2015年11月30日

中国軍事パレードに関連して

・中国軍事パレードで気になったこと(極東ブログ)
→ 中国(中華人民共和国)は戦勝パレードをする権利がある。それ自体はとがめようがない。しかし,その内実はきっちり「反ファシズム陣営の一員として,大日本帝国を倒したこと」の誇示でなくては名実が一致しない。このような大々的で現在の兵力を誇示するような軍事パレードとして挙行し,虐殺を行った独裁者を招待したことについては,批判されて当然であろう。
→ 潘基文国連事務総長について。彼はこの軍事パレードの意味合いが,日中戦争の戦勝誇示にはないことを当然知っていたが,にもかかわらずバシール大統領と同席したのである。確かに国連は二次大戦の連合国=反ファシズム陣営を起源するが,反ファシズム陣営として連合したのに身内に全体主義国家を含むというねじれを原初から有していた。このねじれが冷戦と国連の無力化の双方を生んだわけであるが,だからこそ起源を論拠に中国の正当性を擁護するのは硬直した思考であり,原理主義的であると言わざるをえない。何せ中国自身が「スーダン国民は反ファシズム戦争で重要な貢献を行っており,バシール大統領の出席は理にかなっている」と意味不明極まりない声明を出しているのだから。
→ いまや国連は憲章通り「基本的人権と人間の尊厳及び価値」の保持に向けて活動する組織であり,ひるがえって潘基文の行動は国連の組織目標に反した行為ではないか。仮にバシールが訴追されていなかったとしても,である(ICCの話は今回の事件の本質ではない。ただし,バシールが南アフリカで逮捕されなかった直後の出来事である点は踏まえられてよい)。
→ なお,この戦勝式典には朴槿恵大統領のほか,欧州からも高官が出席しており(オランダとフランスは外相が出席),なんかもう国際社会ダメだろう。もちろん,冒頭に挙げた本義の意味合いからして,旧連合国諸国は何かしらの代表者を派遣しないわけにはいかないという事情もわかる話であるので,潘基文以外を積極的に批判するわけではないが。本質を鑑みれば態度が察せられる程度の高官にとどめておくべきではなかったか。

国連は「中立性」を放棄したのではないか 潘事務総長が「抗日戦争勝利70周年」行事参加
→ でまあ,日本政府はこの点きっちり追及せぇよと思っていたところで,頓珍漢な抗議をしたらしく,げんなりしている。そりゃ「現在は双方が国連加盟国であるところ,片方の国がもう片方の国に勝ったという過去の戦争の記念式典に参加するのは,中立性に欠く」なんて抗議をすれば,「本義から言って正当な行為に参加しているに過ぎない」って反論されるに決まっているわけだ。本義とはずれた軍事パレードじゃないか,と抗議できないところに今の日本外交の拙さが表れたと思う。


今回の一件,一部の右派からは拙い日本外交の拙さに気づかないまま盲目的に肯定するコメントが見られ(これの愚かさは補足するまでもない),一部の左派からは上述の“原初のねじれ”を用いた中国の擁護や(右派批判のため本質を見失っていないか?),「日本だって人のことは言えない」という相対化が見られ(ダルフール紛争や中国の人権弾圧と比較して本気でそう言ってます?),双方において非常に残念な気持ちになった。人権でも国益でもいいので,自らの党派性よりも思想に自信を持った主張を読みたい。
  

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2015年11月27日

『ガールズ&パンツァー劇場版』感想

円盤見直して細かいところを確認したい部分が多すぎるので,簡潔に箇条書きで。

・予告編を見てから行ったのだが,嘘予告すぎるでしょこれw。すでに劇場版を見てしまった人も,見てみると笑えると思う。本編の隠蔽っぷりに。


・120分もあったのはちょっと驚いたところで,パンフレットで水島監督が「1カットも無駄なシーンはないというところまで削った」と言っていたが,納得である。確かにギリギリまで削ぎ落とした感があって,むしろ引き伸ばせば余裕で前後編が作れたような。
・たとえばダージリンとオレンジペコが格言マニアなのに対して,アッサムはブリティッシュジョークマニアという設定があるのだけれど,劇場版ではアッサムのジョークが披露されなかった。これとかが削られたんだろう。

・話も映像もすごい映画で,長いこと待ったかいがあった。これでもかってくらい戦車が動くし,話も熱いし。あんなに大量のキャラが出てくるのに,どのキャラもほぼ見せ場があるのはすごいバランス配分。テレビシリーズを見てるなら必ず見に行くべき。

以下はネタバレ。

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2015年11月26日

非ニコマス定期消化 2015.8月中旬〜8月下旬



「社長」,いつの間に復活しとったねん。昔と変わらぬ良い声です。



今回からMMD杯不参加,時期は合わせているが。今回もすごいネタ密度だ……警察24時ネタとHODネタの入れ方がおもしろかった。上手くつなげるなぁ。



だんだん悪化していくの,ほんと不安にさせられた。並びから言って,てっきり太郎丸も悲劇的な死に方をするもんだと思ってたから,そこだけ裏切るのは良い仕掛けだったと思う。



設定は似てないけど,雰囲気はなんとなく似てる両作品。



ただてる久しぶりの実況。実況自体のおもしろさもさることながら,よくこういう企画を思いつくなと思うし,動画の編集も見やすくて上手い。プレイが上手く,ゲスいけどゲスくなりすぎない絶妙なしゃべりが今回も発揮されている。



これまたとんでもない縛りプレー動画が。レベルアップ時のステータスを吟味し,種も使いつつ最高ステータスを目指し,モンスター図鑑を埋め,アイテムをコンプリートする。「たいりょく」のステータスは種が無いので,吟味するしかないという。ドラクエ7と違って,モンスターの落としたアイテムは20匹倒せば実際にドロップしなくてもモンスター図鑑に記録されるというシステムのおかげで,少しは楽になっている。状況再現を使いこなしてレベルアップ時の吟味やドロップを固定しているが,ドラクエの状況再現は非常に大変なので,その努力がすごいことになっている。状況再現のおかげでリセット回数はそこまで多くないのも,他のやりこみプレーとの違いか。



海風かわいいんだけど(「まーた寒色系か」というブログ読者の声が聞こえる),夏イベントドロップ艦の中ではインパクト薄くて,二次創作少なくてちょっとさびしい。



本当にこいつら楽しそうにゲームするよな。そして,ここでも西郷と坂本の腕前に差が。西郷は何やらせてもすごいな。



全滅レベルアップのシステムが完全にSATか何かの情報整理問題過ぎて吹く。おやつさんの「ひたすら楽して」でもそうだったが,FF6は5と違って基本的に縛りプレーを想定していないので,低レベルクリアをしようとすると,バグ活用の針の穴に糸を通すような作業になるんだなぁと。そして,ストーリーのぐっちゃぐちゃ具合がひどい。
  
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2015年11月25日

猫騙ししても優勝はならず

今場所は相撲内容が今ひとつで,優勝争いも僅差で終わった割には盛り上がった感じがせず,白鵬の猫騙しや式守伊之助の謹慎,北の湖理事長の逝去と土俵の外の方が騒がしかった気がした。

北の湖理事長については,現役時代を(当然だが)全く知らないので,その点は論評できない。理事長としては,1期は評価できない。危難に際して平凡な判断しかできなかったというべきだろう。急死した2期目は思い切りの良い決断が見られ,評価してもよいのだが,一方で放駒理事長の敷いた路線を走っていただけという気もする。おそらく次の理事長は八角親方であろうが,その次となると予想がつかない。まだ貴乃花までは回ってこない気がするし,そもそも貴乃花の番があるかも怪しいと思う。マスコミはすっかり八角親方→貴乃花の禅譲が既定路線の如く報じているが,根拠がまるで見当たらない。貴乃花が元々は造反組という事実が忘れられているのかもしれない。


白鵬の猫騙しについては,私的には問題ないと思う。無論のことながら,横綱相撲には当たらないし,横綱は毎日変わらず横綱相撲を取るべきだという信念がある人からはいただけない行動であることは理解できる。それについて事実認定レベルで争う気もなければ,反論する気もない。ただ,単純に私は横綱相撲にそれほどこだわりがなく,また白鵬の横綱相撲について言えば飽きるほど見た気がするのだ。横綱相撲はそれはそれで見応えがあってよいのだが,変化があってもよいと思う。しかしその変化が,単純な「変化」では困る。魅せる相撲であって欲しい。相撲は興行でもあるのだから……という思考はおそらく白鵬本人もしていて,その思考の果てが猫騙しであったのだと思う。

ただ一方で,名古屋で負けている栃煌山を選んだ点と,結果的に終盤スタミナが切れて3連敗した点も鑑みると,全くの性善説で取ることもできない。ここで1勝稼いでおくという打算もなくはなかったのでは。このちゃんと相撲界のことを考えて行動しているのに,微妙に功を奏しない面がある一方で,腹の中に読めない黒さを持っているという二面性は,以前から継続して見られる白鵬のパーソナリティであると思う。最後に,先場所と全く同じことを書いておく。「普段相撲を見ていない(にわかファンですらない)のに,こういう時だけ出てきて「相撲はよく知らないけどルール上問題ないものを騒ぐなんて“守旧的”」と発言して進歩派を気取りたいだけの人たちはほんと害悪でしかないので,ちゃんと相撲を知って簡単に白黒つかない話であることを前提に,自らの白黒を開陳してもらえませんか。」

優勝展開が盛り上がりに欠けたと書いたが,ある一点に集中して見るなら,すごくドラマチックである。14日目に照ノ富士が白鵬を倒して2敗に引きずり下ろし,千秋楽に安美錦が松鳳山を倒し,結果として日馬富士の優勝に大きく貢献した。今場所もまた,五月場所のような伊勢ヶ濱部屋の共闘が,見事な逆転優勝劇を生んだのだ。今年の伊勢ヶ濱部屋は相撲の神様に愛されていた。


個別評。日馬富士は前半の調子を見ているとそう好調とも思えず,平幕相手に時間のかかった相撲をとっていて,速度はあるが膂力を欠くという相撲であって,12勝3敗で準優勝がせいぜいかな,などと思っていた。後半は前半に比べるとやや動きがよくなったものの,それでも全盛期の動きだったわけでもなく,少なくとも日馬富士の代名詞たる「突き刺さるような立ち合い」と呼べるものはほぼ見られなかった。よく優勝できたものである。日馬富士も白鵬と同学年(誕生日の関係で年齢はほぼ1歳違う)なのだから,白鵬が衰えを隠せないように,日馬富士も肉体的な衰えが来ているのだろう。今回が最後の優勝かもしれないし,そうでもないかもしれない。

白鵬は完全にスタミナ切れで,実のところこれは前々からそうであった。そこで,15日間全て横綱相撲で勝つのをやめて前半は省エネに徹し,後半で本気出して横綱・大関陣をなぎ倒し優勝する,というのが3・4年前ほどからの必勝パターンであった。しかし,今場所はこの省エネ戦法をとっていても12日目までにスタミナを使いきってしまったようで,場所前の調整が悪かったか,加齢によるスタミナの減少が深刻なレベルまで来てしまっているのか,それはわからない。答えは来場所以降の終盤で判明する。鶴竜は先場所と打って変わって弱かった。正直に言って論評するに値しない。

大関陣。照ノ富士は休場したほうが良かったと思うのだが,出場し続けたことであのドラマが生まれたのだから,相撲はわからない。投げ方が無茶で膝への負担が甚大であり,あれさえやめれば一時的に弱くなることはあっても最終的には身体が復活すると思う。あとは,前から書いているが立ち合いの遅さ。差し手争いで負けるから不利な体勢からの投げになり,それで膝に負担がかかるので,立ち合いが元凶である。立ち合いを磨きましょう。安美錦と日馬富士という良い先輩がいるのだから。先場所妙に好調だった琴奨菊は今場所もまずまずの出来だったが,意外と星が伸びなかった挙句ケガが悪化し,14日目から勝ち越し後の休場となった。稀勢の里は可も不可もない出来。豪栄道は陥落していたほうが良かったのではと思えるくらいの惨事で,首投げによる緊急脱出に頼らない相撲を見つめなおした方がいい。

三役。栃煌山と栃ノ心は可も不可もない。妙義龍はやたらと身体が軽かった。どこか痛めていたのだろうか。嘉風は引き続き身体の切れが抜群に良く,動きまわって撹乱して崩して倒す,という戦法で上位で通用している。ただ,さすがに勢いが止まってきたようにも見え,これがいつまで続くかは期待を持って見ていきたい。また張り差しやパワープレーに弱い傾向が直ったわけではない。

前頭上位。逸ノ城は無気力相撲を取られそうなくらい気の抜けた相撲が多く,みっともない負けが多くて失望した。やる気を出して欲しい。今の逸ノ城の姿は在りし日のボブサップを髣髴とさせるのだが,皆さんはどうか。大砂嵐は上位定着が固まりつつあったこのタイミングでケガで休場,残念至極である。安美錦はさすがに変化が多すぎやしなかったか。それで糾弾されないのが彼の持ち味ではあるのだが。遠藤は完全に休場が正解だったと言える出来で,膝の状態が悪すぎる。踏ん張りが効かなすぎてもろかった。今場所の上位の相撲内容を薄くさせた原因のうちの一人だったと思う(あとは妙義龍と逸ノ城)。阿夢露は家賃が重かったが,健闘は見せられたと思う。佐田の海はもっと足技を使っていこう。

最後に12勝して敢闘賞となった勢。たまに異様に強い場所はあるのだが,大概の場合前頭の下位でのことで,またエレベーターが上昇してくるのかという感じであったが,今場所は前頭4枚目,照ノ富士と日馬富士を含んだ対戦相手からの12勝だから価値が高い。これが覚醒かフロックかは来場所判明する。巨体を活かした相撲であったし,一方で軽やかでもあった。右からのすくい投げが強烈で,今場所はよく決まっていた。

前頭中盤。琴勇輝は番付運に恵まれて,6枚目の8勝ながら来場所いいところまで行きそう。そしてすごく大敗しそう。突き押しの回転はとても良いのだがそれしかなく,引き技が得意なわけでもなく組んだらもちろんダメである。よく突き押しの回転だけでこの地位まで来たと思う。旭秀鵬は確かに寄りが強くなったように思うが,でも9勝のイメージはあまりない。宝富士が10勝・魁聖が9勝だが,この二人は家賃が安いので,もっと勝つかと思っていた。動き自体は普通。佐田の富士は体格は立派だが,上半身に力が寄りすぎていてバランスが悪い。北の富士が「体格がもったいない」としきりに言っていたが,むしろ今から下半身トレーニングを集中的にこなさせるのは辛いと思う。蒼国来は寄りで力を発揮するようになり,力強い寄り切りが何番か見られたので印象に残った。松鳳山は家賃が安かったという事情はあるにせよ,動きが良かったのも確かで,12勝敢闘賞に見合うだけの印象は十分にあった。突き押しの力士ではあるが今場所は組んでからの対応が良かった。案外と投げの強い力士である。

前頭下位。臥牙丸は感情の起伏が激しすぎ,涙もろすぎ。花道の奥で泣き顔を中継されていたときはちょっと同情した。それ以上に爆笑していたけど。新入幕御嶽海はギリギリの勝ち越し。期待の持てる突き押し相撲だったと思う。停滞しがちだった今場所の前頭下位では,旋風だったと言ってよい。高安は家賃が安すぎるので大勝もありえたが,ケガが重くてばったりと倒れる場面があり,結果9勝しかできず。まあゆっくり直すことである。一方,千代鳳はきっちり10勝。はたかれても落ちないという特性のアドバンテージは大きい。北太樹は15枚目で7勝の負け越し。今場所は出足が弱かった。速攻相撲が立ち合いの威力を欠いては勝てない。


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2015年11月22日

山陰旅行記(後編):出雲大社・美保関・境港・松江市内・玉造温泉

11/8 PM
〔出雲大社〕

特急まつかぜに乗って,鳥取から一路出雲市へ。出雲そばは全然知らなかったのだが,試しに食べてみたら非常に美味であった。

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麺の色が濃く,味も濃い。つゆも非常に濃く,小量かけて食べる。麺をつゆにドボンとつけて食べる信州そばとの最大の違いはここだろう。麺がつゆを吸う力が強く,小量しかかけないためにすぐに吸いきってしまい,麺の濃い味につゆの濃い味があわさって,これでもかというほどそばの味を主張してくる。そばの味が好きな人にはたまらない。なお,日本三大そばというと信州そば(戸隠そば)・出雲そば・わんこそばでほぼ異論がないようだ。三大○○としては珍しい。うどんの方は讃岐・稲庭まで確定で三つ目が定まらないらしく,水沢・五島・氷見・きしめんと意見が割れているようだが,全部食べたことがある経験から言うと,味だけで言うなら五島うどんを推薦する。元愛知県民なのできしめんは大好きだが,お前はうどんじゃない。


腹を満たして出雲大社へ。半年前に参拝して最近彼女が出来た友人が「ここはマジで御利益あるって!」としきりに言ってきたが,別に御利益を求めて参拝に来たわけではないんだよなぁ……むしろ東方と『咲-Saki-』の聖地巡礼という不純な目的の方が強いんだよなぁ……

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左(上)が拝殿で右(下)が本殿である。本殿の特徴的な屋根は大社造りと呼ばれ,日本最古の建築様式の一つ。伊勢神宮の神明造り,住吉大社の住吉造りと並び称されるが,共通点として屋根の上に千木(ちぎ)と呼ばれるX字の装飾が載っている。それ以外は比較的単純な造りをしている。

さて,出雲大社は日本最古の神社の一つでもあり,7世紀の創建とされるが,10世紀頃に大造営を行った。その時の記録が正しければ高さ48mの高層建築で,東大寺の46.8mを上回る日本最“高”の建築物であったという。この記録は長らく誇張とされてきたが,15年前の発掘調査によりその最盛期の頃の列柱の跡が見つかり,そこから計測された柱の太さ(約3m)や列柱の間隔からすると,高さ48mもあながち誇張ではないということが判明した。48m説で確定したわけではないが,与太話から真っ当な説に格上げになったということである。00年代前半というと私は中高生であり,すごい勢いで日本史の資料集が書き換わっていったのを覚えている。また,やはり当時の建築技術でこの高さは無理があったらしく,11〜12世紀に幾度となく倒壊しており,13世紀の再建時にあきらめてかなり縮んだらしい。現在の本殿の高さは,最盛期の半分の24mに過ぎない。

その48m説を採用した1/10復元模型や(1/10でも高さ5mなので相当デカい),荒神谷遺跡・加茂岩倉遺跡発掘の青銅器類を大量に展示した博物館が,出雲大社隣接の古代出雲歴史博物館である。古代日本史が好きなら何時間でもつぶせるレベルで展示が充実した博物館だが,もったいないことに今回の旅行ではスケジュールが厳しかったので,2時間ほどで脱出せざるをえなくなった。ハイライトはなんと言っても荒神谷遺跡・加茂岩倉遺跡の青銅器群の一斉展示だろう。



この壮観さはなかなか大したもんですよ。出雲の特殊性は大量の銅鐸と銅剣が同時に発見されたことで,通常銅鐸は近畿周辺,銅剣は北九州と四国で発掘されることが多い。その中間地点の出雲で,そのいずれもが大量に発見されたということ,また出雲からは鋳型が発見されていないこともあり,近畿と北九州に交流があったかどうかという点や,荒神谷遺跡も加茂岩倉遺跡も出雲大社から非常に近い距離であるため,日本神話誕生との関係性など,日本古代史研究の材料になっている。


閉館ぎりぎりまで粘って18時過ぎに出雲市を脱出。そこから特急まつかぜの復路に乗って松江まで戻り,そこからバスを乗り継いで美保関へ。

11/8 夜 〜 11/9 AM
[美保関・境港]

泊まった旅館を福間館というのだが,ここがまたすごい。創業300年,泊まった著名人一覧がこれ。

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個人的には徳川家達と井上準之助に感動した。しかし,加藤寛治ってひょっとして美保関事件の時の滞在なのでは……昭和4年だから違うか。逆に言ってよく泊まりに来たな。(追記)本件についてshigak19さんが調べてくれたのでリンクを張っておく。
・加藤寛治日記と1929年の美保関滞在について(書房日記)

さて,部屋は非常にボロかったが,旅館全体の雰囲気はよく,眼下に漁港と美保神社という眺望,夕飯には山のような松葉ガニ,値段も普通くらいで,十分満足である。

起床後,すぐに美保神社へ。ここも大社造である。神楽を見学。美保神社の祭神は事代主神,いわゆるえびす様である。えびす様は音楽を好むということで,美保神社は拝殿が神楽殿を兼ねていて,しかも音響効果を期待して梁が向きだしになっているのが特徴だそうだ。音楽奉納と称したライブも,かなりの頻度で拝殿でやっているらしい。こうして見るとずいぶんとロックな神社である。名物と言われる醤油アイスを食して,バスで境港に移動。醤油アイスは,バニラアイスに醤油かけたらまあこういう味になるよね,という。ここでしかない食べ物と思っていたが,今ググってみたらけっこうメジャーな食べ物だった。なんということだ……

正午頃に境港に到着。境港は極端な水木しげる押しで,至る所に水木しげるの妖怪たちが描かれていた。しかし,逆に言って水木しげる以外の観光資源が無く,寂れ具合がひどかった。水木しげるしかないならないで,もうちょっと何とかならなかったのか,という。特にJRの駅前はひどく,「閑散」以外の言葉が見当たらない。あれでは本番の水木しげるロードに辿り着く前に観光客が帰ってしまうと思う。

境港から米子までは鈍行,米子からは再び特急まつかぜに乗って松江へ。


11/9 PM
[松江市内散策]

松江はさすがに栄えていて,観光施設もサービスも整っていた。松江城周辺散策というと,
「松江城」
「松江歴史館」
「武家屋敷」
「小泉八雲記念館」
「小泉八雲旧居」
の5点セットだが,注意点がある。まず,共通チケットが販売されているが,なぜか松江歴史館を除いた4カ所の共通チケットである。そして「武家屋敷」は「小泉八雲旧居」の方が優れた屋敷であるために見所がなく,「武家屋敷」を回避するなら,残りの4カ所をバラで買った方が共通チケット+歴史館のチケットよりも安い。しかも松江城はさらに他の施設とのセット割引券が売ってたりするので,観光ルートによってはますます共通チケットの意味が無くなる。結論を言えば,共通チケットは買わない方がよい。

この5つ中では「小泉八雲旧居」が本当にすばらしいお屋敷でお勧め。こじんまりとしたお庭を眺めて,しばし小泉八雲に思いをはせたくなる。「小泉八雲記念館」は小泉八雲の足跡がかなり細かく紹介されており,小泉八雲に興味があるなら,という感じ。興味がないなら無理に行く必要はないと思う。私はまあ,その,東方信者・秘封倶楽部一派なので行く義務が。実際,ギリシア人とアイルランド人のハーフがどういう経緯で日本に来て,妖怪伝承にはまりこんだのか,よくわかっておもしろかった。「松江歴史館」は近世史中心の内容。

松江城はつい先日国宝になったばかりであり,お祭り騒ぎであった。戦国時代の出雲の城というとなんと言っても月山富田城であるが,戦国時代が終わると山城は用済となり,1611年に松江城が築城されて,出雲の中心がこちらに移ってきた。そういうわけで松江城は江戸初期の建築であり,一応防衛施設としての機能は完備で建てられたものの,一度も戦乱を経験することなく現在に至った。国宝指定運動が長期的になされていたが,1611年築城を決定づける史料がなく却下されていたところ,3年前に「慶長拾六年」(1611年)を示した祈禱札が松江神社で発見され,見事国宝指定となったそうだ。

その後,東方風神録1面の聖地巡礼(稲田姫)という理由だけで八重垣神社を訪れて参拝。滞在時間20分で松江市街に戻り,再び山陰本線に乗って玉造温泉へ。


11/9 夜 〜 11/10 AM
[玉造温泉]

この日はかなり奮発して白石家に宿泊。高いだけあってめちゃくちゃ良い旅館であった。で,日本海側に来たからには



新潟旅行に続き,またのどぐろを食してしまった。本当に美味いよこの魚。さらにこの日の夕飯は島根牛と松茸も出てきた。前日のカニと合わせてもう今年の秋の味覚は完璧に満喫しましたわ。

翌日の午前中に,玉作湯神社に参拝し,『咲-Saki-』(『シノハユ』)の聖地巡礼。いろいろ写真は撮ったけど,先人たちには勝てないので,ここでは特に掲載しない。会社へのお土産を買って帰還。


この4日間は非常に濃密な旅行であったが,まとめて振り返ってみると,ハイライトはやはり投入堂登山であったなと。次点で小泉八雲旧居。都市の印象で言うと,島根県は松江にしろ出雲市にしろ整備されていて活気もあったが,鳥取県は鳥取も米子も境港も寂れていて,同じ山陰でもこんなに違うのかと。鳥取県はもうちょっとがんばろう。ご飯で印象に残ったのは出雲そば。のどぐろと島根牛も美味しかったが,こいつらが美味しいのは当然すぎる話であり,新鮮な美味という点では出雲そばの印象が強い。  
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2015年11月21日

山陰旅行記(前編):鳥取編(投入堂・砂丘)

今月の上旬に山陰地方を旅行してきた。かなり詰め込んで観光したため,報告することが多岐にわたるのだが,目玉は投入堂の参拝である。以下,時系列・観光地別に。


11/7
[投入堂]

正確には三徳山三佛寺投入堂。「(物理的な意味で)日本一参拝の難しい国宝」と言われ,入山時に僧侶から登山靴のチェックがある,雨天・降雪時は入山禁止,15時以降も入山禁止になる等,参拝には厳しい条件がある。最後の条件が遠方からの旅行者には案外と厳しく,後述するように往復に2時間ほどはかかるので,昼前には麓に着いている必要がある。しかも我々の旅程の場合,11/8以降が雨天という天気予報であったため,初日の11/7に登山するしかなく,旅程を組むのにかなり難儀させられた。これから挑まれる方はお気をつけを。

鳥取市から行くなら,山陰本線で倉吉まで35分(特急)だが,特急は本数が少ない。さらに,倉吉からはバスが出ているが,このバスは1時間に1本くらいしかない&不定期なので要注意である。バスで40分ほど乗ると到着する。よって上手く接続すれば1時間強で着くが,特急待ち・バス待ち次第では2時間以上かかる。そこで,資金的に余裕があるなら,三朝温泉への宿泊を勧めたい。三朝温泉から三佛寺山門前まではバスで20分かからない。

さて投入堂登山の実際の難易度は,何とも評価しがたい。
・行程自体は短く,90分で往復できると言われている。実際我々も100分くらいで往復した。紅葉の綺麗なハイシーズンであったので団体客で相当混み合っており,にもかかわらず道が極端に狭いため,待ち合わせで強制的な休憩時間を取らされた。かつ,ゴールの投入堂以外も見どころが多かったので,その意味でも休憩は多かった。にもかかわらず100分であったので,90分という評価は妥当である。空いている時期にハイペースで登山すれば60分くらいで行けてしまうのはないだろうか。
・登山というよりもロッククライミングの感覚で挑んだ方がよい。斜度から言えばかなり厳しい道が続く。写真だとわかりにくいが,こんな感じ。そもそも審査があって登山靴じゃないと登れないわけだが,そうでなくとも登山靴は必須である。

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・「雨天・降雪時の入山禁止」規定は正解。足元の土が滑りやすい。つかみやすいところにある木の枝・根と岩が生命線で,滑りそうになったらつかむようの枝・根・岩は常に目算をつけておこう。
・そういう難易度であるので,やはりリタイアする人はそれなりにいた。一方で,50-60代の参拝者も多く,要するにそれくらいの体力であっても,休憩を多めに取れば普通に登れてしまう程度の難易度とも言える。筋肉を使うのは1時間ほどであり,スタミナよりも瞬発力の問題ではあるので,年齢はあまり関係ないのかもしれない。己の筋力と重々相談してチャレンジするかどうか決めて欲しい。
・行きよりも帰りの方が圧倒的に楽。往路は延々とロッククライミングだが,復路は割りと安定した足場でスタスタ降りるだけであり,それで膝が笑うということもおそらくない。100分の内訳は往路が60分,投入堂付近で10分,復路で30分という感じ。無責任なことは言えないが,往路で体力を使い果たしても割りとなんとかなると思う。

紅葉のハイシーズンに偶然重なった関係で,素晴らしい眺望を見ることが出来た。投入堂本体の写真とともにおすそ分けしよう。なお,一つ目の写真は投入堂ではないお堂(進入可)から撮られたもの。

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投入堂の創建は平安末と言われる。つまり約900年前だが,伝説上のいわれとしては1300年前に役行者小角が呼び名の通り投げ入れて建てたと言われている。実は長らく創建年代がわかっていなかったのだが,1980年代の補修で得られた古い柱の年代調査から,平安末と確定した。そうした説明が宝物館の方で読めるので,是非こちらも。また,三佛寺の山門にある食堂の山菜定食が絶品だったので,あわせて勧めておく。写真を撮りそびれたので,食べログにリンクしておく。

投入堂の創建が平安末というのは,実のところ文化史上イレギュラーである。浄土教が地方に伝播していく時代であり,浄土教の大寺院が地方でどんどん建てられていた。その代表例が平泉の中尊寺と,いわき市白水の願成寺,大分の富貴寺である。また一方で,武家政権が自らの地元に守護神を祀る神社を建てていた時期でもあり,こちらの代表例は広島の厳島神社,鎌倉の鶴岡八幡宮がある。しかし,投入堂は密教系の天台宗であり(修験道としての祭神は蔵王権現),武家の所縁も無い。つまり,どちらの流れにも属さないのである。また,この時代の三佛寺は僧兵が多く居住し,大山と争っていたという記録は残っているようだが,では僧兵が修験道を極めていたかというと,その関連性も薄い。そのせいで,高校日本史の資料集には必ず載っている寺院の一つである一方で,教えるのが難しい寺院でもある。まだまだ謎の多い寺院なので,誰か研究してください。

なお,純粋な建築史の観点で言えば,特別珍しくもなければ新しくもない。懸造りと呼ばれる様式で,平安の初期からある。懸造りの代表例は京都の清水寺,と言えば大多数の人がピンと来るのではないか。


この日は投入堂に登山してほとんど1日が終わった感じ。鳥取市内のホテルで宿泊。


11/8 AM
[鳥取砂丘]

元々旅程で重視されておらず,行くか行かまいか自体迷っていたが,「鳥取に行って砂丘に行かないというのも」ということから,スタンプラリーの感覚で行った。「見どころがわからないけど,下手したら1時間かからないのでは」という話を同行者としていたのだが,実際の滞在時間はわずか30分であった。感想としては,行くだけ損なので行かなくていい。鳥取県はなんでこれプッシュしてんの? 他の観光資源が皆無ならわかるが,大山もあるし投入堂もあるでしょ? なにせこの砂丘は狭い。長さ16km,幅2kmと説明されているが,幅はともかく長さは完全に詐欺で,森林が貫入していて途切れている。見渡す限り砂しかない情景をそれなりに期待していたが,どうがんばっても視界に海が入ってしまうどころか,視界に森林が入ってしまうのは砂丘として失格だろう。



砂丘に草生えてて草生える。悪意ある角度からの写真と思われるかもしれないが,実際のところ海を映さないような角度で写真を撮るとどうしてもこういうことになる。もう20度くらい右を向くともう海である。逆に海を入れると単なる砂浜にしか見えない(丘にならない)。ちゃんと「砂丘」に見える写真には,写真家の強い努力があるのだなぁというのが,砂丘の最大の成果かもしれない。

なお,鳥取砂丘は“一般人が入れる”日本最大の砂丘であり,真の日本一は青森の猿ヶ森砂丘(面積が鳥取砂丘の3倍)である。こちらは防衛省(防衛装備庁)の弾道試験場になっているので一般人は立ち入ることができない。もっとも,公開されたところでアクセスが悪すぎて鳥取砂丘の優位は揺るがないと思われる。なにせ鳥取砂丘,アクセスは抜群に良い。鳥取市内からバスで20分で,しかもかなりの本数のバスが出ている。天気が良ければ十分自転車圏内だし,最悪タクシーでも行ける。

その鳥取砂丘も近年緑化が進んでおり,平成3年以降は緑化防止対策が取られている。これは単純に観光資源がなくなるからということもあるが,砂漠性ではない雑草が生えてしまうと,砂丘独特の植物が生存競争に負けて絶滅してしまうという事情がある。一方で,そうした砂丘独特の植物を使った砂漠の緑化に関する研究も行われているそうだ。世界の緑化のために鳥取砂丘は犠牲にしたほうがいいんじゃないかな。世界の環境問題のために研究に全面的に活かそうぜ。


というわけで,残念な気分に苛まれつつ,早々に特急まつかぜに乗って出雲市へ。後編に続く。  
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2015年11月20日

謎の用語「アジア系」「アフリカ系」

・社内政治が嫌いな人が、社内政治を作ってしまう(nanapi TechBlog)
→ 極端に言えば官僚主義的になるか社内政治になるか,という。ここでのパターンの場合,実際には部長の意見が正しいこともあるから複雑で,「エンジニアAさんを部長に昇格させればいい」というものでもない。結局どちらにも寄りきらない,というのが硬直化と制度崩壊の両方を防ぐ方法ではあるのだろうなと。
→ ところで,あまり指摘されていないというか,あまりにも島耕作本人の活動が突飛すぎて注目されていない感じがするが,本来『島耕作』のテーマってこれで,島耕作本人はまさに「社内政治が嫌い」だったのにいつの間にか社会政治を作る側の人間になってしまった人である。この点で課長・部長の島耕作はやはりおもしろかったなと。今は見る影ないですが。(と同時に,その程度の読みもできてない人に島耕作シリーズを批判されたくない,という気持ちは否定できない。)


・「ハンガリーHungary」と「フン族」の関係(Togetter)
→ 教科書上はかなり昔からちゃんとフン・アヴァール・マジャールを峻別されている。高校でそう習ったという方がちらほら見受けられるものの,確かによく聞く与太話ではあるのだが,手持ちで一番古い1985年の山川『詳説世界史』と『用語集』を引くと,ちゃんとフン・アヴァール・マジャールで分けて書いてある。要するに,先生独自の教え方か副教材の影響と思われる。
→ 一方,「アジア系」というくくりについては,高校世界史上だと上記の3つに加えて,スラヴに同化する前のブルガールを含めて使われていて,要するに「非印欧語系」の「遊牧民」程度の意味合いになっている。専門家の方に「ウラル山脈の西側が出発点なのだから,厳密には誤り」「ちゃんとフィン・ウゴル系と言ってくれ」と言われたら,確かにそうだなと思うが,では「ラマ教」のレベルで急いで教育現場から追放すべき用語かと言われると,そこまでではないとも思う。
→ ついでなので言及しておくが,「ヒクソス」をアジア系と呼称する是非の方が話としては重いと思う。ヒクソスが「アジア系」であるというのは,実は古代エジプト人の呼称をそのまま引いており,1.「アジア」は野蛮というニュアンスを大きく含んだ呼称であること,2.実際のヒクソスは1民族ではなく混成集団であると現在は考えられていること,3.ヒクソスは一気呵成に侵入したわけではなく,軍人皇帝期のローマ帝国におけるゲルマン人(あるいは後漢末・魏・西晋の匈奴)のような形で「浸透」していたこと(「侵略」は古代エジプト人自身による「歴史修正主義」),などの観点から,ヒクソスをアジア系と呼称するのはけっこう危うかったりする。


・工事中に丸い巨石出現→ご神体か!→違ったけどそれっぽいから祀っとこ!ってなった結果(Togetter)
→ 21世紀にもなって新たなアニミズムを生み出しちゃったところとか,教科書通りな神道的自然崇拝なところとか,いわれはないけどとりあえず祀るだけ祀る流れになっちゃったところとか,展開がいろんな意味で日本っぽくて良い。
→ 場所が場所だけに(長野県茅野),神主がネタにしたらおもしろいな。次の早苗のスペカとかで。


・「カントリー・オブ・マイ・スカル―南アフリカ真実和解委員会“虹の国”の苦悩」アンキー・クロッホ 著(Kousyoublog)
→ デクラークは思い切って国民党を解体するつもりでいれば,こういう形で権力や名誉を失わずに済んだのかなぁと。しかし,それを思い切ってやった感もあるソ連のゴルバチョフも,1990年代はほとんど政治の表舞台にいなかったし,いまだもってソ連を解体した張本人という否定的な評価が保守派からあり,難しい。


・野球で夢つかんだ17歳アフリカ少年(デイリースポーツ)
→ とても良い話。大相撲の大砂嵐もそうだが,こうして縁遠い国々に日本の文化が伝わり,架け橋になっていくのは大変に良いことだ。しかもブルキナファソとは,エジプトよりもまた一段縁遠いし,小国でもある。NPBに入るのを目指しているようで,良いニュースを待ちたい。
→ その野球を教えたと思われる人のブログがあった。
・ブルキナファソで野球しよう!  
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2015年11月16日

「ロボットは東大に入れるか」成果報告会 in 2015(11/14)レポート

昨年のものはこちら。また,朝日新聞の報道はこちら。

今年から協賛が代ゼミから駿台・ベネッセに代わった。代ゼミがセンター系模試を止めたためである。ベネッセのマーク模試の方が母集団が大きいので偏差値や判定への信頼性は高い。受験したのはマーク模試の全教科(社会は世界史・日本史,理科は物理で例年と同じ)。東大二次型の模試(東大実戦)は数学と世界史。今年の目玉は世界史の論述に取り組んで,割りとまともな成績を叩きだしたことにある。これは私自身激しく衝撃を受けたので,後段で詳述する。


[解法についての教科全般の話]
昨年と共通する点詳細は割愛する。
・例によって,OCRで直接文章を読み取って東ロボくんに流し込む,というのは未実装。今回は問題文をXMLに書き下す(数学ならMathML)ところまでは人力。
・画像処理も昨年と同じでほぼ未実装に近い状態。アノテーションを付して図表をテキストデータに変換し,自然言語として処理。ただし,今年は画像検索を行い,インターネットで最初に検出された画像の画像タイトルをテキストデータとして埋め込むという手法に変更した。画像検索に人工知能的な技術を使っているため,こちらのほうが最終的に目指している全自動に近かろうという判断とのこと。ただし,画像検索をしても全く引っかからなかった画像は以前と同様,人間が見てそれっぽい日本語を付している。
・英語のリスニングと,世界史の本格論述に初挑戦。


[総評]
・マーク模試は950点中511点,900点満点に換算すると495点。偏差値だと57.8という成績が出る。一見するとかなりの好成績だが,数学の152/200(偏差値64.0と65.8),世界史の76点(66.5)に引っ張られての成績であり,その他の教科は50前後で,昨年とあまり変わっていない。ゆえに,英語・国語・数学or世界史という一般的な私大文系の受験型(3教科)に絞ると偏差値は53〜54まで下がってしまう。この数値は去年とほぼ同じ。
・世界史が伸びているのに3教科にすると偏差値が昨年と同じになってしまうのは,国語と英語の偏差値が下がったからだが,国語は問題が易しく受験生の出来が良かったため相対的な偏差値が下がっている。英語は,該当項目で述べるように今回のマーク模試の英語が東ロボくんの解き方と相性が悪かったことが原因にあり,チューンアップがしっかりしていれば偏差値が伸びていた可能性が高い。場合によっては3教科偏差値が法政大あたりに届いていたのでは,と思うとややもったいない。


[英語(筆記)]
・前述の通り偏差値が50.5から48.4に下がってしまったが,実は同じ模試を昨年の東ロボくんと今年の東ロボくんで受験してもらうと,どの模試であっても今年の方が出来が良い。つまり,確実に成長しているが,今年の模試と東ロボくんの相性が悪かった。
・その決定的な原因は,はっきり言ってしまうとマーク模試が昨年までの代ゼミ模試よりも難しかったため。というよりも,私が補足するが,あのマーク模試は本試験よりも難しく,センター試験に向けてチューンナップした東ロボくんには不利だったであろう。発表者のNTTの人が「模試の傾向変化が半分,東ロボくんの実力不足が半分」と言っていたが,まさにその通りだと思う。
・もう少し具体的に言うと,東ロボくんの英語の解法は,新聞記事などを基板とした膨大な英語のテキストデータ(約10億語)を検索し,問題文の要求する“自然な”英語を探し出してくるというものだが,基本的に東ロボくんは問題文の周辺4単語(5-gram)しか検索しない設定になっている。これは予測変換と同じシステムで,入力されたN-1個の単語から次の単語を予測するモデルのことをN-gram言語モデルと呼ぶ(より正確な説明が欲しい人は「N-gram言語モデル」でググること)。これを使って,問題で問われた箇所の周辺4単語と,保有する英語のテキストデータの照合を行っているわけだが,当然Nが増えれば検索も膨大になるので,問題が解ける限界ギリギリである方がよい。そして,センター本試験を解くには5-gramくらいであろうと思われていたところ(実際センター英語はあまり複雑な文脈の読解を要求しない。もちろん長文問題は別として),今回のマーク模試は10-gramくらい余裕で必要な問題がいくつか出されたため,文脈が読めずそれらを落として成績が下がった,ということである。実際,誤答も文法的には破綻がない。
・ゆえに,チューンナップミスが半分。一方で,N-gram言語モデルは当然であるがNを増やせば検索で一致する箇所が減るため,文法的正確性は向上するが,同時に「白紙答案」も増えてしまう。よって,10-gramにしたら単純に解決する問題ではない=東ロボくん自体の実力不足が半分,というのが発表者の分析である。
<筆者感想>
ベネッセくん,ちゃんとマーク模試を作ろう。今年の本試験と見比べてみたけど,やっぱりちょっと文章長いと思う。全体的に。
あと,N言語モデルでNを増やした結果,どの程度白紙が増えるのかは気になるところで,あまり白紙が増えるようなら難関私大や国立二次試験の入試問題は手がつけられないのでは。当然それらはセンターほど単純ではないので。そこが東大二次に対する壁になるのかなぁ。



[英語(リスニング)]
・初挑戦となったリスニングだが,16/50点,偏差値は40.5という結果。人間よりもかなり悪い。
・やり方は人間が音声ファイルを問題ごとに切り出し(ここは人力になるが仕方なかろう),切り出したものを音声認識ソフトのKaldiでテキストデータに変換させ,あとは筆記試験と同じ解答器で解かせるというもの。つまり,音声認識器Kaldiを導入した点が新しい。テキストデータに変換さえしてしまえば,問題の難易度自体は筆記試験より当然易しいので,筆記試験と同じ解答手法で十分解ける。
・当然そのKaldiの精度ってどうなのよ,という話になるが,単語レベルでは約10%の誤り,文単位では約49%の誤りが検出される。なんとなくではあるが,Siriiあたりの精度と比べると悪くない? というのが素人の発想なのだが,どうなんでしょうか。専門家はその辺見劣りしないものを持ってきているとは思うのだけど。なお,「Kaldi 音声認識」でググると少ないながら動かした人の記事が読めるので,興味がある人はどうぞ。私はさっぱりわからなかった。
・というわけで,文単位で半分も読み落としがあれば当然解けるはずもなく,正答率4割は妥当な結果ではないかと。むしろ出来た方なのでは(運でも正答率約25%にはなるが)。


[国語]
・一昨年は単純な「一致する文字数」の数え上げ。昨年は少し進化して,本文や選択肢を節に分解して,節を分析する手法を導入した。今年はさらに文字数や節以外にも分析項目を増やし,12個の観点から特徴ベクトルを計り,総合的に正しそうな選択肢を選ぶ手法に変えた。また,分析項目のいくつかに「選択肢間の文章を比較する」ことを取り入れた。
・結果は昨年までとさして変わりがないように見えるものの,評論の点数が安定してきており,また過去のソルバーは本試は解けるのに模試は解けないという謎の傾向があったが,今回のソルバーは模試でも本試並の点が出るようになった点で,性能は向上している。
・文章を理解して解答を出しているわけではないのは,昨年までと一緒。
<筆者感想>
選択肢間の比較は実際の受験生でもやる手法で,一致する文字数の数え上げに加えてますます人間じみてきたなと。かなり複雑なシステムになった割に点数が伸びてないなというのが正直な感想で,やはりエンジニアリング的手法の限界が来ているのではないか。あと,毎年書いているが,そろそろ古文と漢文をですね……英語に近い手法でいけると思うんだけどなぁ。


[数学]
・センター数学は152/200,東大二次(文系)は39/80。
・解法は概ね例年と同じ。言語処理・問題表現の変換を人力・半自動で行い,数式処理は人工知能にやらせる。ただし,言語処理・問題表現の変換の完全自動化も研究自体はスタートしており,開発が進んでいる。2020年を目標に開発を完了させるとのこと。何やら進んでいる様子は見受けられた。
・数式処理については,主体は例によってQE(限量記号消去)だが,例年QEでは解けない問題をほとんど投げ捨てていたところ,今年はQEとは全く違った解法を導入したことで数列と統計が解けるようになったのが最大の成果である。これで完全未着手な主要な分野は確率と整数問題のみとなり,センターに限れば白紙部分がかなり減った。
・結果的に,東大の二次はさして変わらないものの,センター数学の点数が飛躍的に伸び(約5割から約8割),しかも白紙答案が減ったために点数が安定した。これにより,今までは「東大二次ができるのにセンターはてんでダメ」という非人間的な点数であったところ,かなり人間らしい点数に近づいた。研究が進んだ結果,人間らしくなるというのは,他の教科でもあることだが,おもしろい話である。
・QE自体も計算量爆発を防ぐ工夫で進歩が見られたようだが,私にはさっぱりわからなかったので割愛。
・数列は,一般項が求められない(または求めにくい)けど,人間なら直感的に法則がわかるような数列(例:1,2,2,3,3,3,4,4,4,4……)に弱いそうな。現状のソルバーが漸化式を作って一般項を求める正攻法しかできないため。この点は非常に人工知能っぽい特徴でおもしろい。
・また,言語処理の自動化について。どの程度自動化できているのかというと,今回は現在開発途中で半自動で行っているところ,人間が補助せずに(つまり完全自動で)言語処理させて東ロボくんに解かせたところ,83/200であったという報告があった。これをどう評価していいかは難しい。



[物理]
・解き方は昨年までと同じ。シミュレーションを動かして,実験結果から解答を出す。今年はシミュレーションに必要なモジュールの数を大幅に増やし,28個となった。これで力学の分野だけで言えば,66%の問題が既存のモジュールで対応可能となり,力学はおおよそシミュレーションを動かせば解けるようになった。
・しかし,実際の模試では既存のモジュールで対応できない問題ばかりが出題されてしまったので,点数が伸び悩んだ,とのこと。また,例によって力学以外の電気・波動は未着手であり,問題文の自然言語処理も未着手である。


[世界史]
・今回の目玉。マーク模試は76/100,東大二次型(実戦模試)は21/60。ただし東大実戦模試の世界史の配点は一般的なものとは違っており,一般的な東大型の配点に組み替えると26・27点になると思われる。偏差値はマーク模試で66.5,二次で54.1。これはかなりの好成績で,昨年までのセンター型の成績は6割弱だったことを考えると大きく伸びている。東大二次型は今年初挑戦だが,初挑戦でいきなり偏差値50超えで,人間の東大受験生の立場がない。
・世界史は参加チームが7チームと多く,その中で日本ユニシスのチームがマーク模試で,NIIと横国大のチームが二次型でそれぞれ最高得点となった。以下,私なりの理解で書くが,NIIからプレスリリース(pdf)が出ているので,より正確な表現はそちらで。
<マーク模試>
・大きく伸びただけあってかなり改良が見られた。ベースが含意関係認識である点は変わりないが,まず,同義語・類義語の読解精度や,同一カテゴリーの上位語・下位語の読解精度が大きく上がっていた。たとえば,
   ・726年に,ビザンツ皇帝レオン3世が聖像禁止令を出した。
   ・8世紀前半に,東ローマ皇帝レオン3世が聖像禁止令を発布した。
は人間にとってはほぼ同一の意味の文とすぐにわかるが,東ロボくんにとっては全く別の意味に見えていた。
今回,この「726年」と「8世紀」,「ビザンツ」と「東ローマ」,「出した」と「発布した」のような関係性を人工知能に認識させることにある程度成功しており,問題文の誤読が大きく減っている。
・また,「構文木のマッチング」という手法が取られた。たとえば,
   ・クシャーナ朝がパータリブトラに都を置いた。
という選択肢(誤文)に対し,「パータリプトラに」という節だけを切り出して,教科書の「プルシャプラに」という部分とピンポイントで比較して,相互に場所を示す歴史用語(固有名詞)であるから,排他的な関係であり誤文,という判断を人工知能が下せるようになった。……あれ,これって自然言語処理としてかなりすごい技術なのでは。そりゃ点数も伸びますわ。ただ,国語や英語には転用できなさそう。
・なお,今回の成績はフロックではなく,どのセンター型の問題を解かせても80点前後にはなるそうで。来年90点の大台に乗ってても驚かないなぁ。がんばれ日本ユニシス。
<東大二次型(実戦模試)>
・こちらは2/3が完全論述問題なので(残り1/3はただのクイズ),マーク模試の解法は使えない。しかし人工知能が自主的に文章を書くという能力はまだ無いので,どうしても教科書の抜粋(コピペ)のつなぎあわせで解答を作ることになる。問題は的確な抜粋が可能かどうか,という点。
・東大の第1問は600字論述であるが,必ず指定語句が8・9個ついている(今回の模試は9個)。そこで指定語句を中核とし,問題文を参考データとして教科書本文を検索し,関連性が高いと思われる部分を抜粋するという手法を取った。結果的に9/26点を確保した。これは受験生の平均得点よりも高い。
・朝日新聞の記事に東ロボくんが出した解答が載っているが,教科書からの抜粋であるので1文1文の日本語は自然であり,知識的にも当然誤りがない。しかし,文章全体の構成は崩壊しており,自然な日本語とはやや言いがたい。たとえば,解答の冒頭がいきなり「そのため」で始まっているのは典型的な構成ミスである。しかし,採点上は問題がない(筆者注:これは本試でも同様と思われる。理由は後述)。
・さて,話としてはここからがおもしろい。報告会では駿台の講師が講評をつけていたのだが,私の感想もその先生と全く同じであるので,先生のコメントを要約してここに掲載する。そもそも東大の第1問は教科書の抜粋では配点の半分も取れないように作られている。どういうことかと言えば,歴史用語の説明や時系列的な説明はほとんど要求されていないのである。むしろそうした用語や流れの歴史的意義を問題文の主張・テーマに沿って論じる・評価することが求められる。また東大の要求は常に具体例を挙げての議論・評価であるから,抽象論に逃げ込むと一切点がない。そのための指定語句ではあり,指定語句は全て使って欲しい具体例である。
・そこへ行くと,東ロボくんの答案はそれっぽい歴史用語を書き並べてはいるが,問題文の要求に沿った議論・評価にはなっていない。単純な辞書的な説明である。また,抽象的な議論が多く,必ずしも具体例を拾った説明にはなっていない。
・では東ロボくんの解答は東大の要求に全く答えていないので0点ではないか,と思われるかもしれないが,話の味噌はここで,実は東大受験生の7割型が作る答案も東ロボくんのような方向性の答案であり,問題文の要求にまるで答えていない。7割型は誇張抜きで書いたつもりだ。はっきり言ってしまうと,東大の第1問は超絶良問である一方で,現在の受験生の水準からすると要求水準が高過ぎるのである。結果として,「知識としては正しいが,問題の要求にはまるで答えていない(問題文の論旨がわかっていない)」答案が毎年量産されている。ゆえに,東大側も「問題文の論旨が理解できておらずとも,知識的に正しければ,配点の半分程度の点数になるように採点せざるをえない」という方針を取っており,駿台の模試もこれに従って採点している。よって,東ロボくんの解答でも9/26になってしまう(し,受験生の平均点を超えている)のである。なお,受験生の答案の文章構成が崩壊しているのも東ロボくんと同じで,これを気にして減点していたら平均点が大変なことになってしまう。まあ,人間が「そのため」から書き出すということは流石に無いが。抽象論に逃げ込むというのも人間の答案によく見られる事例で,総合して東ロボくんの答案は平均点やや下くらいの受験生の典型的な答案に酷似したものと言える。駿台の講師もそうだったようだが,私はこれに大変な衝撃を受けた。東ロボくんプロジェクトの総括者である新井教授もさすがに慧眼で,同じコメントを朝日新聞に寄稿しているので,お読みいただきたい。
・「東ロボくん」研究の教授コメント 「人間、頑張れ!」(朝日新聞)
・こうした現状について駿台の講師が「東ロボくんの解答は,東大世界史にかかわる問題点を突きつけている」と評するとともに,東ロボくんの解答を高く評価していた。私としても100%の同意である。しかし,朝日新聞にかかると駿台講師の講評は「厳しい評価」になってしまうらしい。どこでどうねじれたのか,大変興味深い。そもそもニュースバリューとしては,新井教授や駿台講師が指摘したようなポイントの方が圧倒的に高いと思うのだが,ノータッチというのは,どうなのか。
・なお,さらに衝撃的なコメントをしておくと,そうした教科書の抜粋では解答できない問題を出しているのは実のところ東大と阪大,あとは一橋大くらいで(京大も無理かも),あとの大学の論述問題は大概解ける。つまり,現状の東ロボくんでも大学を選べば論述で高得点が取れてしまうのである。おそらく同じことに気づいた駿台の講師の手回しだと思うのだが,実際に会場で配布された資料では東ロボくんが解いた慶應大(経済)と筑波大の入試問題に対する解答と,駿台講師による採点が掲載されていたが,慶應大(経済)の問題で6/6点,筑波大の問題で7/15点であった。マジで解けちゃってるんだよなぁ……


<総評>
今年の成果は,どうしても世界史論述が最大だと思う。世界史が突破口になっているが,自然言語による論述問題への解答に糸口が見えたという点で間違いなく革新的な成果を上げたと言えよう。今後,これが他教科に広がっていくと,本当に二次合格が見えてくるのではないか……と言いたいところだが,ネガティブ材料を挙げておく。実のところ,教科書本文の抜粋で配点の半分にせよ点数をくれるのは,東大の二次だと世界史だけであり,その辺で日本史や国語は渋い。国語なんて問題文の抜き書きなんてしようもんなら0点であるから,世界史と同じ解法は取れまい。そうして考えると,次に記述・論述問題にとりかかれそうなのは英語かなぁ,と漠然と考えた。来年度以降の東ロボくんの勉強に期待したい。  
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2015年11月15日

最近読んだもの・買ったもの

・『火ノ丸相撲』6巻。芝木山部屋特訓編,千葉県予選開始。
→ 天王寺咲さん,麻雀つよそう(名前つながり)。しかし天王寺戦が来るのはいつのことか。随分息の長いヒロインを出してきたなと思う。まあここらで相撲に詳しい同年代のヒロインが必要という発想は理解できるが。
→ 意外と相撲以外は普通にこなす火ノ丸が成績良いのはなんとなく予想できたが,佑真お前もかw。
→ 相撲の団体戦が次鋒ではなく二陣という呼び方なのは初めて知った。しかし,解説親方すら由来がわからないとは……きっちり判明したら真っ当な論文の材料になるのでは。ところで「解説親方にだって……わからないことくらい……ある……」はマガジンの漫画のパロディなので,ジャンプ漫画としてはどうなんだろうw


・『プリニウス』3巻。思っていたより刊行ペースが早い。エウクレスの奇行とケガ,プリニウスのローマからの出発,ウェスウィウス火山周囲の町の水道の枯渇,そして地震という展開。
→ 第15話,プリニウスとセネカの会話と,プリニウスがエピクロスを朗読させるシーンが出てくる。現在ではストア派の方が知名度が高く,歴史に深く残っているが,帝政初期の流行だけで言えばエピクロス派の方が優勢だったりする。そういうことを示唆させるシーンである。
→ 第16話,プリニウスが処女好きというのは知らなかった。なお,ここで妹夫婦が連れて来ている息子ガイウスは,後にプリニウスの養子となり,後世には小プリニウスと呼ばれるようになる人物である。17話,ブッルスは割りと早々に病死するはず。というよりも,本作は病死後だと思っていた。18話,古代ローマの教師は市民権を有しているが低賃金。この時代の教師にはなりたくならない職業だ……。そしてキリスト教の教えを聞くエウクレス。キリスト教の活動場所がばっちりカタコンベである。19話,プリニウスたちが移動しているのはかの有名なアッピア街道である。この漫画は本当に古代ローマの重要ポイントを受験用の参考書のごとく押さえて進んでいく。


・『ゴールデンカムイ』4巻。二瓶鉄造との決着,金塊の量の真相,大鷲猟,白石と土方勢の接触,辺見和雄の登場とニシン・クジラ漁編突入。
→ アイヌの罠猟に引っかかって重傷を負った谷垣をアイヌの村まで運ぶことについて,杉元はアシㇼパの判断を尊重した。2巻の頃との関係の違いが明白である。
→ 土方歳三とのっぺらぼうの目的が一致している(北海道の独立)というのは結構重要な情報。独立の目的が違うだけで,鶴見中尉(第七師団)と土方歳三一派の目的は同じといえば同じなのだよなぁ。主人公勢はともかく,この二派は真正面からぶつかるしかない。しかし,土方と主人公勢は利害が対立していないし,ここまで互いに正面から殺しあったわけではないので,そのうち共闘するのかも。今回白石が接触したのは伏線か。
→ キツネの味について「あんまり美味しくない。タヌキの方が脂が多くて美味い」と評価されているが,一般にタヌキも肉が硬くて臭いという話しか聞かない。どんだけひどいんだキツネ肉。ググってみると,確かにキツネ肉もタヌキ並の評価しか聞かないが,アイヌの中ではタヌキの方がマシという伝承があったのだろうか。
→ 杉元が「俺はべつに北海道の珍味を食べ尽くしに来たわけではないんだけどなぁ」と言っているが,杉元は実際そうだろうw。アシㇼパさんが杉元に食べさせたいのであり,アシㇼパさんが非常に楽しそうなんだよなぁ。楽しそうなアシㇼパさんが非常に良い。
→ なお,和泉守兼定が保管されていて土方勢に襲われた銀行は百十三銀行小樽支店とのこと。詳しくはこちらの記事から。
・徹底解剖!ゴールデンカムイに登場する小樽の風景を解説するよ!(小樽総合デザイン事務局)


・『U.Q.HOLDER』8巻。ダーナの登場と,過去のエヴァとの邂逅・刀太との交流。
→ 刀太くん主人公してるなぁ……『ネギま!』のエヴァを知っているからこそ,84話・85話は非常に良かった。85話のラストなんて,マガジンで読んでて泣きそうになった(昼飯食いながら泣いてる変なサラリーマンになるところだった)。
  
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2015年11月12日

名誉にならない名誉職

相撲記事の続きとか旅行記とか,何よりデレマスアニメの感想とか書くべきものがいろいろあるが,ちょっと体力が切れているので後回し。土日辺りからまとめて更新できると思います。


・NZ、新国旗4案を公表 来年3月、国民投票で変更是非(47NEWS)
→ 個人的なセンスでは右上か左下が良いと思う。ただ,この間ニュージーランド事情に詳しいある友人から聞いたところによると「地元民の話では,決選投票で元の国旗が勝ちそう」だそうで,意外とあのユニオンジャックに愛着がある人が多いのかなと。


・伝説のナチス黄金列車「99%本物」 財宝300トン?タイタニック級の発見(産経Biz)
→ 限りなく徳川の埋蔵金に近い匂いを感じるが,ポーランドの文化副大臣が言っているので,列車の存在自体は確かなのだろう。あとは本当に黄金が詰まっているかどうかだが……続報を待ちたいところ。


・豪華な五輪組織委、責任あいまい 識者「名誉職多すぎ」(朝日新聞)
→ 功成った(ということに世間的になっている)人たちに泊をつけるための組織あったのに瑕疵がボロボロと,というのが真相ではあるだろう。本人たちとしてもドンと座っているだけと言われて引き受けたら「責任」と言われて戸惑っている,あるいは「外部のバカが問題起こしやがって」と怒っているという様相ではないか。まあ確かに誰かがを辞めさせれば解決する話ではないのだが,ただまあこのまま行くと泊がつくところが晩節を汚すことになるので,「名誉職」が名誉たりえなくなるのが彼らにとっての最大の責任のとり方になるのではないかと思う。現時点でボロボロでしょう。


・佐野氏のこと(増田)
→ この前のときにこれもまとめて言及すれば良かったなと。私もほぼ同じ流れ。一点,写真の著作権を無視したこと(というかウォーターマーク外し)は,原案発表並みに致命傷だったのではないかなと。あれでいちゃもんや中傷の領域だった有象無象のパクリ疑惑糾弾に,説得力が出てきてしまったので。
→ 佐野氏の原案が選ばれた理由が今ひとつよくわからないというか,完成形の方なら私はダサくないと思っている。しかし,コンセプト抜きの原案でコンペは勝てないだろうと。確かどこかで「拡張性の高さ」が理由に挙げられていたと思うのだが,では他のデザインでは拡張できなかったのか,というのは当然疑問に挙がる。また,結果的に良いものができれば途中の過程で佐野氏以外の手が入ってても,とは思うものの,あの完成形の功績が全部佐野氏のところに行くというのも納得しかねる話ではある。コンペの公正さが疑われることにもつながる。


・国会議事堂前の「敗北主義」 −戦後左翼史のなかの市民ナショナリズムと保守リベラル(Football is the weapon of the future)
→ この辺の話は今まで興味があまり向かなかったこともあって全く触れてこなかったので,ちょっとした勉強になった。
→ SEALDSについては指摘の通りではあるものの,「現在の国会前のデモの中心の人達が、00年代までの左翼運動とほとんど断絶していること」という新しさは割と重要ではないかと思う。そこいらにいるオッサンオバサン有権者」にして現在の自民党の分厚い支持層は,旧来の市民運動に対してアレルギーを持っていると思われるので。いかに断絶できるかというのは焦点だと思うのだが,2ヶ月ほど前の運動の終わり際のSEALDSを見ているとそこら辺をわかっているのか,この記事で指摘されているような「心情左翼」の一定の成功の要因がわかっているのかということと合わせて,不安なところである。  
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2015年11月08日

私的相撲用語事典(1)組み方編

大相撲の場所中,私はnix in desertis出張所で毎日場所の記録をつけている。が,そこで使っている相撲用語が,自分で使っていてかなり混沌としてきたため,一度自分なりに整理しておこうと思う。ついでに,相撲を見る人はそういうところで相撲を見ているんだという手引きや,NHKの実況で使われている専門用語の理解などに役立てば,幸いである。ただし,基本的には私も用語の使い方はかなり自己流であるため,そこはご了承いただきたい。


・上手/下手
まわしの取り方の分類。相手の腕の上側(外側)を通って取った場合は上手,逆に相手の腕より下側(内側)を通って取った場合は下手になる。上手と下手にはそれぞれ特性があり,これが相撲の最大の見どころの一つであると思う。残りの話は全てここから派生する。下手は相手の内側に入るためがっちりと相手を捕えやすい。が,自身の体勢も下を向くため,投げの打ち合いになると上手に対して不利である。一方上手はまんまその逆で,相手を拘束する力は発揮しづらいが,相手の背に近い部分に力をぶつけることができるので,投げは有利になる。特に白鵬の左上手投げは強烈極まりなく,全盛期の白鵬に左上手を取られることは,トキの北斗有情破顔拳を意味した。最近ではやや弱くなり,そこまで即死技というわけでもなくなったが。だから白鵬戦を観戦するなら,左上手には必ず注目しなければならない。

・右四つ/左四つ
相撲の組み方の種類。上記の説明の通り,下手と上手のそれぞれの弱点を補うため,多くの力士は片方で下手,もう片方の手で上手を取りに行くと段違いの構えを取ることになる。こうして,相撲の最も基本的な型である,右四つと左四つが発生する。下手基準で,「右手が下手・左手が上手」なら右四つ,「左手が下手・右手が上手」なら左四つになる。ただし,そうそう綺麗に両手ともまわしに手がかかるわけではなく,大体不十分になる。特に下手は取りやすいが上手は取りにくい。互いに下手だけ入って上手がないまま戦況が膠着,結果先に上手を取ったほうが寄り切って勝つというのは頻出パターン。人間利き手があるように,大体の力士は得意の型がどちらかに絞られる。たとえば白鵬・日馬富士は右四つ。ここでも,「白鵬は右四つ=左上手」というのがわかる。稀勢の里は左四つ。朝青龍は両方でとれたが,データ上は左四つに分類されるようだ。

・もろ差し/外四つ
しかし,たまに段違いの構えを取らず,両手ともに下手・上手で取りに行く例外がいる。両下手の組み方をもろ差し,両上手の組み方を外四つと呼ぶ。もろ差しは非常に攻撃的な組み方で,完全の相手の内側に入り込むため,相手からすると非常にうざったい。単純に寄り切るだけならこれに勝る組み方はない。が,逆に言って寄り切る以外の技には派生しづらく,窮屈な相撲になる。小兵はもろ差しになりやすく,近年だと豊ノ島と栃煌山がもろ差しがうまい。逆に外四つはどちらかというと苦し紛れの型で,積極的になる型ではない。それでも巨体の力士なら,ここからつり出しや上手投げで逆転が可能。近年だと名手は把瑠都・琴欧洲・旭天鵬あたりであったが,直近で照ノ富士が外四つで極めて上手い相撲を取る。

・相四つ(がっぷり)/喧嘩四つ
相手と得意の型が同じなら相四つ,違うなら喧嘩四つである。少し考えてもらえばわかるが,右四つ同士が組みに行けば,互いの腕がぶつからないから,互いに簡単に右下手・左上手が取れる。結果,相四つの場合,互いに得意な型であるため,純粋な力比べになりやすい。この力比べに移行した相四つの状況のことをさらに「がっぷり四つ」と呼ぶ。がっぷりまで行くと熱戦になりやすく,それゆえ右四つがっぷりになりやすかった白鵬・朝青龍戦は名勝負製造機であった。
一方,喧嘩四つは,これも少し想像してくれればわかるが,片方が右下手をとったら,相手が左下手を取るのは物理的に不可能になる。つまり,自分が得意の型で組んだら,相手は不得意な型で組まざるをえなくなる。結果,組むまでが勝負の分かれ目となり,得意の型で組みさえすれば,多少の体格差・腕力差があれど逆転できる。白鵬と稀勢の里が喧嘩四つだが,稀勢の里がたまに白鵬に勝っているのは,稀勢の里が差し手争い(後述)に勝って先に左四つを作ることがあるため。

・差し手争い,前さばき
というように,特に喧嘩四つの場合はそうだが,立ち合いの瞬間にいかに有利な“下手”を取りに行くか,というのが相撲において最も重要な戦術のポイントとなる。この立ち合いから下手を取るまでの争いを差し手争いと呼ぶ。また,差し手争いを含め,自分の正面空間に自らが有利な空間を作り出すための挙動のことを前さばきと呼ぶ。自分が積極的に差し手をとりにいくだけでなく,たぐって(後日記述)牽制してみたり,脇を締めて相手の差し手を防いでみたり,いなして(後日記述)相手の正面から外れてみたり,といろいろできる。この前さばきが抜群にうまかった力士というと,近年では琴光喜であったが,逆に彼はさばいてからが無い力士ではあった。現役の力士だと鶴竜・妙義龍・安美錦はうまいと言っていい。稀勢の里は別にうまくないのだが,時々白鵬に差し勝っているのが本当に不思議。

・差し手
ここまでで,いかに下手を取ることが大事か解説してきたのでわかっていただけたと思う。しかし,実際のところ下手の威力である,相手の動きを拘束する効果は,自分の腕が相手の腋に入り込むことで発生する。つまり,まわしが取れているかどうかはそこまで重要ではないのだ。そこで,相撲では「まわしをつかんでいるかどうかは別として,自らの腕が相手の腋の下に入り込んだ状態」を指して,特別に「差し手」と呼ぶ。下手はもちろん差し手に含まれる。だから「下手争い」ではなく「差し手争い」だし,「もろ下手」ではなく「もろ差し」なのだ。

・巻き替え
一度組んでしまってから,高速でまわしから手を放し,組み替える技術のこと。一般的に言うと巻き替えは危険で,一瞬無防備なるからである。しかし,熟達者がやると無防備である瞬間が極めて短くなり,得意の四つに組んだり,相手の動きを牽制したりと,有効な手段となる。巻き替えを極めた力士がやると,観戦者がまばたきをしている間に,右四つがもろ差しに,もろ差しを経由して左四つに変遷していたりする。観戦者がいわゆるヤムチャ視点を最も味わうのは巻き替えの応酬であろう。白鵬と朝青龍の巻き替え合いは高速すぎて,マジで「今何回巻き替えあった……2回,いや3回か……?」と多くのテレビの前のNHK視聴者が混乱し,2ch実況スレが賑わった(当時)。現役の巻き替え名手というと,白鵬以外では鶴竜を挙げておこう。  
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2015年11月07日

新テストの中間発表とか

・安土城の入場料を自ら徴収する信長(Togetter)
→ 『へうげもの』のあの描写は本物だったのかというのが最大の衝撃。信長公お茶目すぎでしょう。確かにお金目当てではあるまい。偉大な城を建てたという誇示として,見学料を徴収したか。部下の出席確認というだけなら,一般庶民からは徴収しないしなぁ。


・ほんとの“ゲーム脳”ってこういうことじゃないだろうか(Togetter)
→ 全力であるある。廃墟とかトマソン見るとわくわくしてくるのはゲーム脳と呼んでいいかもしれない。
→ 博物館や教会・寺社仏閣に行くと「これ触媒に使うと○○って英霊召喚できるな」とか考え出すのもゲーム脳でいいよね?この視点で旅行に行くとほんと楽しいのでお勧め。
→ 反応にSplatoonが多いのは興味深い。確かにあれは町中にインクぶちまけるゲームだから,現実の風景と重ねやすいと思う。


・ムハンマド描く映画、イラン政府支援で公開 偶像崇拝はタブー…イスラム諸国で反発招く恐れ(産経新聞)
→ シーア派のほうが偶像崇拝については穏健で,イラン政府が支援したのは理解できる話である。ただし,ワッハーブ派の強い湾岸諸国では受け入れられまい。
→ イラン人の考えるムハンマド像が気になるし,普通に勉強になりそうなので,見てみたい気はする。邦訳されるんかなぁ。


・新テスト導入、段階的に 大学入試改革で中間まとめ案(日経新聞)
→ 新テストの話は1記事作ってがっつり書きたいのだが,そうもいかない事情も含めてここまでの経緯を簡潔に。
→ 元々センター試験に代わる「新テスト」は,2014年の12月に文科省の外郭団体である中教審が発表した計画によるもので,2020年からの実施を目標としていた。その内容は「複数回実施」「記述式の部分的導入」「マーク式部分のCBT-IRTへの移行」「英語の四技能化・民間試験の導入」「総合科目化・合科目化」「二次試験での筆記試験の原則廃止」といった要素が盛り込まれ,全体的に野心的ではあるが無謀と各所から言われていた。特に,国立大学協会からは二次試験での筆記試験の原則廃止が不可能と強い反発を受けていた。
→ そこで文科省は2015年8月に「新テスト」に関する最終的な報告を発表するとしていたが,これが8月に入っても全く発表されず,8月27日になってやっと出てきた答申がこの日経新聞の報じているところの「中間まとめ案」である。最終発表は12月に延期された。私は新テストに関する記事を最終的な報告を読んでから書くつもりであったので,当てが外れた形になる。
→ しかもこの中間まとめ案は,内容としては昨年末に出てきた中教審の計画案とほとんど内容的に変わっておらず,要するにこの8ヶ月でまるで議論が進んでいないというのが正しい評価であろう。一番大きな事項としては,2020年からの実施は難しいとして,2024年への実質的な延期の予定が盛り込まれている。2024年は新々課程への移行年なので,入試改革の区切りにもしやすいということだ。さらについこの間,馳浩新文科相が新テストの2024年への実施延期について,かなり踏み込んだ発言をしていた。ぶっちゃけて言うと2020年新テスト実施の強行を熱望していたのは前文科相と中教審の座長の二人だけなので,文科相が交代した時点で延期は濃厚と思われる。
→ 内容の革新性もやや後退している。もっとも,上記に挙げた当初の中教審の提案は革新的というよりも無謀と言った方が正しく,関係各所からの反発はもっともだ。どの要素がどういう理由でどの程度無謀なのかは,近日中に別記事を挙げたい。
  
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2015年11月05日

コンセプトとはいったい

先日高水三山なんぞに登ってみたわけですが,初めて登山装備を整えてみて思ったのは,冬コミと一緒だこれ。要求される要素は耐寒・耐久・運動性であるわけで。もう携行羊羹持ってビッグサイトに行けばいいんじゃないかな。ところで,冬コミ=登山とすると,ビッグサイトは霊峰なのでは。修験道ですわ。
→ 高水三山に登ったのはとある登山の予行演習なのだけれど,果たして本番はどこなのかは乞うご期待。けっこう意外なところに登ります。


・アメリカで流行ってる「アルコールすいか」がすごい(NAVER まとめ)
→ そこはメロン日本酒勢が数年前に通り過ぎた場所だ。しかしまあ,メロン日本酒とサングリアの間くらいにある物体ではあるかもしれない。多分これ,スイカの吸ったアルコール度数の割にアルコールの味がしないので,調子に乗って食べると昏倒すると思う。
→ これに伴い,メロン日本酒を普及させている人が果物と酒の相性一覧を作っていたので張っておく。


→ ウォッカの相性の良さよ……まあ,あれは純粋なアルコールに近いしなぁ。


・女子教育「コサイン教えて何になる」 鹿児島知事、撤回(朝日新聞)
→ これが単純に「高校教育に三角関数は必要なのか」なら反論の方向性がまた変わってくる。この発言のすごいところはテーマが「女子教育」だったところで,高校数学の有用性はある程度認めておきながら「女子には不要」と言っているのだから。釈明でご自身も「生涯1回しか使ったことがない」と付け加えているが,暗に「自分でさえそうなのだから,ましては女子が」という意味合いなのだから救いがない。

・県別・性別の大学進学率(2015年春)(データえっせい)
→ 関連して。こんなに開きがあるんだなと素直に驚いた。
→ しかし,都会/田舎という差でもなく,地方ごとの差というわけでもなく,都道府県単位で数字がかなり大きく違うというのは興味深い。東京の格差が小さい理由はわかりやすい。身近に大学が多く,偏差値帯もそろっている。ボーダーフリーの大学でも行くべきか,それなら就職すべきかという意識の違いは地域別に大きそうな気がする。その意味で,大阪の格差が小さくないのは奇妙かも。徳島県の格差が小さいのも含めて(こういう話があるそうで),各都道府県で複雑な要素により格差の大小が決まっていそうな様子である。


・え? じゃあエンブレムの「コンセプト」は原案にはなかったってこと?( 山形浩生の「経済のトリセツ」)
→ すでに撤回されてしまったエンブレムではあるが,これは全く同じ事を思った。原案がコンペで選ばれたのだとすると,オマージュに関連するコンセプトは後付ということになるわけで,盗作ではないことの証明は強くなってもコンペ自体への不信感は強まるような。コンセプトで選ばれたわけではなかった,というのはわかったが,とするとこのデザインの魅力は何だったのだろうか。
→ この問題に対する個人的な意見の推移を言えば,コンセプトはわかりやすいし見栄えも悪くなかったので,特に反対ではなかった。リエージュの劇場に近かったのは偶然であろうと。佐野事務所から発覚したデザインの盗作は,本人がかかわっていないという言い訳を最大限信頼してあげてもいいのではないか,と思っていた。しかし,こう説明が二転三転したのでは,信用できるものもできなくなるし,五輪のエンブレムでこれだけ揉めたこと自体が大きな失点ではあろう。  
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2015年11月01日

下町は今後も移動するのか

・市長って本当にシムシティが上手いの? 千葉市長とガチンコ勝負してみた(オモコロ)
→ 千葉市長は現実に反したことはできないというハンデ戦だったので,勝負の結果はまあよっぴーが勝つよねという予想された展開。むしろよっぴーがゲーム的な行動の限りを尽くしてくれたので,対比が明確になってよかったと思う。そういうテクニックの数々がまた懐かしかったしね。開幕即原発等とか,交通インフラは道路引かずに鉄道だけとか,病院の破壊とか,やったわーという。そういうゲーム的な行動を千葉市長も知っていたのはちょっとした感動で,当時スーファミでシムシティをプレイした層が市長になるような世代になってきたかと。いやまあ,千葉市長は市長としては非常に若いのではあるが。
→ 市長の千葉市PRが絶妙で,単純に市長としてこれだけ千葉市のことを知悉しているアピールとして本人のイメージ向上にもなっているという。出てくる情報は千葉市長なら知っていて当然のことばかりではあるが,一般人は知らない情報なので「さすが市長」という反応を引き出せている。
・千葉市長とシムシティで対決の記事、裏方の話(むつおちゃんブログ)
→ こちらは裏方の話。確かに,最後の本題であるシムシティの宣伝へのスムーズで良かった。
>1番の勝因は、それぞれが持っているコンテンツとしての潜在能力が高かったからです。
>無理やりPRの形にしたものって、どこかに無理が生じるから…。
→ これはマジでそうだよなと。ただ,無理にPRする必要があるものが出てくるのが,お仕事の辛いところで。


・つまずいた少年が1.8億円の名画に穴 台北の美術展(CNN)
→ 普通にけっこう良い絵だったので調べてみたところ,パオロ・ポルポラ(Paolo Porpora,1617〜73)はナポリ出身の典型的なバロックの画家で,静物画を得意としていたようだ。
→ 少年に悪意はないにせよ,CNNの映像を見る限り警備が杜撰で,そりゃこういう事故も起きる。主催者側は何を考えてこういう展示にしたのか。
穴開いた名画、偽物?=別人の作品か−台湾(時事通信)
→ その数日後,思わぬ展開が。もっとも絵画のお値段は完全に水物なので,真贋が変わるとこう下がることはある。しかし,前述のように良い絵ではあるので,3万4000ドル(約410万円)ならむしろ買い手がつくのでは。これで「実は17世紀の作品ですらありませんでした」とかいう展開になったら,さらにもう一桁値が下がりそう。


・東京の「下町」とはどこからどこまでが正しいの?(キニ速)
→ こういうスレにしては珍しく,けっこう実のある議論になってる。確かに定義によるところは大きく,この定義で言えばこう,としか言いようが無いだろう。
→ 個人的には昭和のイメージで言って,墨田区・江東区・台東区が下町という認識でいる。東・北は荒川区・足立区はただの荒っぽい所,葛飾区・江戸川区は微妙なライン。西は本郷台地を上ったら下町ではなくなるものの,町の雰囲気はさして変わりない。地元民として言わせてもらうと,町の雰囲気が完全に「あ,ここ山の手だ」となるのは,実際には後楽園・白山からじゃないかと思う。
→ 江戸時代の定義だと,昭和の定義よりもかなり西にずれる。上野や浅草すら入らないというのはやや驚きで,現在の行政区分だと完全に中央区になる。「下町」が東京の“半”周辺部というのはおそらく共通認識ではあり,東京の中心が拡大した結果が江戸から昭和への下町の移動になるのだろう。逆に言って昭和の定義は,江戸ならただの場末(周辺)になる。この移動は人文地理の観点から言って興味深い。  
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