。ただし,材料がまったくないわけではなく,白鵬に善戦していた点は豪栄道に次ぐ。豪栄道は前述の通り,白鵬戦に工夫が見られて11勝である。ただし開眼したかどうか,私は疑問視しており,来場所も11勝できるかどうかは五分五分。小結,栃煌山は8−7でなんとか勝ち越したが,彼に必要なのはもうひとつ上の安定であってこれではない。豪栄道・妙義龍とはやや差がついてしまっている。もう一人の高安はいまだ家賃が高かった。相変わらず日ごとの実力差があり,安定しない。

前頭上位。松鳳山は8−7ながら敢闘賞の資格はあろう。近年なぜだかやたらと三賞のハードルが高く,あげないときは徹底してあげず,人種差別も疑ったほどだが,今場所はやけにあっさりと出た。まあ松鳳山の魅力ある押し相撲と日馬富士戦の金星が評価されたのであろう。再小結は確実だが,家賃が高そうな気はする。隠岐の海も再小結になるだろうが,なんとも言えない。栃乃若にも言えることだが,なぜに高身長の懐深い奴がもろ差しを求めに行くのか,疑問でしょうがない。碧山は日馬富士に勝った一番以外評価するところがなく,勢と宝富士にいたっては絶不調で何も評価するところがない。魁聖はそれなりに好調であったのだが,上位陣には通用しなかった。琴欧洲が休場しなければあたることのない番付ではあり,後半突然上位陣コースが組まれてやや不運ではあった。

前頭中位。なんともコメントしがたい力士ばかりで,逆に衰え激しい阿覧が目立つという結果に。阿覧は以前見られた怪力が全く見られず,特徴的だった乱暴なはたきも威力を欠きまるで勝てなかった。不調というよりは衰えているように見えた。負けがこんで逆に目立ったといえばもう一人は翔天狼で,こちらも押しに力がなく,組まれるわいなされるわで散々な相撲ぶりであった。豊ノ島は前半不調だったが後半切れを取り戻し,動きまわる相撲でなんとか勝ち越した。ベテランらしい,場所中の調整が効いたパターン。琴勇輝は立ち合いの気合を入れるモーションで人気が出そう。私もあれは好きだ。相撲の方は突き押しだがもっと上に行くには威力が足りず,この辺りをうろうろしそうである。旭日松もそうだが,陥落しないようにがんばってほしい。

前頭下位。まず栃乃若,前述の通りなぜにあの巨体でもろ差しにいくのか不可解でしょうがない。そのせいで相撲が窮屈になり,ありえないはたかれ方をして落ちている。そこを改善すればすぐに上位定着しそうなものだが。これは改善されるか上位定着するまで毎回書き続けると思う。あとは豊真将と遠藤を挙げておく。豊真将については,大相撲にカムバック賞があれば受賞していただろう復調っぷりである。押しの威力が回復し,かなり相撲が取れていた。遠藤は新入幕とはとても思えないほど技巧に優れて型も良く,9−5−1の勝ち星もさることながら,内容面から見ても大きな期待を持たざるをえない。特に投げが強烈で,九日目の嘉風,十一日目の旭天鵬戦は素晴らしい取組であった。にもかかわらず勝てないのはまだ身体が出来上がっていないというアンバランスさがあり,それゆえ期待は大きいものの,急速な出世は不安もある,と書いて今場所の総評を締めたい。

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2013年09月28日

文化財と美術品

・平等院鳳凰堂を「金ピカ」にしてもいいのか?(冷泉彰彦 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト)
→ 同じ文化財でも,「美術作品」として見るなら当時を再現すべき。「歴史的遺産・遺跡」として見るなら現状維持の修復が良い。これはどこに価値を置くか,これは美学的な問題。その割に,そっちの専門家からの反応は見ない。個人的には当時の再現で良いのではないかと。美術作品として考えるべきで。
→ いずれにせよ元記事本文の侘び寂びやらは的外れでしょう。そんなに侘び寂びを重視せんでも。「ただ,侘び寂びは平安よりも後世の概念だから的外れ」というのは間違いで,侘び寂びはその目的で物を作るというよりは見出すものではないかと。


・ガールズ&パンツァー 第8話(カタログ落ち)
→ そうそう。大洗の勝利はみほ一人の勝利ではなくて,全員での勝利。組織の勝利。このストーリー(の目的)の都合上,大洗の面々(特にあんこうチーム)が”優秀すぎる素人”にせざるをえなかった。それは美点でもあり不自然という欠点でもある,という評はありうる。
→ その意味で逆説的に華さんがチートすぎないよう,それを上回るナオミやノンナという狙撃手がいる,というのは世界観としてぐっと来るものがある。特にノンナさんは人間じゃないと思います。
→ 咲との違いで言ってしまえば,周囲の理解と本人のコミュ力……という割と悲しい結論が出てしまう。みほは指揮官だからコミュ力高くて当然,麻雀は根本的には個人競技,という違いはあるにせよ。がんばれ咲ちゃんと清澄の面々。


・江戸の櫃、1万5千円→9億6千万円に 競売の国・英国でも話題(産経新聞)
→ 質も良いし保存も良く,来歴も抜群(ルイ14世の宰相マザランの購入物)。むしろ,これが一度は1万5千円になるとは数奇な運命よのう……
→ 記事中ではラッカーと表記されているが,「蒔絵」と表記すべき。というか訳そうと思えばラッカーと訳せてしまうのか,そうか……  
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2013年09月27日

非ニコマス定期消化 2013.4月上旬〜4月下旬

ほぼkentora12メソッド関連。




割りと今更ではあるけど,良い曲だよねこれ。



続き待ち。制作とどこおってるのかなぁ。



弾幕再現もどんどん迫真性が高く,綺麗になっていく。




一世を風靡したkentora12メソッド。なぜそんな方法を思いついたのか。奇抜なやり方が新たな競技を生んだ。一度は沈静化していたものの,エイプリルフールにおやつ氏が取り上げて再燃。



そして本人がリベンジしたと思ったら,↓わずか52分で更新された。



現時点で最速。ちなみに,「原点にして頂点」タグがついているのは,



kentora12メソッドは約5年も前にすでに発見されていたため。発見者が最速を作った。



おやつ氏,マリオワールドで参戦。



そして即更新されるところまでお約束。



マリオワールドは現時点でこれが最速。場所からして違うというか,本当にその発想はなかった。TASらしいTAS。  
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2013年09月25日

第226回『チェーザレ・ボルジアを知っていますか?』モーニング編集部,講談社

漫画『チェーザレ』の副読本。内容はルネサンスに至るまでのヨーロッパ史・イタリア史概説,キリスト教カトリック・ローマ教皇庁の簡単な紹介,ルネサンス期のローマ・教皇庁の紹介,ルネサンス期の国々・都市・人名・名家の事典,最後にチェーザレ縁の地の観光案内と,なぜかワイン・関連書籍・ドラマの紹介が入って終わる。内容は,一つ一つ見ていくと薄いところもあるが,多岐にわたっているのは間違いなく,最後の宣伝も含めてがんばって全部網羅しているというところはある。軽くここまでのおさらいをするにはこれで良かろう。

ただし,多くのチェーザレファンが本当に「軽く」を求めていたかは疑問である。もっとがっつり深く掘り下げたものを,どちらかというと期待していた。また今後の展開のネタバレを不自然に避けていることによって一々中途半端に終わっているところも気になった。たとえばジョヴァンニ・デ・メディチがレオ10世に即位することは明記されているのに,ロドリーゴ・ボルジアの項目ではアレクサンデル6世に即位したことが書かれていない。どうもちぐはぐである。史実を追っているのだから,そうむきになってネタバレを回避しなくても良かったのではないか。

そうしたややこしい処理をしつつ,かつ膨大な情報を取り扱ったせいか,初版は多くの誤字・誤謬がある(2版以降があるのかどうかは知らない)。誤解というよりは誤字・誤謬と言ったほうがいいミスばかりだったので,そこは原基晶がちゃんと監修しているのだろう。一読して私の気がついた範囲で一覧に示しておくので(amazonの後段),買われた方は参考にしてほしい。



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2013年09月24日

最近買ったもの・読んだもの

・ガールズ&パンツァー1巻(才谷屋版)。ストーリーは原作(アニメ版)とほぼ同じながら,視点が秋山殿となっている。
→ 絵は正直がんばれとしか言いようがない。戦車は意外とがんばれてるが,人物はこれからの努力に期待(というかもう3巻まで出てるが)。
→ 細かい変更点でいくつかピックアップすると,「麻子が最初からあんこうチーム」,「4号だと戦車長席から操縦手席が遠すぎるので足が届かないことにフォローが入っていた」,「橋が吊り橋製から木造に(どっちのほうが不安定だろう?)」,「最初の練習試合でスモークを使っている」,「聖グロリアーナ戦,待ちぶせが地形を活かしたものではなく平地での包囲になっている」くらい。一番の変更点は,アニメだと隠れてついてきた秋山殿にみほが気づいて話しかけたのに対し,こちらでは普通にぼっちだった秋山殿にみほの側から話しかけた,ということになっている点か。


・『冴えない彼女の育て方』2巻。事実上の霞ヶ丘詩羽編。詩羽がそんな事実もないのに,勝手に自分を「過去に振られた彼女」ポジションにおいて,主人公を困らせている理由の一端がかいま見える話となっている。1巻よりはラノベ風にこなれて来たのかなという印象。
→ ようやく加藤さんキャラ立ってきた。あれだけ巻き込まれてもほとんど戸惑わずに主人公についていく図太さ,ほのかに見える主人公への好意,にもかかわらず他のヒロインたちのようなアクの強さはなく,確かに冴えない。影が薄いわけでも存在感がないわけでもなく,単に冴えないのだ。というか存在感はあるのですごい。今までいそうでちょっといなかったタイプのヒロインではあると思う。
→ 章題のパロネタ,「可能性を生み出しただけでアウトなんだよ」に始まり「楽よね、回想シーン」に終わるのは範囲が広い。しかし,前者ももう2年前か……
→ 巻末についている同人ゲームの企画例,丸戸さん本人のあとがきにある通り,読むからに超展開すぎて売れないな感がぱない。言うても,企画屋のコンセプト的にこういう企画をなんとかしてきたんだろうなぁ……と思うと企画例から丸戸さんの怨念が読み取れないこともない。


・『ヒストリエ』8巻。フォキオンが出てきて古代ギリシア好きは燃えたところであろう。私は正直名前くらいしか聞いたことが無かったのでそれほどの衝撃ではなかったが。この人現時点で60歳を超えているが,意外にもこの先けっこう生き残ってディアドコイ戦争まで活躍する。
→ 今回のハイライトといえば,まず間違いなくアテネの衝角戦術であろう。この先もあまり海戦は無いであろうから,本作として貴重なシーンだったのでは。
→ ようやく話がちょっと進んだような,あまり進んでいないような。先に話題に出してしまっていることだし,カイロネイアの戦いくらいまではさくさくと進めてほしいなと個人的には。


・『へうげもの』17巻。一方こっちは着実に話が進んでいる。この巻の中だけでほぼ丸2年進んだ。このペースなら20巻あたりで大坂の陣になりそう。
→ 時間的には進んだが話の内容から言えばつなぎの状態で,18巻もまだつなぎでいろいろ起きてくるのは19巻あたりになるのではないかと。大久保長安の暗躍が目立つが,不思議と古田織部との接触がない。二人の目的が全く違う以上,どこかで衝突すると思うが,このまま行くと衝突のないまま長安の寿命が尽きそう。


・『聖☆おにいさん』9巻。桃太郎の話がツボにハマって大爆笑であった。イエス様の「はっきり言っておく」は反則。
→ 花粉症=アレルギー反応=アヒンサーを破っているは斬新な発想だった。ところで花粉は”まだ”生物じゃないと思う。
  
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2013年09月23日

次はグレートグロスで記事を作るべき

・先週突発的に大流行したcookie clickerだが,ある程度ゲームが進んだらあとはほぼ放置するだけ,という手軽さに乗って私も遊んでしまった。実際ほとんどずっと放置していただけだが,ほぼすべてのupgradeと実績をとったので,ぼちぼち卒業することにする。ちょうど一週間かかったかな。
→ 英語版Wikiは攻略にほぼ必須で,条件が意味わからない実績がけっこうある。また,終盤になってくると必要クッキー枚数が途方も無いupgradeが増えてくるので,いかに待つゲームとはいえ半日待ってようやく1つupradeというのは,少々ゲームバランスが悪いように感じた。黄金クッキー777枚と,クリックを1秒間に10回以上という実績の2つだけはどうにも無理を悟ってチートした。
→ 近々バージョンアップして,今度は洞窟というこれまた想像がつかないものができるらしいので,セーブデータだけは取っておこうと思う。


・4日付「森永、『グロス』発売」記事についてお詫び(虚構新聞)
・森永チョコ、144個入り『GROS』が現実に 虚構新聞社主が謝罪会見(週アスプラス)
→ 謝罪案件ならぬ,謝罪させられ案件。最近現実が追いついてしまってよく謝罪しているが,させられた事例は珍しい。一般企業もネットメディアの使い方をわかってきたか。
→ お台場じゃなくて渋谷か新宿か池袋なら買いに行ってた(というか買いに行くのが可能だった)。こういうくだらないイベントは好きなので,割と本気で参加したかった。惜しい。
→ 白いダースはおいしいので好きです。


・種子島にポルトガル人が、という鉄砲伝来の通説の不確かさ(Kousyoublog)
→ 自分が元々聞いたことがあったのは来航したポルトガル人が,後期倭寇の一派だったこと,伝来した火縄銃が狩猟用で元々は軍事用ではなかった(から弾幕を張るのに適さなかった)こと,の2点かな。これらはよく知られていることだと思う。
→ 後期倭寇の衰退理由は1567年の明による解禁緩和と取締強化にあるので,それ以前であればポルトガル人が後期倭寇に混ざっていたのは,取り立てて不思議に思うことでもない。むしろ「武装した商人」はマラッカ以東においてしばしば見られた現象で,同様にそれが常識なヨーロッパ人には溶け込みやすかったのではないか。さらに言えばヨーロッパ商人が武装していたのは地中海でムスリム海賊に襲われたからだ。大航海時代の文脈において「野蛮なヨーロッパ人が武器を携えて,そうした商慣行の無いアジアに乗り出して,平和なムスリム商人を駆逐してしまった」という言説を時々見るが,三重くらいにそりゃないだろという擁護だと思う。
→ 種子島から全国に広がったわけではなく,他の地域にも直接海外から持ち込まれた,という説は聞いたことがなかったが,ありうると思うしおもしろい。でもまあ,年号・日付的に種子島が最速なら,それだけでも十分歴史的意義が大きいんじゃないかな。これが覆されたらさすがに驚く。


・現代アートは感じるものか?(mmpoloの日記)
→ 現代美術に限らず,美術を理解するには思考と感覚の双方が重要だという点は諸手を挙げて賛同する。
→ しかし,具象がわかるものと”錯覚”されるのは,迫真性や再現性は技術の高さで評価しやすいから。抽象は上手い下手で判断できないので一転「わからない」になるが,結局「考えてない・読んでない」のは一緒だと思う。印象派が人気なのは,考えなくてもいい・読まなくてもいいから。


・妹(小6)の算数の宿題ムズすぎワロタwwww(いたしん!)
→ 解法ネタバレ注意。互いに素・片方奇数・35の約数は使用不可まではわかったけど,そこから先は総数え上げになってあきらめた……と思って最後の解法を見たが,これは納得行かない。解法そのものはそれでいいと思うが,その方程式(分配法則)は中学じゃないと習わないのではないか。「算数」なら別の解法ありそうなものだが。そもそも他の解法がありうるのか?疑問である。
→ コメント欄見たら,一応その解法は小学生で扱う,という指摘があった。自分が忘れてるだけかなぁ。
  
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2013年09月22日

あの土下座はなんだったのか

先日,出張で初めてカプセルホテルに泊まった。割りと居心地良かったというか,閉所恐怖症ならぬ閉所にいると安心する体質なので,むしろ熟睡できた。一方,寝る前にはしっかり湯につかりたい体質でもあって,強制的にシャワーになるのはやはり少し残念であった。それらを差し引いてプラマイゼロ,値段の安さを考えると,これからはカプセル使おうか。


・【海外の反応】 パンドラの憂鬱 海外「映画より面白い」 ラストサムライの史実に外国人興味津々(パンドラの憂鬱)
→ 外国人の反応,割りと西郷隆盛と西南戦争が誤解されている感じがしておもしろい。
→ 西郷隆盛は,武士が時代遅れであることはわかっていたので,死に場所として征韓論を唱えた。しかしこれが反対されたので下野し,やがて西南戦争を起こす。自分の反乱軍が敗北することで,武士の後進性を自覚させようとした。まさに負けるために起こした戦争だったわけだが,これだけ込み入った事情というのは外国人には伝わりにくかろう。
→ 『ラストサムライ』は戊辰戦争というより西南戦争に近いフィクションではあるが,元ネタのフランス人将校は戊辰戦争だからややこしい。渡辺謙一味の反乱も西南戦争ほど大規模なものでもない。
→ 『ラストサムライ』,悪い映画ではなかったと思います。最後の土下座が無ければもっと良かったが。あそこで決定的なリアリティを欠いた。


・じゃなんで公選法改正されないの(河野太郎公式ブログ ごまめの歯ぎしり)
→ 大枠知ってはいたけど改めてひどいよなこの「慣習」。司法がんばれよ。
→ 意見が多様化しているんので,党議拘束というもの自体が政党政治にそぐわなくなってきているのでは。せめて,というところで党の公約になっていないものは党議拘束を外せばいいのではないか,という点には賛成だ。執行部がこんなに硬直性が高くてはいけない。
→ 他の方の反応にあったが,児ポ法改正案はよくこの慣習を突破したなと思う。あれも党内の意見が必ずしも一致していなかったのではなかったか。よくわからない。


・徳川綱吉の再評価について( tukinohaの絶対ブログ領域)
専制君主としての徳川綱吉と生類憐みの令(Kousyoublog)
→ 徳川綱吉について。当時は所与の環境に対して行った政策に過ぎなかったものが,後世大きく取り上げられて毀誉褒貶を受けることはしばしば見られる(アクバル大帝の宗教融和とか)。その一つってことかな。
→ 言われてみると,同時代のルイ14世や康煕帝というよりは,ヨーゼフ2世的な感じ。「いのちだいじに」なんて啓蒙主義的だし,専制的な上からの改革でもある。吉宗のほうがむしろ絶対君主的。彼は財政再建をしつつ,武士と町人と農民のバランスをとることに腐心させられたわけで。


・実際に起こり得る「自由vs民主主義」の戦い (JBPRESS)
→ エジプト革命,都会と農村の意識の差異は,フランス革命以来共通と言えるかも。革命を起こすのは都市民。農村にそれが従うかどうかは別問題というわけだ。ヴァンデーの反乱はその点で現代にもつながっている。
→ もう自由主義と民主主義は必ずしも並立するわけではないことを納得としたほうがいいのかもしれない。 西欧流の流儀の定着は困難だ。自由のない民主主義も,独裁による安定した社会も,どちらもどこかで必ず腐敗するので,結局西欧流に両立させていくしかない,と思うのだが。

  
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2013年09月17日

大体「フォレスト本郷はどこ?」>道案内

・高麗王朝の遺跡、世界文化遺産に 北朝鮮・開城(朝日新聞)
→ 開城は高麗の首都。韓国との国境に近く,ゆえに工業団地でも有名だ。
→ 登録理由に「仏教文化から儒教文化への移行期にあった高麗の文化的伝統を示す証拠になる」とあるように,新羅・高麗というとばりばりの仏教国であったのだが,これが儒教国に変わっていく。
→ 理由は外交関係にある。中国の場合,唐は仏教国だったが,北宋は儒教のほうが強く,モンゴル人の元になると仏教重視(というよりも儒教軽視)に戻った。しかし,モンゴルを放逐して建国した明は,「漢民族の伝統」を重視して(元は異教の)仏教ではなく儒教を重視し,特に朱子学を官学化した。
→ これに対し朝鮮半島は,唐の滅亡と新羅の滅亡がほぼ同じ時期,そして元の滅亡と高麗の滅亡もおおよそ近い時期という点に着目すると答えは出る。末期の高麗では,親元派と親明派に分裂していたことも重要。要するに,そこで親明派が勝って建国したのが,朝鮮王朝(李氏朝鮮)にあたる。




→ 全部分かる人は暇人らしい。あ,私は暇人でした。
→ 入れないのに食べているという矛盾に「あと」でネタを付け足す投げやり感がとてもいいと思います。
なお元ネタは乙武さんイタリアン入店拒否された事件ラーメン屋で「高菜食べてしまったんですか」事件川越シェフ800円の水事件病院で番号で呼ばれた事件


・およそ8年ぶりに二次元に萌えて、同人界の激変を感じた(増田)
→ 私自身,確かにpixiv以前のサークルの探し方が思い出せない。コミケのカタログROM化とpixivは革命だったなー。
→ 自分が同人誌買い出した時点で,「サークルはインターネットで探すもの」ではあったのだけれど,思い返すにそのインフラがきちんと整ってきたのは,ほんのここ数年のことだと思う。


・ダビデ像が真性包茎っておかしくないですか?(Yahoo知恵袋)
→ ヘレニズムとヘブライズムの衝突,という意味では見事にイタリア・ルネサンス,かも(ということにしておきたい)。当時から議論があった,ということは知っておいて損はない。
→ 他の方がブコメで指摘していたが,「キリストの割礼」という場面が聖書にはあるが,人気の無い場面であり,ほとんど題材に選ばれていない。まあ人気がない理由はわかる気がする。


・俺にバルサからオファーが来ないのは日本の体育教育のせい(bluelines)
→ 全面的に同意。自分を省みても社会人歴数年,外国人に道聞かれた時か,海外旅行のタイミングくらいし話す機会がなく,衰える一方だ。
→ 英会話教育には金と時間がかかる。それは公教育でやれる範囲か?という論点は大事。英会話によらず,なんでもかんでも公教育でできるわけではない。
→ 公教育議論は完璧主義者が多い印象。結果,どの科目も詰め込み気味で,履修が終わらんという悲鳴やら未履修やら,中高一貫が有利になりすぎるやらが起きている気はする。
  
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2013年09月16日

咲関連の気になったもの(13年4月中旬〜6月中旬頃)

・【考察】枕神+リザベーション!最強能力誕生の鍵は白水哩の女たらし力!(麻雀雑記あれこれ)
→ 原理は納得なのだが,オチがひどいw。最強の雀士になるためには犠牲が必要なのだ。竜華は犠牲になったのだ……
→ 哩さんの人妻っぽさが半端無いわけだが,あれはどこから来るのだろうか……後れ毛的なアレのせいか。


・dreamscape-5/17の更新
→ 「男子のインハイチャンプは二条泉ちゃんと同じくらいの強さです。」これは衝撃的だった。……やはりiPS細胞が無ければ強くなれないらしいぞ……
→ まじめに考えるなら,自分の中での結論は,
1.アニメの設定が間違っており,実際の競技人口は男子のほうが少ない。
2.ここ10年ほどの女子麻雀が異常に強い世代。(トッププロは例外的先例,大沼プロとかどうすんの?と言われたらどうしようもない)
→ このいずれか,もしくは両方かなぁ。こればっかりは考察材料がなさすぎるので,作者の続報待ちしかない。


・【咲-Saki-】鹿倉胡桃(25)← ぐう興奮する 他(やるじぇい!)
→ たかみー好きのワイも納得>「渋谷尭深(68)←なんか割と変化なさそう」 。ロリババアとは別方向に,ちゃんと老けてるんだけど,雰囲気とかあんまり変わってない。そこが彼女のかわいさだと思います,はい。
→ 天江衣(25)←小説で一発当ててそう。麻雀は日本最強のアマとかそんな感じで。
→ 彼女らの将来はけっこう妄想しがいがあるなぁ。


・ペア麻雀選手権、全選手入場!(やまのふ堂)
→ なんとも妄想が広がる。
→ もう清老頭しか見えない……>上重漫&妹尾佳織
→ どいつもこいつも最強そうに見えるが,やっぱり凶悪なのは天江衣&高鴨穏乃かなと。一向聴地獄に深山幽谷が加わったらどうなるんだ……三向聴地獄くらいに進化しそう。
→ あとどうかんがえてもやばいのが松実玄&宮永咲。カンドラが増やせること以上に,咲ちゃんの調整能力により玄さんがドラを抱えて爆死することが無くなりそう。ドラから解放されることなく,かつ自由にのびのびと打つ玄ちゃんが見たい。それは彼女にとってとても幸せなことだと思うのです。咲さんはものすごく苦労しそうだけど。


・楽しさの理由――龍門渕透華と神代小蒔にまつわるミステリ(Danas je lep dan. )
→ これは説得力がある。
→ それにしても,「人と神々の触れ合い」「人も神々も麻雀を楽しむ(そのために永水はいる)」とすると,ますます東方じみて来る。弾幕が麻雀になっただけで。あとまあ,東方は神様が直接出てくるか。巫女さんに憑依するのではなく。
→ まあ,日本神話とはそもそもそういうもの,という話かもしれないが。ちなみに,『咲』も東方も長野に縁深く,諏訪に行くとどっちの聖地巡礼にもなるので,多分何かあるんだよあのへん。建御名方は今からでも創作の神に転職しよう(提案)
  
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2013年09月15日

アメリカ外交史の転換点は?

・「世界の民主主義を守るためにアメリカは立ち上がらないといけない」この傲慢な発想はどこから来たのか? パットン将軍、自腹でシアーズ・カタログから部品を購入(Market Hack)

本当はこういう記事は2,3ヶ月経って忘れた頃にツッコミを入れることにしているのだが,これについてはモヤモヤが晴れないので今のうちに書いておく。この記事,何がまずいかというと史実の指摘が怪しいか,明確に間違っている点がいくつかある。

0.この論って正しいの?
極端な誤りではないが,厳しいと思う。要約すれば「建国以来孤立主義だったが,その風潮にウィルソンがWW1を通して「スーパーヒーロー症候群」を植えつけた。そこで中東情勢にもかかわりを持った。世界恐慌で一時孤立主義に戻ったが,ホロコーストのような人権弾圧を見て,再び”人権”と”民主主義”を掲げる世界の警察を自任するようになった」ということになる。が,1.まず「建国以来孤立主義だった」というまとめは簡潔な表現にしても粗雑。モンロー宣言には言及しなくてよいのか。  2.WW1と世界恐慌は決定的な転換点ではない。 3.アメリカはおそらく戦間期の中東情勢にはかかわりが薄い。 4.ホロコーストは理由の一つに過ぎない。むしろトルーマン・ドクトリンへの言及がないのは本当に意味不明。 そのほかにウィルソンだけを過大評価であり,アメリカの民主主義の特質は他の点にもあるはず,という点は指摘されるべきだが本稿では扱わない。


1.話の始点はそこでいいの?
まずスタートでせっかく独立戦争そのものが孤立外交の起源だという指摘をせっかくしているのに,モンロー宣言に言及がないのは片手落ちである。独立直後から孤立外交に向いたのはジョージ・ワシントンの方針だが,これを明確な形で示したのはモンロー宣言になるし,モンロー宣言がその後120年ほどのアメリカ外交の基本方針となった。

ナポレオン戦争で本国スペインが荒廃したことにより,ラテンアメリカ諸国に独立の機運が巡ってきた。そこでウィーン体制下の反動主義に染まった欧州諸国は独立鎮圧に動くのだが,これに対抗してアメリカの出した宣言が1823年のモンロー宣言だ。トルーマン・ドクトリンにあわせるならモンロー・ドクトリンという表記になるが,モンロー宣言が定訳になっている。モンロー宣言は,実は単純な孤立主義というわけではない。正確な意味は「ヨーロッパ諸国と新大陸諸国の相互不干渉」になる。ベーリング海峡のことを無視して「大西洋間の相互不干渉」と簡潔に言う場合もある。独立した新大陸諸国はヨーロッパとは異なった政治体制を作るので,欧州の古い秩序を持ち込まないでいただきたい,ということだ。ちなみに,モンロー宣言全文はアメリカ大使館のHPで日本語訳で読める。同サイトにはトルーマン・ドクトリンもある。

もちろん,この宣言もアメリカ合衆国に発言力が無ければ効果は薄く,事実当時の合衆国は独立40年程度のいまだひょろっちい国家であった。では意味がなかったかというと,ちゃんと布石はあった。当時のイギリスは外相カニングのもと,「欧州諸国との協調よりも,独立を支援して新国家を経済支配したほうが国益に叶う」と判断し,ウィーン体制からの離脱を図っており,強力な海軍を用いて独立側を支援していた。アメリカが最初はイギリスの威を借りて孤立主義に振れたことは意外な事実かもしれない。ちなみにイギリスはラテンアメリカ独立支援のための共同宣言をアメリカに呼びかけているが,これをつっぱねて単独宣言としたのがモンロー宣言だ。アメリカからしてみればイギリスも「侵略者」には変わらなかったのであるが,にもかかわらずその威だけ借りてしまう辺り,見事なリアリズムであろう。

この点,モンロー宣言に関する誤解がそれなりに広まってる感があるので指摘しておく。モンロー宣言は合衆国自身の独立維持・内政専念が当初の目的であって,最初からラテンアメリカ諸国に対する保護権を主張したものではない。前述の通り,当時のアメリカには単独で対外進出するだけの国力はなく,ヨーロッパの騒乱が新大陸に持ち込まれ,それにアメリカが巻き込まれるのを嫌がっていたからこそ,範囲を自国のみならず新大陸全体に広げたのである。一方,ラテンアメリカ諸国の”飼い主”が切り替わる契機は1889年のパン=アメリカ会議とされており,少なくともその時点までは明確にイギリスである。当初から保護権を訴えたものと解釈すると,この点で矛盾が生じてしまう。ただし,モンロー宣言の中に将来的に読み替えることができるだけの余地があえて作られていたことまでは否定しない(後述)し,当初からラテンアメリカに興味関心があったと言うことはできる。ちなみに日本語版Wikipediaは誤解された解釈をとっている。oh......

無論,これだけのことを書けというのは記事を冗長にしろと言っているようなもので,それは私も勧めないが,それにしてもモンロー宣言の一言も無いのは首を傾げるところだ。「ボストン茶会事件」を出すならよほどこっちだろう。また,アメリカの世界の警察論をちゃんと語るなら,本当はジャクソニアン・デモクラシーや明白な天命論あたりに触れたほうがいいわけだが,話が拡散するのでここではしない。というか別の人がしてくれるはずです(他力本願)。


2.アメリカは世界恐慌を契機に孤立主義へ回帰した?
アメリカはモンロー宣言後,順調に国内開拓を進めていた。その間には南北戦争やフランスのメキシコ出兵があったがここではおいておく(後者はモンロー宣言が実効力を示した初の出来事だ)。そして1890年,「(国内)フロンティアの消滅宣言」を行う。こうしてようやくアメリカの対外進出が始まる。最初の干渉の方向はカリブ海と太平洋・アジアであった。前述のWikipediaでは「ここでモンロー宣言は破棄された」と書いているが,これは完全に意義を取り違えている。「大西洋間の不干渉」なのだから,太平洋・アジア方面はモンロー宣言の適用範囲外だ。ただし,拡大解釈がなされて宣言の目的が読み替えられてはいるのは確かだ。国力増大を背景に,モンロー宣言はアメリカ合衆国によるラテンアメリカ覇権の正当化に読み替えられた。ラテンアメリカ保護者の地位をイギリスから奪ったのである。本当はここでジョン・ヘイの門戸開放宣言にも言及したほうがいいのだが,それこそ冗長になるので避ける。ともかく,アメリカはモンロー主義を維持したまま,ラテンアメリカや太平洋・アジアへの進出(侵略でもいいが)を強めていった。

そこでWW1とウィルソン主義が,モンロー主義の例外を生んだのは確かである。が,ポイントは戦後すぐに孤立主義に戻っていることだ。国際連盟への不参加は,直接的には共和党の反対,つまり国内の政党間の争いが原因だが,その後世界恐慌までアメリカ大統領は共和党から選出され続けることになる。アメリカ世論自体が孤立外交への回帰を希望しており,ウィルソンが例外であった。戦間期のアメリカは徹底したモンロー主義だ。太平洋・アジアに対しては主導的にワシントン会議を開いて利害を調整したが(私はワシントン会議を日本いじめと評価する向きは不当だと思う),ヨーロッパへはWW1で生じた債権の回収に必死であっただけだ。ドーズ案・ヤング案はこの向きで理解されうる。すなわち,アメリカの民間資本をドイツに注入することでドイツ経済を回復させ,賠償金が滞りなく英仏に支払われることで,ようやく英仏から債権を回収できた。

世界恐慌の発生は,このドイツへ投資したアメリカ民間資本の引き上げを意味した。そうして世界恐慌はアメリカからヨーロッパへ,そして世界へ拡散していく。しかし,これはあくまで経済的な話であって,ここを孤立主義外交への転換点としてピックアップする意味はほとんど無いと思う。


3.アメリカがシリアの独立と国境画定にかかわってたって本当?
正確に引用すると「なぜなら第一次大戦の戦後処理の過程で、異教徒同士を無理矢理ひっつけて、シリアという国の線引きをしたことに、アメリカも一枚噛んでいたからです」である。疑問形にしたのは,私自身ここら辺の専門家というわけでは全く無いので,否定しきれないからである。しかし,少なくとも一般的な解釈で言えば疑問符のつくところなのは間違いないと思う。

さて,話をシリアに向ける。問題の根本は中東一体を支配していたオスマン帝国の戦後処理について,イギリスが戦中に,交渉相手別に三枚舌を使った外交をしていた点である。これが大戦末にロシア革命を起こしたソヴィエト政権によって暴露されてしまい,戦争協力の見返りに独立の約束をされていたアラブ人の不満が爆発,イギリスは窮地に陥った。ウィルソンの平和十四箇条の第一条にわざわざ「(帝国主義的な)秘密外交の禁止」とあるのはこれが理由である。一方,元記事が挙げている第十二条は,確かにオスマン帝国支配下の民族独立を挙げてはいるが,その周囲の条項を見ると「バルカン半島問題の解決」や「ポーランドの独立」,「イタリア国境の調整」などが挙げられており,中東のプライオリティが特別に高かったわけではない。さらに言えばこれもソヴィエト政権が先回って「平和に関する布告」を発表して民族自決を訴えているのに対し,植民地に対する共産主義勢力の影響力拡大を防ぐため,資本主義国家の側からもそうした発表を出さざるを得なくなった,という事情がある。英仏では持っている植民地が膨大すぎるため無理であった。一方,大規模な植民地はフィリピンくらいしかないアメリカは言いやすかった。

そして十四箇条通りにアメリカが動いたかというとそうではないのは指摘済だが,一応中東に話を限って具体的に見ておく。結局「アラブ人の独立国家建設」と「ユダヤ人のナショナル・ホーム建設」,「英仏露による中東の分割」という3つの戦後処理方針が衝突した結果,「中東地域は独立の準備が整っていないという名目で国際連盟預りとし,国際連盟が英仏に統治を委任した」という形式での,英仏の勢力圏となった。シリアはフランスの委任統治領となったが,当初は現在よりも北側に膨らんでいた。これはオスマン帝国と連合国の講和条約セーヴル条約によるものであった。しかし後の国父ムスタファ・ケマルがセーヴル条約締結を認めず,失地を大きく回復した上でトルコ共和国を樹立し,改めて講和条約を結び直した。これがローザンヌ条約になる。ローザンヌ条約によりフランスの委任統治領は少し削られ,こうして現在の国境線を画定した。

というわけで見ていくと,そもそもアメリカって国際連盟加盟してないよね,という時点で委任統治領の範囲策定にかかわれるわけがないで終わりと言えば終わりなのだが,ついでに言えば私の確認した範囲ではセーヴル条約・ローザンヌ条約両条約の締結国にアメリカは入っていない(セーヴル条約の条文はこちらローザンヌ条約はこちら)。一応,セーヴル条約ではアルメニアの国境画定にウィルソンからの言及があり,ローザンヌ条約ではアメリカから派遣された代表がトルコ側の擁護に立っていたようだが,シリアはやはり無関係のように見える。本当はアメリカがかかわっていたのなら,詳しい人がそう解説してくるのを待ちたいところだ。ついでにこれもWikisourceだが,平和十四箇条の原文を見ても「Syria」の言葉はない。


4.トルーマン・ドクトリンには言及しなくていいの?
最後にコレ。まさか言及が無いとは思わなかった。「WW2がアメリカが世界に積極的にかかわっていかざるをえなくなった契機になった」というならまだしも,ホロコーストだけを挙げてウィルソン主義が復活したから,というのはあまりも理由が断片的すぎる。記事中にもある通りWW2においてアメリカは当初消極的な態度であったが,真珠湾にヨーロッパ第二戦線形成と,強制的に参加させられていった(少なくとも表面上は)。「民主主義の兵器廠」を名乗ったあたりは確かにウィルソン主義的な考え方も見えるが,あくまで”兵器廠”であって直接参戦を示唆したものではない。ここにおいてもアメリカはいまだ巻き込まれた側には違いないのであって,自分から日本やドイツに宣戦布告したわけではないのだ(少なくとも表面上は,と注記しなくてもいいか)。

一方戦後のアメリカは引き続いて冷戦にもかかわっていくことになるが,こちらで”巻き込まれる”という表現は中立的ではあるまい。よって,ここでトルーマン・ドクトリンは大きな意味を持つ。なぜならあれは「アメリカ合衆国がソ連封じ込め政策を取る上で,”積極的に”トルコとギリシアを防衛する」,すなわち「巻き込まれるくらいなら先んじて西側国家の防衛・拡大をする,それがヨーロッパであっても」という宣言なのだ。トルーマン・ドクトリンはこの点でモンロー宣言の撤回が明確である。その積極性でも,”ヨーロッパ”という点でも。仮にWW2を「アメリカが他の主要国の水準で国際社会にかかわりを持つようになった」契機として強調するにしても,「世界の警察」と化した契機はやはりトルーマン・ドクトリンではないか。ついでに言えばアメリカが積極的な外交姿勢になったのは冷戦が大きな理由であって,人権や民主主義が前面に出てきたというわけでもないと思うのだが,どうだろうか。  
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2013年09月11日

『ネギま!』に対する私的落穂拾い

赤松健の新連載が始まった。この新連載は期待を持って読んでいるが,それは『ネギま!』の終わり方と無関係ではない。実はこのネタ,『ネギま!』が終わったタイミングで書こうと思っていたのだが,タイミングを逃して「次の連載が始まった時に」と思ってメモ書きのまま寝かせていたものであった。しかし結果オーライというべきか,新連載が『ネギま!』につながっているなら,むしろ今書いてしまうのが正解である。

私にとって赤松健は,途中まで人生に多大なる影響力を持っていた漫画家であった。『ラブひな』は,『シスプリ』と並んで私がこの道に入る原因であったし,『ラブひな』の影響で受検する大学も決まった。そして入った大学では『ネギま!』の影響を受けて第三外国語はラテン語にした。もっとも,ラテン語はほとんど身にならなかったが。なお,古代ギリシア語は授業1回目を受けた瞬間「ギリシア文字覚えられねぇ!」と気づいて早々に撤退した。そんな『ネギま!』ではあるが,少なくない人がそうであるように,魔法世界編が長すぎて飽きてしまった。単行本換算で,30巻あたりの頃には半ば惰性で読んでいた。15巻くらいまでの熱の入れ方とはえらい違いである。

赤松健作品の何が良かったかといえば,ひなた荘の恐ろしいまでの居心地の良さであって,麻帆良にも同じことが言えた。そして,その居心地が良すぎる空間ゆえに次第にネタが詰まっていき,作品後半には遠出が多くなる。そして遠出が多くなるとなぜかバトルも増える。バトル展開そのものはおもしろい回が多いが,それにより他の要素が出てこなくなるのが冷める原因であった。この点,バトルそのものが悪くないだけに悔しい部分であった。

『AI止ま』と『ラブひな』から「妹が出ると赤松健は終わる」という法則がささやかれており,この法則は『ラブひな』連載終了後に赤松健本人が肯定していた。ゆえに『ネギま!』でもそうなるのではないかと言われていたが,結局妹は登場しなかった。ただし,アーニャを無理やりカウントするなら実はそう間違っていない。要するに妹とは過去を連れてくる存在であって,赤松健作品は過去が物語に追いつくと終わりへ向かうのである。『ネギま!』は最後の遠出,魔法世界編が長すぎて違和感があるだけで,魔法世界編が麻帆良からの最後の遠出には違いないのだ。ちなみに,『ラブひな』も可奈子が登場すると終わりに向かったのは確かだが,実際には登場後もけっこう長く続いている。

『ネギま!』は,この魔法世界編が長すぎたこと,それだけがこの作品の欠点であった。魔法世界編の1回で全てを解決しようとしたことが間違いであった。1回で全てを解決させるためにバトルは多くなり,ドラゴンボールもびっくりの超インフレが起こり,バトルにかかわらない生徒は文字通りの戦力外通告となり,バランスを崩した。ネギ君は途中で一度,麻帆良に帰ってくるべきだったのだ。何がなんでも。父親探しは二度に分け,魔法世界の危機も二回目に行ったときに起きることにするだけでも相当違ったはずである。それが作品の質を高める事にもなり,延命にもなった。私は全く触れてこなかったが,何度もアニメ化したりまさかのリアルドラマ化だったりといろいろあったが,あれらの企画も私が触れないような企画ではなく,ちゃんと練り上げるだけの時間も気力も生まれたのではないか。何があって,あれだけの性急な展開と結末を良しとしたのか。ひょっとして赤松健本人が飽きていたのではないかという勘ぐりさえできてしまう。『ラブひな』の「いつでも帰ってこられる場所,永遠の竜宮城」を示した,あの完璧な最終回に比べると悲しくなってくる。


そこへ来て,今回の新連載である。何が新しいって「居場所を作らない」「最初からバトル」だ。連載回数と遠出の距離とバトル展開偏重が比例していたのは『ラブひな』も『ネギま!』も同じで,だったら最初から偏りきってしまったところからスタートしようと。さすがは赤松健というか,すばらしく自己分析していると思う。しかも完全新作ではなく,明らかに投げっぱなした『ネギま!』の補遺ときたらテンションが上がらないはずはない。「ああ,やっぱり赤松健も投げっぱなしたの気にしてたんだな」と思えただけでも割りと喜んでる自分がいて,むしろ『ネギま!』への愛着に気づいてしまった。魔法世界編の後半,あんなに惰性で読んでたのに,私も現金なものである。いやむしろ,惰性で読んでたからこそ,投げっぱなした伏線と一緒に”熱”も取り返してくれるという期待感が強いからか。

いずれにせよ,水曜日の楽しみが一つ増えた。「居心地のいい場所のない」初の赤松健作品,楽しんで読んでいこうと思う。
  
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2013年09月10日

東京オリンピック決定とか

・東京五輪決定。
自分があまりこれに言及してこなかったのは,どうでも良かったというよりもなんとも言えなかったのが正しい。「被災地復興を口実に使っときながら,危険を指摘されたら遠いとかいうダブスタ」とか,「柔道連盟のパワハラや,体罰に代表される体育会系気質の汚点が改善されてない」とか,「猪瀬都知事の失言」とか,とてもじゃないが賛同する気分を失わせる事件は多かったし,これらにはそれぞれ当時ブコメを残して反応している。
→ が,五輪招致活動の核は,実のところ大して復興でもなく,「スポーツの感動をもう一度」的なものであったのは,東京のど真ん中に住んでいるものとして実感はあり,この辺は都民ならある程度共通見解が取れるのではないかと思う。最後のプレゼンもその方向でまとめていた。



このプレゼンの出来は,悔しいけど高いと思う。実際この方向でまとめて「東京ならスポーツのすばらしさの発信を,安全・安心・確実にできる」としたのが決め手だったのではないか。
→ 私自身スポーツ観戦は好きで,大相撲が一番熱心に見ているが,野球とサッカーは大きな試合なら見ている。格闘技もK-1全盛期にはよく見ていた。しかし,五輪は今ひとつ自分の中で盛り上がらない。2012年夏頃のブログを見てもはてブを見てもtwitterを見ても,五輪にほぼ全く触れていない。理由は単純に「ルールやスター選手の分からない種目が多いから」で,日本人選手を応援するにも,サッカーのA代表や野球のWBCチームくらい普段から露出のある面々ならまだしも,マイナー種目の選手は正直さっぱり知らない。「地元チームを応援するのが流儀」というのがスポーツという”文化”というのはわかっていても,私の中のナショナリズムには呼びかけが足らないのが五輪というものであった。(話がややそれるが,冬季五輪なら愛知県民のナショナリティとしてフィギュアスケートを見る仕事があったのだが。古くからはてブを追ってくれている人なら,自分がキム・ヨナの採点騒動に首突っ込んでたのを知ってると思う。)
→ しかしまあ,スポーツ観戦好き一般としてそれぞれの種目ファンが盛り上がるのは理解できるし,少なくとも「スポーツの感動」を前面に出されては反対もしづらい。というところで,強く反対するところも賛成するところもなく,どちらかというと「表現規制とコミケの問題が怖いから消極的に反対」という程度だったのだが,来てしまうものはしょうがない。せめて7年後までに上記に挙げた欠点の緩和や,表現規制反対・コミケ存続がなされていることに期待したい。


・世界の飲み物になった日本発の乳酸菌飲料 失敗の連続が生んだヨーグルトと似て非なる甘い飲み物(JBPress)
→ 言われてみると日本的魔改造の一種である。カルピスはおいしいよね。割りとよく飲むが,乳酸菌飲料のというイメージが全くない。


・シリア内戦をスペイン内戦と比較したイスラエル紙の記事(中東の窓)
→ 単純な比較は危険だが、言いたいことはわかる。西欧諸国(というか民主主義国)としてどっちも支援したくないという。
→ スペイン内戦のときは王党派がファシストに乗っ取られ,共和派は共産主義に乗っ取られ,英仏は不干渉となった。今回も,独裁者VSイスラーム過激主義(含むテロリスト)で,先進諸国は呉越同舟を避けている。つぶしあえーでは済まないのがシリアの一般庶民で……


・軍役応募で戸籍を贈呈、北京市の“ローマ帝国的”新政策(KINBRICKS NOW)
→ 中国がアントニヌス勅令に行き着くのはいつの日か。行き着かないでしょうなぁ。
→ 逆説的にあれがいかに亡国的だったか想像されうるのかも。


・avexが過去最高売上&過去最高利益を更新!なんとBeeTVが頑張ってる(サイプロ)
→ ブコメが「解約忘れ商法」派と真っ当に売れている派でケンカになっているので,誰か実証的に調べるべき。私気になります。

  
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2013年09月08日

第225回『これからの「正義」の話をしよう』マイケル・サンデル著,鬼澤忍訳,早川書房(ハヤカワ文庫)

今更?そう今更である。一応読み終わったので書くだけ書いておく。説明不要の一世を風靡した本書だが,平易な哲学思想の紹介である。現代社会において普遍的に論点になりそうなポイントをピックアップし,それに対して解答を出せそうな哲学者の思想を説明していくスタイルで,先に論点が来るところに特徴がある。それゆえに主要な全哲学者の思想を紹介していない,というよりもベンサム,J・S・ミル,リバタリアン,カント,ロールズ,アリストテレス,そして自らの属する共同体主義の6種類しか,基本的には紹介していない。順番もこの順番で,要するに時代順には全くなっていない。取り上げられている諸問題は,「忠誠心は金で買えるか(外国人傭兵について)」「代理出産の是非」「自殺幇助」「アファーマティブ・アクション」等。

説明は本当に巧みで,紹介された思想については,論点からスタートして乖離せず,根本的な部分まで説明しつつちゃんと論点に戻ってくる,ということをやっている。このスタイルをとる概説書だと,これがなかなか難しい。論点から旅立って一度根本思想にたどり着くと,そのままどっかに飛んでいって論点に戻ってこないことがしばしばあるからだ。時代順になっておらず,思想史には一切触れていないのも,哲学思想の普遍性を強調する上ではむしろ効果的であった。哲学にある程度親しい人なら問題ないが,全く知らない人からすれば「なんで2300年前に生まれた思想が,現代社会の論点を考える上で役立つの?」ということにはなるだろう。また,そのくらいの初心者なら「哲学思想ってこんなにラディカルなんだ」と思わせられる点でも新鮮かもしれない。そして本書はそのラディカルさが,現代社会の諸問題の解決においていい切れ味を見せていることを紹介するのがとてもうまい。なるほど良書である。

トップに功利主義が来て,「功利主義は強いが人間性に欠く」という批判からリバタリアン,カントとロールズが出てきて,別の観点からの批判としてアリストテレスが呼ばれ,最後にちゃぶ台をひっくり返して自らの共同体主義が出てくる。こうして書くと共同体主義の売り込みのようにも見えるが,実際のところ共同体主義は最後の最後で少し紹介されるだけであまり出てこない。まさに自らの思想の売り込みと思われるのを避けたのではないか。また,基本的に功利主義に反論する形で他の哲学者を紹介して進んでいくので,功利主義は中盤以降サンドバック状態であった。これはアメリカで功利主義が根強いのが原因らしい。私個人としてはまず共同体主義,次点で功利主義に親和性が高いので,なんとも複雑な気分になる構成の本であった。(要するに私は保守主義なので,中立性・絶対的な正義の法則を否定する共同体主義は親和性が高い。相対主義やコミュニティの抑圧には反発しつつも,コミュニティの持つ道徳的重みも認めていく路線は賛同するし魅力的だが,バランスが難しい。むしろそのバランスをとるには熟慮・熟議をとるほかなく,それは保守主義なのではないかと。余談ですが。)

自分としては復習がてら読んだところが強いが,その上で改めてカントの思想とは絶望的にそりが合わないのが確認できたのが最大の収穫であった。人間の尊厳を認めること自体はいいのだが,カントの「理性は全ての人間に普遍的に同質=道徳法則も普遍的」にはまるで賛同できない,というところで。



  
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2013年09月07日

非ニコマス定期消化 2013.3月下旬〜2013.4月上旬



サガフロ2は普通のTASはあるが,全シナリオ年代順となるとまだである。がんばってほしい。ギュスターヴ編を含む以上,文章を駆け抜ける動画になるのはしかたがないよね。



このサウスマウンドトップの勝ち方は初めて見た気が。というか画面外押し出しって有効なんだ……



良い復習MADだった。



か  わ  い  い  。一瞬見える鎖骨に気づいた奴は天才。



曲の中二チックな感じに演出がよくあってる。サンダービリビリ。ままま式あぴミクはロリすぎて使い所が難しいが,本作ではギャップが妖しげな雰囲気を醸し出している。



もう48をゲームのタイトルにつけるのはやめよう(提案)あとsealは殿堂入りでいいんじゃないかな。



プロ実況シリーズにしては解説がしっくり来すぎるので,戦車道とサッカーは似ているのではないか(錯乱)



けいえむアレンジ。よくまあこの長大で複雑な曲を。



このシリーズ毎回すごいなと思うけど,トレードの使い方には特に驚いた。本編と全く関係ないし,1万オーラム手に入る以外得にもならないと思ったのに,そんなことはなかった。



今回もかわいく,丁寧に踊れている。
  
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2013年09月06日

最近買ったもの・読んだもの(放課後しっぽデイズとか)

・『放課後しっぽデイズ』クリア。エロゲレビューとして個別に記事を立てるほどのものではないので,ここで簡潔に。本作は新原画家を起用するにあたっての完全な実験作であるが,実験はおおよそ成功であったと言ってよいと思う。絵のクオリティは十分に高かった。べっかんこうに似ていることもあり,塗りで近い雰囲気を出すことに成功しており,これなら混ざっても違和感はあまりないのではないかと思う。
→ ただし,エロゲの原画家は脱がすとパースがとたんに取れなくなるパターンがをしばしば見るので,本当に実験したかったのなら,むしろちゃんとエロゲーにして発売するべきだったのではないか。15歳以上推奨というのは中途半端だ。
→ シナリオ等については超短編なので評価のしようがない。2時間ほどで終わるので,1500円という値段設定は妥当というよりはむしろ高いくらい(普通のエロゲーが8800円で15〜20時間とすると,時間あたりの値段は割高)。というわけで,夏野イオ原画の次回作に期待して70点。


・『大室家』1巻。基本的にいつものゆるゆりだが,どちらかというと京子がいないときのゆるゆりではあって,彼女がいない話が続くとこうなるのかという点では新鮮だった。櫻子では京子の役はできない(しする必要もない)。撫子の友人達も花子様の友人達もキャラが立ってておもしろかった。美穂から漂う清楚系ビッチオーラが半端なさ過ぎていつ見ても笑える。あとみさきちの「今日はなんか身長の調子がわるい」がツボ。
→ 撫子の彼女が明かされるのははるか先のことなんだろう。今のところ全員ありうる感じだが,注意深く読んでいきたい。隠してあることを念頭において読むと,それぞれの話に緊張感があってよい。


・『なもり画集 ゆるなもり』。外装が段ボール状で中は海産物という設定,「取り扱い注意」だの「きときとだよ」(富山県の方言で「活きが良い」の意)だの書かれているという超富山県愛あふれる仕様となっている。一方画集自体も小学生の学習帳を模した作りとなっており,なんとも徹底している。なもりが4人という設定はもはや公式の模様。
→ 中身は169ページにわたってみっちりイラストが掲載されているが,定価が3600円超と普通の画集と比べても高いので,これくらい載ってないと困る。グッズイラストやpixiv投稿作はもちろん,かなり昔のものやマイナーなものまで載っているので資料価値はそれなりに高い。これを見ると2007年から09年の間に超絶進化を遂げている。『ゆるゆり』連載開始頃にはおおよそ今の絵柄になっているが,ここで1・2巻を読み返すとまだ昔の絵柄の名残が読み取れておもしろい。すでに見たことのあるイラストが多いとはいえ買って損はなかろう。


・ガルパン「DEEP PANZER CD」。内容は大きく分けて3つ。まず,東富士の自衛隊の総合火力演習に,戦車道の面々が招待されて演習を行ったもの。これはまあおもしろかったが,同時にドラマCDの限界でもあるかなと。やっぱり走っている戦車の映像が欲しくなった。
→ 次にあんこうチームによる合唱2つ「戦車道行進曲」と「雪の進軍」。「戦車道行進曲」はとても良いアレンジなんだけど,合いの手はいらなかったのではないかと。もしくは合いの手ありと無しの両方のバージョンを収録して欲しかった。「雪の進軍」はあんこうチームより,作中通り秋山殿とエルヴィンの2人に歌って欲しかった。もしくはこれも両方収録して欲しかったかな。さらにあえて言うなら歴女チームに歌わせてもおもしろかったのではないか。これをあんこうチームが歌う意味はあまりなかったように思う。
→ そして作中の戦闘の名シーンの,BGMや台詞抜き。要するに戦車の駆動音と砲撃音しかないというマニアックな仕様だが,正直タイトルを見ないとどのシーンがわからない。
→ 総合して2000円分の価値があったかと言われると微妙なラインだが,まあファンアイテムと割り切ることにしたい。


『DIVB スレッジハマーの追憶』2巻。つなぎの話なので感想を書くのが難しいが,まず思っていたよりかなり早く出たなと思った。スレッジハマーがすぐに完結するとなると,これは第二部の開始もそう遠くないか。期待して待っておこう。
  
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2013年09月05日

阿知賀編の説得力

連載終了時に書こうとしてタイミングを逃したので,単行本最終巻が出たこのタイミングで書いておく。

阿知賀編が完結したが,世評は賛否両論であったと言ってよいと思う。私自身も賛の側であるが,不満点がないわけではなく,他の褒めている人に聞いても何かしらの不満点が聞かれる。さてその中で私が気になったのは,阿知賀チームの強さに対する批判である。この点確かに,さらっと読んでいくと阿知賀の成長があまりにも早すぎて不自然であり,準決勝ではとうとう白糸台や千里山に勝ってしまった。これにより白糸台の格が落ちたという批判も根強く,批判側の意見としては最有力のものとなっている。不思議なことに千里山の格が落ちたという批判は聞かないのだが,白糸台の格が落ちたなら千里山も落ちているだろう。要するに,泉の失点は許されても亦野の失点は許せないというのが世評のようだ。

この点,しっかり読めば阿知賀は急成長したわけではなくて最初からそれなりに強かった(潜在能力が高かった)のは描写されているのだが,描写が弱いとも言える。作者批判にも読者批判にも,どっちにも持って行けてしまう厄介なブツである。実は後述するように,『咲-Saki-』本編でも同じような問題はつきまとってもおかしくなかったわけだが(実際タコスには阿知賀の面々と全く同じ批判がある),本編はそれなりにうまいこと回避している。なのでここではどちらにも持っていかず,阿知賀編を通して,能力バトル物や競技(スポーツ)物の”説得力”はいかに表現されるものかということのみに絞って,私の読みと意見を開陳しておく。あとの判断は読者にお任せしたい。

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2013年09月04日

綿月姉妹のキャラは悪くなかったよ

・東方儚月抄ってなんなの?新参の俺に教えろ(2ch東方スレ観測所)
→ 最強議論の混乱と,特定のキャラ下げでdisってたと思われてるんだ……そりゃボウゲッシャーとしてショックだわぁ。
→ 漫画・物語として質が低いし既存の設定は破壊するし。Wikiを読もう(提案)
→ 儚月抄の問題点については昔きっちりまとめているのでそちらに。 = 儚月抄最終話を読んで,儚月抄の問題点


・復興庁 水野靖久参事官の主なツイート(Togetter)
→ 報道自体知らず,まとめ主も見ずに読み始めたので「普通に仕事の愚痴としておもしろいな」と途中まで。大半ほとんど問題ないでしょう。特定できるよう本名でつぶやいたのがまずかった。
→ こういうのを反原発のアレげなのと同様にパージできないから,左派は胡散臭がられる。そりゃこの人にも「クソ左翼」言われちゃうわ。普通に仕事熱心で,だからこそ自分の足を引っ張るようなバカには「クソ左翼」とか言いたくなったのだろう。まとめを作ったマスコミは,なぜ自分らが「クソ左翼」と呼ばれたか理由を考えたことがあっただろうか。
→ ああ,不公平だから言っておくが,地下猫氏のブコメに「若手官僚の「自民党クソ」「片山さつき氏ね」とかあたりのツィートをキボンヌ。」とあるよう,普通に「自民党クソ」あたりはあると思う。この人がつぶやいてないだけで。
→ この人の異常な労働時間が問題の本質ではあって,働き過ぎやろこの人。これでも評価されないあたりが,いかにもブラック国家日本。


・憲法に「家族の助け合い」を入れるべきか?自民党改憲草案に河野太郎議員が反論(huffingtonpost)
→ なるほど,反動主義者はこういう発想で自己矛盾を起こしていないのか。>「こういう日本の家族という価値観を根底から覆すような法律を国家権力は作らないように」
→ というのは正直新鮮な驚きだった。ナショナリズムを背景に国家的価値観というものがあって,それに沿った政治や社会制度が組まれるべきだということはなんら反対しないし,政治はあらゆる価値判断から遠ざけられるべきだというようなラディカルな社会契約論者みたいなことを言うつもりもない。というか私も右派ではあるので,社会契約論は基本的に好まないし,国家的価値観はそれなりに存在してよいと思っている。
→ が,それでもこの言説はおかしい。ツッコミどころは2つ。1つめは社会の変化に対する力点の置き方が間違っていること。あえて反動主義者と書いてしまったが,保守主義とは社会の変化に対して,漸進的に・慎重に制度変更を検討していくイデオロギーであって,既存の社会に固執するのは反動主義である。社会が大きく変貌した以上,家族像をそのままにして憲法に盛り込むのは無理筋ではないか。主体は「国家」ではなく国民であるべきで。
→ 2つめは,憲法に家族の重視する規定を作ることで守られるのは,実際には日本的な家族観ではなくて,おそらく悪習・陋習であろうこと。もっとも,反動主義者がそこまで頭が回っていないはずはなく,気づいていてもこう発言しているあたり,いかにも醜い。本音で守りたいのは悪習・陋習であろう。


・そろそろ本気で「孤児作品」問題を考えよう(INTERNET Watch)
→ 著作権者不明というのはよくあることらしい。それで著作権切れかどうか確認できなくなった作品を「孤児作品」と言うそうだ。
→ 確かにこれって問題で,特に集団で作っている作品だと著作権者を全員確認するのは困難だろう。それが原因で身動き取れない作品が多くあるのは社会的損失が大きい。
→ 「歴史屋の仕事が増えたね!」というブコメがあるが,まじめにそういう話かも。
  
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2013年09月03日

ドラクエ6の評価が上がった

・「ドラクエ6」が本当に目指したもの(1)バーバラと竜(かのろぐ(Kanohlogue))
→ なるほどすばらしい考察。ドラクエ5でマスタードラゴンはすっかりタクシーと化していたが,この経緯を踏まえると,むしろそれで正解だったのだなと。
→ 以後は記事内容ネタバレ注意。あと,この解釈が極めて美しいのは,一見するといわゆる悪名高い「お使いイベント」でしかない他のイベントが,ちゃんとつながるところ。なるほど,人魚と人間も,王様と鏡の美女も,若者と雪女も,テリーとドランゴも,異類婚だ。他のドラクエもちゃんと考察すれば,お使いイベントがつながるのかなぁ。暇があれば考えてみたい。
→ 説明困難を理由に削ぎ落としすぎて,説明不足の現行の6になったとすると,情報の開示と秘匿のバランスの問題の困難さを感じる。物語創作の難点だと思う。 その意味で,ドラクエ6好きだけど,やっぱり成功した作品とは言いがたい気もする。バーバラはまだいいとしても,チャモロはあまりにも説明不足すぎた。
→ あとこの考察通りだと,あまりにもバーバラさんに偏った物語になるから避けたのかなと推測。主人公・ミレーユ派が泣いてしまうので。その意味では5の裏返しでもあり(あっちは結婚相手を選択できる)。天空シリーズだけ見ると異類婚だけど,ドラクエシリーズ全体だとより広く貴種流離譚になるのかな。ロト(ドラクエ3の主人公)はご存じの通りの最後だし,ドラクエ1の主人公は竜王倒したらアレフガルドを出国,2は王族たちによる討伐で本編自体が貴種流離譚だ。ドラクエ4の主人公は村は滅んで出発するところから,5なんて言わずもがなで一番放浪している。8もトロデ王の流浪記だし,その意味で7が一番ドラクエらしくないかも(9は未プレイ)。
→ とは書いたものの,コメント欄で指摘があり,7も主人公の血脈とかキーファの存在まで考えれば十分ドラクエっぽかった。訂正します。


・鉄道将棋という提案(タノウエタカヒログ)
→ 東京版で作るとしたら,南北じゃなくて東西にしたほうがいいかな。皇居のせいで盤面の中央に地下鉄が何も通っておらず,空白地帯が生まれるのでこれはこれでおもしろそう。


・「1200年前に海中に沈んだ古代エジプト都市『ヘラクレイオン』が発掘」海外の反応(暇は無味無臭の劇薬)
→ なかなか見事な古代エジプト遺跡である。ジャスト1200年前だとすると西暦800年頃に沈んだことになるが,そうするとむしろよく破壊を免れたなぁと。キリスト教徒からも,イスラーム教徒からも……


・アンデスの穀物キヌアに世界注目 食料問題の救世主に(47NEWS(よんななニュース))
→ ご存じジャガイモ・サツマイモ・とうもろこしは全部南北アメリカ大陸が原産である。なぜに救荒作物はかくも南北アメリカ大陸に固まっているのだ……と書いたところ,ユーラシア大陸はすでにことごとく栽培品種化されているからでは?という指摘を受けた。確かに,もう探しようがないのかもしれない。
→ もしそうだとするなら,『銃・病原菌・鉄』なるものはいまだもって我々と動植物の関係性を規定しているのだなぁと。流行してないのは味やにおいの問題なのか。実際に食べてみたいところ。


・Google謎のストリービューが怖すぎるwwwwwwwww(キニ速)
→ Googleさんはなぜこんなところのストリートビューを撮ろうと考えたのか。
→ ちょっと試してみたが,分け入っても分け入っても青い山であった。
  
Posted by dg_law at 10:31Comments(2)TrackBack(0)

2013年09月01日

夏コミ同人誌レビュー(3) 東方編

続き。今回は東方編。正直紹介するまでもない有名サークルが多めだけど,許してください。

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Posted by dg_law at 23:37Comments(0)TrackBack(0)