2019年07月27日

『天気の子』感想・批評

ネタバレで思いついたままにだらだらと。

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2019年07月22日

小兵力士活躍の場所,とまとめておきたい

大関4人全員休場という珍事をはじめとして,今ひとつ盛り上がりに欠けてしまった名古屋場所であった。大関4人は,事前に貴景勝が休場を届け出ていて,栃ノ心が休場するのはケガの状態から言ってわかるところ,豪栄道もともかくとして,高安まで休場したのはなにか呪われていたのでは。それよりは,9勝にケチをつけるのもなんだが御嶽海が9勝止まり,あとは遠藤が10勝したくらいで,関脇以下の前頭上位陣がぱっとしなかったのが今場所が中途半端だった最大の要因であろう。世代交代が叫ばれる昨今の大相撲ながら,今場所に限れば時が止まったか戻ったか。相撲自体も全体的に淡白であった。見応えがあったのは三賞を受賞した4人(炎鵬・遠藤・照強・友風)くらいで,今場所の三賞は妥当も妥当である。

それでも両横綱に罪はなく,ある種の「つまらなさ」をするのが横綱の役目であるから,見事に果たしたとは言える。鶴竜が7場所ぶりに優勝したのは好材料で,素直に喜ばしい。完全な不覚により1敗したが,今場所の鶴竜は白鵬を差し置いて完全に一人だけ別格の強さであった。それだけに全勝優勝してほしかったところで,返す返すもあの1敗が惜しい。いや,あれは友風を褒めるべきではあるのだが。これで鶴竜の力士寿命は大きく延びた。休場を挟みつつもあと1年はとれるだろう。東京五輪にたどり着きそうである。白鵬はどうなるか。


個別評。優勝した鶴竜は白鵬を彷彿とさせる省エネ相撲で前半をやり過ごしていたが,これは意図的だったという報道を読んだ。年齢的にどうしてもスタミナ不足との問題には直面してしまい,腰のケガもあって,そうせざるをえなかった。しかし,かえって吹っ切れて動きが軽快で,この人になまくら四つという言葉は通用せず,右四つだろうが左四つだろうがかまわず寄っていき,ここぞで投げるという判断も的確であった。要所で引いて呼び込む悪癖が見られず,決まるタイミングでしか引いていなかった。残したスタミナで千秋楽は白鵬と長い相撲をとっての完勝,見事な15日間戦略としか言いようがない。白鵬は休場明けであったが,この人に休場明けのブランク云々というのはかえって失礼な気がする。調子は近年の好調ではないときの白鵬という様子で,鶴竜とは対照的に前半の相撲で省エネ相撲に失敗し,長い相撲がそこそこあってスタミナを使い切った。高安休場の不戦勝が無ければもっと崩れていたかもしれない。その不戦勝の翌日12日目,御嶽海相手に長い相撲になったのも影響した。千秋楽の鶴竜戦が熱戦だったが,それ以外にはあまり見どころがない。

大関陣……は高安以外に論評しようがない。高安は本当に不運で,7勝目というタイミングだったのが不幸中の小さな幸いだっただったか。奇しくも左腕で,これが使えない中の戦い方は稀勢の里の先例があって乗り越えられたのかもしれない。勝ち越したその日に休場したのでほっとした。

三役。御嶽海は二桁に乗せてほしかった。ようやく初場所のケガが癒えてきた様子ではある。押しているうちは強いのだが,守勢に回るとどうしようもない相撲になるので,勝った時の相撲ばかり印象に残り,終わってみると9勝という数字は「こんなに負けてたっけ」と印象とのズレが強い。阿炎は勝ち越し。こんなに早く上位定着するとは予想外だった。先場所評に「思っていたよりもかなり早く上位に定着しそう。」とは書いたが,むしろ1場所で小結勝ち越しとなるとは。変な引き癖が修正されつつあり,諸手突きから一気の出足で押し込んでしまう場面が増えたのは好材料。竜電の大敗は意外だった。ケガの様子はなく圧力が減じた印象もないが,頭を付けてもろ差しか左差しという得意の形にさせてもらえず,突き放されて負けるパターンが多かった。対策されている。

前頭上位。朝乃山は負け越したが,平幕優勝翌場所によくあるパターンからして大敗する可能性もそれなりに高かったので,7勝にまとめたのはむしろ好印象である。やはり右四つになれば強いのだが,なかなかそうさせてもらえないのが上位陣の相撲といったところ。遠藤はいつもながらに見事な技巧。毎場所勝ち越しさえすれば技能賞をあげたいくらい。そしてやっとその技巧に身体が追いついてきた感じもする。明生は4勝止まりの大敗ながら悪い印象がなく,理由を考えながら今場所の相撲を振り返ってみると,前に出る相撲が多くよく攻めていた。引かれたり土俵際で投げられたりの逆転負けを喫していて,詰めを厳しくしてほしい。琴奨菊は14日目に会心の相撲で白鵬を2敗とする活躍を見せたが,むしろ今場所はそれ以外の相撲は光ったものがなかった。

前頭中盤。友風の謎の勝ち越し力。いまだにデビュー以来負け越しを知らない。かなりの勝ち星をはたき込みで稼いでおり,押し引きのセンスは抜群に良い。13日目の鶴竜戦は特に見事で,横綱初挑戦,しかも押し込まれていながら隙をついてはたきを決めた強心臓も素晴らしい。インタビューを見ていると,彼の場合はビッグマウスというよりも物怖じしない性格なのではないかと思う。問題は上位陣は引いてもなかなか落ちないので,そこに対応できるかどうか。来場所がいよいよ上位初挑戦になるので,まだ勝負の女神が微笑んでくれるか。阿武咲は場所ごとにパワーが落ちているような。大きなケガではないのならかえって心配である。

前頭下位。負け越し力士ばかりが目立ったので,以下は概ねその批評になる。錦木はまさかの負け越しで,今年の初場所あたりまでの覚醒状態はなんだったのか。引っ張り込む力は強いのだが,小手投げをうてる状況になる前に土俵を割っていた相撲が多かった。栃煌山もこの番付で大敗。寄る年波に勝てないか。輝も一時期修正されていた腰高が戻ってきてしまい,脆かった。千代丸も腰高で,せっかくの太鼓腹が死んでいた。

なんかもう散々な状態の前頭下位で光っていたのは小兵2名で,しかも対照的な取り口である。炎鵬は小兵らしい小兵で,とにかく動き回って撹乱して潜り,深めに差して相手の動きを止めるか前みつをとって寄っていく。ただし,気負いすぎて往時の日馬富士のような自滅や,形を作ったはいいが非力で攻めきれず逆転を食う場面があり,その辺りが課題。もう一人の照強は小兵らしい低さに小兵らしからぬ前進力を兼ね備えた取り口で,今場所これが開花した。あの低さであんなに押し込まれると対処が難しいだろうし,小兵らしい脆さもないのでこれは手強い。それでも先場所までは潜らせなければ何とかなったが,今場所は潜れなくてもそのまま押し込んでくるし,引いても落ちないので勝ち星が12まで伸びた。来場所はまだ上位までいかず中盤あたりの地位に留まりそうなので,来場所もまた大勝してもおかしくない。炎鵬・照強・石浦の小兵勢では(琴恵光も入れてもいいかもしれない),現状なら照強が見ていて思わぬ相撲になって一番面白い。


安美錦が引退した。頭から当たって一気に押していく相撲と,変化といなしを多用して何とかまとめてしまう相撲の二系統があり,しかも押し相撲に対しては土俵際で絶妙ないなして逆転する「土俵際の魔術師」でもあったから,対戦相手からすると大変に苦労する”曲者”であった。取材に対するコメントも面白いものが多く,土俵外ではあるがこれも曲者感が増す理由であったと思う。安美錦が苦手という力士は多く,上位では琴欧洲が有名で,琴欧洲は何度安美錦に優勝のチャンスをつぶされたことか。稀勢の里も大関昇進前はカモにされていた。良い壁だったと思う。一方で真正面から押し負けたり,策士策に溺れる場面もあり,また捕まるとわりとどうしようもなくなるという欠点もあった(一応右四つならとれたが,左四つは完全にどうにもならなかった)。この辺が上位定着はできても大関とりとは一度も言われずに終わった要因と言えよう。

非常に長命な力士で,貴乃花の現役最後の取組相手となったことは有名。驚くべきことにまず右膝,やや時間があいて左膝を負傷し,両膝を故障してからが長かった。2015年頃になると加齢もあってさすがに押し込む力はかなり落ちていたが,土俵際の魔術師っぷりは衰えることなく,そこから4年も取るとは思っていなかった。普通は引き技を多用すれば力士寿命が縮むものだが,それは失敗した際に不自然に土俵から落ちるためであって,成功が続きさえすればそんなこともないのだというレアケースと言えよう。両膝が故障しているはずなのに土俵際で強いので,魔術としか言いようがなかった。記録としては,関取在位117場所は史上最多タイ(魁皇と並ぶ)。年長関取は引退時点の40歳7ヶ月で史上2位。あと3ヶ月で旭天鵬を抜いて1位になっていた。通算出場1805回で史上3位。幕内在位97場所でこれも史上3位タイ。幕内出場回数1399回で史上4位。錚々たる記録である。しかし何より,倒した横綱は11人,倒した大関は64人というのが,最も偉大な記録かもしれない。お疲れ様でした。  続きを読む
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2019年07月16日

最近読んだもの・買ったもの(『好きな子がめがねを忘れた』他)

・『東方外來韋編』2019春。
→ 冒頭は「今さら聞けないスペルカード特集」。「ボスの弾幕にパターン別に名前がついていた方がキャラクター性を持たせやすい」という理由でスペカが生まれたのは割と有名な話だが,そこから始めて神主のスペカに関する考えを聞いていく回。薄々わかっていたことだが,スペカが増えすぎて神主自身も法則とかよくわからなくなってきたというのがよくわかるインタビューになっていて,東方ファンなら必見の記事になっている。意外だったのは,古明地こいしの弾幕は心理学ネタが尽きて名前を決めるのに窮したとのことである。心理学はそれほど強いわけではないようで,「夢枕にご先祖総立ち」はそのような苦闘の産物だったのかもしれない。
→ 過去作特集は東方神霊廟と東方心綺楼。神霊廟は「風神録から星蓮船で宗教三部作になってしまっているが,閉じたくない」ということで三部作でまとめるのをやめたという点で本人の中では転換期の作品だったとのこと。ただ,プレイヤーからすると心綺楼までで宗教五部作になったという感覚ではあり,宗教シリーズ長いなという不満も当時けっこうあった気はする。やはり三部作くらいがちょうどいいのかもしれない。リリースの間隔にもよるだろうが。本人が指摘しているが,確かにドラクエが7で三部作というまとまりをうっちゃったのは同じ現象と言えそう。花映塚は正規ナンバーながら特殊なので除けば,神霊廟はWin7作目に当たる。長いシリーズを三部作で区切ろうとすると,制作者としてはその辺りが限界になってしまうのかも。


・『となりの吸血鬼さん画集』。
→ どのページを開いてもかわいい以外の感想がわかないすばらしい画集。まさかアニメ化すると思わなかったし,画集が出るほど露出が増えるなんて。意外と世間の需要を掘り当てたのだなぁ。





・『好きな子がめがねを忘れた』1巻。
→ タイトルの通りの漫画。ド近眼のヒロインがとにかくメガネを忘れたり壊したりして,ずっとジト目になり,近眼由来のボケをかましまくり,主人公が振り回されるという展開で話が続く。こういう漫画はヒロインがかわいいと思えるかどうかで価値が決まるわけだが,ジト目もボケの方向性もツボに入ってしまったので完敗である。私と好きなキャラの方向性がかぶっている人は信じて読め。
→ ところで1巻末でコンタクトを買ってしまったのだが,これ今度からコンタクトを落とすようになるのか。あるいは合わなくてやめるパターンか。





・『私の初めて、キミにあげます。』
→ 西沢5醒司埆検ほとんどの作品がpixivで見られるが,日々の感謝をまとめて払う感覚で買った。基本的に女性の側からぐいぐい来る漫画が多い。作者本人がめちゃくちゃ美女ということで話題になった。女性ということは前から公表していたはずだが,あまり知られてなかったか(ちなみにこんなTweetもある)。作者の性別と作品の価値は別というのは当然のことであるが,作風が作風なのでギャップが面白いというのは本作の美点として数え上げても問題にならないだろう。


  
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2019年07月15日

最近読んだもの・買ったもの(『エーゲ海を渡る花たち』他)

・『エーゲ海を渡る花たち』1巻。
→ 期待の新作歴史漫画。本作もCall of Historyに記事がある。あらすじは,クリミア半島から複雑な経緯を経てフェラーラにやってきた女性オリハは,離散した家族――とりわけ妹を探してクレタ島を目指していた。好奇心旺盛な大商人の少女リーザはオリハの妹探しに同行し,2人の長い旅が始まるという内容。1巻はフェラーラからヴェネツィア,ポーラ,スパラトまで。エーゲ海どころかまだアドリア海も出ていない。2巻でもまだクレタ島までたどり着いているかどうかだと思われ,本格的なストーリー展開は3巻辺りからか。意外と気の長い漫画になりそう。
→ 作者が巻末で「この時代のヴェネツィアとか大好きだから選んだけど,ルネサンスでも中世でもない狭間の時期で中途半端」と自虐しているが,どっこい『ヴラド・ドラクラ』は完全に時代が重なっていて,直前の時代ではついこの間まで連載していた『乙女戦争』とジャンヌ・ダルクを描く『レヴェレーション』が中世の終わりを高らかに謳い上げ,少し後の時代には『チェーザレ』がルネサンスの開幕を祝いでいるから,この辺の歴史漫画を追っている人たちにとっては中途半端でもなんでもないだろう。また,作者の言う通りレヴァント貿易の全盛期(の最後)を描くにはこの瞬間しかないというのは同意できるところで,またイタリア=ルネサンスがきらめき始めるのと重なるのも案外この数十年間しかないと思われる。まさにフェラーラが旅の起点たる理由であり,見事な選択である。
→ ちなみに,本作は1巻1話で「15世紀半ば」と書かれているが,4話で「メフメト2世が内地で敗北し,次にペロポネソス半島(ヴェネツィア人はモレア半島と呼んでいたので作中の表記はこちら)を狙っている」という会話があるところからすると,メフメト2世がフニャディ・ヤーノシュに敗北したベオグラードの戦いの1456年以後,モレアス専制公領が滅亡する1458年より前と推測できる。こういう歴史漫画では,序盤でこんなに年代を細かく推定できるのは割と珍しい。
→ もう一つ作者の幕間コメントに補足しておくと,リーザの服装上のモデルになったベアトリーチェ・デステはこの人。確かに。
→ また巻末で作者が「いわゆる『優しい世界』になっているが,リーザが強運の持ち主であるため」と補足している。本作に血生臭さは似合わず,ゆったり旅行していってほしいところ。

エーゲ海を渡る花たち(1) (メテオCOMICS)
日之下 あかめ
フレックスコミックス
2019-02-08




・『アルテ』10巻。イレーネの肖像画作業開始。
→ アルテが傑作の肖像画を描くために相手の人格に踏み込み,相手のややこしい事情に踏み込むために腹をくくる覚悟を決めた回。芸術家にもある種のエゴは必要で,そのエゴを手に入れた回とも。
→ 自称イレーネの正体は本人の告白によりカタリナ・デ・アウストリアで確定した。前回立てた予測があっていて嬉しい限り。


・『ゴールデンカムイ』17巻。キロランケ一行の樺太国境越え,目的地のアレクサンドロフスク・サハリンスキーに到着。杉元一行は吹雪の中で灯台に救われる。
→ キロランケとウイルクの正体が判明。アムール川流域の少数民族出身の,アレクサンドル2世暗殺の実行犯であった。そりゃロシアは絶対許さんわ。史実ではポーランド人のテロリストに爆殺されているが,本作ではここを置き換えている。指導者のソフィアはモデルがいて,実際には処刑されている。
→ しかしそうすると,キロランケはかなり年齢がいっているか。1881年時点で10代後半とすると,1905年時点で40歳になる。他の面々とは10歳近く離れていそう。
→ 17巻までで明らかになった尾形のキャラ造形については面白い評論があるので,そちらにリンクを張っておく。・【「ゴールデンカムイ」キャラ語り】尾形百之助のスケープゴート感が、読んでいてしんどい。(うさるの厨二病な読書日記)  
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2019年07月14日

『ヴラド・ドラクラ』1・2巻

言わずとしれたワラキア公国のヴラド3世の伝記的歴史漫画。どうしても吸血鬼伝承寄りのファンタジックな展開になってしまいがちな素材であるが,本作は非常に真っ当な歴史漫画をやっている。すでにCall of Historyでも書評があるが,ハンガリーとオスマン帝国という大国に挟まれ,国内は大貴族が専横を振るい,ドラクレシュティ家は父が建てたばかりの新興王朝で王権は未成熟と,考えうる限り最悪と言っていい状況から中央集権化を目指す若き英主の苦闘を描いているのが1・2巻の展開になっている。ここまではその描写が面白く,2巻末時点で国内統一の内戦がクライマックスに向かっている。これが終わればオスマン帝国のメフメト2世との大戦争になるが,期待が持てそうだ。結果がわかっていて不明点が多いだけに,創作の余地が多いことが本作では上手く働いている。いかに不自然ではない創作を織り込むかが腕の見せ所になる。

時代は1450年代であるのでフス戦争終結から約20年後,そう,『乙女戦争』とはかなり時間が近い。フニャディ・ヤーノシュの子孫,マーチャーシュ1世もハンガリーを代表する大貴族,そして君主として本作には大きくかかわってくる。同時代と言えば最近連載が始まった『エーゲ海を渡る花たち』は本当に完全に同時代で,場所も近い。この辺りの歴史漫画はあわせて読むと,オスマン帝国が当時の東地中海の歴史を大きく動かしていたのがより立体的に感じられて面白いだろう。

ただ,少し気にしているのは,ヴラド3世は国内貴族の大粛清による中央集権化と,オスマン帝国との戦争に奇跡的な勝利をもたらしたところまでは紛れもない英主であるのだが,末路は割とぐだぐだである。どうするんだろうというか,上手くごまかして処理されることを期待する。いっそのこと,1462年の段階でブダで暗殺されて終わるくらいのフィクションを入れてもよいのかもしれない。

なお,しれっと「ドラクレシュティ家は父が建てたばかりの新興王朝」と書いたが,厳密に言うとちょっと違うので補足しておく。ワラキア公国はハンガリーの内政混乱を契機に自立したバサラブ1世を初代としており,この血筋をバサラブ朝と呼ぶ。以後,ワラキア公国の君主は16世紀末まで一貫してバサラブ朝である。ただし,実態としてはバサラブ朝はバサラブ家と,その傍系のダネスティ家とドラクレシュティ家の3つの君公家に分裂しており,先代の君主が亡くなった時点で貴族により構成される評議会が招集され(ただし実際にはハンガリーとオスマン帝国の意向が強く反映される),評議会の指名で3王家の中の適任者が次の君主に選出されるという選挙王制をとっていた……というのを調べて知ってどう考えてもポーランド以上に内乱と外国干渉の温床にしかならないでしょこれという感想を持った。実際にヴラド3世の父,ドラクレシュティ家から初めて選出されたヴラド2世からその長子ミルチャ2世,ダネスティ家のヴラディスラヴ2世,そしてヴラド3世の即位まで全てにハンガリーとオスマン帝国が干渉している。2巻で貴族たちが「仕えた君主は7人は下らない」と言っているが,確かにヴラド3世以前の50年で即位した君主は9人おり(作中の説明では1世紀に32人となっているが対立公や僭称も含めるとそうなるのかもしれない),3王家入れ替わりで長らくかなり混沌とした政情であったようだ。また,2巻でハンガリーに亡命中のヴラディスラヴ2世の息子ダン・ダネスティがクーデタを画策しているが,経緯を考えるとヴラド3世の正統性もかなり怪しく,ダン・ダネスティの陰謀にも一定の正統性がある,というのを知って2巻を読むと,また違った読後感が味わえてよいかもしれない。



  
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2019年07月07日

高校世界史だと武威の人というイメージはわかない

・ニコ動が不振の記事とブコメ読んだけど(増田)
→ 概ねこの増田に同意で,ここ1・2年ほどのニコ動は言われているほど画質も悪くないし重くもない(ただしプレ垢に限る)。改革が遅すぎて客が離れたよねとは言えるけど,焦点のずれた文句も増えたという印象。逆にYouTubeはタグが無いことに起因する検索性の悪さ,ランキングが無いことに起因する特定のチャンネルを追う以外の新規の動画の発掘の難しさがネックで,個人的には圧倒的に軽いことくらいしかニコ動に優れる美点が無い。
→ ……とこの増田時点の半年前から1ヶ月前までは言えたのだが,そのニコ動の強みであるタグとランキングをこの6月末で半分くらい投げ捨てた改悪を行ったので,私的にはかなり困っている。あれは実装されてみて改めて思ったが,ニコ動の自殺でしょ……過去ランキングの非表示と,マイリスト単体でのランキングの廃止,カテゴリ廃止の判断は全く意味がわからなかった。案外,これでユーザー主導のタグ別の週間ランキングが復権するのかも。この辺は該当するニュースに触れる時にまた何か書きたい。


・イングランド王ヘンリ2世と武威の王権『アンジュー帝国』(Call of History)
→ 間違いなく超有能君主だったんだけど,「帰属する諸侯が自立した緩やかな連合の上に武威で君臨する象徴」から脱せなかったという時代の天井に阻まれた人,かなと。その点でフィリップ2世あたりと比較すると有能とは言えても稀代の英雄と呼ぶには弱い。さすがに息子に反乱を起こされすぎで,それがそのまま帝国の瓦解にもつながってしまった。同じ婚姻政策と称号の兼任で領土を広げた家系というと当然ハプスブルク家があるが,さすがに時代が違いすぎるので比較は難しい。逆に言って,ハプスブルク家は個人の武威を示す必要がなく,その程度には封建社会が崩れていた点で時代が良かったとは言えようか。
→ まあリチャード1世が十字軍の夢を追わなかった世界線とか,ジョン王が無茶なことをせずに近年再評価されている行政手腕だけを発揮していた世界線ならアンジュー帝国が維持されえたかもしれないので,あまりヘンリ2世一人を責めるのもかわいそうか。


・悪意に負けない、強い文化を 「マシュマロ」が匿名と安全の両立を目指す理由(マネ会)
→ 自分では使っていないけど,理念はわかるサービス。匿名になると途端に悪意が湧くのは人間なので仕方がないのであるが,インターネットの利便性を損ねていると思う。批判はあってもいいが,悪意なんてものは全く無くてよいのだ。そこに立ち向かうのは応援したい。
→ それはそれとして「これはネットスラングである「マサカリを投げる」という表現」が通用する文化圏は極狭いのではw。まさかそれがサービス名に影響しているとは,当時マサカリを投げていた人たちには全く思いもよらないところだろう。  
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2019年07月06日

ニコ動の動画紹介 2018.7月中旬〜7月下旬




FF8でノーダメージかつその他もろもろという縛りプレー。完走済。HPJ(という名の手軽な特殊技)・カードバトル(という名の大量に精製される魔法)・デュエル・ショットも縛っているので,過剰な縛りというように見えて,実にいい塩梅だった。これでオメガまで倒しちゃうんだからお見事。FF8も存外懐が広い。強烈に縛ったらカードバトルするしかないというわけでもないというのが収穫だった。



プレイヤーの入力にかかる時間によるタイムラグについて。バーサク状態の味方や敵はこのタイムラグが無いので動きが2倍近く早いという検証結果に。ATBが生んだ妙な間ではあり,作品ごとでこの癖が違ったりする。




橋タイマーの発見。この時点では崩壊後ワープの手段としての有効活用しか見つかっていなかったが……



テント使用中の暗転マップからイベントスキップでなぜか魔大陸イベントを起こせるバグが発見されてしまい,橋タイマーでイベントスキップが可能なことから,またしてもFF6の研究はとんでもない展開に。役に立たないと思しきバグでも見つけておけばあとで活用可能になるという「基礎研究の重要性」がはからずも立証されるミラクル展開。





上半期20選選出。久々に人力ヴォーカロイドが来たと思ったら,5人分。ここまで来たかぁ。



下半期20選選出。よしのんがかわいすぎた。



いつものたらひさん。よしのんがかわいすぎた(2回め)。



今どきのニコマスでは珍しい,4動画にまたがる大規模合作。終わり詩P・神風P・妖狐P・ゆっぴP・こんにゃくP・トカチPetc.と豪華でちょっと懐かしめのメンバーが多かった。



下半期20選入れ忘れ。文脈を全然知らなかったのだけど,知ったら極めてエモい動画だということがわかった。よくぞ完全再現した。漫画から現実に輸出され,動画に再輸出されるなんてすばらしい。  
Posted by dg_law at 12:00Comments(0)

2019年07月05日

代わりに『ヤマノススメ』の聖地巡礼がんばってるから……

・流行りの学校教育プログラム「中学生が大学教授にインタビュー」に対して大学教員から「搾取やめて」の声。落とし所はどこにあるのか(Togetter)
→ こういうの,うちの中学では大学教員はなかったけど,どこかしらの企業なり官公庁に電話取材したり直接訪問したりするイベントがあったので,何十年か前から存在しているのだと思う。今考えると,この大学教員の方のおっしゃる通りであるなと。確かに中学生にとっては見知らぬ大人に電話をかけてアポを取るなり教えを乞うなりするのは良い経験ではあるのだが。ただ,うちの中学は教員が「こういうのが電話かけてくるのでよいですか」みたいなことを前もって言ってあったのではないかと思う。アンケートを取られていたし,これも今考えると明らかに向こう側の手際が良すぎたので。さすがにそれもなしに,いきなり中学生に電話かけさせるのは非常識と言われても仕方がないかな。


・センター試験「倫理」で出題ミス 家族のあり方への設問(朝日新聞)
→ これは解いた後に違和感があって,しかし倫理の専門家でもないのでまあいいかと思っていたら,一週間後にこんなことになっていた。去年のムーミン騒動の時によほどとんでもなくごまかしようがないもの,世間の関心が集まっているもの以外は認めない方針になっているものと把握していたが,まあ作題者にもよるか。あるいは,倫理は受験者が比較的少ないから通ったのかもしれない。
→ 核家族は戦後の高度経済成長以後に増加して主流になった(=大家族制が崩れた)という神話,否定されているはずなんだけども,教科書とかには残っちゃってるのかね。


・美術史のミソジニーと折り合いをつける(壺屋の店先)
→ これは「言うても昔の価値観に文句を言ってもしょうがないし,価値観の変化も含めての歴史性では」という方向性の話はしていなくて,記事最後の一文にある通り「一歩深い解決をするにはどうしたらいいのか」という話。実際に美術史上のパロディという有効活用がされているという提示はよいと思う。
→ 世界史上の侵略戦争でも「偉業と讃えられてるけど,今の感覚から言えばただの虐殺だよねぇ」って疑問を持つ子供は結構いて,意外と文化史限定の現象というわけでもないかもしれない。私自身,高校生の時にそういう困惑がなくはなかったので。
→ それはそれとして,このサイトの筆者の壺屋めりさんの著作,西洋美術史マニアなら大変おもしろいのでお勧め。と言いつつ,私も単著の『ルネサンスの世渡り術』が積読状態なのだが。


・よりもい聖地 南極の旅(1) 「中年にひゃくまんえん」(ろじっくぱらだいす)
→ ろじぱら懐かしい。エロゲーのレビューはよく読んでた……という話は置いといて。これは聖地巡礼勢としての敗北感しか感じない話。『よりもい』も大好きな作品ではあるが,さすがにこうも割り切ってぽんと200万円は出せない。すごいとしか言いようがない。


  
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2019年07月04日

2019上半期ニコマス20選

ポータル

今回も参加。

<総評>
今回の選出は前回より3本増えて16本。KAKU-tailの存在と,デレステで新アイドルが投入されたのが大きく,4月頃までの作品の選出が多かった。下半期はMSC次第かな。

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Posted by dg_law at 01:19Comments(0)