・シュミット元西独首相が死去 96歳、「鉄の宰相」(朝日新聞)
→ 96歳は相当な長生きであり,つい最近まで言論活動をしていたのだから大したものだ。名宰相なんだけれども,どうしても印象が薄いのは「東方外交」ブラントと「統一時の首相」コールに挟まれているからだろう。8年在任していたし,ヨーロッパ統合の立役者の一人でもある。ちなみに,ジスカールデスタンとはほぼ完全に在任期間が重なり,あちらは90歳でまだ生存している。むしろ,ドイツ首相後任のコールは現在85歳だが,健康状態があまり良くない模様。(さらについでに言えば,ジスカールデスタンの後任ミッテランは亡くなっている。)
→ SPDで国内政策も社会主義寄りだった一方で,対外政策は前任ブラントと違ってむしろ強硬なタカ派だった。アメリカのミサイルを西独国内に配備する(記事中の「中距離核戦力の全廃に向けて指導力を発揮した」はどちらかというと結果論である),サウジにレオパルト2を輸出してイスラエルに厳重抗議される,トルコのヨーロッパ統合参加は拒否し,いわゆるガストアルバイターの導入は間違いだったと批判し,退任後になるが「多文化共生はインテリの幻想」と発言するなど,なかなかに破天荒であった。そういえば多文化共生についてはメルケルさんも似たようなことを言っているが,彼女はCDUである。
→ 経歴を振り返ると実はユダヤ人の血を引いていたが出生を偽造し,ナチス・ドイツ時代は国防軍の将校として活躍(戦車輸出の折にイスラエルにこの経歴を掘り起こされて批判されている),終戦後に社会主義者へ転向したそうだが,ソ連やイスラエルやトルコ(人)への対応を見ていると,根は割りと若い頃から変わってなかったのでは,と思う。Ruhe in Frieden.
・旧新潟貯蓄銀行の100年定期預金(年利6%)が満期を迎える。(FX2ちゃんねる)
→ ヨーロッパだと時々見るたぐいの話だが,日本で起きたというのは珍しいしおもしろい。ヨーロッパの場合は300年前とかの債券が発見されて,単純に時間が経過しすぎててインフレ率に負けるという感じだが,日本のこれは100年と比較的短い分,敗戦後のハイパーインフレと高度経済成長を挟んでいるのでこうなっちゃったんだろう。敗戦後のハイパーインフレだけで約70倍だ。
→ 100年前となると物価が違いすぎてインフレ率を計算する意味があまりなく,公務員の初任給や米価・金1gの値段などで比較することになるが,大正時代のそれらから計算するに(なお記事中にある通り「当時の銀行員や国家公務員の初任給は40-50円程度。」である),1円が5000円くらいの価値になるっぽい。……してみると,
実は1円の投資ってすごく軽い投資だったのでは。念のため計算してみると,全くインフレせず物価も変わらずに100年後339円30銭になっていたとしたら,今の感覚で言って5000円が約170万円にはなっていたことになる。すごい儲けには違いないが,約170万円で“一財産”かと言われると……10口単位で買っててもらわないと,インフレ率とか抜きにがっかりしそう。
・パリで同時多発テロ、死者120人超 仏は国境封鎖へ(朝日新聞)
→ 1年以上前からのうちのブログの読者諸氏はご存じの通り,
私はこの事件のちょうど一年前にパリにいた上にテロに遭いかけているので,本当に他人事ではない。テロが起きたのは主にパリ10区と11区だが,旅行中にこういう事態となったパリ北駅があるのはパリ10区である。近いも近い。旅行記事のコメントにもある通り,30分でNATO軍や爆弾処理班が来るような警備状況でも防げないんだから,無理なものは無理なのだろう。
→ 実を言うと2016年中にドイツに行く旅行の計画があったのだが,友人同士で話し合った結果「少なくとも中東が落ち着くまでは様子を見よう」ということになって延期している。早く情勢が落ち着いて欲しい。もっとも,飛行機の値段が暴落しているので,危険を顧みずに行くのも手ではあるのだけれど。
あなたが選ぶ展覧会2015
→ 投票するつもりはあったのだが,し損ねた。ランキングを見ると,トップ10に入ったもので行ってないのは鳥獣戯画展と鴨居玲展,河鍋暁斎展,蔡国強展,光琳と現代美術展の5つである。11位から下だと行ってないものがかなりある。現代アート系には行かないのと,地方の美術館にはあまり行かないのが足を引っ張っている。結果事態に言及するなら,グエルチーノ展の1位は意外。春画展かマグリット展が1位になると思っていた。
→ 投票するとしたら予選の時点で3つだから,
地中海の黄金伝説展,
近美の「No Museum, No Life?」展,
マグリット展になるだろうか。本選は残った25から選ぶなら,やはり「No Museum, No Life?」展ということになる。美術館そのものにスポットライトを当てた記念碑的な展覧会で,インパクトは強かった。
・【レポート】2015年美術展入場者数 BEST20(Art Annual online)
→ 入場者数のランキングはこっち。こういうのはランキングの半分は行っていて,行っていないのは現代アート系と京都と奈良というのが昨年までの自分だったが,今年はちょっと様相が違う。ランキング1位のモネ展はモネに食傷気味でパス,2位(・4位)のルーヴル展は現地に行ったからパス,3位は科学系でパスしたというよりチェック漏れで,なんと1〜3位に1つも行っていない。多分,ルーヴル展とオルセー展は今後めったに行かなくなると思うので,2016年以降も同様になると思う。
→ 加えてもって9位の古代エジプト展もルーヴルでたくさん見たからもういいかなと。11位の鳥獣戯画展も前にサントリー美術館で全巻見てるので……こういうパターンも今後増えていくだろう。ただ,その分代わってややマイナーなジャンルの美術館に行く余裕が出てきてるので,いいことかなと。
→ なお,逆に行ったのは5位マグリット展,7位兵馬俑展,8位大英博物館展,16位春画展,19位ボッティチェリ展。
→ これ,両ランキングを見比べるとおもしろい。グエルチーノ展は美術ファン受けはしたんだけど,地味で集客は難だったんだなとか,逆にルーヴル展は投票するような層はやっぱ飽いてるんだなとか。総合的に成功したのは,モネ展,マグリット展や鳥獣戯画展だった。確かにキャッチーかつ美術ファン受けも両立できる素材で,モネ展は《印象 −日の出−》を持ってきた効果かな。