2019年06月19日

不安定な地位が余計に乱獲に影響してそう

・百田尚樹『日本国紀』コピペ論争と歴史通俗本の果てなき戦い(山本一郎,Yahoo個人)
→ 前者については的外れで,「正しさは別として百田さんの本を楽しく読みたいというファン向けの本」ではなく,「百田さんの本が正しいということにして読みたい人向けの本」になっていることが批判されている。この辺は司馬遼太郎でも塩野七生でも指摘されるところではあるが,後者二人は結果的に読者が歴史小説であることを忘れてしまって史実だと思いこむという構図であり,そもそも筆者自身が歴史家に喧嘩を打っている『日本国紀』とは問題の位相が全く異なる。
→ それだったら,この本より面白くてちゃんと歴史学の研究成果を織り込んだ通史の本があれば戦えるんじゃないのという話になるかもしれないが,問題はおそらく読者が感じている面白さは文章の面白さではなく百田さんの歴史観への共感であろうというところであって,であればどれだけ文章の面白い本を市場に出して打って出たところで勝ちようがない。これは大変に重い課題だと思われる。
→ それはそれとして,コピペの方は論外であるし,その後の開き直りもひどかった。本当にどうしようもない。


・韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について(防衛省・自衛隊)
→ 事件から三ヶ月ほど経って韓国軍がしらを切り続けて終わった事件であるが,非常に胸糞悪かった。本件では,韓国側が当日の天候が荒天だった等の情報を「情報筋」からのものとして流す→日本側がそれを否定する証拠を出す→韓国側が「軍の公式見解ではない」として流すというやりとりが何度か見られたが,仮にも同じ陣営側に属する国家間で行うやりとりではなく,不誠実である。自衛隊がこんな映像を公開することにもなろう。
→ 結局韓国側の主張は日本側が危険な飛行を行っていたの一点張りで,反論映像も新規の情報がほとんどなく。そもそもそこまで警戒してまで何をやっていたのか,本当に漁船の救助だったのなら物々しすぎて意図がわからない等の事情も一切明かされなかったのもフラストレーションが溜まった。


・タコで追う「西サハラ」問題―― 築地から“アフリカ最後の植民地”へ(Yahooニュース)
→ モロッコはタコの輸出が多いのは高校地理でも定番の問題だが,実は西サハラ産という話。リン鉱山や観光資源などもモロッコ人に握られている植民地状態とのこと。モロッコはマグリブ諸国の中では政情も経済も一番安定していて,ヨーロッパから見ると「優等生」なので,ケチをつけづらい。根本的には後処理をせずにさっさと撤退した旧宗主国スペインの責任が重いが,それも含めてヨーロッパ側は何も言いたくないのだろう。国際社会の無関心という意味では,現行の国際問題でも随一に解決しなさそうである。


・「ニコマスとはなんぞ」というお話。(Togetter)
→ ニコマスがニコニコ動画のある種のインフラを作った,という話は忘却されないように語り継いでいきたい。「「アイドルマスター」はニコニコ動画の遊び方を作った」とは,さすがありらいおんさんは上手いこと言う。動画制作・投稿のハードルを下げた役割は大きい。このTogetter,紙芝居クリエーターと歪氏の立ち絵に言及があったのは元架空戦記民として嬉しい。24時間,七夕革命,MSCにKaku-tail,元老院合作,9.18事件,3A07,何もかも懐かしい……  

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2019年06月18日

半年ぐらい前に話題になった忠臣蔵のあれこれ

・気付けば「忠臣蔵」の人気や知名度が無くなってた(らしい)理由の考察など(Togetter)
→ まあそうだろうなと思う。忠臣蔵をどのジャンルに入れるのかという問題はあって,講談物として清水の次郎長とか,あるいは小説の旗本退屈男とかと同じジャンルに入れるなら,まとめて人気が無くなったあるいはそれらに比べれば生き残っているという話にはなろう。が,私はどちらかというと大規模な史劇として幕末物や三国志あたりと同じくくりにあったものだというイメージがあり,そこから時代の流れに耐えきれなくなって消えていったかなと。
→ そういえば,この間群馬県に遊びに行った際に,同行者の一人が国定忠治を全く知らなかったが,別に驚きは無かった。もっとも,私自身も忠臣蔵も国定忠治も概要しか知らないが。こういう話は全般的に消えていきそう。
→ 実のところ,『水滸伝』も危ないだろうと思っている。「三国志」は安泰だろうが,『正史』が復権していて『演義』一辺倒ではなくなってきた風潮は,これらとの関係があるだろうと思う。


・忠臣蔵の映画化・テレビドラマ化年表(増田)
→ 関連して。今でも作品自体は作られているわけだが,それを若年層のほとんどが見ていないと言ったほうが正しかろう。実際,この一覧を見ても「47RONIN」以外,全く知らない。N=1でこの場で語ってもしょうがないので,この話題はこの辺で。


・「忠臣蔵」のはてぶのコメ欄が車輪の再発明だらけ(増田)
→ さらに関連して。この増田の冒頭にある通り,むしろこれだけ工夫に工夫を重ねた歴史があって滅ぶんだったら,なおさらどうしようもないのでは。(元)エロゲーマーとして一言コメントしておくと,『ChuSinGura46+1 -忠臣蔵46+1』(2013年発売)はシナリオが評価されていて,私は未プレイだが,エロゲーマー界隈ではかなり話題になっていたことは証言しておきたい。その時も忠臣蔵の元のストーリー知らんけど面白かったという感想が多かったので,6年前の時点で手遅れだったのではという。一方で,まだまだこういうリメイクの手段はあるという一例でもあるかも。そしてこれを知っている増田は本当に忠臣蔵コンテンツをちゃんと全部追っているんだなとちょっと感動した。
→ 上記の増田2件とも,ブコメが「相変わらずはてブ民は適当なコメント書きやがって」的な自省・自虐の風潮になっていたが,個人的な感想は逆で,上述の通りかえって知名度が下がってきていることが証明されてしまう材料であると思う。安直な自省・自虐はかえって反省した振りにしかなってないのでは,と思ってしまう。「反省だけなら猿でもできる」ももうかなり古いネタか(1993年頃らしい)。  
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2019年06月17日

慶應大は入試改革しないらしいよ

・2021年度 学部一般入学試験の新制度決定(上智大学)
→ これは私大文系入試にとってはかなり大きなニュースで,一言で言えば既存のマーク式・科目別の一般入試は全廃になる。新たな受験型は3パターン。
1.上智大が運営している英語4技能試験TEAPの成績と,筆記(論述)の科目別試験で決まるパターン。これは現行ですでに実施されている。
2.大学入学共通テストと民間英語4技能試験の結果,さらに総合型の記述試験の3つを使うパターン。
3.大学入学共通テストと民間英語4技能試験の結果だけで決まるパターン。
→ これが当ブログにどう影響するかといえば,例年大量の悪問・難問を排出してきた上智大の世界史が2020年を最後に事実上消滅するということになる。厳密に言えば上述1のパターンで科目別試験が残るが,あれは割と良質な論述問題が課されているので,大きな方向転換でも無い限り,あの企画に収録されることはないだろう。
→ 切り替わる年度は大学入学共通テストの初年度,つまり早稲田大の政経学部・国際教養学部と同タイミングである。世の中の方向性であるなぁ。しかし,早稲田大は9学部中2学部のみであるが,上智は全学部全日程であるから,規模が違う。何十年分かの伝統をすべて投げ捨てたのであるから,非常に大きな改革である。
→ そういうわけで早稲田大の政経学部・国際教養学部の時と全く同じコメントをしておくが,「ああいう質で続行するならこういう結末になるのも仕方がない」。今年度の例の企画で,粛々と最後の年度を見守ろうと思う。


・世界最古の水稲栽培文明を滅ぼした急激な寒冷化イベント(東京大学 大学院理学系研究科・理学部)
→ ちょうど良渚文化が滅亡した頃であるので,その滅亡要因が明かされつつあるのかもしれない。玉器の生産と豚の飼育で有名な文化であり,新石器時代最後の文化であるから,その空白の300年間に玉器や豚の飼育が拡散し,逆に青銅器が入ってきたとすると,なかなかの時代の変わり目である。


・【高山病】ロキソニンとかも頭痛に効くって書いてあるから試しに飲んで見たんだけどやっぱ意味ないの?(登山ちゃんねる)
→ 自分が富士山に登ったときの経験で言えば頬付からもらった解熱鎮痛剤がよく効いていたが,あれは高山病だったのか,劣悪な環境による睡眠不足だったのか,区別がつかない。その後なんともなかったことを考えると,睡眠不足だったように思う。今年登る際には,お守りとしてイブクイックデラックスを持参したい。


・【衝撃】炎上当事者が激白! エイベックスのまネコ騒動の裏側「毎日が地獄だった」(バズプラスニュース)
→ 非常に懐かしい話。無駄に盛大に燃えたのはかわいそうだと思うけど,いまだもって「ネットのキャラクターを盗作したわけでもない」から俺は悪くないと思っているのはすごい。法律的には盗作じゃなくても,キャラが誕生した経緯を考えると誰しもが盗作って考えるから燃えたんやで……そこまで考えて炎上させないのがビジネスなので,あれは失敗ビジネスだよ。  
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2019年06月16日

最近読んだもの・買ったもの

予定通り1月発売のものまではすべて消化できたので,一旦打ち止め。そのうち再開して,「最近」の記事名の通り発売一ヶ月後くらいのところまで追いつきたいところ。


・『火ノ丸相撲』24巻。大般若・鬼丸戦。序盤の星の取り合い状況,鬼丸・金鎧山戦。
→ 大般若は塩を大量に撒く模様。今なら照強がそうか。大般若は小兵ではないが,トリッキーな動きということで重ねたか。蹴返しの相打ちはあってもおかしくないが,現実の大相撲では不思議と見たことがない。塩のまきすぎで滑る現象は実際あるらしい。
→ 狩谷くんは相撲がとれなくなってアマチュア相撲から引退していた。小兵はケガが多くて短命になりがち,という火ノ丸には負えない役目を作中で負う形になったかなと。と同時に,小兵の技を使いだした火ノ丸とあわせて草薙には大きな心のダメージを与える形になった。この草薙の迷いは鬼丸戦を経て,場所の終盤まで回収されない長い長い伏線になるが,今はおいておこう。
→ 大典太,名勝負は製造するが自分は勝てないという。実際の大相撲でも若手が上位に来るとこうなりがちという典型的なパターンになっていて面白い。冴ノ山も長いこと三役にいるけどベテランと若手に挟まれて今ひとつイメージがわかない人感がリアル。その彼が今場所好調で大関とりになりそうというのもまた次の巻への伏線。
→ モンゴル人大関の金鎧山は,印象の良いモンゴル人と引き癖というところは鶴竜あたりがモデルか。豪栄道が大関在位ほぼ6年になる。名前だけなら「金開山」がいた。大関の地位に安住してしまって横綱になれない問題,現実の白鵬やこの世界の刃皇がいたらまあ仕方がないと思うし,ケガをしないように長くやるのもアスリートの一つの姿であるので否定できない姿勢かなと最近は思う。魁皇のレベルまでやると,(少なくとも私は)肯定できないが。


・『がっこうぐらし!』11巻。ランダル本社ビルからの逃亡劇へ。椎子さんが発症して脱落。
→ これも12巻完結が予告されている。確かに本巻は10巻からの展開をたたみにかかっている感じ。
→ くるみに打たれたのは特効薬ではなく抗生物質と栄養剤であることが明かされた。元から抵抗があったのでは,という結論に。鍵が学園の生活環境にあるなら,そこまで戻るのが物語としても綺麗である。
→ 最後のページに出てきたドローンは言い方といい学園生活部の名前を知っていることといい,残り数少ない生存者を考えても大学のトーコさんか。


・『U.Q.HOLDER』19巻。夏凜と雪姫の過去編と夏凜との仮契約,そしてキリエとの仮契約。
→ 夏凜と雪姫の過去編,エヴァちゃんが暴れ回っていてけっこう楽しかった。なんというか,『ネギま!』はこうじゃないとという感じがする。
→ 三太との仮契約までやっているのには笑ってしまった。夏凜の言う通り「さすがは21世紀,男女の垣根が低い」。
→ キスができないキリエとの仮契約は「お腹に浮き上がった紋をくっつけあって3時間」だった。何を言っているのか全くわからないこの感じ,赤松健は死んでなかったな。安心した。


・『るろうに剣心 北海道編』2巻。相楽左之助登場・合流。田本写真館訪問,函館山の戦いの回想,凍座と剣心の会話,樺戸監獄(集治監)襲撃。
→ 自分が見慣れただけなのかもしれないが,絵柄が昔のものにちょっと戻ってきているような。
→ おまけコーナーで作者自身が触れている通り,田本研造氏は実在。作者の言う「今後出すかわからない大きな身体的特徴」とは,右足を凍傷で切断しているらしいので,作中現在では義足なのだろう。土方歳三の写真を撮ったのも本当にこの人らしい。こういう史実の人物がサブキャラで登場するのは良い。
→ 三島栄次も軍人として再登場。今回はメインキャラらしい。斎藤一は湯の川温泉で療養中とのこと。湯の川温泉は明治16年時点では存在は知られていたものの,明治18年に大規模な温泉が見つかってからの本格的な開業だそうなので,療養はともかく,剣心一行が娯楽に行っても湯量が足りないかも。
→ 剣客兵器の目的は日清・日露戦争を見据えた自分たちの実戦経験だそうで……あまり大規模だとそのために日本の国力が落ちてしまって戦争に尾を引くのでは,とかまじめに考えだすと負けになりそうなのでやめておこう。樺戸には悠久山安慈がいたっぽいので,再登場は間違いない。
→ 樺戸は『ゴールデンカムイ』にも出てきた。あちらは本作の約25年後だが。そこで剣術師範をしていた人間といえば杉村義衛こと永倉新八。『ゴールデンカムイ』から見れば若かりし頃の姿が見られそう。彼が樺戸にいたのは明治15〜19年だそうなので,タイミングは完璧。  
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2019年06月09日

最近読んだもの・買ったもの

・『ゴールデンカムイ』16巻。根室の土方一行視点で人斬り用一郎編。樺太に戻って杉元一行のサーカス編。さらにアシㇼパ一行視点でウィルタ民族との接触,トナカイ狩。
→ 人斬り用一郎のモデルは普通に岡田以蔵か。幕末は詳しくないのでざっと調べたところの話でしかないが,司馬遼太郎の書いた岡田以蔵の影響下にあるのではないかという指摘はあった。それが正しいとすると,人斬り仕事をやっていて後に消された創作上の先輩というと志々雄真実がいる。本作ではむしろ土方が独立国を作ろうとしているが。
→ サーカス一行もまんまヤマダサーカスという元ネタがある模様。ただし,ロシアに渡航していたのは1910年なので日露戦争後である。ハラキリショーも実際にやっていて,「海外でやったときなんか観客が本当に私が死んだと思って警察が乗り込んできた」のは事実らしい。さらに紅子先輩の元ネタらしき人までいて,しかも彼女の手記がヤマダサーカスの一級品史料になっている。実際のヤマダサーカスはそのままロシアに居残って現地で解散,紅子先輩の元ネタの方はそのままロシアで別のサーカス団に入ったが,バクーに滞在中にロシア革命が勃発し……というところで,気になる方は以下リンク先へ。本当によく調べて描かれている漫画やでぇ……
→ ウィルタはツングース系だそうで,少数ながら南樺太にも住んでいて,戦後北海道に移住した人々も極少数ながらいたようだ。生業は作中の通りトナカイ牧畜と狩猟・漁労。


・『乙女戦争』11巻。シャールカのボヘミア帰還,「華麗なる騎行」の実態,最後の成功となったバルト海遠征。
→ 12巻での完結が予告されており,雑誌連載ではすでに完結している。年号を見ても本当に終わりが見えてきた。特に12巻は史実から言ってあとはフス派が解体する一方なので,ここがフス派の,というよりもターボル・オレープ派の最後の輝きと言える。
→ 中世のレベルとはいえ一国まるごとの経済封鎖となると,やっぱり効くんだなと。食糧難から略奪しか道がなくなり,遠征に出かけると軍事力はあるから大勝するが,当然周辺地域からの反感は激しくなり,抵抗も次第に強くなるという悪循環で,ワゴンブルク戦術は完成されてはいるが,ヤン・ジシュカも死んでいるから革新もなく,典型的なジリ貧になっている様子が描かれる。こうなると和平を考えざるをえないというところで,次巻に。


・『乙嫁語り』11巻。スミス視点でトルコ滞在,タラスと再会,再び中央アジアに向けて出発。
→ 何も考えずに読むと「タラスさんがとにかくかわいかった」だけで終わってしまう巻。だがそれがいい。
→ カルルク・アミルのご一家がどこにあるのか問題,長らく様々な推測がなされてきたが,この巻で「ブハラ近郊」としれっと正解が出てきた。さらっと流されすぎていて一読では気づかなかったぞ……作者としてやっと地理的な設定が固まったのかもしれない。時代も前巻でやっと1860年代で固まったし(多少の矛盾はあれど)。
→ 1860年代のカメラが登場。知ってはいたけどめちゃくちゃ大変である。そりゃこんなもの持って,女性連れて紛争が起きるかもしれない場所に戻ろうというのだから正気の沙汰ではない。動揺しないどころかやり方を覚えてしまうアリさんがさすがに見聞が広い。
→ アンカラに滞在しているホーキンズさんは軍属でクリミア戦争からずっといる人だった。スミスとはパブリックスクールからの付き合いだそうだが,さすがにそれがどこかまでは設定されてなさそう。
→ ホーキンズの手伝いをしているニコロフスキはクリミア戦争従軍時にホーキンズの舞台の案内をしていて,命を助け合った仲だった。あまりトルコ人っぽくない名前に聞こえたが,「ニコロフスキ」でぐぐっても『乙嫁語り』と作曲家しか出てこず。「Nikolovski」でググってみるとマケドニアに多い姓だそうで,なんとなく納得した。この人もまだまだ広げられるストーリーがありそう。「マケドニア出身」「すでに娘はすべて嫁いでいて,妻は親戚が多く不自由しない」「クリミア戦争時には通訳・案内としてイギリス軍に従軍」「テヘランの辺りまでなら友人がいる」……何者なんでしょうねこの人。  
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2019年06月02日

最近読んだもの・買ったもの(Trinity Field他)

・『ブラックラグーン』11巻。
→ ロックがフォンに指摘されて,「他人の物語に介入して,自分の納得する形に流す自由」に快楽,人生の目的を見出していることを自覚し,さっそくフォンの物語に決着をつける回。9巻ではロベルタ御一行にそれを悪党と言われて凹んでいたが,フォンに指摘されて振り切れたようだ。
→ 売春宿,まさかのインターネットが通じていない。そう,ここは2010年代のタイではなく,1990年代のタイなのである。10巻の感想で「IT環境の遅れに妙なノスタルジーがある」なんて書いていたが,まさか本当に作中のギミックとして重要な要素だったとは。アフリカとかニューギニアに逃亡しろと言われたジェーンが「嫌よそんな場所! ネットどころか電気もないじゃない!」と言っているのも面白い。こう30年近く前と比較すると,世界は発展している。
→ エダが豪快なホームラン(ただし球は人)を決めながらつぶやいていたトニー・グウィンは実在のメジャーリーガーで,サンディエゴ・パドレスに所属し1990年代なかばに首位打者4回の大活躍をしていた。


『火ノ丸相撲』23巻。鬼丸・刃皇戦とその後。
→ 死にたがりでは刃皇に届かず,道を誤っていることがはっきり示された回。比古清十郎も緋村剣心に同じこと言ってた。ジャンプの伝統である。死ぬ気でがんばるつもりで,実際には大事なことから目をそむける口実になってしまっていた。力士生命が短命になりがちな身体だからせめてその短い期間でもきらめきを,というつもりがかえって力士生命を縮めてもいいという口実になってしまっていたので,なるほど死にたがりである。
→ レイナさんとの首投げ未遂後,「何かが解決したわけじゃないが,心が少し軽くなった気がした」と独白しているが,実際何かが解決したわけではないので,この辺は24巻以降に。しかしまあ,レイナさんはいつ首投げできるのか……pixiv等の二次創作ではすでにあるがw。


・「Trinity Field」。
→ 私的アイマスソングランキング1位を塗り替えた名曲(これまで1位だったのは「細氷」)。これぞトラプリという曲で,センターは加蓮ながら,曲も歌詞も仰々しくて実に「蒼い」。というかTrancing Pulseよりもさらに蒼い。さすがは皆大好きElements Garden。渋谷凛の蒼歴史がまた一つ増えたともいう。そもそも設定上,凛が作詞作曲に携わったという設定で,実際コミュで加蓮に「青くなりそう」って言われてて笑った。
→ 一番好きな箇所は1サビが終わった後,2メロが始まるまでの間奏の展開。「え,まだここに重ねるの?」と思わせる無意味なまでの仰々しさといったら。歌詞通り,どこまでも上っていく雰囲気がする。
→ こうなるとセンターが奈緒の曲もほしいところだけど,さすがにしばらく後だろう。また歌詞に過去・現在・未来って出てきそう。


・『ダンスインザヴァンパイアバンド ASO』1巻。
→ Age of Scarlet Orderの略。不思議な打ち切られ方をしたと思ったら復活した。不思議な打ち切られ方だったのでリカバリーが大変そうで,この巻はほぼそれに当てられ,空白期間の状況説明に当てられた感じ。バンドは男の真祖に破壊されて洪水により崩壊。ヴァンパイアの跳梁によりアメリカは狂乱の反吸血鬼国家へ。それをだらだらと説明するのではなく,アメリカの吸血鬼の脱出・救出劇として具体的なエピソードに仕上げたのは上手いところ。
→ ミナ様とアキラは再び南米,クレイドルと呼ばれる遺跡・地下都市へ。ミナは明晰夢の中で先祖たち(と偽ミナことケティ・モーリス)に会い,アキラはケティを探して疾駆,現れる新たな謎の敵,というところで次巻へ。  
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