2018年01月28日

グルジア人力士のさらなる発展を祈願しつつ

誰も予想していなかった展開で,誰も予想していなかった人が優勝した。平幕が優勝する時とは概ねそのようなものであるが,旭天鵬の時ほどの驚きは無いかもしれない。今場所の栃ノ心は見るからに絶好調であり,中日までの相撲を見て,上位戦も終わっているし,このまま最後まで続いて12・13勝で終わって,三賞総なめかな,くらいには思っていたからだ。どちらかというとその後鶴竜が失速したほうが意外であった。栃ノ心の優勝は,旭天鵬以来の平幕優勝で6年ぶりのこと。当然グルジア(ジョージア,サカルトヴェロ)出身としても初優勝である。新入幕からの所要58場所は歴代4位タイのスロー記録。

今回の栃ノ心の優勝は希望である。人間誰しも好調・不調の波はある。上位陣全員が好調だったり不調だったりすることは稀で,だからこそ横綱が3人も4人もいれば大関以下が優勝するチャンスはなかなか訪れない。その横綱が2人休場したことで実力的な意味での優勝ラインが大きく下がり,「好調な平幕」にも優勝のチャンスが芽生えた。今の栃ノ心の実力が,他の三役・平幕上位と比較して突出して優れていたわけではない。にもかかわらず優勝できたということは,他の三役・平幕上位陣にも十分なワンチャンスがあるということだ。今後,稀勢の里はともかく白鵬がこのままあっさり引退するとは思えないが,どう考えても以前よりは安定しない。鶴竜と豪栄道も同様である。高安はまだ持続し,成長するだろうが,白鵬や朝青龍のような絶対者になるとも思えない。戦国時代の到来は近かろう。後世,その象徴のような場所として語られるかもしれない。2016年11月の評で「現在の幕内上位陣の年齢層が固まりすぎていて,2・3年後くらいにごっそり交代するのではないか」と書いているが,あれから1年と2ヶ月が経った。やはりあと丸1年ほどで総入れ替えになりそうである(逆に言って,あと1年ほどはかかろう,白鵬が多少なりとも復調するであろうし)。

全体的におもしろい相撲が多く,中日付近がやや淡白だったものの,序盤と後半は良かった。それだけに土俵外の不祥事が話題になったことは悔やまれる。大砂嵐の無免許運転・追突事故は,当然それ自体も問題ながら,虚偽申告したことと協会への報告が無かったこと,そもそも力士は運転禁止という協会の規定にも反していたことと問題が大きい。一発解雇ということにはなるまいが,相当な厳罰は覚悟しなければならないだろう(3場所出場停止等)。春日野部屋の暴力事件が過去に起きていたことの方は,当時きっちりと公表すべきであっただろうが,今更どうしようもない。


個別評。白鵬は「立ち合いの張り差しを封じた瞬間に弱くなった」と言われかねないことになってしまった。その意味で休場してほしくなかったところだが,白鵬の真価は立ち合いではないのだから,ケガが治れば戻ってこよう。ただ,非常に立ちにくそうだったのは確かで,悪い癖になってしまっており,修正を諦めてすぱっと引退する可能性もなくはなさそう。稀勢の里は11月場所と同じ評価になる。左肩というよりも全体的に弱くなっていて,どこから手を付ければよいのかわからない。このまま引退に追い込まれる可能性が高くなってきた。返す返すも5月・7月の段階で全休せず,出場してしまったのが悔やまれる。

鶴竜はてっきり優勝するものだと思っていた。すばらしい技巧を持っており,十日目の隠岐の海戦などは鶴竜の真骨頂とも言える芸術的な右上手出し投げを見せてもらった。引くのが癖なのは仕方がないし,1敗くらいするのも仕方がないとして,ずるずる連敗したメンタルの方に問題がある。あんなにハートの小さい力士だったか,あるいはどこかケガをしたか。なお,世間的には「優勝争いを引っ張ったし,10連勝もしたのだから,最終結果が11勝でも進退問題は払拭されたということでいいのでは」という声が強いようだが,私としては疑問である。確かに今場所後すぐに引退というような成績ではないが,来場所もまた11勝以下なら,すぐに進退問題が再浮上すると思う。その意味で完全払拭とは行かない成績であったし,連敗の原因がメンタルではなくケガなら,今後払拭しようがないかもしれない。

大関。高安は良い出来で,12勝は立派。立ち合いの体当たりから押し込むか,組んで投げるかで勝ち星を詰んだ。栃ノ心・逸ノ城の敗戦は仕方ないとして,阿武咲戦の不用意な敗戦が痛い。仮に思っていたよりも早く白鵬が引退したら,1・2回は優勝しそう。横綱になれるとまでは現時点では予想できない。豪栄道は可も不可もない出来。相変わらず日毎の出来の差が激しい。

三役。御嶽海は二桁取って大関取りの起点,と思っていたのだけど後半の失速がひどかった。どこか痛めたか,単なるツラ相撲か。突き押しの威力は引き続き良いが,連敗中は威力が出る前に負けてしまうことが多く,出足で負けるか引いてしまうかという様相。いずれにせよ良くない。貴景勝は本人曰く「どこか痛めていたわけではなく,地力で負けただけ」と壁にぶつかったのを自覚しており,良いことだと思う。まだ突き押しの威力が御嶽海の領域にはたどり着いていない。北勝富士も同じ。阿武咲休場は残念だが,重傷には見えなかったので,すぐに戻ってくるのではないか。

前頭上位陣。まず優勝した栃ノ心。今場所は相撲ぶりが変わったところがなく,単純に絶好調であった。つっぱりは不格好ながら威力があり回転も悪くなく,あくまで突ききって形が整ってから四つに移行する作戦が功を奏したか,良い形で組むか,突いたまま勝負を決することもあった。右四つ得意だが左四つでも寄ることができた。元から得意の右四つも,従来の出来ならそれでも白鵬等の上位には通用していなかったが,今場所は鶴竜以外には十分に通用した。前頭3枚目,上位総当りでの優勝なので価値は高い。大関取りには厳しめの要件で起点としてもよいだろう。来場所関脇当確だが,11勝するようなら再来場所は完全に考えてよいが,絶好調が続くかどうかはなんとも言えないところ。

続いて逸ノ城。10勝という成績もさることながら,内容が良かった。五日目までの上位挑戦終了時点で1−4,今場所もダメかと思いきや六日目から目覚め,パワーと技術の伴った逸ノ城が戻ってきた。相手を見てやる気を変える性格は変わっていないが,そのやる気を出す水準が随分と高くなり,今までなら手を抜いていた相手でも果敢に挑んでいた。また,逸ノ城のやる気を出したら勝てると見なす嗅覚の鋭さはなかなか大したもので,今場所本気を出して負けたのは栃ノ心だけであると思う(あまり褒めていない)。あとは遠藤が良かったくらいか。

前頭中盤はあまり言及すべき力士がいない。しいて言えば千代丸がやや良かったくらいか。照ノ富士は治らない膝のケガに加えて,糖尿病とインフルエンザだそうで……インフルは3月場所には大丈夫としても糖尿病は心配である。稽古すれば良いとは言っても。安美錦はやはり膝が限界では。

前頭下位。輝は多少なりとも腰高が直ってきたか。要経過観察。豊山は幕内で初めての勝ち越し。とはいえ物言いが入った取組も何番かあり,かなり際どい勝ち越しだったと思う。運も実力のうちといえば,9勝にも価値はあるか。朝乃山も同じく9勝で,こちらはなぜ勝ち越せないのかと思っていたので順当なところ。やっと幕内のスピード感に慣れてきたか。最後に新入幕の阿炎と竜電。阿炎はまた新しく出てきた力士が突き押しなのかというのが第一印象で,悪くはないが定着できるのかは要経過観察。あのチャラいキャラクターは嫌いじゃない。ぜひともあのキャラクターを保ったまま三役まで来て欲しい。そして竜電。イケメンすぎない……? というのは置いといて,左四つでスケールの大きい相撲ももろ差しの相撲もどちらもとれる四つ相撲の本格派で,期待は大きい。無論のことながらまだまだ形が悪いのに寄ろうとして返されたり,巻き替え食らってたりそもそも組めなかったりということはあるが,成長の余地は大きいと思う。期待して待ちたい。
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2018年01月20日

高校地理・世界史教科書における語族(アルタイ諸語)について

・高校地理における「(ウラル・)アルタイ語族」の取り扱いについてのメモ(思索の海)

>どなたか教科書も調べてくれると嬉しいです。
ということなので,便乗して。まず,高校の地歴公民というと山川出版社のイメージが強いが,実は山川は地理の教科書を発行していない。現在地理Bの教科書を作っているのは二宮書店・帝国書院・東京書籍の3つだけである。以前はもう少し多かったのだが,2014年の課程改定の際に撤退してしまった。シェアから言えば圧倒的に帝国書院で70%程度(参考データ)。

なお,教科書を作っていない科目があるのに山川が地歴公民の総合商社のようなイメージが強いのは,用語集を全科目作っている唯一の会社だからである。しかし,教科書を作っていないこともあって,地理の用語集は世界史・日本史に比べると信頼性が低い。また,そういう事情もあって世界史・日本史の学習が教科書・用語集中心でサブに資料集が来る三点セットになるのに対し,地理は圧倒的に資料集や地図帳頼りになって教科書・用語集は一度も開かれないままということもある。よって,世界史・日本史の高校生の学習状況や入試の頻出用語を調べるなら教科書・用語集を開けば事が済むのであるが,地理は幾分状況が面倒で,学習の概況もバラバラなら入試に出題される基準も特に無い。


以上を踏まえた上で本題。以下,年度は全て2017年版。地理と世界史について調査した。

【帝国書院『新詳地理B』】
◯本文では語族についての明確な説明はなく,「世界の言語は,大規模な人の移動や宗教の伝播などによって,少しずつ変化しながら長い年月をかけて広がっていった(注釈5)。」(p.209)
◯注釈5では世界の言語分布を示した世界地図が掲載され,表記は「ウラル語族」と「アルタイ諸語」。なお,日本語と韓国・朝鮮語は「その他」に分類。(p.209)

【東京書籍『地理B』】
◯本文の説明は「類似性に基いて世界の言語を系統的に比較すると,多くの言語が図1のようにいくつかの語族にまとめられる。日本語は,モンゴル語などのようなアルタイ語系の言語と多くの共通点があるが,その系統は十分に解明されていない。」(p.206,太字は原文ママ)
◯図1内の表記は「ウラル語族」と「アルタイ語族」。日本語と韓国・朝鮮語は「その他」に分類。(p.206)

【二宮書店『新編 詳解地理B 改訂版』】
◯本文の説明「母語として使われている言語を,言語学的に同一の起源をもつと考えられる言語群,つまり語族ごとに示したものが図1である。」(p.171,太字は原文ママ)
◯図1の言語分布は3つの教科書で一番色分けが細かい。表記は「ウラル語族」と「アルタイ諸語」で,アルタイ諸語は「チュルク語派」「モンゴル語派」「ツングース=マンチュー語派」でさらに分類して色分けされていた。日本語と韓国・朝鮮語はやはり「その他」。(p.170)


以下は世界史。全7冊だが,メーカーが同じなら表記は同じだったのでそれらを省き,4冊について報告。
【山川出版社『詳説世界史 改訂版』】
◯本文の説明「共通の言語から派生した同系統の言語グループを語族と呼ぶ。」(p.13,太字は原文ママ)
◯語族を列挙した一覧表が掲載され,そこでの表記は「ウラル語族」と「アルタイ語族」。「日本語と朝鮮語の帰属については定説がない」と補足説明。(p.13)

【帝国書院『新詳世界史』】
◯本文には記載なし。欄外のコラムで「語族は,語彙や文法などに類似点があって同じ語群をもつと想定される言語群のことである」と説明し,「世界の言語と語族」の地図を掲載(ともにp.12)。地図中の表記は「ウラル語族」と「アルタイ諸語」で,日本語・韓国語・朝鮮語は「その他」。韓国語と朝鮮語を分けているのは,世界史・地理を通してこの教科書のみ。

【東京書籍『新選世界史B』】
◯本文の説明「故地を同じくするために語法の類似したものがあり,語族という用語でくくられる場合がある。」(p.25)
◯語族を一覧にした表が掲載されており,この表がやたらと詳しい。そこでの表記は「ウラル語族」と「アルタイ語族」。また韓国・朝鮮語をアルタイ語族ツングース語派に分類していた。日本語は一覧表の中に記載がなく,欄外の説明で「文法的には北方のアルタイ語族・ツングース語派に属するが,語彙は南方のオーストロネシア語族やオーストロアジア語族の影響が強い。」と説明。(p.25)

【実教出版『世界史B 新訂版』】
◯本文に記載なく,欄外の注釈で「言語の分類概念としては,語族という用語がある。代表的なものとして,インド=ヨーロッパ語族,セム=ハム語族がある。」と表記(p.21)。語族の一覧や地図等は無し。ウラル語族・アルタイ諸語についての言及がないのもこの1冊だけなら,セム=ハム語族という表記は全世界史の教科書を通じてこの1冊のみ。


おまけ1
【山川出版社『世界史用語集』】
◯山川の教科書と同じ説明かと思いきや,アルタイ語族の項目に「日本語と朝鮮語を含める説もあるが,異論もある。」という説明。(p.4)

おまけ2
【山川出版社『日本史用語集』】
項目名が「アルタイ語」というところからしてどうかと思うが,その説明に「北方アジア系のトルコ語・モンゴル語・ツングース語・日本語などがこれに属し,助詞・助動詞を持つ膠着語で,述語動詞が最後にくるなどの特徴がある。」と,日本語はアルタイ語族扱い。


<とりあえずの感想>
地理ではいずれの教科書もウラル=アルタイ語族という表記はなく,意外と諸語と語族も使い分けている印象。世界史の方は,帝国書院の表記が最もしっかりしている。山川は諸語と語族を使い分けていないが,これ以外の部分も含めて,現状の世界史では最もスタンダードな表記になっている。東京書籍は山川とほぼ同じだが,韓国・朝鮮語の扱いがよくわからない。実教出版はなんとも評しがたい。日本史の用語集は誰かどうにかした方がいいと思います……  
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2018年01月19日

ドラクエ11はやっぱりおもしろかったなぁ

・世界一甘いお菓子はアマゾンで売っていて自分でも作れる(デイリーポータルZ)
→ グラブジャムンはパキスタン料理屋で食べたことがあり,けっこう好きな味ではあるが量を食べるのは厳しい。「世界一甘いお菓子」の呼び声が高いのも納得していたのだが,あれを上回る甘さのお菓子があるとは驚きである。ラスグッラは食べたら多分頭痛がするのではないか。しかし,見つけたら買ってチャレンジしてみたい。甘党の意地をかけて。


・ドイツ連邦議会選挙2017(NHK)
→ 基本的な構図は変わらないまま,FDP(自由民主党)とAfD(ドイツのための選択肢)が比例で5%以上とってしまったせいで小党乱立に近い状態に陥ってしまったように見える。小党乱立を防ぐための5%条件だったはずなので,皮肉である。
→ そして選挙から3ヶ月以上経っているのにまだ政権が成立していない。FDPとSPD(社会民主党)は連立を組んで政権にいたことでかえって支持者離れを起こしたという苦い経験から連立は組みたがらないだろうし,AfDと左派党は政策と出自からして組みたがる政党がなかろうし,第一党ながらCDU(キリスト教民主同盟)は選択肢がなくて非常に苦しい。究極再選挙だろうが,AfDがさらに伸びそうで怖いからこれも無い。結局CDUはSPDとの大連立の方向で模索しているようだが,FDPと組んでも過半数にならない以上は,確かにそれしかなかろう。


・「戦争は、時間と空間のジレンマである」現代ウォーゲームが発見した“真実”——ゲームはいかに戦争の「本質」を捉えてきたか【徳岡正肇氏インタビュー】(電ファミニコゲーマー)
→ 戦場の不確定要素,いわゆる「戦場の霧」を再現するために導入されたのがランダム性,というのは歴史を学んでいて,あるいはいくつかのウォーゲームをやっていて非常に納得できるところ。ゲームは複雑過ぎる現実の一部分をモデル化・省略してシミュレートするものであるが,モデル化できないならランダム性にぶん投げるというのは正しい思想だと思う。ゲームの面白さについても,そうしたゲーム中の設定において最適化された行動を取って「乱数を乗りこなす」ところにあるというのもよくわかる。不規則な動きを予期したり対応したりしていい結果を導くのは快感だ。
→ 電ファミニコゲーマーのインタビュー,いい人に聞いておもしろい記事になる傾向がある。今後にも期待。


・【堀井雄二インタビュー】「勇者とは、諦めない人」――ドラクエが挑んだ日本人への“RPG普及大作戦”。生みの親が語る歴代シリーズ制作秘話、そして新作成功のヒミツ(電ファミニコゲーマー)
→ 1ページ目はこれまでに語られることが多かった話で知っていることばかりであったが,2ページ目はおもしろかった。「勇者とは諦めない人」とは『ドラクエ11』で強く感じたところで,だからこそ今作の主人公は人気が高いのだと思う。また「魔王は毎回悩む」というのも納得するところで,確かに今回の魔王さんはかなり動き回っていて本気で勇者を潰しに来ている感じはあった。


・『ドラゴンクエストXI』ネタバレイトショー開催! 開発秘話や、物語の核心に迫る内容が語られたイベントをリポート【ネタバレ注意】(ファミ通)

→ これまでには無かった試みで,非常におもしろかった。視聴期限がないので,クリアしているなら一度見てみよう。見るのが面倒・時間がないという人はファミ通のレポートでおおよそつかめるので,そちらで。
→ 以下ネタバレ。好きなキャラの男女比よ……カミュとホメロスはね,まあね。エマは確かに人気出ないと思っていたw。仲間キャラとして連れていけるなら愛着もわくので,というところで「新たな仲間にしたいキャラ」ランキングなら高いのも理解できる。リースリットが2位なのも男女比が1:1なのも意外。お姉さまキャラ・百合キャラは男女ともに受けるということか。
→ 好きなシナリオ1位はやはり「ベロニカの死」。今見ても泣く。確かにスキルパネルを開いたときの絶望感がすごかったし,システムとの融合が大変良かった。好きなセリフでは,8位「恋をしてしまいそうだった」はドラクエの歴史に残る名セリフ。ロミアのシナリオは確かに良かった。7位の「カミュの自己紹介」をあのタイミングにした堀井さん,完璧な判断。2位の過去に旅立つシーン,ここも今見ても泣いてしまう。
→ アンケート系,私は,ファーリスの土下座は2回,ロミアには真実を伝え,ネルセンの試練の最初のお願いは武器でした。  
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2018年01月14日

嗚呼懐かしの東大後期(文三)試験

・東大後期入試ってのがあったんですよ(不倒城)

私の友人にも何人か後期合格者がいる。昔の科類に分かれていた頃の後期入試は確かにおもしろかった。特に文科三類の小論文は出題が意味不明で,私には解ける気が全くしなかった。上掲記事で出ている「パニックについて論ぜよ」も大概だと思うが,他に有名どころを2つほど挙げておく(過去問へのリンクを張ろうと思ったが意外にも落ちていなかったので面倒ながら問題文の概要を書く)。

・2001年:「大写しな人間の眼球」「薄暗い中で目が光っている牛」「不気味に微笑む目の大きな和風人形」の3枚の写真を見て「共通する主題を任意に設定し,自由に論ぜよ(2400字)。大写しの目は生理的恐怖を感じるし,牛の目は明らかにドナドナ的状況を予兆させるし,何も写さぬ人形の目もまた空虚だ。主題はどうしても「視線の恐怖」としか設定しようがなく事実上テーマは固定されているが,そこから2400字どうやって広げるのかが腕の見せ所。
・2003年:「笑い」「おかしさ」「滑稽」について論じた3つの文章を読んだ上で,アメリカン・ジョーク1つと,いしいひさいちの4コマ1本を読み,これらの論文&ジョーク&4コマが問題にしているポイントについて論ぜよ(2400字)。論文3つはしょっぱながベルクソンでびびるにせよ,要するに「滑稽な笑いとは逆転や緊張の崩壊に寄って生じる“ズレ”の知覚に本質がある(から哲学的な現象である)」ということを論じていて,アメリカン・ジョークも4コマ漫画もシュール系であることから,論じるべき内容はなんとなく理解できる。それを上手く言語化できるかということと,2400字にも引き伸ばせるかというところが鍵。

身近に90年代後半から2000年代前半の文三後期合格者がいたらこんなんが書けた人たちです。おののいてあげよう。実際,後期合格者は「いや,俺ら前期落ちた組だし」と謙遜するが,前期合格者組からするとこんな小論文書ける方が畏怖の対象ですよ。なお,理系だと数学が異常難易度で有名で,これはこれで一芸入試だったと言われている。有名どころは1998年の数学で,難易度調整の得意な東大としてはやらかしてしまった問題だとは思う。

一応当時の当人たちに聞いた話によると,「前期試験が終わったところでモチベーションが切れてしまい,実受験人数は倍率より低い」&「あまりにもお題がめちゃくちゃすぎるのに累計2000字以上の論述を要求され,答えが“とりあえず埋まった”人自体が少なすぎて,概ねそこで合否が決まる」という状態だったそうで,お題の解答の質というところでの選抜性は低かったようである。確かに,当時の合格最低点も低かった。そうであれば尚更,不倒城のしんざきさんもそうだが,「ありとあらゆるジャンルの文章」を書ける自信がある人にとっては,確かにセンター試験の足切りだけが怖い入試ではあろう。

ちなみに,上掲記事の制度変遷はやや誤解がある。後期試験が科類別に分かれていて,文三小論文のお題がおもしろかった時期は2007年度まで。2008年度以降は全科類進学枠となり,科類別ではなくなったどころか文理の壁さえなくなった。入学後は理三以外から選択できるが,多くは文一を選んだようだ。全科類進学枠になってからの後期試験の小論文は,科類別ではなくなったから冒険できなくなったということなのか,突如としてつまらなくなり,普通に「前期で紙一重で落ちた人」を拾っているような雰囲気になってしまった。

そしてこの後期入試が2015年度を最後に廃止となり,2016年度からは推薦入試に変わった。ただし,この推薦入試はかなり「とがった能力」の持ち主を明らかに求めており概要を調べてくれればわかるが,あれは決して「人間力的なものを見る」入試ではない。被推薦要件や口頭試問の内容を聞くに,性質としては以前の後期試験の小論文に近く,かえって先祖返りしたのではないかと思う。センター試験で課される得点の最低ラインも80%で,東大前期や以前の後期入試の足切りラインより明らかに低い。後期試験が廃止されて残念がっている30代以上の方々は,むしろ逆で,2008年の時点で残念がって,今は喜ぶべきと思う。まあ,求めている「とがり方」がめちゃくちゃすぎて実質倍率が非常に低いところまで先祖返りしなくても,とは思うけど。定員が100人で出願が例年170人とかですよ(合格が70人ほど)。あの推薦入試,とがっている自信があってセンター試験が安定して80%以上取れるなら,お勧め(このブログの読者にそんな高校生いないと思うし,今年度の締切終わってるけど)。  
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2018年01月13日

納得感の強い7人なのはすばらしい

・特集 瓦解する神社 (ダイヤモンド・オンライン)
→ このシリーズはなかなかおもしろかった。特に第3回,富岡八幡宮について,あの殺人事件が起きる直前の状況が解説されていて興味深い。
→ 第2回でも触れられているが,日本会議にお株を奪われていて政治的権力は弱く,財政基盤も弱いのに強権化したら,個別神社の離脱を招くのは当然の流れではある。このまま解体していただいた方が世のためであろう。
・富岡八幡宮でも起きていた 神社本庁との間にトラブル続発の原因は? (AERA)
→ とはいえ,離脱した神社の側にも相当問題があり,結局のところ「神道界全体のレベル低下が原因」だそうで,残念でしかない話。


・七賢人1人も知らぬ25% 佐賀市アンケート(佐賀新聞)
→ むしろフルネームで全員答えられた人が10%もいたのは偉業ではw。佐賀県の県内広報が上手くいっているのではないかと思うし,これ以上は高望みではないか。
→ ちなみに私自身は佐賀県と全くかかわりがなく(なにせ吉野ケ里に観光に行ったことがあるだけ),「七賢人」という括りもこの記事で初めて見たが,誰がいたっけ? と思い出してみてすぐに出てきたのは大隈重信と江藤新平と鍋島閑叟まで。副島種臣と大木喬任は知ってはいたが,佐賀藩かどうかの自信が無かった。佐野常民は名前は見た覚えがある程度,島義勇は全く知らなかった,という感じ。
→ ちなみに,『ロマサガ2』の七英雄は多分全員言える。『聖剣伝説LOM』の七賢人(6人しかいない)は立ち絵を全員思い出したが,名前はポキールとガイアとトートまでしか思い出せず。竹林の七賢は阮籍以外覚えていない。


・雪舟、幻の水墨画=うちわ型「倣夏珪山水図」(時事通信)
→ 確かに夏珪に似ていて,良い山水画だと思う。時事通信の記事だと画像が小さいが,他の新聞記事だともう少し大きいので,気になる方は検索してみると(じゃあなんで時事通信の記事にしたかというと,他の新聞記事は期間限定だったり有料配信だったりで文章が読めない)。
→ ところで,企画展が始まるタイミングと作品が発見されるタイミングが近すぎると思った人は良いところに気づいていて,見つかる・真贋調査→企画が立つ→(数ヶ月)→発見と企画展を同時に発表,くらいの流れかと思われる。「『19日に確認されたと発表した』とは言ったが『19日に確認された』とは言っていない」的な。


・料理バトル漫画で先に皿を出した場合の勝率(マンバ通信)
→ 思ってたよりも先攻が負けていた。
→ 先攻は濃い味の料理を出して審査員の舌を潰す戦略で勝つ手法,複数の料理漫画であるらしい。これだけジャンル全体として後攻が勝つというジンクスが定着してしまっていると,先攻に勝たせるには大きな説得力のある描写が必要になるのかもしれない。  
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2018年01月10日

正直最初に思い出したのは『ロマサガ3』だった

・そういえばこの間,ストロングゼロを初めて飲んだ。ぶっちゃけていうと9%の度数なんて大したことはないわけだが,それにしては14%前後はある日本酒や20%を超える焼酎と比べても強く感じるアルコールの味があり,アルコール以外の味があまりしない。度数自体は強いのが好きでウォッカとかウイスキーを好む私だが,ちょっとストロングゼロの虚無感は耐えられそうになかった。なるほど「強い」「虚無の味」。初見ではなんだそのネーミングと思ったが,意外にも名は体を表わしていた。多分二度と飲まない。


・「プリンセス・プリンシパル」のスパイ描写はどこがスゴイ? 軍事研究家の小泉悠氏に聞いてみた(アニメ!アニメ!)
→ 小泉悠氏が『プリンセス・プリンシパル』についてのインタビューを受けているというだけで十分おもしろいのがずるいw
→ スチームパンク的な設定で,動力は異様に発達したが情報技術を中心にその他は現実と比較して遅れているのは,「スパイが活躍できるように、逆算して考えられた世界観」となっているからという推測を読んで,極めて納得がいった。なるほど。


・ルワンダ大虐殺の記憶が政権交代を阻む(Newsweek)
→ ルワンダはカガメの統治の下で内戦の傷が癒えていっていて,IT立国として再出発しつつあるという評価だっただけに,近年の動きは月次ながら残念だ。民族別に評価が違うのは当然に見えるものの,大きな功績を残した点と残念な独裁者になりつつある点はどちらも正しくて,それらが拮抗しているからこそ民族の差による感情が,そのまま好悪に出てきてしまうという側面もあるだろう。ボツワナも現在の政権が独裁傾向であるし,いろいろとつらい。


・在職32年のカンボジア首相、さらに10年の政権維持に意欲示す(AFPBB)
→ 一方カンボジアもこれと。ヘン・サムリン政権の1985年から,暫定統治機構を経て,カンボジア王国になってからずっと首相か第二首相にいるのだから,確かに在職32年だ。
→ ついでに調べてみて気づいてしまったのだが,ヘン・サムリンの方もまだご存命でカンボジア政界にいる。ルワンダ同様,内戦の後遺症から覚めていない感じが。なんだかなぁ。ポル・ポトは当然として,ソン・サンもシハヌークも亡くなっているのに,親ベトナム派の要人は生き残っている。


なぜ「アルジャーノン」と命名? ダウン症治療に“光”の新物質 京大に聞く(ITmedia NEWS)
→ 上手く言おうとして一周してしまった事例にしか見えない。一応この記事では「研究グループも知っていると思うが、特別なぞらえたわけではない」という広報課のコメントが出ているが,嘘やろとしか思えない。どちらかというと語呂の良い略語から先に作って,後から復元したように見える(バクロニムというらしい)。まあ真相はさして興味ないが,「創作ではダメだったので,現実でリベンジするという意味合いなのではないか」というポジティブ解釈を発見したので,それで納得することにした。  
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2018年01月09日

SIR(スーパーアイドルマスターランキング)のP名数を数えてみた in 2017



集計のルールは今までと全く同じ。長期は正式にカウントするが,ランキング動画に登場する上位10作品のみのカウント。合作の場合,3人くらいまでのものはバラバラにカウント。参加Pが多すぎて収拾がつかないものに関しては「合作」でカウントした。除外とシリーズ最上位以外は参考記録としてカウントで,シリーズ最上位以外については200位まで集計した。


総評
大きく変わった点と,変わらなかった点がある。変わらなかった点は,引き続きデレステのノーマルPVが好調で,しいて言えばこれにミリシタのPVも加わった点。BMBYは本家が2年連続の1位を取ったものの,さすがに勢いが落ちてきていた。というよりも,12月になって突如として登場したジャガm@sシリーズに取って代わられたと言ったほうが正しいかもしれない。その他,例年上位常連だったドンパチマスターのgamm氏,サンユキのフュージョンPのランクインがほとんどなくなった。さすがに投稿されてから時間が経ったということだろう。

ptsは概ね昨年と変わらず。200位では約3430pts(昨年は約3300pts),100位で約6270pts(同約5850pts),50位で約11820pts(約10850pts),20位で約19910pts(約21050pts)といった感じ。ニコマス全体の人が減っていると言われる中,かなり健闘した結果ではないかと思う。しいて言えば20位以内が小粒で,1位の連覇のBMBY以外は全体的に昨年よりptsが低い。

ランクインした投稿者数は158人(合作除く)。昨年の170人から減少したが,例年150〜180人の間であるので標準的な人数である。そうそう,投稿者の名前が,2015年頃まではまだ「P」が目立ったものの,Pを名乗る文化も消えつつあるらしく,2017年になると「氏」ばかりであったことも付記しておく。

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2018年01月08日

非ニコマス系動画紹介 2017.5月下旬〜2017.6月下旬



労作。3つも描くとは。




アルティミシア城のガルガンチュアが,カウンターで前段階の顔を倒すと増殖するという謎のバグと,その検証。



テントバグによる新ルートの最終メンバーの発表と,新たに発見されたシャドウワープの解説。まーたシャドウか。



夢の共演。誰だ親子丼って言ったやつw



こっちはミライさん単体。



12.1話までのストーリーをまとめつつ。オツキミリサイタルが合うなぁ。



たった40秒の動画なのにじわじわ来る。
  
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2018年01月07日

2017下半期ニコマス20選

ポータルWiki

今回も参加します。

<総評>
今期も15個。本家デレステ・ミリシタは好調ながら,ニコマスは引き続き元気がない……と思いきや,ジャガm@sは昔のニコマスの雰囲気を感じた。こういうのでいいんだよこういうので。あとSideMのアニメはめちゃくちゃおもしろかったが,ニコマスにはさして影響がなかったのが残念と言えば残念。ネタ要素があまりないアニメではあったかな。

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2018年01月06日

C93参加記録

メンバーはいつもの頬付,ORATORIO,隙間坊主です。

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2018年01月01日

2018 賀正

あけましておめでとうございます。昨年はこのブログをご贔屓にして頂き大変ありがとうございました。今年もご愛顧の程をお願いします。

例年に従って,今年の目標を書き並べておく。(ここまでコピペ)


エロゲ・ギャルゲ:昨年は目標8本で,結果は4本であった。全然ダメであったが,最大の原因はドラクエ11に100時間費やしたことと,クッキークリッカーを本格的に再開して時間が吸われたこと,2巻の出版作業で時間が消し飛んだこと,仕事が忙しくなったこと等によるものであるため,今年は多少マシになるのではないかと思う。今年も目標は8本で。

美術館:例年の目標である20は達成。今年も20で。

旅行:昨年はGWに九州,夏に東北,12月に京阪神を旅行した。かなり大きく旅行した。実は前回の京阪神旅行では東方の聖地で行き残したところがいくつかあり(弘川寺や信貴山等),東北旅行で青森・秋田・山形に行きそびれているので,今年はこの2つではないかと思う。あとは昨年の目標で「もう一度ヨーロッパか,あるいはアメリカ東海岸には旅行したい」と書いているので,これが割り込む可能性はある。

ブログ:2017年は主に仕事が忙しくなった影響で,更新数が少なくなってしまった。2018年は,せめて2016年並には更新したい。とりあえず1・2月は受験世界史ネタで大きな記事を何個か書く予定。  
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