2020年03月30日

感想:『火ノ丸相撲』28巻

・『火ノ丸相撲』28巻(完結)。千秋楽の本割:鬼丸・太郎太刀戦,刃皇・草薙戦。四つ巴の優勝決定戦:刃皇・大包平戦,鬼丸・冴ノ山戦,鬼丸・刃皇戦。エピローグとしての番外編。
→ この巻は終幕までの展開が完成されきっていて,鬼丸優勝の決着から逆算してこうなるだろうと展開が読めてしまうのだけれど,そんな読者の予想なんてどうでもよくなるくらいに展開が美しい。鬼丸の相撲を最も熟知している二人を当てて「火ノ丸相撲」を読者に想起させつつ,最後に刃皇をぶつける。逆に刃皇には全盛期の大和国のコピーをぶつけてそれを凌駕させつつ,新世代の意地により黒星をつけられる。明らかに現実の白鵬を意識したキャラが,白鵬がやった力士による物言いによって行司軍配差し違えの黒星となるという,現実とのクロスオーバーも楽しく,まさにここでしか使えない小技である。大包平戦では横綱の特徴の百面相が想起させられ,最終決戦へ。勝敗の要因は高校生編のラストと同じ,小ささゆえにくぐった死線の量であった。結局のところ,不利な体格がゆえに隙を見逃さない最強の勝負勘を得たというのが火ノ丸相撲の中核であったと言えよう。
→ 改めて書くが,冴ノ山は本当に良いキャラに育ったと思う。鬼丸くらい強くて嫌味のない後輩がいたら先輩としての心情は複雑で,しかしその後輩が挫折したら強い背中を見せて引っ張っていく。同部屋同士で唯一取組がある優勝決定戦では,手の内を知り尽くしているがゆえに鬼丸の勝負感を際立たせる重要な役どころを全うする。最終巻に至って,登場当初の凡庸な関取もまた取り口同様に円熟味のある主要な登場人物に成長した。
→ 最後の鬼丸・刃皇戦を見て思ったのは,鬼丸が真っ向勝負に加えて身につけた小兵力士らしい小技とは要するに足技とたぐりであって,これだけたぐって横に付かれたら実際に非常に面倒だと思う。現実だと炎鵬と照強を足して二で割らない感じで,まあそりゃ上位定着するよねと。それにしても,この火ノ丸相撲が始まった6年前にはどちらも幕内にいなかったことを思うと,ここ2年ほどの小兵旋風の強さにも思いが至る。
→ 最後に細かい話を。まず,冴ノ山は直近3場所計32勝で3場所目に優勝決定戦進出となると,実質33勝扱いだろうが,大関がすでに3人いて席が空いていないのが厳しい(正確には4人いて1人はこの場所に陥落)。実際に作中で1場所見送りになったようだが,細かいところでリアルだ。この4大関体制,大相撲編が始まった当初の3年ほど前なら現実にちゃんと沿っていたのだが,この単行本が出た昨年12月の段階では2大関,この間の春場所に至っては1大関であった。現実の大関の数が不安定すぎる。作中では1年も経っていないので差異が生じてしまった。次に,番付表を見ると童子切は8−5−2での勝ち越しだが,最後の白星が不戦勝。その上,千秋楽では7−7だった金鎧山に負けているので,これは現実だった間違いなく互助会を疑われているw。これは当然ツッコミ待ちのし掛けだろう(実際には童子切がガチ力士だろうから互助会ではないのだろうが)。番付表の話だと,鬼丸は前頭4枚目で13勝優勝なのに,上が詰まっていて来場所小結にすらなれなさそうなのも,それっぽくて良い。最後に番外編の鬼丸表彰式,ちゃんとしいたけ詰め合わせとマカロン詰め合わせを出しているのも好角家には伝わる楽しい演出。最後の最後まで,実に大相撲ファンが喜ぶ,大相撲に対する愛が伝わる漫画であった。川田先生にはまた別の角度から大相撲を描いた作品を期待したい。



  

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2020年03月27日

『岳人』「戦国の山」特集(2017年12月号・2019年12月号)

登山雑誌はたまに買って読んでいるのだけど,面白かったので紹介しておく。モンベルが出している『岳人』の2017年12月号の特集が「戦国の山」で,好評だったがために2019年12月号の特集「続・戦国の山」であった。

まず2017年12月号の方から。取り上げられているのは丹沢・犬越路,小谷城,千草越,岩村城,天目山,天王山,賤ヶ岳,長谷堂城,越前大野城&戌山城,備中松山城,竹田城,坂戸城,岩櫃城,高根城,城井ノ上城,最後に佐々成政のさらさら越え。この他に縄張り図や用語解説,戦国時代の兵糧(干飯・芋茎の縄・兵糧丸等)レシピと実食感想レポートがついている。

賤ヶ岳は『ヤマノススメ』9巻でも登場していた。戦国の山の代表例と言えるかも。中川清秀の墓もあるので,『へうげもの』の聖地でもある。小谷城は麓に名物旅館があって,それも込みで去年に友人と行ってもいいかもという話をしていたが,どうせなら日本百名山にしようという話が出て伊吹山になった。あれはあれで関ヶ原の合戦場が一望できるので戦国時代を感じることができる山であったが,読んでいるとやはり賤ヶ岳や小谷城も行ってみたくなる。安土城とセットで旅程を組んでみるか。本企画を読んだ感じだと,登山として一番面白そうなのは賤ヶ岳だった。よくまあこんなところで戦ったなと思うが,当時は伐採されきった禿山だったらしい。「兵どもが夢の跡」という言葉そのものであった。

高根城はマイナーでは,と思ったらそういえば当時は「おんな城主直虎」が最終盤なのであった。城井ノ上城(きいのこうじょう)も私は全く知らなかったのだが,豊前国の城井氏が所持していた城で,秀吉の九州征伐の後に転封を明示されるも拒否,黒田長政に攻め滅ぼされたとのこと。見るからに堅城で,標高475mにして長大な鎖場があるっぽい。『岳人』編集部としては是非とも紹介したかったのだろう。

最後に一番面白かったのが佐々成政のさらさら越え特集。やはり三国志の登山家といえば馬謖,戦国時代の登山家といえば佐々成政だろう。富山県民の戦国時代のヒーローといえば佐々成政であって,神保氏ではないのだ(それはそれとして『信長の野望』シリーズを入手したらまず神保氏でやって生き残りを図るプレーは富山県民ならやったことがあるはず)。改めて考えても厳冬期の飛騨山脈,標高2500mを超える現在の黒部湖を突っ切るルートはあまりにもストロングスタイルで現実的ではない。やはり信憑性が高いのは飛騨まで南下してから信濃に入る旧安房峠ルートだろうと思う。しかし,伝説ルートはあまりにも夢があるので,腕……もとい脚と装備に自信がある人はチャレンジしてみてください。私は責任を取らない。ちなみに,このコラムを書いた人は「私自身,11月末,年末年始,3月,5月と近隣のエリアで登山したことがある」とあり,さすが『岳人』編集部。

ただし,『岳人』なだけあって実際の登山記録は参考になるものの,歴史家へのインタビューを除けば歴史関係の記述はちょっと心もとない。たとえば,p.29の地図は1582年の勢力図なのに加賀・能登・越中・丹後・丹波(とそれ以西)が信長の勢力圏に入っていないという割と致命的なミスがある。本能寺の変の秀吉犯人説という俗説はありきたりにもほどがあるだろう。せっかくの面白い特集であるので,そこはちゃんと詰めてほしかったところ。


次に2019年12月の「続・戦国の山」。前回が好評であったのでリバイバルしたとのこと。今回取り上げられているのは京都愛宕山(明智越),千草越,安土城,黒井城&八上城,信貴山,尼厳山(川中島),要害山,春日山城,岩櫃城,岩殿城,大和高取城,岩村城,八王子城,松倉城,基肄城。千草越・岩櫃城・岩村城は二回目。後述する千田先生の起用も含め,前回の反省があったのか無かったのかは知らないが,歴史の記述は「続」の方が全般的に堅牢になっていたように思う。それはそれとして,しれっと混じっていたが,基肄城は違くない? これが入るなら鬼ノ城も入れてほしかった気も。

2020年の大河ドラマを意識してか,明智光秀ゆかりの山が多い。八上城では地元の登山者から「来山者の増加を見越して,曲輪の周囲の林を切り倒した」という話を聞いたというエピソードも出てくるが,いや……マイナーすぎて増えないんじゃないですかね……。京都愛宕山は明智光秀が本能寺の変の前日に山頂の白雲寺で開催された連歌会に参加するために登っており,例の「ときは今」の歌を詠んでいる。亀岡駅が光秀の居城だった亀山城の目の前であるから,光秀の通った通りの明智越にアタックしやすいが,この明智越の標準タイムは片道4時間55分であるため,なかなか山が深い。眼前が保津峡であるが,掲載された写真を見る限り樹林帯で概ね眺望が死んでるっぽいのはちょっともったいない。なお,白雲寺は廃仏毀釈で滅び,現在は愛宕神社となっている。許すまじ明治政府。

信貴山のページでは『岳人』のライターに千田嘉博先生が同行していた。そう,『真田丸』の考証に参加していた歴史家の一人である。千田嘉博先生が参加していたせいで信貴山だけ明らかに濃く,読み応えがあった。松永久秀悪人説にも千田先生がきっちり掣肘を入れているし,空堀の説明をしている先生の写真がとても楽しそうだ。個人的には「そう,こういうのでいいんだよこういうので」というドンピシャなページであったので,次に「続々」をやるなら毎回学者を連れて行ってほしいところ(学者が登れるかは別問題)。信貴山は朝護孫子寺があるので,東方星蓮船の聖地でもあり,行きたい山リストに元から入っていたのだが,本稿を読んでその思いは強くなった。廃業したケーブルカーの跡がそのまま登山道になっていて,登山としても楽しそう。

岩櫃城は改めて見ると,ここに築城したのは完全に頭がおかしい。ハシゴと鎖場が多く,にもかかわらず堀切(※あえて尾根を切り崩して通りにくくすること)まである。実際に群馬県によるグレーディングでは2Cになっていた。一方,岩櫃城の観光案内のホームページには「鎖やハシゴはあるがビギナー向き」とあった。真田氏の家来,末裔まで含めて基準が狂ってそう。

岩殿山の方はまだマシそうだが,記事中の「山頂付近には厩跡があるが,こんなところに馬を連れてきたとして,何の役に立つのか」「難所に集中力を要し,ずいぶん疲れる山」「私にはとても攻略する気が起きない」という評価の数々がその厳しさを物語っている。しかし,山梨県のグレーディングは1Aになっていた。真相は自分で登って確かめるしかなさそう。岩殿山は『ヤマノススメ』15巻に登場しているので,その聖地でもあり,麓の川にかかっている猿橋が『東方風神録』の3面道中の背景であるので,これまた私的には縁が深く,絶対にいつか登る山リストに入れている。


概ね主要な山城は2回で扱われたような気はするが,まだ七尾城,月山富田城,観音寺城辺りが出てきていないし,そういえば神君伊賀越えもまだ扱われていないので,3回目もできそう。『岳人』スタッフに期待しよう。

岳人 2019年 12 月号 [雑誌]
ネイチュアエンタープライズ
2019-11-15



2017年12月号は好評だったせいか,Amazonでは売り切れだった。モンベルの店舗だと普通にバックナンバーが売っているので,店舗で直接買うのがよいだろう。
  
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2020年03月26日

ニコ動の動画紹介 KAKU-tail THE@TER編



6年ぶりの開催。ミリオンライブ版になったのでチョイスされるアイドルの数が大きく増加した。懐かしの人も,ベテラン勢も,これが初参加の人も。今回から主催がきつねPからファミエリPに交代した。



妖狐PによるOP。ハードルじゃなくて鳥居が用意される伝統を踏襲。



上半期20選選出。「グレイテストショーマン」を使った疑似m@sでKAKU-tailの歴史を振り返り。忘れられぬ疑似m@sの傑作となった。



こんにゃくPが単品を投稿していないのでこちらで。天空橋朋花で曲はBuzyの「鯨」。手描きとダンスPVの組み合わせ。



これでこそ天空橋さんですわ。名前のせいで巻き込まれた琴葉さんかわいそうですw。



ごまP・ゆっぴP・しょじょんPの合作。ふんだんな労働力を注ぎ込んだ映像美。



ノリの良い音ゲーMAD。和風だが不思議と歌織さんに合う。



まさかの百人隊長Pによる手描きMAD。こういうのを見ると,紗代子は律子の系譜だよなと思う。



基本に忠実で見事なお題の消化。ダンスの合わせ方も好き。



2番P復活の人力ボカロ。



良いテーマの消化。  
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2020年03月25日

漫画日本の歴史より信長の野望の攻略本の方が先だったかも

・子どもが読書習慣を身に付けられるよう、ゲームの攻略本を必ず買う(斗比主閲子の姑日記)
→ 我が身を振り返るに,確かに子供の時は攻略本読むの好きだった。原初の読書体験かもしれない。サブストーリーの小説は作品世界を深めてくれたので,『サガフロ1』の裏・解体新書のヒューズ主人公の小説や『サガフロ2』のあの小説等は大好きだった。用語の出典は神話や歴史のとっかかりだったから,簡素なものよりそういう豆知識も入れてるやつの方が良かった。データ集として読むのも面白くて,RPGの場合は子供心に「あー,ここでゲームバランスとってるんだ」とか考えながら武器リストやダンジョンのマップを眺めていた記憶がある。今考えると,他の攻略本はともかく解体新書やアルティマニアの詳しすぎるデータ集は小中学生が読むにはけっこう難物で,苦戦しながら読んでいたと思うし,良い背伸びだった。子供は好きなゲームのためなら背伸びをするのだ。
→ 良い背伸びと言えば,分厚いコーエーのSLGの攻略本も小学生ながらがんばって読んでいて,あれで三国志・戦国時代の登場人物をかなり覚えたという人は私以外にも多かろうと思う。元記事の子たちもマイクラの攻略となるとかなり深いはずだけど,読んでミスを指摘さえしているというのはかなり良い背伸びだと思う。


・都市在住の裕福な家庭が有利な「大学入学共通テスト」に批判、萩生田文科相は「身の丈にあった勝負をすればいい」と切り捨て(BUZZAP!)
→ この発言は問題発言だと思うけど,本件がこの発言を契機に大きく動き始めたのは完全に予想外だった。実は,皆本当はまずいと内心思っていたので舵を切る契機がほしかったところにちょうどよく問題発言が来たというだけのことだったのではないかと思っている。萩生田さんなら安倍さんの側近なので多少の問題発言でクビが飛ぶことはないので,安心して問題発言していただけたのも好材料で,舵を切るにはぎりぎりのタイミングだったというのも良かったのだと思う。
→ 私も今回の入試改革は問題点が多いので,英語4技能民間試験活用と,共通テスト筆記試験導入は中止になってよかったと思う。しかし,実際には諸国公立大学は上手くこれらを回避する方法を用意しているし(東大の「出身高校の発行する適当な証明書があれば民間試験受験は不要」が一番笑った),私大はこんな改革が無くても英語4技能民間試験を大きく活用する方向に動いていたので,そもそもが言うほどの大改革では無かったよな……という感覚のギャップがある。どちらかというと政商ベネッセが一方的に儲かる構図で利益誘導政治という安倍政権の特徴が大学受験産業でもおおっぴらになされるのだな,くらいに思っていた。ベネッセでなくとも塾・予備校産業にとっては書き入れ時であるので受験生を煽りに煽っていたから,実態に乖離して大改革ということになってしまった,というのが真相ではないか。
→ ところで,今回の入試改革とは約6・7年に始まった当初はもっと大規模な改革の予定だったのだが,いろいろあって様々な要素が脱落し,結局そこそこの規模に落ち着いたという経緯がある。最初はベネッセのベの字くらいしか無くて利益誘導の気配は薄く,結果的にそうなった感じが強い。この経緯がけっこう面白いので,もっと情勢が落ち着いたら書きたい(今は状況が悪い)。


・「座席は空いているのに店員が足りないからお客を入れられない…」なぜ豊洲やお台場の商業施設が人手不足に陥るのか?(Togetter)
→ 言われてみるとその通りで,近隣に若者の居住区域や学校が無いので通勤させるしかなく,通勤時間を上乗せで時給を設定する(+交通費を保証する)と相場よりかなり高い人件費になる。それなら観光地価格,または住民の所得水準に合わせた高価格にすればペイできるかもしれないとして,そうもいかないチェーン店は厳しい。だったら雇える人員で回転させるだけさせて長蛇の列を解消しないというのは合理的帰結である。あそこらへんは値段に人件費を転嫁しきれないような飲食店には厳しい立地なのだな。理由がわかってもなお意外だ。  
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2020年03月24日

「表現の不自由展 その後」と表現バッシングについてもう少しだけ

・「あいトリ」騒動は「芸術は自由に見ていい」教育の末路かもしれない(森 功次)(現代ビジネス)
→ すでにあいちトリエンナーレの「表現の不自由展 その後」については一筆書いているが,この記事に引っ掛けてもう少しだけ言及しておきたい。

本記事には同意しかない。本件に限らず,自由な解釈が許されているのと,誤読が許容されているのは全くの別物というのはこの社会に蔓延している間違った観念である。「 批評には正解はないけど間違いはある」というさる方のブコメの言い方も良い。これが芸術性の無いものならばほぼそうならないところ,小説や美術作品になると途端にこうなってしまうのは,本記事のタイトルの通り,学校教育の美術で「自由な鑑賞」が過剰に強調されてきたために社会に広がってしまったものだと思う。

ただし,仮に読解が難しいもの,高い専門性が無いと読み解けないものや文脈が込み入っているものは,それを提供する側に誤読された時の対処方法や覚悟の準備が必要だと思う。これは『宇崎ちゃん』ポスターバッシング事件の時にも述べた通り。実は最近まで本件と『宇崎ちゃん』騒動を表現の自由の点で並べるのは相違点が多すぎるだろうと思っていたのだけど,一般社会に対して難読文脈の理解をどこまで要求してよいかという点で見事に類似するので,一転して比較は正しいという立場に変わった。これらの件で立場を変えている人は,(文脈の中身が違いすぎるので)不誠実だとは思わないが,態度に説明は求められるとは思う。

閑話休題,そういうわけで私はあらゆる場面で誤読する側が悪い,ということになるとは思わない。社会の平均的な知識・興味関心の人にとって,読むのがどうしたって難しいものは世の中にいくらでもある。その上で言えば,この「表現の不自由展 その後」は社会に対して正しい理解を求めていいレベルのもので,すなわち良い意味での浅さしか有しておらず,なんなら『宇崎ちゃん』よりもわかりやすいものだったと思う。にもかかわらずこれだけの誤読が,それもそれが絶対的に正しい解釈であるという思い込みを伴って広がってしまったのは,本記事でも指摘されている通りに現代アートに対する嫌悪が社会にしみついていることであろう。これについては私自身も現代アートは嫌いなのでわかるのだが,企画した側が社会の抱く現代アートに対する嫌悪感をあまりにも軽視していたし,それがナイーブな政治問題と直結した時の想像力が欠如していたということを,やはり指摘しておかなければならない。そこは原則論で通さず,現実に対応するのが主催者の責務であろう。

ちなみに,私が今までの表現バッシング事案で最も「社会に要求していい文脈読解レベルが低いと思われた」「にもかかわらず批判側の誤読がすさまじかった」「誤読を指摘されても開き直りがひどかった」と思ったのはキズナアイバッシング事件で,今振り返ってもあれは自分の中でもインターネット論争史の中でも一つのターニングポイントだったなと思う。  
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2020年03月23日

音を楽しむべき場所

本場所としては史上初,技量審査場所をカウントするならそれ以来の無観客開催であった。NHKで見てもAbemaで見ても,その最大の特徴は”音”で,四股のどすんどすんと鳴る音,塩のまかれるパサーっという音,立ち合いで骨と骨がぶつかるの音,果てはケガをした力士のうめき声まで,普段は歓声でかき消されて聞こえない音がこの場所の空気を作っていた。そういった事情で,映像で見ていた我々はその特殊さを一方的に楽しめたが,力士たちは普段と全く違う環境に戸惑っていた様子が見て取れた。その中には碧山のようにむしろ調子よく取れた力士もいたのが面白かったが,歓声を味方にする炎鵬や照強にとっては不利な場所であった。来場所がどうなるかは現時点でもすでに怪しいが,また無観客になるという覚悟はしておくべきだろう。

今場所のもう一つの焦点は朝乃山の大関取りであった。結果は11勝で3場所計32勝と1勝足りないが,どうやら昇進になるようである。私はこれに賛成で,2019年九州場所の評で「状況があまりにも朝乃山に味方していて大関取りラインが恐ろしく下がりそうな予感がしている。32勝まではほぼ確実に下がると思われる。」と書いたのが,ずばり的中した形である。
・右四つになると角界随一の強さで,勝った相撲の内容がある。
・4場所42勝である。加えて言えば6場所61勝で,優勝経験を含む。
・「横綱大関」が生じている大関不足で,かつ貴景勝が来場所カド番である。
・1年以内に他に大関取りができそうなのが御嶽海くらいしかいない。
しいて言えば横綱に対する戦績が悪く,不戦勝を除くと白鵬戦が0−3,鶴竜戦1−2というのが不安材料である。しかし,朝乃山の上位挑戦が1年くらい前からであり,この直近1年で二人の横綱が皆勤した場所が少ないから,そもそも戦う機会が全然なかったという,本人の努力ではどうしようもなかった点は加味してもよいと思う。優勝を経験してから強くなった人であるので地位が人を作るタイプとも思われるので,今後に期待してさくっと昇進させるがよい。ところで,若い若いと言われるが実はもう26歳であり,本人や協会が横綱へのロードマップを描いているのならそれほど時間が残っていないことは,この場で示しておきたい。


個別評。優勝した白鵬は,異様な惨敗を喫した正代戦以外はいつもの白鵬で,序盤から中盤は立ち合いの張り差しを多用して離れたままの短期決戦を仕掛ける省エネ相撲,温存したスタミナで終盤は盤石の四つ相撲という使い分けを巧みに効かせた。序盤の省エネ相撲は,立ち合いの張り差しさえ攻略すれば,先場所の遠藤や今場所の阿武咲のように勝機があるし,負けが込むとあっさり休場する。あるいは序盤の省エネが上手く行かないとスタミナが切れて終盤の本気相撲が弱体化して,三役・大関には脆くも負ける。逆に言えば序盤を省エネで,かつ1〜2敗程度で乗り切られた時の終盤の本気相撲に勝つのは,いまだもって困難であり,そこに白鵬の真の強さがあると言えよう。白鵬は2011年の技量審査場所も制しており,こういう特別な場所の白鵬は強い。

もう一人の横綱鶴竜は,序盤は引退間近かと思わせられるような不安定さであったが,これを2敗で乗り切ると千秋楽まで連勝し,平成25年九州場所以来の横綱相星決戦を実現させた(この時は白鵬と日馬富士で,日馬富士が14勝優勝)。これで力士寿命が2・3場所は伸びた。白鵬もそうだが,右四つでも左四つでも押し相撲でも取れるのはすごい。唯一の大関の貴景勝はまさかのカド番。明らかに突き押しの威力が鈍っていた。ケガがあったのだろう。組むとどうしようもなくなるのはしょうがないとして,阿炎や豊山に負けているのが重症。来場所に立て直せるとは思うが……

三役。大関取りの朝乃山は強かったと思うし,上述の通り大関に値するとは思うが,その上で言えば大関取り期間中に目覚ましい進歩があったわけではなく,2つほど苦言を呈しておく。まず立ち合いが遅れることがたまにある。それでも右四つになれれば勝てるが,なれずにそのまま負けるパターンの方が多い。次に,ここぞという相手の時に固くなることが多い。その意味で千秋楽は負けるのではないかと不安だったが,朝乃山の固さ以上に貴景勝の体調が悪かった。心技体の心を鍛える必要があろう。

正代は結果8−7だが,先場所に見えた足腰の粘り強さはかなりの程度残っていて,守備面での強さは印象に残った。特に十二日目,乱心した白鵬の張り手乱発を耐えきったのはお見事。しかし,そのためかえって攻めが遅く,そこから守ってもどうしようもないという状況になったことも多く,課題は残る。遠藤は可も不可もない出来。北勝富士は序盤・終盤はそうでもなかったが中盤が絶不調で,押しの威力が全く無かった。ケガでないならよくわからない。

前頭上位。4連敗からの大ケガで休場となった高安は非常に心配。来場所は平幕下位になるが,そこも休場して十両まで落ちる可能性もあるだろう。年齢を考えてもまだ引退しないと思うが,復帰は長期計画になりそう。徳勝龍は2〜4勝と予想していたので,予想の中では好成績だった。先場所見せた突き落としは今場所も生きていて,一皮むけたには違いないと思われる。勝ち星の割には好印象。炎鵬は上位挑戦を跳ね返されたが,こちらも徳勝龍同様に思っていたよりも善戦したという感想を持った。炎鵬は,左下手をとっても強引な下手投げをうつのは上位だと通用しないので止めたほうがいい。御嶽海は10勝で,安定してこの成績がとれればとっくに大関なのだが。阿武咲はやっと突き押しの圧力が戻ってきた。阿武咲の押しの圧力がこれだけ強かったのは2018年初場所のケガ以来で,復調に二年以上,大変に長かった。今場所の押しなら上位に定着可能だろう。

前頭中盤。入幕2場所目の霧馬山は9−6ながら目立ち,勝った相撲は強かった。霧馬山はモンゴル出身らしく器用で投げ技に華がある。十四日目の隠岐の海戦で見せた上手捻りはお見事としか言えない切れ味であった。鶴竜が部屋に合流したのが影響したか。今後の期待が非常に大きい。まずは来場所の上位初挑戦を早く見てみたい。次に挙げるべきは当然,12勝した隆の勝は押し相撲への開眼が目覚ましい。彼も次の場所で上位初挑戦になるが,今場所すでに御嶽海は撃破している。貴景勝や阿武咲とどう渡り合うかが楽しみ。顔が「おにぎりくん」というあだ名通りであるのでインパクトがあり,愛嬌があるので人気も出そう。

前頭下位。照強は押すだけでなく,他の小兵力士のような立ち合い変化や潜る動作を取り入れていて,去年の下半期はそれで失敗していたが,今場所は奏功していた。まだたまに立ち合いの変化失敗があるが,もっと機能するようなって攻めにバリエーションが出れば成績が伸びそう。碧山は何場所かに1回来る突き押しの威力が強かった場所で,今場所はどうも無観客が肌に合っていたから強かったようだ。無観客は碧山にとっては追い風なのかもしれない。終盤,優勝争いの先頭に立つと動きが固くなったところを見ても緊張しやすいのだろう。千代丸は蜂窩織炎で高熱が出て二日間休場していた。今場所は一人でも新型コロナウイルスによる肺炎が出たら中止になっていたので,関係者全員が緊張していた。そんな高熱が出たなら場所が終わるまで休んでいてくれ,とは正直思っていたが,11日目に復帰するや7−6−2でまとめ上げ,千秋楽に勝っていれば普通に勝ち越していた。力士の体調,一般人には理解できないところがある。

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2020年03月19日

2020受験世界史悪問・難問・奇問集(おまけ)

以下はおまけ。良問と思った問題か,紹介・コメントしたくなった問題,コメントしておいた方がいい問題を並べておいた。書くのが遅れた分,ちょっと長めに。


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2020年03月15日

2020受験世界史悪問・難問・奇問集 その3(国立大)

本日はセンター試験と国立大(全部名古屋大)。おまけは間に合わなかったので、別日に更新します。みどころはやはりセンター試験で,かなり真面目に論じているので是非とも読んで意見が欲しい。

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2020年03月14日

2020受験世界史悪問・難問・奇問集 その2(早稲田大)

本日は早稲田大。見どころは22番の教育学部の問題と,30番の政経学部の問題。どちらも受験世界史に残る問題となったと思う,それぞれ違う意味で。


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2020年03月13日

2020受験世界史悪問・難問・奇問集 その1(上智大・慶應大)

今年も無事に公開に至ることができた。協力してくれる方々に感謝を申し上げたい。今年は通常の校正者以外の手も借りないといけなくなるような問題もなく,比較的スムーズに進行した。

<収録の基準と分類>
基準は例年とほぼ同じである。

出題ミス:どこをどうあがいても言い訳できない問題。解答不能,もしくは複数正解が認められるもの。
悪問:厳格に言えば出題ミスとみなしうる,国語的にしか解答が出せない問題。
→ 歴史的知識及び一般常識から「明確に」判断を下せず,作題者の心情を読み取らせるものは,世界史の問題ではない上に現代文の試験としても悪問である。
奇問:出題の意図が見えない,ないし意図は見えるが空回りしている問題。主に,歴史的知識及び一般常識から解答が導き出せないもの。
難問:一応歴史の問題ではあるが,受験世界史の範囲を大きく逸脱し,一般の受験生には根拠ある解答がまったく不可能な問題。本記事で言及する「受験世界史の範囲」は,「山川の『用語集』に頻度,任發いいらとりあえず記載があるもの」とした。


<総評>
早慶上智の総数は2019年の37個から激増して50個となった。実は2017〜19年は40個を割っていて,特定のいくつかの学部を除くと慎重に作っている体制が見受けられ,本企画も社会に微力ながら貢献したかなと思っていたのだが,今年は見事に反発した。後述するが,これには予想される要因がある。

2020年の最大のトピックは,上智大のほぼ全日程と,早稲田大の政経学部・国際教養学部の世界史入試が今年で最後であること以外に挙げようがない。そう,最後だった上智大と早稲田の政経がすごかった(国教はおとなしかった)。数が跳ね上がった要因はこれで,思いついた問題をとにかく詰め込んだという印象を受けた。「最後かもしれないだろ,全部(受験生に)伝えておきたかったんだ」という熱いメッセージを感じる。FF10かな?

とはいえ,ワーストの日程を挙げると慶應の法学部になり,慶應は13個のうち9つが法学部であった。早稲田の政経学部も6つと多かったが,良問もあって全体的な印象は悪くない。しかし,慶應の法学部は端から端まで問題が工夫がない&つまらない&難しいの地獄で,収録しなかった問題も含めて印象は極めて悪い。しかも慶應大の法学部は2017・2019・2020年と直近4年で3度ワーストの日程になっていて,私大最悪の地位を早稲田の社学から完全に奪い取った。おめでとう。

なお,それはそれとして今年のスターは早稲田大・教育学部である(2日目に公開)。今年にしかできない見事な出題ミスをやってくれたので,ご確認願いたい。また,昨年に引き続き,早慶上智のいずれも公式解答例を公開していたのだが,上智ではそれによる新たな問題も発生した。これもご確認願えればと思う。国立は一橋大がおとなしく,収録はセンター試験と名古屋大だけとなった。センターの出題ミスはかなり真面目に論じている。


以下,上智大と慶應大。上智の最後の汚い花火っぷりと(特に7番),慶應・法学部の地獄のロードをお楽しみあれ。

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2020年03月09日

TASは現実でもできるらしいという新鮮な驚き

・「バッキンガム宮殿採用」装置にダメ出し続々(論座)
→ 随分と前から問題視されていてネットではメジャーなネタなのに,世間的にはあまり知られていない不思議。見るたびにせめて都営地下鉄はまともな判断をしてほしいと思う。


・「女オタは一つのジャンルに留まる」って完全に嘘だったよな(増田)
→ ブコメがそんなやつおったか? という流れになっているが,当時誰が言っていたかはわからないが00年代半ばくらいまでは間違いなくそういう言説はあったし,そこそこ流行していた。その記憶があるので,少なくとも私は証言できるし,同じ記憶がある人が複数いるようなので集団的な記憶の捏造でもあるまい。しかも文脈は増田の1行目の通りで「男は3ヶ月で嫁を変えるが,女は一つのジャンルに留まる(これだから男は)」というものだった。私自身,コミケのジャンルの盛衰を見ていて女性向けジャンルはけっこう入れ替わりが激しいなと何年か前には思っていたので,個人的には同じことを思ってた人はやっぱりいたんだなと得心したのがこの増田の記事だったから,言説が疑われているのを見て実は少々驚いた。忘れ去られるもんだなぁ。読者の中に具体的な証拠を出せる人がいたら出してもらえるとありがたい。私自身ではちょっと見つからなかった。
→ これは男性側の流行の変化の影響も大きくて,昔はアニメのクールが変わると界隈の空気もがらっと変わった印象があったが(だから3ヶ月),今は艦これやらアイマスやら東方やらが継続的に流行していて,一度はまったらそこから脱出しない,アニメは見るけど別にそれで嫁が大きく変わることはほとんどないという人の方が多かろうと思う。かく言う私も如月千早を追い始めて13年は経過していると思うと,さすがに長い。
→ 結局のところ,性差よりも個人差の方が大きかろうし,それ以上に流行しているジャンルが長寿か短命かという偶然性が一番作用しているのだろうと思うから,性差に帰着して議論するのは無駄だろう。ただし,00年頃にそうした言説があったこと自体は一種の文化史として残していく必要があろう。


・こち亀特別漫画「ありがとうPHS!の巻」 |Y!mobile - 格安SIM・スマホはワイモバイルで
→ 過去作の切り貼りだけで1話作ってしまうというアクロバティックな手法。3ページめの携帯とPHSの違いの説明なんて本当にそのまま持ってきただけである。今回のこれでも多分まだ探しきれていなくて,妥協していると思う。この方式でもっと『こち亀』の新しい話が読みたいところ。PHSもそうだが,『こち亀』が拾ったことがあるネタならいけるだろうし,『こち亀』はかなり幅広く当時の流行を拾っているので,連載終了後にしか無いネタ以外は割となんでもいけてしまう気がする。
→ 「男気」一号・二号,俺は覚えてたぞ。懐かしい。日本全国の何十万人かの『こち亀』ファンは皆覚えているだろう。実際G-SHOCKがあるんだからゴツい携帯が流行してもいいはずだ……と当時は思った。


・室温設定25度で 職員の8割強「効率上がった」(神戸新聞)
→ 28度に科学的根拠はないことが知れ渡った2019年の夏であったが,「総残業時間が14・3%減少した」「光熱費は前年から約7万円増えたが、残業時間減少で人件費は約4千万円削減された。」とまでくっきり成果が出るとさすがに驚く。私は割と28度くらいで十分だが,個人差はあるし,空調の効きにくい環境もあるので28度だと暑い人もいるのは理解できるところで,暑いと効率が落ちるのもわかる。


・キプチョゲ、マラソン2時間切り達成 非公認レースで(朝日新聞)
→ リアルTASだこれ。間違いなくSpeedrunであるし。TAS好きとしてはこれも非常にワクワクする話で,人類の可能性を測る努力の方向性としては極めて正しいと思う。
→ 他の陸上競技でも応用できないだろうか。短距離はともかく幅跳びとか。できるのだろうけどマラソンほど競技時間が長くないからそれほど驚くべき効果が出ないか,世間的な関心が高まりづらいかいずれかか。個人的にはやっても面白いと思う。  
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2020年03月06日

ニコ動の動画紹介 2019.2月上旬〜2019.3月上旬



ピロ彦氏の作成。サブフレームリセットの猛威がドラクエ4に。かなり無茶苦茶なサブフレームリセットで第1章冒頭からエンディングを呼び出しているので,エンディングがひどいことに。



これを引き起こすバグもすごいが,なんでそんなところにダッシューズ落ちてるの……設定ミスだろうか。



当人がこの初走に納得がいかず,再走。




実に見事な走りで完全な最速記録を打ち立てた。この人,現在はリングフィットアドベンチャーのRTAを投稿中。身体を酷使している。




倭寇氏。レッドヨッシーエキス使用禁止。ジャストガードとスーパージャンプがあるとはいえ,ジャストガード無効の攻撃も多々あり,特にケーキとラスボスのカジオーがさすがにラスボスの強さだった(なお,最後の最後にとんでもない落ちが)。ニコ動ゲーム実況の歴史に偉業がまた一つ。





poly Bridgeの雪山版。ジャンプ台やリフトを使ってスキーヤーやボーダーをゴールまで連れて行くゲーム。非常に命が軽く,何人ものスキーヤーを犠牲にしながら試行錯誤して最適化が図られていく。シュールなゲームシーンはまさにpoly Bridgeと同じ笑いがもたらされる。ボイスロイドたちのウィンター・ソングも必見。




ビリビリ動画からのセルフ転載。懐かしのカニファントレスだが,クオリティが非常に高い。





20選入れそびれ。トカチPによる田所あずさ曲による最上静香のダンスPV。ミリシタでも生きているトカチPの丁寧なダンスシンクロ。




whoPが小松伊吹Pになって戻ってきていた。相変わらず細かく見てるよなぁ。



先駆者Pもリバイバルしていた。ネタが多すぎてつっこみが追いつかない。



20選入れそびれ。ふるの氏・CYANGE氏・tohana氏の合作。5:30からの畳み掛けがすごい。  
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2020年03月05日

最近読んだもの・買ったもの(『よふかしのうた』等)

・『徒然日和』3巻(完結)
→ 完結早くない? 打ち切りにしてはそんなに売れてなかったとも思えず。2巻くらいから読み始めた勢としては正直あっという間に終わってしまった感じである。『あまゆる』も突然打ち切りになったし,田舎の女子高生物は突発終わる呪いでもかかっているのだろうか。マウンテンプクイチはその後野球漫画を書いて大成したので土室圭さんも次の作品に期待したい。
→ 最終巻なだけあっていろいろ急激に進んだ感じはあり,日常物にも終わりはあるというのが,急に終わっただけに強く感じられる巻だった。その意味で,本作の着地点が割とガチな百合だったというのは意外で,であるからこそ尚更そこにたどり着くまでのゆっくりとした過程や,その後の日常を見てみたかったと強く思ってしまった。惜しい。





・『好きな子がめがねを忘れた』3巻。
→ 中学2年から3年に進級。意外と進度が速い。遅くならなければ5巻くらいで完結するペースでは。高校生編とかやるのだろうか。
→ 三重さんが近眼でよく見えないから距離が近くなりすぎて小村くんがドキドキするというのが多用される本作ではあるが,手を変え品を変え繰り返されるので飽きるというよりも天丼になってきた。予測可能回避不可能でラブコメが展開される快感がここにある。
→ 小村くんが三重さんのめがねを持ち帰っちゃう話が一番笑った。「めがねが本体」はギャグ漫画でありがちなネタだが,それをこう応用して思春期の男子のドキドキに転化させてくるとは,やりおる。


・『だがしなど』。『だがしかし』の未収録作品&イラスト集。
→ イラスト集はともかく,まんがの「いとおかし」は『だがしかし』を最後まで読んだ人なら必ず読むべき短編。尾張ハジメさんが鹿田駄菓子に来る前に何をやっていたのかが描かれ,本編完結後の彼女はどうするのかが示唆される。ハジメさんもここから人生を立て直していくのだと思うと安心する。
→ 『だがしかし』連載前の思い出を語るページで,「駄菓子を買うお金すらあやしくて,友達に金を借りてどうにかした」と書かれていて,前述の漫画と重ねるとハジメさんは作者の投影だったのだろうと思う。実際,『だがしかし』が終わってすぐに『よふかしのうた』なんてすごい漫画を始めてしまうあたり,コトヤマさんも根っからの漫画家であって,漫画しかないという人生なのだろう。





・『よふかしのうた』1巻。
→ コトヤマさんの新連載。中学2年生の男子が夜ふかしを覚え,吸血鬼の女性と会ってしまい,ますます夜ふかしにのめり込んでいく話。
→ 全力の夜ふかし賛歌。1話の主人公のモノローグが最高オブ最高。別に社会に馴染めていないわけではなく,疎外感を感じているわけでもなく,目立った不満もあるわけでもない。しかし社会に馴染むために何の努力もしていないかというとそういうわけでもなくて,その小さい努力さえ面倒になって,全てを投げ出して,自由な夜の空に身を任せてみたくなる,そんな衝動。本ブログを読んでいるような人なら少なからず共感するだろう。そんな心の隙に先導者が現れたらのめり込むしかないだろう。夜の街を徘徊し,夜の学校に忍び込み,小さなバーで休憩する。本作は夜にあふれている。
→ そんな気合の入った本作は気合の入ったPVが付いた。すごい。






  
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2020年03月04日

ニコニコ大百科の「竹島(愛知県)」はよくできてる

・自分の県の島のこと知ってる?(増田)
→ これに対して「三河の民だったので竹島のことだったらよく知ってる。」とブコメをしたらほとんど反応が無かった。さすがにネタがマニアックすぎたのでそりゃそうだという話である。ネタばらしをしておくと,三河湾には竹島があり,しかも橋がかかっていて上陸容易な割とメジャーな観光地なのである。三河の民なら行ったことがあっても全くおかしくない場所であるため,「竹島上陸」は三河民の鉄板ジョークになっている。ちなみにニコニコ大百科の竹島(愛知県)
→ 竹島という名前はありふれているだけあって,例の竹島と三河の竹島以外にもいくつかあるようだが,さすがに観光地化されているのは愛知県だけのようだ。


・漢民族の伝統衣装「漢服」 中国の若者の間でブームに(AFP)
→ ちょっと前に 漢服を着ていったら和服と間違えられて警察に暴行された事件があったので,過渡期なのだろうと思われるし,中国も広いので地域差はかなりありそう。本記事でも「特に年配層は無関心か冷ややか」とあり,本当に若者の間でのブームなのだと思われる。日本だとご年配の方が和服を着ていることが多いので逆になっている。定着したら面白い。


・子供がドハマリするコンテンツ、アンパンマンの次辺りにくるのがまさかのあのキャラ達らしい「確かにいろんな動画で見るしな…」(Togetter)
→ もう5年くらい前から同じことを言われているので,もう音ゲーとゆっくり実況は東方の入り口として完全に定着してしまった感さえある。例大祭に行くと小学生を見かけるのも,何も驚かないことになってしまった。そりゃ
・例大祭キッズイラストコンクール結果発表! – 第六回博麗神社秋季例大祭
→ こういうことにもなるよね。イラコンが成立するほど東方が小学生に浸透している,それもキャラ名が知られているだけではなくてちゃんと作品として知られているというのは驚異的な現象で,先程はもう5年くらい前から同じことを言われている,と書いてしまったが,むしろ浸透がさらに進んでいると表現した方が正しいかもしれない。
→ それにしてもこの子らうますぎでは。キャラのチョイスもレイマリばかりではなく,秘封やドレミー,正邪,阿求,鬼形獣のキャラまでいて,君等本当によく知ってるなと。一方で国際化もすごいし,一体東方はどこに向かっているのか。あとまあ,こうなったらゾーニングをしっかりするのは大人の義務だよなぁ。


・関電会見「社長就任祝い 菓子の下に金貨」(NHK)
→ これはさすがに笑ってしまった。時代劇かな? 「山吹色のお菓子」が実在することを世に示したという点での功績は大きい(棒読み)  
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2020年03月03日

2020年東大・日本史の第3問についての考察

例の企画(執筆中)に先立ちまして,日本史の問題を個別にちょっとだけ取り扱う。日本史であるということ以上に難問でも悪問でもないというのと,これは単体で扱ったほうが面白いと判断したためである。単に小ネタというのもあるけど。

そういうわけで,今年の東大の日本史の第3問。問題を打ち直すのはさすがに面倒なので問題はリンクでご勘弁願いたい。問題自体はさして難しくないというか,東大の日本史らしい史料読解問題。Aは史料(1)・(2)・(4)から,実務は幕府担当で,名目上は日本の統治者である天皇の朝廷が儀式面を執り行ったということが読み取れる。(4)は朝廷が実務を担当しようとしたら実力不足で失敗した事例として読めばよい。江戸幕府は「武家政権はあくまで実力を認められて朝廷から統治を委任されている」という自意識が強く,それを何かに付けてアピールする癖があるというテーマは東大の日本史が好むところで,過去問を少なくとも10年分くらいは解いてきていることが期待される受験生には,模試も含めて飽きるほど見たテーマであろう。

で,Bの方。こちらも史料(1)・(3)・(5)を読むと,中国の科学の導入→漢訳洋書(蘭書)の導入→直接蘭書を輸入・翻訳と三段階に移り変わっていくのがわかる。漢訳を挟むよりも直接翻訳した方が正確な情報であるから,学問上その方が適していると考えるのは自然なことだ。つまり,これは科学的正確性を求めて学問の導入元が動いていく話,としてまとめることができる。(4)については,(3)にあるような西洋の学問由来の改暦を嫌った勢力の横槍が入った事例であり,同時に(4)の時代の段階ですでに漢訳洋書の知識は広く普及し始めていたことも示しているが,それらが読み取れなくても解答は作れるだろう。あとは「幕府の学問に対する政策とその影響」という要求通りに享保の改革における洋書の輸入緩和・実学(蘭学)奨励を盛り込めば十分な解答が完成する。実際,どこの予備校の解答もこんな感じであるし,作問者の想定する正解もこれで間違いないだろう。


……というのはあまりにも普通すぎる話で,本ブログで取り上げるからにはここで終わらない。というよりも本ブログの読者であれば,「元の暦」=授時暦の時点でピンと来たかもしれない。東大が地歴2科目を課していて,実際には日本史・地理という組み合わせの受験生はそれほど多くないことを踏まえると,受験生が世界史の知識を援用して解答を作ってくることは十分に想定されうるわけだ。そして,世界史の知識をもって本問を見ると少し違うテーマと解答が浮かび上がってくる。まず,以前に本ブログでも論じたことがあるように授時暦はイスラーム天文学の影響下にある太陰太陽暦である。そうして(1)を見直すと,世界史の熟練者ならもう1つ,とんでもないことが書いてあるのに気づくはずだ。そう,しれっと書いてある「明で作られた世界地図」。これは「坤輿万国全図」のことなので制作したのはイエズス会士のマテオ=リッチである。ちなみに,日本最古の地球儀を製作したのは渋川春海で,参照したのはやはり「坤輿万国全図」だったりする。

とすると,これは(1)の意味が全く変わってくる。実は渋川春海が参照した情報の時点ですでに純粋な中国科学ではなく,広く言って非中国圏に由来する科学である。とはいえ授時暦を作ったのは中国人の郭守敬であるというのは当然留意すべきだが,同様に結局中国人自身が優秀すぎる授時暦を持て余して大統暦という改悪を行ったという事実もまた留意すべきだろう。こうしたことから,(1)と(3)は非中国圏科学の漢訳による間接的な摂取という点であまり差異が無くなってしまう。差分はスピード感である。授時暦の制作は渋川春海から見て約400年前,「坤輿万国全図」にしても約80年前になる。授時暦は古くから知られていたし,「坤輿万国全図」は江戸幕府の初期には輸入されたとされているので,いずれも渋川春海が活用した時点で古びた情報になっていた(それでも正確性が評価されていた授時暦はオーパーツか何かかな?)。一方,享保年間に輸入が緩和された漢訳洋書はもう少しタイムラグが無い。(3)に出てくる『天経或問』は,さすがに全く知らなかったので調べてみたら,中国で書かれたのが1675年のことだそうなので,1730年の輸入となると55年まで縮まる。さらに別の事例を挙げると,『暦算全書』なる書物は1723年に清朝で刊行,1726年には輸入されているので,漢訳から輸入までのタイムラグはほぼ消滅している。こうなるともう漢訳を挟まず直接訳した方が,中国人の翻訳を待つ間のタイムラグさえも消滅するので手っ取り早い。ついでに言えば,18世紀前半には雍正帝が中国におけるキリスト教布教を全面禁止してしまって,清朝の西洋科学摂取が鈍くなっていく時期になるので,もう漢訳洋書には期待しづらいという時代の変化もあった。


そう,世界史的な観点からこのBの解答を出そうとすると,科学的正確性を求めて学問の導入元が動いていく話ではなく,世界最先端の科学にキャッチアップする速度が上がっていく話に様変わりしてしまうのだ。実際,受験生には世界史・日本史の両方の知識がある以上,このような解答を作ってきても不思議ではないように思われる。「坤輿万国全図」のことに気づいてしまったら,解答の1行目に「当初の改暦は中国の科学に依拠したが」なんて書きづらくなってしまうだろう。東大の採点はそこまで拾って採点してくれるとは思うが,前述の通り,当初から正解として想定していたとも考えづらく,ちょっと驚いているのではないか。

なお,もう解答には関係ないことを前提に話を広げるなら,授時暦の13世紀と18世紀の間には西欧の17世紀科学革命が挟まっていることや,前述の清朝の宗教政策の変化,オランダの長崎貿易を含んだ国際貿易政策の変化等,本問には世界史にかかわるフックが多く潜んでいる。高校日本史と世界史の融合が目指されている昨今の情勢ではあるが,本問はその面白さと,同時にそれを大学人が行う難しさを伝えているように思われる。  
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2020年03月02日

「大和と出雲」(他は含まない)

画文帯神獣鏡・三角縁神獣鏡東博の出雲と大和展に行ってきた。タイトルの通り,古代日本の信仰を追う展示である。出品物はほぼ全て出雲からの出土品または出雲大社の所蔵品,畿内からの出土品または畿内の諸寺院・東博の所蔵品である。出雲側の展示については,展示品リストを見ればわかる通り,多くが古代出雲歴史博物館か出雲大社で見たもので,個人的にはほとんど新鮮味が無かった。逆に言ってこれに感動した人は是非現地で見てきてほしい。絶対に感動するので。逆に大和側も出品リストを見ると,考古学的出土品は多くが橿原考古学研究所付属博物館から持ってきているものなので,直近で行っていたらつまらなかったと思われるのだが,長らく行っていないのでけっこう楽しめた。それこそ,これはそのうち現地で見たほうが楽しそうである。

それはそれとして,今回の展示は邪馬台国畿内説の勝利が裏テーマだったのではないかというくらい弥生時代の大和が押されていて,こんなに数を並べなくてもいいのにというくらい銅鏡が陳列されていたり,箸墓古墳他の初期古墳郡については饒舌な一方で,いつもの東博の展示であれば必ず説明しているであろうと思われるその邪馬台国論争や空白の150年に全く触れていないのもかえって不自然で,余計に「え,畿内にあったのなんて当たり前でしょ?」感が醸成されていた。展示のテーマが「出雲と北九州と大和」ではなかった時点で察するべきだったのかもしれない。その割に仏教公伝は538年説と552年説が併記されていて,このノリなら538年説だけでいいやろ……と思って思い出した。この企画は『日本書紀』成立1300年記念行事だったわ。一応,『日本書紀』を立てた細やかな配慮だったことに気づいてちょっと面白かった。

そうしたテーマ設定を一切無視して言えば,高校日本史的な文化史の振り返りとしては非常に優秀で,この辺は東博らしさにあふれていた。弥生土器→土師器→須恵器といった変遷や,出雲での四隅突出型墳丘墓の登場から大型古墳へ,そして古墳埋葬者の司祭者的性格から武人的性格への変遷,そして古墳から仏教へという大きな変革はわかりやすく,展示物を追っていくだけで自然と感じ取れるようになっている。神仏習合の流れの中でも出雲はそれなりの存在感を放ち,特に鰐淵寺が修験道・蔵王信仰の一大拠点として栄えた……という感じで展示が終わる。


本館の常設展示はあまり面白いものが無かったが,東洋館は「文徴明とその時代」と銘打って明代後期の書画が展示されていた。文徴明とその周囲の画は線がこれでもかという程に細く,ぱっと見た印象は画面全体が「白い」。しかもじっとよく見るとその細い線が驚異的な細かさで画面を埋めているので,実にマニエリスティックな面白さがある。川や空間が白描なのはよく見るが,樹木や山容の中まで真っ白で,あえて奥行きを殺している山水画は「面白い」以外の感想が見当たらない。
  
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