2014年12月30日

2014年自薦記事

昨年の。今年も10+αで選出したが,なんというか考えるまでもなくアレとかアレとかは入るので,選ぶのが楽だった。逆に言ってシリーズ物化が激しく,マンネリ化しているということでもあるのだが。人気の出た記事をシリーズ化するのは当然なので,許してほしいところ。それでは良いお年を。


1.2014都知事選雑感(2/10)
この間の衆院選の感想は全く書いてないわけだけど,何を書いてもこの時と全く重なってしまうから書けなかった,というのはある。野党は殴り合いで票を食い合い,与党が大勝する。こっそり共産党が躍進するという構図。ただし,都知事選の田母神フィーバーと比較して,衆院選では次世代の党が壊滅したのを見ると,やや国民が冷静になったのかなぁ,とか。

2.受験世界史悪問・難問・奇問集 ver.2014 その3(国立大)(3/12)
千葉大の一件で電話したのが間違いなくシリーズ通しての最大のハイライトでしょうね。よほどのことがない限り来年度はインパクトで勝てないので,どうしたものかと。

3.【咲-Saki-】「末原さんは全ての点数移動にかかわる性質を持っている」説(4/17)
今年一番熱心に書いた咲記事。当たっているかどうかは2014年中に判明すると思ってたのだけれど,案外と本編が進まず,来年に持ち越し。当たり外れは正直に言ってあまり自信無いが,それなりに説得力のある説だとは自分で思っている。
実はもう1記事,ミョンファさんの元ネタ集を作ろうと思ってたのだけれど,ほとんど自分で調べたところではないので遠慮していた。誰も書く気が無いっぽいので,手を付けようと思います。

4.舞の海講演会について(文字起こし有)(5/27)
「舞の海講演会文字起こし」の落穂拾い(6/9)
ザ・怒りの文字起こし。その後の反応への対処を含めて面倒臭かったが,やってよかったと思う。落穂拾いの方で触れた二つの反応についてはいまだもって許せてない。

5.エロゲ版「屈辱」は可能か,及び無差別級お試し版(6/20)
エロゲ版「屈辱」の講評と結果発表(6/22)
これも作業が大変だったけど,おもしろかった。「ブクマが何十か集まったら結果発表します。集まらなかったら,やっぱりルールに無理があったということで無かったことに。」とは本当に成立するとは思ってなくて書いたのだけれど,蓋を開けてみたら三桁ブクマである。集まったエロゲーのラインナップを見ても,はてな村民,古参エロゲーマー多し。

6.『言の葉の庭』(7/9)
多分,ネット上に存在する本作のレビューで唯一「なぜ新宿御苑だったのか」について解説したものだと思われる。その意味で自薦に値。一方,これだけレビューしがいがある作品なら,ちゃんと劇場公開時に見てレビューしとくべきだったなぁという後悔もある記事。

7.なぜイスラーム国は預言者ヨナの墓を破壊したか,と聖遺物崇敬の話(7/28)
よくある話ではあるのだけれど,骨子が定まってから,「確実なことを書こう」としていろいろ調べていくと際限なく対象が広がっていき,かつ実は読んだ成果はほとんど記事に現れてないという。調べる前に書いた草稿とほとんど変わっていなかったり。まあ無駄な勉強じゃなかったとは思いたい。
あと,さらっと入れた「ネタ的に言えばアブドゥル・アルハザードもここに入るんだろう,多分。」というギャグがなにげに大受けだったので,満足。

8.『絶対に解けない受験世界史 (大学入試問題問題シリーズ)』が出ます(10/3)
続刊構想中でございます(小声)確実に出るとは言えないし,いつになるかもわからんけど。悪問が溜まらないことには出ず,ということは出ない方が世の中的には良いということでもあり。実は入れそびれた2014年の私大(明治とか青山とか)だけで,相当な分量があったりもするのだけれど。

9.『WHITE ALBUM2』レビュー(11/24)
時期外れだし伸びるとはちっとも思ってなかったので,アクセスをかなり集めたことは素直に嬉しかったし,コメント欄での議論もおもしろかった。
エロゲ史に燦然と輝く至高の傑作の一つです。3年かかった私が言うのもなんだけど,勧めておきます。

10.ドイツ・フランス・ベルギー旅行記(前編:フランクフルト・ハイデルベルク・ストラスブール)
ハイライトは五体投地になるはずだったんですが,フランシスコ・ロッシに持って行かれた感が。次はドイツの東の方(ベルリン・ドレスデン)か,チェコ・ハンガリー辺りに行きたいなと。
  

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2014年12月29日

C87サークルチェックリスト(三日目)

所要で遅くまでいられないため,ちょっと数減らした。

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2014年12月28日

C87サークルチェックリスト(二日目)

今回は初日不参加です。


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2014年12月25日

マカロン・しいたけ・牛一頭分等等

コミケまでに『グリザイアの果実』と『つり乙2』を両方コンプするという目標を立ててしまったので(グリカジは昨日コンプ済),その他のことは全体的に止まっております。ブログもおそらくコミケのサークルチェックリストと2014年自薦記事以外はほとんど更新が無いんじゃないかなと。グリカジとつり乙2のレビューは来年になると思います。


・語学教育と覇権主義(日比嘉高研究室)
→ 「だったら全部勉強すりゃいいじゃん!」お,おう……とブコメではお茶を濁したが,それは全く解決になってないと誰か突っ込むべき。
→ 他の方が書いているが,人間の平均的な知能を大幅に引き上げるのが先で,世の中語学が得意な人しかいないわけではないんやで,という。俺の中のシャアが「今すぐ愚民どもに叡智を授けてみせろ」と叫びかねない。愚民というか,俺を含めたほとんどの人類に,だが。



・塩野七生氏と『文藝春秋』編集部へ公開質問状を送付しました(アクティブ・ミュージアム 女たちの戦争と平和資料館(wam) - 「慰安婦」問題を知りたいあなたへ)
→ これは塩野七生の反応が欲しいところ。
→ 彼女も古いタイプの人間ではあるし,著書でもソースがえらく古かったりすることもある。そういう人間だからこそ古い,デマ混じりの情報で止まっている可能性があり,ファンとしても即座に「魂が悪い」案件に落とし込んでしまうのは反対するのだけれど,だからこそ彼女の反応が見たい。
→ ひとまず,約3ヶ月経過して動き無し。世間的にも忘れ去られている感じである。


・大相撲の優勝力士に贈られる「巨大マカロン」の正体(withnews)
→ しばしば話題に上がる巨大マカロン。好角家には知られている話が多いが,よくまとまっているので掲載。
→ マカロンだけじゃなくてしいたけもあるんやで? マカロンとしいたけに注目するのが多くの好角家の姿だ。


・イスラム国(IS)に対するイスラム的見解(サイードのモーリタニア・サウジアラビア日記)
→ 「先月末(編註:9月末)、世界各国のイスラーム識者・イスラーム組織が、ISの「自称カリフ」バグダーディーに宛てて、連名で公開書簡を発表した」とのこと。概要の和訳があるが,至極真っ当な内容。
→ 何度でも言うが,なぜにイスラームだけが近代化を許されないのか。無論,内側からそういう圧力がかかっているのは否定できないものの,外側のイメージの力も相当に強いのでは。これはマイノリティが近代化を許されないのと全く同じ構図だ。
→ ところで,冒頭の画像の一件については,私戦予備なる罪状があることを初めて知って驚いた。そりゃまあ,外国に行って勝手に戦争初められても困りますわな。  
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2014年12月24日

縮小するアラル海あれこれ

・世界で4番目に広かった湖「アラル海」、ほぼ消滅(CNN)

数年来のアラル海ウォッチャーの俺参上。まず記事の補足で,アラル海は縮小の過程で南北に分かれている。北アラル(小アラル)と南アラル(大アラル)だ。で,名前に反して南アラルの方が先に消滅するだろうと言われている。理由は2つ。北アラルはシルダリヤが注いでいるが,南アラルはアムダリヤが注いでいる。そして灌漑による取水が激しいのはアムダリヤの方だ。加えて北アラルの方が水深が深く,南アラルの方が浅い。そして案の定南アラルは東西に分裂し,中でも水深が浅かった東アラルがこの度完全に干上がった,というのが記事の正確な意味合いになる。なお,下記の通り東アラルは過去に一度消滅してから復活しており,今回のは再消滅,ないし復活の見込みのない完全消滅というのが正しい。

もっとも,西アラルも時間の問題であろう。乾燥地帯で,大河が注いでいるわけでもなく孤立しているからだ。元々塩湖であったから塩分濃度が高まっており,ソ連時代の環境汚染もあって死の海と化している。一応,北アラルとつないで延命するという案もあり,実際つながっていた時期もあった。しかし,西アラルと北アラルをつないでいたのは東アラルであって,東アラルが完全に消滅した今となっては,つなげる運河は相当な大工事になる。無論,周辺諸国にそんな金は無いし,北アラルへの環境負荷もあり利害が絡んで身動きが取れていないというのが現状だ。

なお,アムダリヤは現在瀕死ながら別の湖に注いでいるので,アムダリヤの流路変更も南アラルが干上がった原因の一つではないかという説がある。サリカミシュ湖がそれ。そもそもアムダリヤの流路変更自体が灌漑取水のせいという説もある。


orld of Change: Shrinking Aral Sea : Feature Articles
追加で,二つほどサイトを紹介しておく。まず,アラル海の定点観測。2001年以降南アラル海がどんどん縮んで東西分裂し,2008年に東アラルが一度消滅。その後は東アラル海が消滅したり復活したりして,2014年に再消滅したのがわかる。

Aral Sea - Map
もう一つは,超長期的に見たアラル海周辺。地図中にある通り,サリカミシュ湖はアムダリヤの機嫌によって大きさが頻繁に変わっている。


ところで,取水しすぎて干上がった巨大な湖というと,チャド湖もあるんだけど,こっちは知名度低い。アジアとアフリカの差か,歴史的な重要性の違いか。チャド湖もカネム・ボルヌー王国とか存在はしていたのだが。チャド湖の方も原因は過度な灌漑取水で,再生が進まない原因も周辺諸国の利害の不一致と全く同じ。人類,割とどうしようもない。
  
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2014年12月19日

非ニコマス定期消化 第13回MMD杯



ゲスト紹介から。経産省の偉い人・虚構新聞・自衛隊の中の人あたりが大きな目玉だった。



い  つ   も   の  。無を取得からさらに進んでエンディング呼び出し(任意コード実行)が開発されたことで,動画がますますカオスに。一年後のTASがどうなっているのか楽しみ。




これも恒例ので,総合3位。イーノックがだんだん避けられるようになってきてるw




今大会私的ベスト3その1。今回一番笑った作品。これが再現ということ自体がもうギャグだし,懐かしさも加えて笑い死ぬ。比較も見るとなおよし。



総合優勝作品。その航空戦艦は卑怯wwwwwwww




今大会私的ベスト3その2。レディー・加賀さん色っぽくて超かっこいい。ほんと好き。赤城さん,龍鳳の配置もそこしかないという感じですばらしい。下は高解像度版で,キャラが少し増えている。



今大会私的ベスト3その3。絶対に見るべき。特にクロノトリガーのロボと聞いてピンとくる人は必ず。思わず泣いた。




スピーディーでおもしろく,各キャラの特徴が生かされてて良い作品。



皆お世話になってるビームマンP自らのご出陣。このビーム表現は日本のアニメ文化の精髄の一つだよなぁ。



ゴウランガ! アニメ化した際もこのくらい動いてくれるだろうか。




テーマのホラーを最もよく活かした作品。早苗さんと都市伝説の相性は異常。



良い空中殺陣。



こっちは地上殺陣。レミ霊夢とか俺得。ああいう性格のパッチェさんも良い。



純粋なダンスPV限定なら,これが今回の優勝かなぁ。本選では無冠なのが意外。



なぜMMDでこれをやろうと思ったの極地ではあるが,MMDの表現力は本当に広がったなぁと。



MMDで作る童話。童話として非常におもしろく,一見の価値有り。



身につまされる人も多いはずの話。3分過ぎからが本番。思わぬ展開に大爆笑した。
  
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2014年12月16日

最近(?)買ったもの・読んだもの

更新が遅れに遅れてちっとも最近ではないという。

・『冴えない彼女の育てかた』5巻。これは神回。紙芝居系のエロゲーマーなら買って読むことを推奨したい。1巻からでも。確実に思うところがあるはずである。これはエロゲライターとしての丸戸史明の檄文だ。それと同時に,本作の物語の展開自体がエロゲとラノベの境界にたゆたっている。p.130で戦慄を覚え,夢中になってその先を読み,読み終わってから冒頭のカラー挿絵を見ると,これまた強い衝撃を受ける。もうね,なんというか,紙芝居で何が悪い。エロゲーは総合芸術だよ。あえて言えばこれしかない。
→ しかし,丸戸さん自身相当悔しいところがあって,今回の話なのではないかと思う。自分自身の1巻の書評から引用するが,1巻の時点では「エロゲ文体から脱出できていない」という大きな欠点があった。エロゲーでならし,『WA2』でエロゲライターとしては最高級の実績を引っさげてのラノベ参入である。その1巻の,旧来のファン層であるエロゲーマーから聞こえてくる世評は酷評に近かった。誤用としても正しい意味としても「忸怩たる思い」だったのではなかろうか。その思いはこの巻をもって昇華された。





・『ガールズ&パンツァー エンサイクロペディア』。公式・非公式問わず類書は多種多様に出ているが,これが最もまとまっていて読みやすく,情報もかなり細かいところまで拾っていて十分。こうした辞書類は編者自身の主観が入る場合博打になりやすいが,本書は博打に勝った部類。編者のツッコミが冴えていておもしろい。OVA発売直後に出たものなので,ペパロニやカルパッチョもちゃんと収録されている。

・『スカーレットオーダー』2巻。つなぎの2巻という感じ。次巻はアーサー・ヤング氏の語りと,残りの赤子魂の行方というところか。諏訪三郎が思ったよりちょい役だったが,今後もまだ出番はあるのだろうか。


・『火ノ丸相撲』1巻。世間的に人気なようで,遠藤・逸ノ城フィーバーとうまくつながってくれればいいなぁと。
→ 1話が不良退治というのはテンプレすぎてやや興ざめだったが,2話以降の展開は実におもしろい。
→ 特筆すべきはまず相撲の扱いで,相撲の不人気具合とか一般的に言ってかっこよく見られてないとか恥ずかしいとか,美化せずに書いている。その意味では佑真がいい配役で,若干恥ずかしそうに休日部活(の大会)に行く姿は典型的だ。その上で相撲のかっこいい部分を引き立てているのは良いバランス感覚だろう。そのスポーツを美化する余りに現実から遊離していくのは,マイナースポーツを描いたスポーツ漫画にはありがちなところだ。
→ もう一つは主人公火ノ丸の描き方で,テンプレでなく気持ちのいい主人公。これまたありがちな凡百のスポーツ漫画なら,1話で部長が道場を追い出されて自作の土俵で稽古しているのが明かされたならば,その場で佑真に殴りこみに行きそうなものだが,火ノ丸は部長を慰めてその場を収め,その自作土俵が壊されてから佑真と対決に行っている。これは漫画の展開としてもうまい。
→ あと名塚さんめっちゃかわいい。これ重要。すごく重要。しかし,まるでダメな社会人が一番かわいいジャンプ漫画もそう多くないのではなかろうかw


・『UQ HOLDER』4巻。キリエ巻。キリエの特殊能力だけで独立した作品が一つ作れそうなくらいおもしろそうなんですがそれは。
→ フェイトの仲間たちは月詠さんの子孫と謎の二人? 浅黒い男性はザジの関係者かも。お坊さんだけさっぱりわからない。  
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2014年12月15日

書評:『グレート・ギャッツビー』フィッツジェラルド著,小川高義訳,光文社古典新訳文庫

映画の方を先に見ていて,最初はギャッツビーのイメージが完全にレオナルド・ディカプリオの状態で読んでいたのが,次第にずれが大きくなった。最後まで読みきった感想としては「原作と映画でイメージが違いすぎる」。このイメージのズレについては,直接映画に言及しているわけではないのだが,訳者による解説が非常に役に立った。なぜギャッツビーは「グレート」なのか。鍵はそこにある。

要するに,後世の,それも日本人の我々からすると,アメリカはいつだってアメリカン・ドリームの国なのだ。ところが同時代人である小説家からすると,これは正反対になる。1920年代とは社会が保守化した時代であり,好景気が持続していた裏で,すでに出来上がってしまった階層秩序をひっくり返せない社会になりつつあった時代であった。ギャッツビーは言うまでもなく成金である。つまり,時代遅れなのであるが,それでも成金には違いなく,遅れてやってきたにもかかわらず階層を飛び越えた。その時代に逆行する精神こそが「偉大」なのである。ここが,過去の恋愛を取り返せると信じ,一途な愛情を昔の恋人に捧げようするギャッツビーの恋愛劇と重なる。このギャッツビーの成金としての性質と恋愛劇の行く末は,物語の後半になって綺麗に合流する。ここがこの小説を“偉大”たらしめているところだろう。映画の方はともかく,原作の方はこの前提が頭に入っていないと楽しめないのではないかと思う。いや,自分のように訳者解説を読んで,全ての疑問が氷解してすっきりする,という読み方もそれはそれでありだと思うけども。

もう一つ映画との違いで気になったのは,映像のクリアさである。原作は読んですぐに気づくことだが,かなり茫洋とした文体で,いろいろな物事をはっきりさせないまま描写していく。これが正体不明のギャッツビーやウルフシャイムといった面々の雰囲気醸成や,終盤の事件が主人公のあずかり知らぬところで進行していく様にすごくよくマッチしており,加えて言えば事件の現場にある巨大な目(「全てを見ている」)の看板との対比にさえなっている。これに対して,映画の方はあらゆることをくっきりと描きすぎている。あれはあれで狂乱の二十年代の雰囲気が楽しめたのでよかったのだけれど,『グレート・ギャッツビー』としては,それはどうなのか。


グレート・ギャッツビー (光文社古典新訳文庫)
F.スコット フィッツジェラルド
光文社
2009-09-08




以下は軽くネタバレ。訳者につっこまれていたけれども,あまり細かいところを気にして読んでなかった私でさえ,作中の矛盾が多くてかなり気になった。特にブキャナン夫妻の娘の年齢。結婚前に妊娠してないか? という点と,エアマットの上に寝転がっている人間を銃殺したら空気抜けるだろという点はかなり気になっていた。きっちりと訳者解説でつっこまれていて安心した。
  
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2014年12月14日

書評:『怪帝ナポレオン3世 第二帝政全史』鹿島茂著,講談社学術文庫

古典的名著だが,なぜこのタイミングで取り上げるかというと,とうとう本書の内容が高校世界史に降りてきたという喜ばしい事態が訪れたゆえである。そこで,本書の内容を簡潔に取りまとめておく。

これまでのナポレオン3世の業績というと,以下のように説明されていた。

「ナポレオン3世は叔父の人気によりかかって政権を奪取した。前期は権威主義的に政権を運営し,労働者と資本家の対立を煽り,その勢力均衡を図って政権を維持した(いわゆるボナパルティズム)。しかし,1860年以降となると民主化の要求に耐えられなくなり,立憲帝政へ移行していった。外征を繰り返したのも,国民の人気を保とうとしたがゆえであった。ゆえに戦敗がかさむと政権が倒れた。」

このような説を唱えていたのはカール・マルクスとヴィクトル・ユゴーの二人であり,20世紀も末になって彼らの権威が崩れ,ようやく実証的な研究が進んできた。これらの説明はほとんどデタラメである。根本的なところで,彼らもその追随者も,空想的社会主義であるところのサン・シモン主義を理解できていなかったし,する気もなかった。また,それを本気で達成しようと考える夢想家の為政者が登場することも,それがある程度強権で成功してしまったということも,信じられなかったのだ。


ナポレオン3世の思想基盤はサン・シモン主義である。サン・シモン主義では階級対立は起こりえず,産業の発展が貧困を根絶する。彼は,そのためには政府の積極的な関与が必要であると考えていた。ルイ・ナポレオン時代に書いた著書に『貧困の根絶』があり,そこで彼は,労働者に必要なものは「協同と教育と規律」であると主張している。すなわち,彼の内政方針は人気取りのための産業育成・社会福祉拡充だったのではなく,産業育成と社会福祉拡充自体が政策の目的であり,それらは別方向を向いていないというのがナポレオン3世の思想であった。事実,フランスの産業革命は1830年頃に始まったが,七月王政下では行き詰まり,本格化したのは1850年代のことである。第二帝政下においてフランスは鉄道大国となり,イギリスに次いで成熟した工業国・資本主義国となっていく。金融改革も進み,次世代のフランス帝国主義を支えていくことになるが,なぜだかまとめて自然現象として処理され,ナポレオン3世の積極的な施策は無視されてきた。パリの大改造もこの一環で理解される。主には衛生向上と交通渋滞の解消が目的であった。都市の近代化は産業育成の上でも社会福祉拡充の上でも至上命題であった。

権威帝政から自由帝政の移行についても,体制の限界が訪れたゆえの仕方なく,ではなくナポレオン3世の希望であった。当初では既存の最大多数・穏健派(秩序派)が腐りきっており,社会主義者はまだまだ勢力が弱かったから,一時議会から権力を取り上げ,権威帝政に移さざるをえなかった。4月選挙・6月暴動といった第二共和政の失敗は彼にとって強い教訓であった。この辺の事情はムスタファ・ケマルやシャルル・ド・ゴールに近いかもしれない。大衆人気に支えられた独裁という点ではファシズムに近く,マルクス主義の歴史家は実際そうなぞらえていたが,内情は似て非なるものであった。

外征も人気取りが目的というより,それ自体が彼の目的であったか,彼の意図しない形での勃発が多々あった。クリミア戦争はパックス=ブリタニカ時代到来を見ぬいた上での参戦であったし,イタリア統一戦争はイタリア情勢の安定を図ったものであった。インドシナ侵略・アロー戦争に至っては,フランス東洋艦隊の暴走に過ぎない。従来言われてきたような帝国主義戦争の先取り,すなわち金融資本に突き動かされた侵略ではない。メキシコ出兵は将来的なパナマ運河建設の足がかりだったという説があるが,これも資本投下というより販路の拡大の意味合いが強い。普仏戦争に関してはすでに自由帝政の末期であり,議会の参戦決議を拒否しきれなかったという事情がある。戦争に反対したのは,後の第三共和政初代大統領ティエール一人であった。

彼の欠点は,自身の強すぎる性欲であった。美人ながら敬虔なカトリックであるウージェニーと結婚したことで,己の目標に反してカトリック勢力を政治や社会から排除しきれなくなり,保守勢力につけこまれる余地を残した。普仏戦争でもウージェニーは大きく足を引っ張り,あのような最悪の形での終戦を迎えることになる。また,荒淫が過ぎたことで膀胱炎にかかり,晩年は終始体調不良で,政治的決断力が大きく鈍っていたとされる。ナポレオン3世に冴えないイメージが漂うのは,この晩年のイメージが強すぎるからだ。なお,ナポレオン4世は虚弱体質で政務に耐えられず,いずれにせよ彼の一代政権で終わったと思われる。私見だが,この辺は終身かつ世襲という帝政というシステムの限界だったように思う。

もう一つの欠点は戦争に関する才能を絶望的に欠いていたことで,クリミア戦争・イタリア統一戦争と続けてようやく己の無能を悟った。普仏戦争は負けるとわかっていて出征したようだが,悲壮感余りある。




  
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2014年12月13日

関羽っぽい別の何か

・UQ HOLDER! 第24話 感想  UQHとネギま!を繋ぐ線(BLACK SWAN)
→ すごく納得のいくUQHOLDER考察。確かにそう考えると,なぜネギの生死が今ひとつ曖昧なのかも,刀太が闇の魔法を持っているのかも説明がつく。フェイト登場前でこれだけ考察できるんだなー。


・京都大興寺の関帝像についての感想 (三国与太噺)
→ すごくおもしろい。日本における三国志受容としても,中国美術史としても。まず間違いなく,これは関羽じゃないんだろうなぁw
→ 美術史として見るなら,【造形について】は完全に図像学の世界で,アトリビュートから迫る考察はすばらしい。アトリビュートが曖昧でいろんなものに見えた結果,時代によって解釈が異なったという事例が西洋でもよくある話で,筆者の言う通り江戸時代後半に「関羽になった」んじゃないだろうか。それまでは何と考えられていたのか。というか足利尊氏が「何」だと考えて輸入したのかは大変気になるところ。ただそれは三国志知識とは別の中国美術史の知識が必要になるところで,私では無理だ。有識者の登場を期待したい。


・1707年グレート・ブリテン連合王国成立に至るスコットランド・イングランド対立の歴史(Kousyoublog)
→ ステュアート朝のごたごたをスコットランド側から眺めるとこうなるのね。イングランド議会の強化は近代化である一方で……


・英語版『ドラクエ』、地域方言を活かしたローカライズの妙味(AUTOMATON)
→ それぞれすごくおもしろいローカライズ。ドラクエ1の最初のローカライズ,中世英語だったんか……雰囲気は出るけど読みづらいことこの上なかっただろうな。
→ ドラクエ4,バトランドがスコットランドはわかる。一方,モンバーバラはフランスというよりスペインのイメージ。姉妹の格好があれだし,マーニャが踊り子だし。サントハイムがロシアは一瞬違和感あったけど,「サントハイム」という名前の響きに「アリーナ」だから,まあロシアか。ただし,クリフトは純英語圏の名前だし,ブライはググったところフランスの地名にあるらしいが。両者とも,ロシア皇室がアリーナ教育のために他地域から呼び寄せた,と考えるとしっくり来ないこともない。
→ ドラクエ5,ビアンカが田舎訛りになってて人気が落ちてる,というのはすごくおもしろい。確かにビアンカのイメージからすると「方言しゃべってるからかわいい」という系統ではない。フローラの名前がネーラに変わっているのはなぜだろう。フローラのままでも良さそうな。意味が悪いというわけではなかろうし。ルドマン一家の住むサラボナがイタリア訛りなのはわかりすぎるのだが,だったら余計にフローラでよかろうという気が。
→ ドラクエ3のローカライズは大変だっただろうな。ジパングはEngrishだったんだろうかw


・与謝蕪村:水墨画「蜀桟道図」 92年ぶりに見つかる(毎日新聞)
→ これは名画。今ひとつ画像が拡大しないけど,与謝蕪村っぽい絵だと思う。どっかの展覧会に出てくるのを期待したい。MIHOMUSEAMに行くのはしんどいので。
  
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2014年12月12日

北ベトナムと雲南の違いとか

・東京都23区「意外に遠い同名の駅」4選 - 毎日の電車が楽しくなる!? コネタ(マイナビニュース)
→ 蔵前と浅草は確かにふざけた遠さ。
→ 東京駅はあきらめよう。そういう意味では新宿も西武新宿を含むなら小田急とかとはかなり遠いが。三軒茶屋は知らんのでパス。


・従軍慰安婦とは - はてなキーワード
→ これは良いまとめ。長いけど読みやすいし,言葉が穏当。
→ ある種の「世間」の反論のどこがダメなのか,読めばわかる感じ。南京虐殺の場合は南京事件FAQがあったので,自分の中でそろった感がある。


・朝日「誤報」で日本が「誤解」されたという誤解(冷泉彰彦 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版)
→ これもあわせて。全体的に同意で,特に第2・第3の誤解は深刻と思う。このブログでは再三書いているような気がするが,リアリズムの観点から言っても,従軍慰安婦の否認は一切のメリットがない。


・朝鮮半島はなぜ歴代中華国に併呑されなかったのか(歴史的速報@2ch )
→ 単純に,漢民族に同化しきらんうちに高句麗やら三韓やらが勃興したという話かと。
→ 10世紀まで支配下だった北ベトナムが「中国」になってない方がどっちかというと不思議。唐までの中心地だった中原から北ベトナムは遠かったってことかな。


・日本人にとっては不思議に思えるけど、色々と複雑な事情があるんだよ(2chコピペ保存道場)
→ なるほど興味深い。日本のアニメが少数派の地域言語保存に役立っているという。
→ 「バングラデシュではヒンディー語のドラえもんが子どもたちにあまりにも人気で放送が禁止」されたそうで,これも興味深い話。
→ 参考文献:柿原武史(2007)「少数言語復興に日本アニメが果たす役割:スペイン・ガリシア自治州の場合」  
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2014年12月11日

矢島は受からんくて一浪するしね

・永夜の術がよくわからない結界組はともかく、他の3組もこんな大それた術が使えるの?(2ch東方スレ観測所)
→ 結界組は当然できる。紫様が万能すぎる。紅魔は時止められる人がいるから当然できるし,言われてみればレミリアの運命操作だって,本件に限れば有効そう。詠唱組は強引だけど,「そういうグリモワールを持ってた」で何とか。
→ 幽冥組だけ,ちょっと理屈がつかない。ゆゆこが「夜を殺した」は,彼女って概念殺せないはずなので無理。でないとフランドールの能力との差がなくなるし。言われてみると幽冥組はどうしてたんだろ。
→ 長い長い東方考察の歴史で解決してないのかな,これ。考察を知っている人がいたら紹介してください。


【速報】無双!? 「ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の白」がPS4で2015年春発売。なんとω-Force制作のアクションRPGに(4Gamer.net)
→ 割とおもしろそう。場合によってはPS4ごと買うかも。
→ 無双シリーズであることが否定されているが,言うても開発協力オメガフォースだしなぁ。ドラクエの無双シリーズはやってみたかったところ,というのがおそらく世間の(そして私の)高評価の理由なわけで。



動画来てた。やっぱり無双じゃないか。あとアリーナめっちゃかわいい。


・防災の日に思う 地学教育を空洞化させた文科省と教育委員会の責任は重い (WEDGE Infinity)
→ 国民の防災に関する知識と高校地学の壊滅状態にどの程度関連性があるかは横に置いといても,これは実際にある。
→ 社会科もひどくて,教員が世界史・日本史・政経に偏ってて,地理さえ過小,倫理は地学並の絶滅状態。昨今突然「倫理政経」とかいう科目ができて,他科目の先生が代打で倫理を教えてるという……同じ理科・社会だから可能だろうなんてわけにはいかない,というのはなかなか理解されないのか。倫理や地理は空洞化していると言ってよい。教わった生徒が少ないから,なれる先生も少ないスパイラルに入っている。そのツケはどこかで表面化すると思う。


・「ドラゴン桜」が書かない本当の日本の底辺(人類応援ブログ)
→ 言いたいことはわかるが,その偏差値批判はちょっとどうかと。「同年代全員」を母体とすれば,そりゃあのレベルでも偏差値50に行くけど,その前提って意味あるのか。 「同年代全員」を対象にすれば大学受験を目指さない人も当然含まれるし,その人たちにとって受験に必要な学力は不要なわけで。「受験する気がある人たち全員」を母集団に取るなら,スタート時の矢島たちの偏差値は正しく30付近じゃなかろうかと。
>だいたい中3で学力偏差値が60程度の生徒であれば提出するような英作文だな、といったところですね。
→ んなアホな。中3対象の模試で中3が受験したとして,あんな英作文だとさすがに偏差値60は取れんはず。母集団にもよるのは当然だが,そもそも学年の5%ほどが東大に進学するうちの母校でさえ,入学時に必要な最低偏差値は60ほどとされているわけだけど,さすがにこのレベルの英作文を作る奴はおらんかった。
→ ついでに言うと,水野も矢島も底辺校に通ってはいるものの,矢島は中学受験挫折組でそこまでの蓄積があるし,水野は強い目的意識の持ち主だということが作中で明かされる。そこら辺を無視して,「底辺高校の生徒が」と,一般的な底辺校の生徒が挑戦しているかのようにイメージさせたのは,確かに『ドラゴン桜』自身の宣伝に問題があった。が,批判する側までそれに乗っかっては本末転倒だろう。ましてや矢島や水野が一般的な底辺校の生徒と想定して批判するのは,単なる誤読になるのでは。


・義務教育こそ卒業テストが必要だ( いつか朝日が昇るまで)
→  究極的な解答はこうなるだろうけど,日本社会の制度やら価値観やら根底からメスを入れることになるので難しかろうなぁ。
→ しかも,小学校を卒業できない一定層を掘り起こしてしまって,日本社会のパンドラの箱を開けかねない気も。

  
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2014年12月10日

しいて言えば前奏有り派,かなぁ

・バイエルン王家ヴィッテルスバッハ家の歴代君主まとめ(Kousyoublog)
→ 将来性ある地力の高さだったのに,どうしてこうなったのかというと,やっぱり18世紀が歴史の分かれ目かなぁと。プロイセンが異端児すぎるという話もあるけど。
→ バイエルンがもうちょっと早く覚醒するか,ナポレオン戦争時に超うまく立ち回ってバーデンやヴュルツブルクを併合した形でウィーン体制を迎えていたら,とは思うけど,そんな状況はオーストリアが妨害するだろうから難しかろう。
→ あとは,そもそもドイツの真ん中すぎたという話はある。今のドイツで見ると南端だけど,大ドイツ・神聖ローマ帝国で見ればど真ん中で,そりゃ身動きとれなかろう。プロイセンはチェコ・ポーランド方向に,オーストリアはハンガリー方向に伸びて勢力伸長したわけで,その点バイエルンはドイツ人同士で争うしかなく,どうしようもない。EU2やEU3なら,HRE内で争っても皇帝からそんなに怒られないので,何とかなってしまうわけだけど,あれはやっぱり甘いよなぁ。あのゲーム,帝国内での諍いにはもっと皇帝が介入できてよい。


・謎の独立国家イバラキスタン(Danas je lep dan.)
→ 全体的に爆笑したけど,このフレーズは卑怯wwwwwww>「学園都市トゥクヴァ」
→ ハシモト大統領のそれっぽさに,任期の長さよ。旧ミト・ハーン国にトゥクヴァのトゥヴァっぽさ。
→ ブコメの「ウシクーシ地区には世界最大のブロンズ像があります」も強烈。
→ このノリで言うと愛知県はどこじゃろか。
  ・天下人を輩出
  ・「言語(方言)が近いし,似たような民族だろ」と一つの国にさせられたが,実は東西で別民族に分かれる
  ・工業地帯の西と,比較的農耕地帯の東(キャベツ生産日本一)
  ・文化的には欧州(近畿)とアジア(東日本)の境界線
  ・東愛知の分離傾向(旧遠江・南信と親しい)
   → ウクライナかトルコか,その辺りか。


・前奏付きの『君が代』に賛否両論出るも若い世代は違和感なし (NEWS ポストセブン)
→ これ,わかる。前から思ってたけど,こうばしっと指摘したものは初めて読んだかも。
→ 前奏あってもなくてもいいけど,統一はして欲しい。どこで歌い出せばいいのかわからんくて混乱する。
→ ただまあ,一般的な社会生活において,国歌を聞く機会自体あまりないから,話題にならないという気も。自分が聞く機会が多いのは,大相撲中継の千秋楽で確実に年6回は聞いてるからというのが大きいわけで。


・より正しい物語を得た音楽はより幸せである 〜佐村河内守(新垣隆)騒動について〜(森下唯オフィシャルサイト)
→ 佐村河内の事件について,今更ながら非常に納得した記事。奇妙なめぐり合わせによって誕生した物語だったのだと。決して美談ではないが。
→ 美術にしてもそうだけど,芸術家の持つ平均的な技術レベルが極限まで達すると,前衛に走るしかなくなって大衆から遊離するのかなと。美術の場合は,印象派という極めて大衆受けしやすい様式を経由したのが特徴的ではあるけど。音楽の場合も,後期ロマン派・国民楽派のわかりやすいすごさを経由したと考えると,近似できるのだろうか。  
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2014年12月07日

「ヴェルサイユ体制打破」と何が違うのやら

・異教徒は殲滅すべきであるとするISIS支持者(Togetter)
→ 他の日本在住ムスリム・イスラーム研究者が迷惑するので,ハッサン中田はそろそろだまるべきでは。
→ 「イスラームによらず,原理主義が最も尊いというのは間違い」という極単純な話のはずなんですけどね,本当は。なぜに変なこじらせ方をしたやつが目立つのか。いや,逆か。変なこじらせ方をしてるから目立つのか。
→ yellowbellさんのブコメの「法治主義からムスリムの行為を批判することは無意味とする立場はわかりましたが、イスラム法の現行法への優位性を自明のものとして受け容れることを求めるあたり、説得を省く盲信の壁が聳えている気がいたします。」がもっともすぎてそれ以外無い。


・イスラーム国(IS)は、ウエストファリア体制(主権国家の共存)を破壊するか?(Togetter)
→ もう一件ISの話題から。
→ うーん。宗教戦争を終焉させるための主権国家体制=内政不干渉の原則,という見方は少し無理があるかも。ウェストファリア条約は宗教戦争の終焉であると同時に神聖ローマ帝国の解体であって,主権国家体制の成立としてはカトリック国フランスが賛成したように,後者(=神聖ローマの解体)の意味合いの方が強い。三十年戦争が最後の宗教戦争になったのは,三十年戦争自体の悲惨さと無益さによるものであろう。
→ 無論,ハプスブルク家はカトリックの力でもって帝国を維持しようとしていたから,前者と後者の関係は深い。が,それはハプスブルク家が「帝国」という形での主権国家を存立させようとしていたからであり,三十年戦争自体がすでに主権国家体制の準備を運命づけられて生じた戦争ということもできる。逆説的に,国家統合の理念に民族や地理的要件ではなく,宗教を持ってきたところが前時代的であり,“神聖”ローマ帝国という国号の呪縛であろう。
→ いずれにせよ,フランス視点で考えれば宗教なんて眼中になかったわけで。宗教戦争を終焉させたのは主権国家体制ではあるにせよ,それが国益を至上とする価値観の勝利を意味したからではなかろうか。国益の前には,宗教問題は背景になるしかない。
→ その下段の話。西欧諸国が主権国家体制を世界中に広げていったのは近代世界システム(の下での植民地帝国)においてそれが都合が良かったからで,「西洋の押し付け」というのはその通りだろう。
→ しかし,ではイスラーム国が主権国家体制を否定する動きかというと,それは違う。あれは新たな主権国家を作ろうとしており,彼らが否定しようとしているのはあくまでいわゆる「サイクス・ピコ体制」に過ぎない。ただし,サイクス・ピコ協定で策定された国境線と現在の国境線は大きく異なり,このイスラーム過激派側からの呼称自体が非常にイデオロギー的である。
→ つまるところ,イスラーム国の問題は国境線の無秩序的な変更や基本的人権の侵害は完全にアウト,というシンプルな問題として捉えてよいと思う。イスラーム国が今後長らく存続したとしても,主権国家体制破壊には至らないし,破壊する気も無かろう。


・ネットで集めた個人情報で「赤の他人を昔の友人だ」と説得できるか実験 → 簡単に騙されてしまう人達の動画がスゴい!(ロケットニュース24)
→ バーストリンカー(隠語)の亜種案件。記憶の捏造はありえそうで怖い。あとまあ,「忘れてるけど,情報が合ってるからいたことにしとけ」って人も多かろう。


・15人の女性暴行 懲役47年が確定へ(産経新聞)
→ 懲役47年,こういう特殊事情だと可能なんだな。22年は超えないものと思っていた。初めて知った。しかし,強姦致死傷罪なら無期懲役でよかったのでは,という気も。


・大阪府議会本会議の大混乱(Togetter)
→ これはひどい。議会の未開催とは古典的な手段だ。司法が中世に飽きたらず議会までも中世か。
→ しかし,地方自治法に対策の規定がちゃんとあるんだなぁ。すごいというべきか,地方議会のレベルなんてそんなもんと昔の人が見透かしていたのか。確かに,ちゃんと調べれば前代未聞というわけでもないような気はする。
→ そして,国会にはそういう法的規定が無いらしいんですが,マジですか。それは怖い。  
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2014年12月06日

非ニコマス定期消化 2014.7月中旬〜8月中旬



この人はまたすごい発想をw



強引に一人で再現。さすがはピアニート公爵。しかし,さすがに大分無理してるのはわかるw




18年経ってようやく取れたというのもすごい話。TASの進化だ。



別にAKBファンじゃないけど,こういう試みはおもしろい。ちゃんとレッスンしてるんだなと。投稿された直後はアンチだらけだったが,今見ると普通に褒めている人が多い。



NG集の人の叛逆編。相変わらずおもしろい。ネタが途中までなので,後半を使った続編を期待したい。



5219歩を達成したものの,新ルートが見つかり5217歩の更新へ。しかしその後,さらなる更新案が発見されるのであった……



カゴメと熊本大学による企画。特殊な爆発の衝撃波の当て方をすることで,皮が破れずに中身だけ砕ける模様。



ほっぽちゃん作られるの早いよw



自分も行ったので。
  
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2014年12月03日

ドイツ・フランス・ベルギー旅行記(項目別雑感)

後編から。以下,パリをdisり続ける記事。


○パリメトロについてのアレコレ
パリについての印象を考えた際,悪い部分が凝縮されているのがパリ・メトロだということに気がついた。というわけで,パリ・メトロのダメな点について列挙し,パリへの悪口の代わりとしておく。
・旅行者にはスリと詐欺師が寄ってくる
→ まあ何よりこれ。治安が悪すぎる。結果的に被害は4人全員ゼロだったが,あまりにも怪しく寄ってくる奴の多さに終始警戒心MAXであった。朝方と日中はマシ,というか一般市民も多く利用しているわけで,さすがにそうした視線がある場では犯行も難しいらしい。この辺は大多数の善良なパリ市民の皆様に感謝と言ったところか。一方,夕方と夜は正直駅自体に近寄りたくない。
→ やはり自国のぬるま湯っぷりに浸かっている日本人の被害者は突出して多いらしく,わざわざ日本語でスリ注意のアナウンスがあった。
→ 特に詐欺師は大変に印象的なエピソードがあるので紹介しておく。我々が切符を買おうとしていたところ,突然中東系のカップル二人が近づいてきて「私はボランティアだ。フランス語の読めないお前らに代わって便利な切符を買ってやろう」と英語で言い,自分のクレカで高額な切符を勝手に人数分購入。その上で「これは私がポケットマネーで買ってやったんだ,お前ら買い取れ」と迫ってくる。が,どう考えても怪しい以前に,仮に正当なボランティアだとしても我々の行動範囲から言ってそんなチケット不要で,とどめに彼がクレカをかざした時に券売機がinvalidと表示されたのをメンバーの二人ほどが見逃しておらず,「申し訳ないが,一切信用できない。信用してくれというなら,そこにあるインフォメーションカウンターまで一緒に来てくれないか」と言うと,あっさり全力で逃亡した。そもそもinvalidなクレカなのに発券される券売機自体が完全におかしいわけで,パリ・メトロ自体が詐欺の片棒をかついでいる印象しかない。あ,インフォメーションカウンターの職員はめちゃくちゃ親切だったのが唯一好感を持てたポイントだったが,いや機械の方を直せよ。あれ,買い取って自動改札を通ろうとしたらどうなってたんかな。

・構内が狭くて暗い
→ 治安の悪さに確実に拍車をかけているのがこれ。なんであんなに照明を落としているのか。無駄に地球環境に配慮しているのか,よほど金がないのか。構内でカメラ出すのが怖く,スマホを出すのも必要最小限にしていたため写真がないが,どこの駅もびっくりするほど暗くて狭い。というか,地下鉄の入り口の階段からして暗い。治安以前に単純に怖いですあれ。
→ なお,照明の暗さに関しては地上でも大差なく,夜になるとこれまたびっくりするくらい暗くなる。誰も通ってなかろうと全力で街灯を照らし続ける日本の行政は防犯上間違ってなかったんだなと認識できるので良い経験だった。

・いくつかの大きい駅はダンジョンと化している&アンチバリアフリー
→ 狭くて暗いのに加えて,大きな規模の駅は完全に迷路と化している。新宿駅や渋谷駅のようにいくつかの私鉄が乗り入れているというわけではないので,ああいった複雑さは無い。が,大手町や赤坂見附と比べるなら,明らかにシャトレ駅やモンパルナス駅の方が広くてわかりづらい。特にシャトレ駅は一回壊してく作りなおした方がいいレベルの設計ミス。看板はホームの場所と出口を示す看板だけはそれなりにあるものの,トイレの位置やインフォメーションカウンターの位置は極めてわかりづらく,構内全域の地図はほとんど無い。ホームとホームの間がかなり歩かされ,乗り換えは不便。ちなみに,構内が狭く感じられる原因にもなっていると思うが,壁や天井が舗装されておらず岩がむき出しなのもダンジョン感を増している。なんというか,迷宮だとかダンジョンだとかdisりまくってごめんなさい。東京メトロさん,あんたはマシだった。
→ もうひとつ書いておくべきことととして,徹底したバリアの数々。エレベーターは? 傾斜の緩い坂道は? せめてエスカレーターは? という。全部階段で容赦がない。構内で全く車椅子を見かけなかったが,そりゃそうだよな。車椅子は地下鉄に乗るなと。各種完備な上に,車椅子の人が頼めば職員がやってきて乗車補助を行うメトロさんはやっぱり神なのでは。

値段が高い
→ 運賃はどれだけ長く乗っても1.7ユーロ。150円で計算すると大体250円くらいになる。メトロなら都区内の端から端まで移動できる最高額に相当するが,パリ・メトロはたとえ1駅移動でも1.7ユーロである。しかも,パリ・メトロは駅間距離が非常に短く,ものの1分で次の駅に着く。東京メトロの1駅分がパリ・メトロの2・3駅分に相当する。それを前提にパリ・メトロの路線図を見るとわかるのだが,パリという都市は案外コンパクトで,観光地もモンマルトルの丘を除けば中心部に密集しているので,究極全部歩いてもそんなに時間がかからないと思う。地下よりも地上のほうが確実に安全だし。


○治安
体感上の治安を行った都市の中で並べてみると
良 ストラスブール=ハイデルベルク>ケルン>>フランクフルト>>ブリュッセル>パリ 悪
という感じ。パリはダメですほんと。言うまでもないことかもしれないが,パリやブリュッセルでも朝方・日中は安全。ただし,夕方・夜とのギャップは東京感覚でいるとかなり驚くと思われる。一気に変貌する。街灯は少なく,都心部でもかなり暗い。


○物価
基本的に東京よりも高い。何が東京が世界で一番物価が高いんだか。欧米の調査会社が行っている物価調査は全くあてにならない。さらに言えば,ここ2,3ヶ月の円安は関係ない。なぜなら,脳内で1ユーロを120円くらいで計算してもまだなお高いからである。ただ,値段が高い原因は値段の付け方が超絶アバウトだからではないか,という疑念も。パリのある商店で水を買おうとしたところ,500mlでも750mlでも1Lでも全部「1.6ユーロ」だった。いくらなんでもそれは。あと,田舎ほど安い説があり,ストラスブールの物価はやや安かった。

ああ,そういえばドイツはデポジット税がある。表示価格から0.25ユーロほど上乗せで取られる。


○食事・水
日本人が忘れがちなのが水。かく言う私も着いてから「そういえば水道水飲めないわ」ということに気づいた。で,ペットボトルの水代がけっこうばかにならない金額でかかるので注意しよう。多少荷物になろうとも,安く買えるところがあればどさっと買ってしまった方が良い。どうせ1日500ml〜1Lくらいは消費するわけだから。炭酸が苦手な人はさらに注意を要する。普通に買うと炭酸になるし,炭酸の方が安い。表記をよく見て買おう。ドイツ語なら「ohne Kohlensaure」とか書いてあるのがあるはずで,これなら炭酸抜き(ohneがwithoutということだけ覚えておけば,この買物のみならずいろいろ役に立つはず)。

食事は,ドイツなら量に気をつけるべし。大体日本人換算すると1人前は1.5〜2人前になる。特に,どこに行っても尋常じゃないザワークラウトが出ることだけはドイツで閉口した。よほど大食いに自信がある人がいない限り,ドイツ人のウェイターさんに怪訝な顔をされようとも,人数分注文することはない。「東洋人は胃が小さいだよ。お前らが食い過ぎなんだよ」と堂々としていればよい。味については,通説と異なりドイツ料理は美味しい。決してまずくない。おそらくあの風評は,ひとえに膨大なザワークラウトとソーセージに責められた経験から出てくるものだと思われる。ドイツ人と同じペースでその2つだけ食わせられ続ければ,そりゃ「単調でまずい」という印象にもなろう。

フランスはそれに比べると常識的な量で出てくる。しかし,今度は物価の高さが我々を阻む。パリで安くて美味いものを食べようと思うなら,フランス語がある程度読めるか,きっちり綿密に調べてからいったほうがよい。ここは我々の旅行の誤算で,「パリだしどこでも英語が通じるだろう」「フランス料理の本場だし,どこ入ってもある程度美味いだろう」という感覚で行ったら,全く通用しなかった。結果的にハズレをつかまされたり,パリでイタリアンを食う羽目になったりし,ちょっと調べてから行っても英語メニューがなくて挫折するなど,割と散々であった。そうでなければ中途半端にケチってはダメで,昼飯で20ユーロ,夕飯で35ユーロラインを割ったら割と博打になる,というのを今回の三日間で学んだ。

旅行を通してのうまかったものランキングベスト3。
1位:ケルンのライニッシャーザワーブラーテン
2位:ストラスブールの夕食で出た,鶏肉の白ワイン煮込み
3位:パリ,オルセー美術館で食べた魚介のシチュー
この3つは本気で美味かった。番外編としてはハイデルベルクで食べたカリーヴルストを挙げておく。まあカリーヴルストはドイツのどこでも食べられると思うけど。


○言語
ドイツ・フランス・ベルギーの3つにいる分には英語だけで大して困らない……と言いたいところだが,やっぱりちょっと困る気がする。単語が少し分かるだけでも利便性が大きく違ったのもまた事実だった。空港や駅は英語が併記されているし,レストランでは英語メニューがある店もそれなりにあるものの,やはり原語の方が情報量が圧倒的に多い。大学卒業してからほとんど触れていなかった私の超にわかドイツ語でさえ,フランクフルトやハイデルベルクで電車移動する際に役に立ったのだから,ちゃんと読めれば相当違うと思う。

意外と重要なのが発音で,当たり前だが固有名詞は英語読みすると全く通じない。駅名や施設名ならググるとカタカナで出てくることがあるし,究極グーグル先生に発音していただくという手段も取れなくはないものの,それらは時間が掛かり過ぎるし,解決しないこともある。全く勉強したことのない言語でも,なんとなくの発音だけ頭に入れていくと割とスムーズに旅行できると思う。

総合するに,覚えていくべきは現地の言語の「単語」であって挨拶や定型句等ではないというのが今回の経験である。よくよく考えたらEnglish menu available?やWhere is the Paris'Ost station? レベルの英語なら向こうの一般市民も理解できるわけで,わざわざドイツ語やフランス語で頑張る必要はどこにも無いのである。それよりも,上記で出したようなohne KohlensaureであったりTischであったり,AusgangであったりAbfahrtであったりといった単語の意味とカタカナ発音をしっかり覚えていった方がよほど役に立つ。


○お金
払えるところはクレジットカードで支払うのがおそらく一番賢い。が,私と同じような現金主義という方へ。改めて書くが,空港のレートは良くないというのが一般的な評価だが,実は街中の両替でも全然変わらない。ぶっちゃけて言えば,おそらく成田空港が最も楽かつそれなりのレートで,次点が現地の空港ではないかと思う。パリやフランクフルトレベルの都市なら両替自体はすぐに見つかるが,すぐに見つかるような場所は大体レートが悪い。ぱっと見よく見えてもごそっと手数料で持っていかれる。探せばレートの良い店もあるのかもしれないが,私がパリの街中で見かけた十数軒だと,どこも大して変わらなかった。そして,元々そういう店を知っているなら話は別だが,知らないなり今からググって探すなりというと手間でしかない。どこの誰だよ,両替するなら現地の街中とかいう俗説を広めた奴は。次から私も成田空港で両替してから行きます。あと極力クレカ使います。現金主義はやめよう。


○Wi-Fi
今回4人旅行で2つWi-Fiをレンタルして導入した。かなり役に立ったものの,はっきり言うとあまりつながらない。文字情報はいいが,画像が入った瞬間にダウンロードが止まる。今時文字だけで構成されているページなんてほとんどないので,レンタルWi-Fiだけでなんとかしようというのは,万全にネットをしたいなら難しいかも。おとなしく現地でSIMカードを買いましょう。実際,一人耐えかねてストラスブールのOrange(フランスの最大手携帯電話キャリア)で買ってた。そして彼のスマホで使ったGoogle mapが我々の旅を何度か救うことになったので,ネット環境は重要。

なお,ホテルには今時どこでもフリーのWi-Fiがあって,日本から持っていったレンタルWi-Fiでなくともつなげた。が,通信速度は同じで重い。

  
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2014年12月02日

ドイツ・フランス・ベルギー旅行記(後編:パリ・ブリュッセル・ケルン)

中編から。

パリ(続き)
ルーヴルとオルセー以外に行ったのは,まずサン・シュルピス教会。どこだよそこという方のためにWikipediaにリンクを張ったが,おそらく『ダ・ヴィンチ・コード』の冒頭に出てきた教会と言った方が有名であろう。

パリ5


あの作品では,この子午線の下に隠し通路があって,それを床を叩いて調べていくというシーンがある。ので,それを再現するのが聖地巡礼の醍醐味であろう。私もやってきた。なお,この子午線がロンドン・グリニッジと世界標準を争ったというのは『ダ・ヴィンチ・コード』の創作だそうで。


次に,今回の旅程にパリを入れた大きな要因であるところの『乙女理論とその周辺』の聖地巡礼。これも先駆者の記事を張っておく。大変役に立ちました(よくよく日付を見たら一ヶ月差,しかもこの方も『ごちうさ』目的でストラスブールに行っておられる!)。で,今見て不覚にも校舎を撮り忘れたことに気づいたが,完全にアフターカーニバルなので忘れよう。それ以外は大体撮れたと思う。『WA2』と違ってまんまな光景がなく,合成元探しが割と楽しかった。

パリ6 パリ7 パリ8


朝日が駿河によく会う交差点は,おそらくこの3つくらいの合成。本当はあるべきマンションが一つなくなっている&街路樹も一本なくなっている,その分鋭角だったカーブが鈍角になっていて,歩道が現実よりも広く取られている,という改変がある。

パリ9


ルナ様と再会した公園。作中では明言されていないが,椅子の形といい柵の形といい,ついでに言うと位置も踏まえると,先駆者様の言う通り,まず間違いなくこのリュクサンブール公園だろう。ここも木が何本かなくなっているほか,彫像は別所にあったものを持ってきたのだと思われるが,まんまぴたりの彫像が見当たらず。次に誰か行く人,是非見つけてきてください(他力本願)。惜しむらくは11月なんぞに行ったためにアーモンドの木が咲いてなかった(というかどれがアーモンドなのかすらわからなかった)こと。これは校舎の撮りそこねと合わせてパリ再訪ですかね……いや現実的に言って春先にパリに行くのは今の仕事を辞めないと無理だなぁ。

あとまあ,メゾン・ド・パピヨン(りそなたちの下宿先)と下宿付近の路地は,モンパルナスないしダンフォール・ロシュロー周辺と山を張ってちょっと探してみたけど,普通にわからなかった。作中の情報に反して,モンマルトルの方にあるのかもしれない。ブランケット家別荘(大蔵家三人がしばしば会っていた場所)は,作中の情報を信じるならソルフェリーノ駅からカルチェ・ラタンの一帯のどこかだと思われ,こちらもそれとなく探しながら歩いてみたが,それっぽい風景が多すぎて絞れず。これらは後続に期待ということで。

最後にノートルダム・ド・パリ。ここは約10年前に行った時にルーヴル同様訪れているが,その際に入り口の「各国のwelcome」の日本語が「よこそう」になっていたのが記憶にこびりついており,これが直っているかどうか大変気になっていたのだが

DSC_0086


直した跡が残っているものの,直っていた。さすがにこの10年の間に誰かが指摘したか。

そうしていよいよパリを離れる段になり,パリ北駅に行くと重大事件が待ち構えていた。思わず実況してしまったので,補足しつつ。




実際のところストライキに入るのは11/25からのことで,この日は関係なかったのだが,電光掲示板に「11/25からストライキに入るから,よろしく」とか書いてあるわ,実際に時間になっても出発する気配が無いわで,そりゃもう疑心暗鬼。ところが,万国共通の「keep out」と書かれたビニールの帯が列車に張られた辺りから,雲行きが怪しくなる。








というわけで,不審物発見が真相。ミスターフランシスコ・ロッシを呼び出す駅員の声がどんどん苛立っていくのと,駅員→鉄道警備隊→フランス陸軍(というかNATO軍)→爆弾処理班と警備勢がランクアップしていったのが印象的であった。いや,我々としても気が気でなく,必死に場内アナウンスの英語を拾っていたのだけれど。結局30分遅れ程度で出発できたのだが,下手をするとここで完全に足止めということになり,帰国できなくなっていたところであった。しかし,今考えると30分程度でNATO軍やら爆弾処理班やらが出てくるフランスの国防体制は一体なんなのという話で,それだけ即時展開できるほど常時準備がなされているとすると,フランス物騒すぎる。治安が悪いとかそういうレベルの話ではない。無事……とは言いがたいものの,なんとかThalys(ベルギー国鉄の国際列車)に乗り込んで,一路ブリュッセルへ。あ,Thalysのサービスは最高に良かったことを付記しておこう。……フランシスコ・ロッシ,貴様だけは絶対に許さない。絶対にだ。


ブリュッセル
夜に到着したということもあり,着いた瞬間わかるパリよりはマシ程度の治安情勢にげんなりしつつ,ホテルへ。で,ホテルをよくわからないまま南駅付近に取った結果,これがまたブリュッセルでも随一のガラが悪い地域で,泊まったホテルは明かりを付けた瞬間焦げ臭い匂いがするという極限空間であった。そういうわけで,ブリュッセルの印象もパリに次いで悪い。それでも「治安に怯えてても何もできない。せめてワッフルは食おう」という話になり,グラン・プラスと小便小僧だけ見て,ワッフルを食ってさっさとホテルに帰還した。ワッフルは大変美味かったし,小便小僧は噂に違わぬがっかり具合なので,一見の価値はある。


ケルン
最終日,ブリュッセルからケルンへ。で,降り立った瞬間わかる治安の良さ。なんすかねこの空気の違い。フランクフルトはダメだったし,ラテン系とゲルマン系の違いというわけでもなく。ケルンでの狙いは2つで,1つはもちろん大聖堂。その大聖堂の写真を貼ってもいいのだけれど,あえてこちらを貼っておこう。

ケルン


そもそもケルン大聖堂は東方三博士の遺体を収めるべく作られた聖堂である。その遺体を収めた聖遺物収容器がこれ。隣接博物館に行かないと見れない。こちらの博物館,聖遺物マニア垂涎のコレクションとなっており,そんなの日本に何人いるんだというツッコミはさておき,大変にお勧めである。

ケルンもう一つの目的はライニッシャーザワーブラーテン(Rheinischer Sauerbraten)。ケルン名物で,「牛肉のワインと酢の煮込み」ということしか情報が無いままケルンに到着。インフォメーションセンターにて超拙いドイツ語と日本語訛りな英語を駆使して何とか「その料理ならBrauhaus Fruehが一番有名」という話を聞き出して移動。実は電車の時間が危なく急ぎに急いでいたので料理の写真を撮ってないのだが,このライニッシャーザワーブラーテンはこの旅で一番うまかった。ケルンに行ったら絶対に食べるべき。画像が無いのが悔しいので探してみたら,ミシュランのHPにあるじゃないですか画像。上に乗っかっているりんごがまたよく合うし,よこにある巨大クヌーデルも,煮汁を吸って良い味に。ものの15分ほどで食べたのがもったいなかった。

ケルンからフランクフルト空港へ直行。中央駅より先に空港駅に着く電車があり,これはありがたかった。フランクフルト空港でお土産を買ってしっかりユーロを使い果たしてから,飛行機へ。帰りもやはりインチョン経由で成田へ。

次回,旅行の項目別レポート編に続く。  
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2014年12月01日

ドイツ・フランス・ベルギー旅行記(中編:パリ,オルセー&ルーヴル)

前編より。

パリ
先に書いておくが,今回の旅行におけるパリの印象は最悪に近い。パリに入ってメトロで早々詐欺師と交流するという心あたたまるエピソードがあったのでこれは後述するが,これによって我々の警戒感は否が応にも高められた。圧倒的な落書きの多さに詐欺師,スリらしき人々,難解なパリ・メトロと来て,さらに我々の印象を悪化させたのが物価の高さである。何買おうとしてもフランクフルトやストラスブールよりも高くて閉口した。そうそう,物価以前の問題として,ユーロとの交換レートもひどかった。ほっといても観光客来るからってぼりすぎやろ。

と,街自体の過ごしやすさは最低だが,それを補って余りある魅力があるのもまた確かで。都心部の美しさは絵になりすぎてて,ここは芸術の都なんだよなぁと再確認させられる。

パリ1 パリ3 パリ4


適当にとってこれですよ。ストラスブールは近世あたりで時間が止まった美しさがあったけど,パリの方は現代まで歴史を重ねつつ残ったたくましさみたいなものがあった。3枚目は意外と街に溶け込んでいるソニーさん。本当はホテルの部屋から撮った写真が一番良いのだけれど,バ的に危ない(=特定されそうな)のでやめといた。

パリ2


こっちは,一度は崩落したという愛の南京錠。この橋以外の橋でも,つけられそうなところはびっちり。世界のリア充は全く懲りてない。街の写真はこんなもんにしといて,行った観光地としては極めて一般的なもの。ルーヴルとオルセーはそれぞれ丸一日費やした。

オルセーは最初からその覚悟で朝9時半から入れば,なんとか丸一日で全部鑑賞できる。基本的に18時閉館だが,木曜日だけは21時45分まで空いており,足さえもつなら木曜日に行くとゆったり見ることができる。「月曜休館」というのは意外と忘れがちなので注意しよう。常設展で8.5ユーロ,企画展込みで11ユーロ。オランジュリー美術館とのセットで15ユーロという券も売っているが,一日で見切れるかバカという話で。入場の際にけっこう厳重な手荷物検査がある。また,昨今の鑑賞客のマナーの悪化からオルセーは2011年から写真撮影禁止になっているが,はっきり言って形骸化している。作品ではなく建物を撮る分には職員さんに止められることはないし,実際皆ばしばし撮っていた。ググると禁止直後の11・12年頃に行った人の旅行記を読むとカメラをカバンから取り出しただけでも怒られたそうなので,美術館側の態度が軟化しているのかもしれない。もうちょっと調べてみると,オルセー美術館の職員組合は,美術作品は公共物であるという立場から写真撮影禁止に反対しているそうで,それで堂々とした“見て見ぬふり”状態なのかも。しかも館内全面禁止というわけではなくて,撮っていい場所とダメな場所があるようなのだが,割と境界が曖昧なのも形骸化している原因だろう。

所蔵品はご存じの通り,新古典主義からポスト印象派の絵画・彫刻・調度品でジャンルが固まっており,収蔵されている作品の画家もほぼフランス人。フランスの近代美術が好きならルーヴルより楽しめるかも。適当に挙げると,ミレーの《落穂ひろい》・《晩鐘》,アングルの《泉》,クールベ《画家のアトリエ》,ブーグロー《ヴィーナスの誕生》,マネ《草上の昼食》&《オランピア》&《笛を吹く少年》,カイユボット《床を削る人々》,ルノワール《ムーラン・ド・ラ・ギャレット》等。それにしても,見ていくと「これ日本で見た」という作品が多すぎて,企画展という形でいかに大量に持ち込まれているかよくわかる。特に印象派ゾーンはその意味で新鮮味がゼロに近かった。逆に言って,これでもう日本に来るオルセー美術館展は全部無視しても大丈夫かも。順路は自由だが,割と迷宮じみていて,うっかり見逃してしまう展示スペースが非常に多い。しかもそういうところにこっそりブーグローとかシャセリオーとか置いてあるから油断できない。その意味での完全制覇の難易度は意外と高いかも。


一方,ルーヴルはまともに鑑賞しようと思ったら,やっぱり3日はかかる。私は約10年ぶり二度目の来館だったので,前回見たところや興味が薄いところはかなりすっ飛ばし気味に見たのだが,それでも今回も丸一日かかって9割方を「踏破」したに過ぎなかった。入場料は12ユーロで,何日も入り続けるのは金銭的にも重い。9時開館から入ることを勧めたい。手荷物検査はあれでいいのかというくらいにザル。写真撮影は自由。そういうわけで,1,2日でルーヴルを攻略しようという皆さんのために,ルーヴル攻略法を簡潔に書いておく。

ルーヴル1


・あれだけ巨大でも入り口は1箇所のみ。『ダ・ヴィンチ・コード』でもおなじみ,ガラス張り大ピラミッドの真下から入館できる。地下鉄で行くのが一番わかりやすい。なお,ピラミッドの周囲は例によって観光客狙いの怪しい人たちがうろついているので注意。
・基本的な行動として,見渡す限り宝物だらけだが,興味が薄ければさっさと通り過ぎること。未練や執着があると,本当に見たいものが見れなくなる。パックツアーにありがちな「超大作だけ見て,後は素通り」戦略は案外と正しい。
・水・金曜日に行くこと。21時45分まで開いているので,休憩を取りつつ鑑賞できる。それでも全部しっかり見ようなどという大それた計画は立てないこと。

・3階がバロック〜ロマン主義の絵画ゾーン。比較的超有名作が少ない。人もまばら。シャルダン《食前の祈り》,ヴァトー《シテール島への巡礼》,フラゴナール《かんぬき》,プッサン《我アルカディアにもあり》,ジョルジュ・ド・ラトゥール《いかさま師》,ホルバイン《エラスムスの肖像》と,ざっと言われてピンとこない限り,かなりの限りすっ飛ばしてよい。逆に言って今のラインナップにときめくようなら,ここに相当時間を割くのをお勧めする。私自身,ここに最初に行って最大限の時間を費やした。フェルメールの《レースを編む女》とアングルの《トルコ風呂》が数少ない超有名作だが,この2つの位置はけっこう離れている。あとはルーベンスの超大作《マリー・ド・メディシスの生涯》が大部屋1個使って全部展示されているので,これは一見の価値あり。

・2階は3つのゾーンに分かれている。1つは工芸品・調度品ゾーン。歴史順に並んでおり,中世・ルネサンス・バロック・新古典・近代とみられる。新古典と近代については,ほぼ同じものがオルセーで見られるので,そちらで見てしまってすっ飛ばすのをお勧め。ただし,ナポレオン3世の居室だけは行く価値あり。中世・ルネサンス・バロックゾーンはざっと見て「バロック期の技術水準の革新がすごいなぁ」というのだけわかればいいような気がする。
・2階の2つめ,古代エジプト・ギリシアゾーン。これはほぼ同じ展示物が1階にもあるので,そちらで見たほうがよい。というか,ルーヴルは古代エジプトの展示品を2階と1階に分けて置くという謎の配置をしており,大変に巡回しづらい。
・2階の3つめが,いわゆるグランド・ギャラリーゾーンで,ルーヴルのメイン。イタリア・ルネサンスの超大作と,19世紀フランスの超大作がずらっと並んでいる。ルーヴル最大の見どころといえばここ。レオナルド・ダ・ヴィンチ《モナ・リザ》&《岩窟の聖母》,ヴェロネーゼ《カナの婚礼》,アングル《グランド・オダリスク》,ダヴィド《ナポレオンの戴冠式》&《サビニの女たち》&《レカミエ夫人》,ジェリコー《メデューズ号の筏》,ドラクロワ《民衆を導く自由の女神》&《キオス島の虐殺》&《サルダナパールの死》と,改めて書き並べるにとんでもないゾーンである。一般的に言えばここが一番時間を取るべき場所。また,絵画メインで見に来たなら,3階から攻めてここが終着点になると,ちょうどよく帰宅できると思う。1階・地下1階にはほとんど絵画がないので。

ルーヴル3


・《モナ・リザ》は名前が《ジョコンダ夫人》にきっちり変わっていた(併記の優先順位がひっくり返っていた)ことを報告しておく。フランチェスコ・ジョコンダの夫人,いわゆるモナ・リザ,ラ・ジョコンダ,という形。人種民族入り乱れて,この前でセルフィーを撮っていた。私もやった。
・そうそう,《サモトラケのニケ》があるのも2階。というか,サモトラケのニケがグランドギャラリーの入り口になっているので,目印にどうぞ。

ルーヴル2


・1階も4つのゾーンに分かれる。1つめが大彫刻ゾーンで,中世から近代までの彫刻がずらっと並んでいる。有名作は少なく,ぱっと見で「すごい(小並感)」となるゾーンではあるので,ぱっと見で立ち去るのがよい。一応,多くの日本人が知っているだろうものとして,カエサルとハンニバルの彫像がある。しかしこの2つの彫像は,ルーヴルのHPの「主要作品」に載っていなかった。ルーヴル的には押しではないのだろうか? 人のまばらさから言って,ほとんどの観光客から存在すら認知されていないような雰囲気であった。もったいない。

ルーヴル4 ルーヴル5


・2つめは古代メソポタミア・イランゾーン。前1〜2千年クラスのレリーフがずらっと並んでいるので見応えがあるものの,これは大英博物館やベルリンのインゼルムゼウムでも見れる代物なので,そっちにも行く予定があるなら,そこまで貴重な感じはしないと言えばしないかも。唯一,ハンムラビ法典の実物は見るべき。

ルーヴル6


・3つめが古代エジプトゾーン。石棺とヒエログリフと死者の書のラッシュは見応えがあるものの,やはり大英博物館やメトロポリタン美術館がある以上,わざわざルーヴルでがんばって見るものかというと疑問が。我々は今回かなりすっ飛ばしたゾーン。
・4つめは古代ギリシア・ローマ彫刻ゾーン。ここも割と「すごい(小並感)」で終わらせても問題ないのであるが,あえて言えば近代彫刻との差異に注目するとおもしろいかも。超有名作としては《ミロのヴィーナス》様がおられる。

ルーヴル7


・この他,実は5つめのゾーンとしてアフリカ・オセアニア・古代アメリカなどの美術というゾーンがあるのだが,入り口からして違うという別館状態で非常に行きづらい。我々も今回は断念した。もったいないのでつなげましょうよ,とはルーヴル美術館に言いたい。

・地下は2つのゾーン。1つは中世の「ルーヴル要塞」だった時代の遺構を復元したもの。もう1つは雑多なジャンルが集まった場所で,主にはイスラーム美術ゾーンである。「聖王ルイの洗礼盤」はイスラーム美術の金属工芸最高傑作なので,是非見て欲しいところ。というか,イスラーム美術に縁遠い日本人だからこそ,これを機会に見ておくのを勧める。古代エジプトやギリシアに比べると,ルーヴルでしか見れない度が高いというのもある。なお,ヨーロッパ人としてもイスラーム美術への関心は薄いらしく,人はまばら。


最後に,ルーヴル事件簿として。私は平たい顔族としてはけっこう濃い部類に入る顔をしておりまして,半ば冗談で「無精髭にしておけば現地民に間違われるのではないかw」と仲間内で話しており,試しに髭を剃らずに数日,ルーヴルではめでたく本当に現地民に間違えられ,迷子になった旅行者らしき人に大変拙いフランス語で話しかけられるという快挙を成し遂げた。ええ,もちろん日本語訛りな英語で「ここは2階だ。そこのエレベーターに乗って地下1階まで行ったら右側に道なりで出口だ。」と返してやりましたとも。エレベーターまで見送ると,なんとも言えない不思議な表情で「サ,サンキュー」と綺麗な発音で言ってくれたアラブ人御一行様が大変印象的でした。


後編に続く。  
Posted by dg_law at 06:00Comments(0)TrackBack(0)