2020年06月20日

『こち亀』も80巻くらいまでは後追いかな

・しゃべる剣がでてくるやつ好き(増田)
→ 『YAIBA』のしゃべる玉(「当」の玉)と,『ゼロ魔』のデルフの印象が強いかな。『リリカルなのは』のレイジングハートになってくると,自発的に話しているかどうかと語彙の少なさが気になって,しゃべる武器に入れるのはちょっと気が引ける。『ダンジョン飯』のケン助は知性はあるがしゃべらない。そうして例を挙げてみると意外とバリエーションがあるジャンルなのかも。
→ 関連して,インテリジェンスソードというジャンルがあることを初めて知った。前述のケン助はしゃべる剣には該当しないがこちらには間違いなく入るように,微妙にずれるのが面白い。


・令和になってドラゴンボールを初めて読む人のリアクションまとめ(Togetter)
→ 新鮮な感想であり,自分もリアルタイムで追っていたのはブウ編だけで十数年前に一気読みした勢なのでけっこう共感もあった。ナメック星編の駆け引きは『ドラゴンボール』作中では特異なんだけどめちゃくちゃ面白いというところとか,後追いで一気読みすると「ブウ編って『ドラゴンボール』が終わるために必要だったんだな。蛇足じゃないじゃん」というのがよくわかるのは本当に共感する。主人公交代を図るも失敗してずるずると大人が出張ってきてしまう展開は,鳥山明本人が孫悟空に重なって見えてしまうのもわかる。
・「ドラゴンボールはフリーザ編で終わってたら名作だった」とかのたまう輩に鉄槌を下しブウ編がいかに最終章として素晴らしいかを力説するための覚え書き(銀河孤児亭)
→ Togetter中に出てくるこの記事も良い。ブウ編の悟空は大人になってしまった世界に対して取り残された子供だったとも言えるし,無理やり大人にさせられて一気に老いたようにも見える。確かにブウを倒した後の悟空に代表されるように,ブウ編の悟空はところどころ疲れているように見えて,こんな形で老いを描写する鳥山明はやはり天才。


・医学部入試での女性・浪人への"一律の差別的取扱い"を認定した、聖マリアンナ医科大学の『第三者委員会調査報告書』は必読(ただし印刷・ダウンロード・テキスト選択すべて不可)(斗比主閲子の姑日記)
→ 恐ろしく明白な差別の証拠で,あまりにも機械的な点数差に笑ってしまう。
→ しかしまあ,こういうのが出てくるから調査書や面接が信用されない日本の入試の風潮がいつまでも消えないのだろう。それでも世の流れは総合選抜型を重視していくことになるらしいので,なんだかな。


・立憲民主党の残念過ぎる入試改革イベントについて(Togetter)
→ 実際にこんな事件もあったわけで。AO義塾の胡散臭さもさることながら,民間団体への利益誘導ありきの入試を批判するイベントで,中高生自らに考えてもらおうという趣旨を掲げておきながら,明らかに総合選抜型入試の拡大を志向する民間団体とイベントを開催するセンスのなさ。もっと言えば,そこで総合選抜型入試を持ってくるなら考えていることは自民党と同じであって,政治家さんたち面接好きですねという感想しかわかない。
→ 立憲民主党は党是は好きだが,こういう浮ついたところがいかにも悪い意味でのバラモン左翼で,やっぱり旧民主党の悪いところを反省できていないと思われ,このままだと支持しかねる。
  

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2020年06月19日

ニコ動の動画紹介 2019.5月上旬〜2019.5月下旬



レベル1縛りでノーフューチャーモード(敵は全てレベル99)という無茶苦茶な縛り。しかし,聖剣LOMは強い武器さえ作成してしまえばどうにかなってしまうところ,その強い武器も制限してしまった。しかし,本当に苦しかったのは序盤のpart4くらいまでで,後はどちらかと言えばストーリーの深堀り・解釈を紹介する動画に変わっていった。傑作実況プレーと言えよう。




ある意味聖剣LOM最大の難関ラ・バン戦。しかもこれを乗り越えないと武器改造が無い。よくこの縛り内容で倒したものだ。そして最強武器作成。ポケステに16時間,果樹園に13時間,改造自体に4時間
かかっていて,狂気の産物である。



エスカデ編の考察。非常に面白いので読むべき。旧世界から新世界への「愛」による書き換え,という聖剣LOM全体のテーマが一番表に出てきているシナリオだったんだな,と今更ながらに思われた。



『レーシングラグーン』のイベント見たことなかったから,助かった。そして『レーシングラグーン』の実況が腹筋よじれるほど笑った。



完結。本当にお疲れさまでした。






某VTuberが実況しているのを見て,完結しているものを追ってみた。琴葉姉妹プレイヤー視点を混ぜ込んだ独自のストーリー解釈が面白い。




NormalP。2019年伊織誕生祭。もはや今どき珍しいストレートなPerfum@s。



毎年恒例,けるまPの伊織誕生祭。2019年は99_Nightsの修正版。



ジャイロPの踊るプロデューサーシリーズ。



メカP。確かにこのユニット,莉緒がいても良かった感じはした。



上半期20選選出。上半期最大の個人的なトピックは久川凪の登場であった。完全にツボに入った。そうそう,彼女はこんな感じのMADが似合う。  
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2020年06月12日

高校世界史における中世・近世の「琉球王国」問題

久々の高校世界史深堀りシリーズ。先日Twitterでこんなアンケートを取った。回答してくれた方々はありがとうございます。



正解は万国津梁の鐘の制作年が1458年なので,一番上の「1429年〜16世紀前半」が正しい。実際に琉球王国の最盛期はこの時期であるというのが一般的な認識であろう。後述の理由から正解者は少ないだろうと思っていたのでそこはあまり驚きがなかったのだが,こんなに綺麗に解答が割れたのは予想外だった。琉球王国の盛衰については,Call of Histroryさんの次の記事が詳しい。

・琉球王国の興隆と衰退を中心に十六世紀東アジア貿易と島津-琉球外交略史(Call of History)

この記事にもある通り,琉球王国の繁栄の源泉は明朝との朝貢貿易を生かした中継貿易にあった。明朝の海禁政策下(民間貿易の原則禁止)において,海外需要の高かった中国の特産品(絹織物と生糸・陶磁器等)を朝貢貿易の形で大量に獲得し,転売した。代わって日本(硫黄や刀剣類)・朝鮮・東南アジア(香辛料・香木)から特産品を集めて朝貢を通じて中国に献上し,その見返りとしてまた大量の下賜を得る……琉球王国はこの繰り返しで莫大な収益を上げていた。こうした中国産品と諸外国の特産品の交換センターとなっていた琉球の生業を中継貿易と呼び,その繁栄の誇りを記したものが首里城正殿の鐘,その銘文から通称「万国津梁の鐘」と呼ばれているものだ。

しかし,こうした琉球王国の黄金期は16世紀初頭から状況の変化により崩れ去っていくことになる。明朝の国力が衰えたために海禁政策が弛緩し,東シナ海では後期倭寇による密貿易が活発になっていった。朝貢に頼らず,抜け道で中国産品が手に入るのであれば,琉球を頼る必要はなくなる。さらにポルトガルを筆頭にヨーロッパ船が出現し,高い航海能力と軍事力でこの密貿易に参入していった。1565年頃からは明朝自身が厳格な海禁政策を諦めて緩和し,民間貿易を黙認する方針に切り替えていった。こうして琉球は国際貿易の独占的地位から追い落とされ,1570年には東南アジアとの交易が途絶える。そうして琉球は日中間のみの中継地に変わり,その矢先に1609年の島津氏による侵攻と日中両属体制がある。



さて,なぜ突然こんな話を始めたかというと,2020年の東大の世界史の入試問題でこれに関連する事項が問われたからである。ありがたいことに最近は公式が問題を発表してくれている(pdf注意,p.14-15)。

第1問,問題の要旨は「15〜19世紀末までの冊封体制のあり方と近代における変容」で,追加の条件として事例のうちベトナムと朝鮮を中心にすること,6つの指定語句を必ず使うこと,そして史料A〜Cに論拠の形で必ず言及することの3つがある。問題全体の解説は本記事の本旨ではないので省くが,このうち最後の「史料を論拠として使わせる」のは東大入試で初めての試みであった。このうち史料Aは朝鮮王朝の小中華意識の論拠に,史料Bはベトナムの阮朝がフランスの侵略を受けた時期であってもなお冊封体制を遵守しようとしたことの論拠に使える。そして史料Cは万国津梁の鐘の銘文である。この銘文に見覚えがある受験生は少なかろうが,これは知識を試しているものではない。むしろ知らなくても,一読して琉球王国の最盛期の中継貿易を描写したものと気付けるかどうかを試しているのだ。あまりにも理念先行だった明朝前半の冊封体制が生んだ特異点として琉球王国があり,その論拠に用意されたのが史料Cである。琉球王国の衰退は,理念先行だった明朝の冊封体制が現実的な形に落ち着いていく歴史の一端であり,上手く使えば解答上のアクセントになる。


しかし,この入試問題は思わぬ受験世界史の盲点を掘り起こすことになる。受験生も教える側も大して琉球王国の中継貿易に詳しくないということである。東大入試の分析は需要が大きいので大手の予備校からすでに様々なデータが出ているが,それらを参照するに,受験生の多くは1609年の日中両属以降を琉球王国の最盛期と捉え,史料Cをその論拠に用いたということが推測されている(予備校各社の分析が間違いでなければ)。Twitterアンケートでいうと上から三番目である。作題者もここで躓かれるというのは想定外だったのではないか。

どころか,指導者側が発表しているネット上の解答でもこの史料Cは受験生と同じ誤りを犯したものが多く,むしろ三大予備校の解答以外では正しく使えているものの方が少ないと思われる(一つだけ名指ししておくと,東進さんは解答が修正されており,公開直後は上述の間違いをしていた)。これは大変な手抜きである。受験生が間違えるのはしょうがない。しかし,受験会場の外ではどれだけでも調べようがある。あるいは,調べた上で,16世紀半ば以前・以後の差異が本問の解答上必要であると認識しなかった可能性もある。

冒頭のTwitter上のアンケートはこの受験生の解答状況や塾・予備校の解答速報と,普通の大人との差異があるかどうかを調べたかったのでとらせてもらったものだ。結果はさして変わらないということが判明して有意義であった。なお,普通の大人として,このアンケートに誤答するのは誇れないにせよそこまで恥じるべきものでもない。ちょっと奇妙な仮定になるが,仮に高校以降に得た知識を脳内から消去して,義務教育レベルの歴史の知識とイメージだけで回答しろと言われたら,私も一番上はちょっと選べない(上から二番目を選ぶと思う)。一般教養の問題としては割と難しい部類に入るのではないか。


このような状況を前にして,そういえばそもそも高校世界史の教科書・用語集・資料集の表現はどうなっているのだろうかということが気になりだした。義務教育の段階では触れないか,触れても薄いと思われるので,高校世界史でやらないのなら,1609年以前以後の判断は受験生には不可能である。同時に本問も,例の企画で言うところの「範囲外の難問」ということになり,無理な要求だったということになる。

ということでいつもの比較である……のだが,実は面白みの無い結果に終わった。受験用世界史Bの教科書5冊のうち,山川の『新世界史』を除く4冊はほぼ横並びで同じ記述であったからだ。以下に一応書き並べる。(非受験用Bの2冊とAは需要があるなら後で調べて追記します)

【山川出版社『詳説世界史』】
◯「琉球が15世紀に明との朝貢貿易を活用した中継貿易で繁栄した」という記述あり。
◯一方,衰退過程については記述なし。次に登場するのは島津氏の侵攻。

【山川出版社『新世界史』】
◯本文の記述は概ね『詳説』と同じ。
◯ただし,コラムで「琉球とマラッカ」の枠が大きくとられていて,琉球もマラッカもポルトガルの出現や明の朝貢体制の弛緩で衰退したことが詳述されている。このコラム中でポルトガルや後期倭寇の出現は,海上交易に軍事力が必要になる時代の到来だったこと,そして「琉球やマラッカのような小国は,そのなかで自立して生きていくのが困難だった」と指摘しており,これは名文と言っていい。

【東京書籍『世界史B』】
◯概ねは山川の『詳説』と同じ。
◯15世紀の繁栄の記述は詳しく,「那覇港に多くの福建系中国人が移住」「那覇は首里の外港として繁栄」という記述もある。
◯コラムで「江戸幕府は,琉球を通じて明との国交回復を図った」という記述があり,このコラムは面白い。

【実教出版『世界史B』】
◯これも盛衰の記述は概ねは山川の『詳説』と同じ。日本史の記述がかなり厚いことに特徴がある教科書なだけに,やや意外である。
◯一応,教科書上15〜17世紀のユーラシアを「第二次大交易時代」と定義した上で,「その前半の主役は,琉球とマラッカ」という書き方をしているから,後半には主役ではなかったという読みは一応可能である。明示的とは言えないが。

【帝国書院『新詳世界史』】
◯こういう時に新鮮な記述が多い帝国書院ではあるが,今回は山川『詳説』と大差の無い内容。
◯那覇港と福建系中国人に言及がある点は東京書籍に似ている。


この状況を加味して東大の問題に戻ると,史料Cを15世紀の琉球王国の中継貿易の論拠として使うことを要求するのは,範囲内の出題として適正と言えよう。それ自体はいずれの教科書にも記述があるのだから。しかし,教科書が琉球王国の衰退を明示していないために,1609年を過ぎても琉球はまだ15世紀と同じ繁栄をしているという勘違いが受験生に広がっていたというのは,教科書執筆者の皆さんも,東大の作題者の方も,全くの想定外だったのではないだろうか。各教科書会社には,琉球の衰退にも触れるのをお勧めしたい。

ここで一種の種明かしになるのだが,この東大世界史の第1問の作題者は川島真氏と推定されており,川島先生は東京書籍『世界史B』の執筆者の一人である。ただし,実際に彼が書いたのは近現代の東アジア史の部分と思われ,前近代は佐川英治氏が書いたと推測される。自分の専門領域以外の部分にどの程度かかわれるかは教科書会社によって異なるらしいのでなんとも言えないが,少なくとも東京書籍の琉球の15世紀の繁栄の詳しい記述を読むに,「史料Cを用意してあげれば,琉球王国の繁栄へのヒントは十分だろう」と判断するのは納得できる。もっとも,上述のような勘違いが蔓延しているなんてことは想定していなかっただろうが。

また,教科書の記述がこうなのであれば,受験生の側にも過失があると言わざるをえないと思う。教科書を”素直に”読むというのは学ぶ者の態度として重要であり,素直な理解があれば,解答作成中に「そういえば16世紀の琉球王国って習った覚えがない」ということに気づき,知らないことは解答に書かないことにすれば,史料Cと島津氏の侵攻を結びつけるという愚行には至らないはずである。

なお,もののついでで日本史も調べてみたが,世界史と記述に大差は無かった。資料集のレベルだと万国津梁の鐘の銘文が記載されていたり,東南アジアとの貿易は1570年を最後に途絶したという説明がされていたりするものもあったので,そこまで見れば世界史よりややマシな状況かもしれない。現代史における沖縄県の立場を考えると,記述が薄いのは日本史の方が問題なのではないか。
  
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2020年06月11日

最近読んだもの・買ったもの(『虚構推理』他)

・『虚構推理』1〜6巻。要するにアニメ化されたところまで。
→ 岩永琴子さんが可愛かった……以外の感想に乏しいのだが,もうちょっとなにか書こう。
→ 実は私はミステリとSFがちょっと苦手で,割と何を読んでも「そうはならんやろがい」と思ってしまって作品に入り込めなかったりする。SFでいうなら『Stein's Gate』くらい「タイムリープによるループをさせたいのであってSF的なギミックはそれっぽければいいんだよ」感があれば乗り切れるのだけど。あるいは『うみねこのなく頃に』のように,むちゃくちゃでルール無用であることを前提としつつ解いてみろと言われるのも,それはそれで納得できた。
→ ひるがえって『虚構推理』であるが(以下ネタバレ有),おそらくミステリに慣れた読者であれば「真相が先にわかってて,むしろ間違っているけど説得力だけはある仮説を後出しさせるのか,ちょっと珍しいな」のような感想になるのだろうが,私からすると「後出しで出てきた仮説,そうはならんやろがい」になってしまって,結局受け入れがたかった。確かに4つ目の仮説は七瀬かりんがサイトの管理者であるというオチが強く,論証の粗はともかく「その方が面白い」と思わせる強さはあり,ネットの掲示板とは”それ”で動いてしまうという性質があるから,”六花さんとのネットバトルとしては”あれで正解だと思う。しかし,読者視点での納得できる仮説だったかというのは別問題である。「そうはならんやろがい」が私の中に残ってしまった時点で,楽しめなかったという意味で私の負けなのだろう。それでもミステリ苦手が克服できなかったという,苦い敗戦であった。
→ そういうわけなので,7巻以降を読むかどうかはちょっと悩んでいる。ミステリとは関係なく,つまり個々の事件とは無関係に,琴子と九郎の行く末が気になってしまっているのだ。6巻までも,この互いが互いを気遣うすれ違いカップルの話としては,かなり面白かった。あとは冒頭に書いた通りで単純に岩永琴子のキャラ造形は抜群に良い。どうしたものかね。





・『東方Project人妖名鑑 宵闇編』
→ 雑誌『東方外來韋編』収録の「東方Project人妖名鑑」の再録。収録キャラはレイマリ,紅魔郷・永夜抄・萃夢想・花映塚・緋想天・地霊殿・星蓮船・ダブスポ・神霊廟・深秘録・紺珠伝・憑依華。要するに単純な作品時系列順ではない。逆に言えば妖々夢・風神録・輝針城・天空璋・鬼形獣・秘封・三月精等の書籍系。雑誌の方で鬼形獣まで追えたらもう1冊出してとりあえず完結,というところだろうか。変にちぐはぐにせずに時系列順に追って,地霊殿くらいまでのキャラで前編にしてほしかったと思うが,前半に人気キャラが多いので後編が売れなくなることを危惧したと思われる。
→ 絵師のコメントが追加されている……以外の追加要素がない。画集としては優秀だが,それにしては2,000円は厚さの割に高い。雑誌を全部保存しているなら買わなくていいだろう。作品順を時系列にしないくらい売上を気にするなら,もうちょっと雑誌からの追加要素を増やしてほしかったところ。




・『アルテ』13巻。アルテが投獄されて,アスセナにより脱獄させられるまで。
→ アルテがいつかはフィレンツェを離れることになるという進路はありえたが,こんなに唐突にそうなるとは思っていなかったので,非常に意外であった。レオはまだしも,ダフネやアンジェロは全く知らない間にこうなったわけで(ヴェロニカさんは察してそう),14巻でその様子が描かれるかと思うと今からしんどい。作中時間で何年後かにフィレンツェに戻ってくることになる展開を予想しておこう。シルヴィオ・パッセリーニ枢機卿が亡くなるのが作中時間から7年後(1529年),あるいはフィレンツェから追放される5年後(1527年)あたりが目安になるだろうか。
→ なお,シルヴィオ・パッセリーニはこの追放される直前に16歳のヴァザーリをフィレンツェに招いてアンドレア・デル・サルトの工房に入れるという美術史上重要な役割を果たしている(この師弟関係は初めて知った)。『アルテ』は実在の有名画家は,登場人物の台詞にしか登場させていない(単なる歴史上の人物は多く登場しているのに)というこだわりがあるので,後に唯一ちゃんと登場する実在画家としてヴァザーリだけ登場するという展開も面白いかもしれない。『アルテ』世界の『芸術家列伝』に唯一記載がある女性画家,とかで。  
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2020年06月10日

新たに「オランダ・ネーデルラント問題」と名付けたい

・蝦夷の領域に築かれた最北端の古代城柵・秋田城を訪ねる(明晰夢工房)
→ 高校日本史で渟足柵・磐舟柵の次の日本海側のヤマト政権の拠点として習うものの,遺跡が残っている印象は無かった秋田城。所在地すら確定していない渟足柵・磐舟柵とは違い,長期的な拠点だったのだから当然遺跡があるのであった。思ってたよりしっかりしていて,これは行く価値があるかも。
→ かみのやま温泉に行ったときに触れたが,古代の東北だとこの瓦のようなレベルの陶器はおそらく相当に珍しく,さすが当時の出羽最大の拠点である。
→ ほとんどが復元されたものとはいえ,これだけの出土品があって百名城ではなく続・百名城らしい。やはり少しでも現存の建物が無いと厳しいか。
→ 能登客院・松原客院のイメージが強いので,渤海人が来ていたイメージは無かったのだが,使節ではなく商人ということか。渤海が滅ぶと来なくなったのだろうか。秋田城自体も11世紀頃には俘囚の襲撃が重なって放棄されたようだ。ツングース系の人々が日本に現れるのも,目立ったものでは刀伊の入寇まで下ってしまうが,出現したのが博多というのは秋田城で通商していたことからすると,どうも南すぎるように思われる。古代の日本海もよくわからないことだらけだ。


・オランダ、国名の通称「Holland」の使用を廃止(Forbes JAPAN)
→ 言いたいことはわかるが,もう定着しきっているし,「差別的だから絶対にやめましょう」みたいなものとは違うので難しそう。
→ これに対して当時に「これが日本に波及して定着した場合,漢字の「蘭」はそのまま残って,事情を知らない人になぜ蘭なのか説明する必要が生じる面倒くさいやつだ。」とブコメしていて,頭の中にあったのはオスマン帝国呼びが定着したのに略称はいまだにトルコを引きずった「土」というネタであるのだが,中国語のネーデルラントの表記が「荷蘭」で略称が「蘭」だから結局変わらないという説もあるらしく,めちゃくちゃ面白い。Hollandとlandだから,確かに音は同じだ。
→ それはそれとして,ホラントとオランダの時点で「原型は残っているけど」レベルに違い,説明されなければ知らない・気づかない人も多いだろう。しかも「北ホラント州」と「南ホラント州」は普通にホラントの音で呼ぶから,妙な形で州と国が区別できている。そうすると,これはいわゆる「ベトナムとヴェトナム問題」(※)とは形がかなり異なるものの,オランダのままの方がスムーズにいきそうという点で着地点は似ている。オランダ当局がこの説明で納得してくれるのならば日本には波及してこない可能性も。
(※ ヴェトナムという表記も厳密な現地語発音の再現としてはどうせ大間違いなので,日本語の表記として簡素なベトナムを押すべきという話。)


・Fランク大学が都市部で消滅へ〜激戦の大学受験事情とは(石渡嶺司)(個人 - Yahoo!ニュース)
→ 2016年からの私大の定員厳格化が玉突きで,2019年にはとうとうボーダーフリーまで到達したという様相。加えて,年々推薦入試やAO入試(2020年度以降は総合選抜型入試)の定員が増えているので,それでなくても一般入試は定員が減り,偏差値が上昇傾向にある。ただし,漏れた受験生を吸引したのが都市部の私大なので,厳格化が本来の目的を達成していないのかもしれない。
→ なお,各大学の入試問題の難易度が変わったわけではない。それで倍率が上がっているということは単純に高得点勝負になっているということであり,入試の戦い方にも影響が出ているということである。難問にひるまないけど,ケアレスミスが多いタイプの子には厳しい時代だ。
→ そうそう,2020年6月現在の後知恵で言うと,「センターから共通テストに切り替わるため,現役志向が高まって,安定志向から中堅以下の私大で競争が激しくなり,浪人生は減る」という事前の予測は,どうもそうでもなかったようだ。記述式が消滅したために心理的なハードルが下がったのではないかと言われている。この記事では「共通テストが実施される2021年以降もこの傾向は大きくは変わらない見込みです」とされているが,これは否定されよう。それよりも新型コロナウイルスがちょうど受験が終わった3月頃から本格化し始めた影響の方が出ているようだ。大学の定員が変わらない中で受験生が減少しているので,2021年度の入試は逆に,全体的に偏差値が下がりそう。こんなことになるとは,誰も予想していなかった。
→ まあ,そもそも高校の1学期開始が遅れたせいで,今年はまともな一般入試の入試日程が存在するのか,という議論もあるのが悲しいところ。  
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2020年06月09日

※ 愚者の館は現在もう存在しません

・[PDF] 桃太郎と学ぶ民法(債権法)改正後のルール(法務省)
→ やればできるやんけ,と思わせられる法務省の解説漫画。解説漫画だが子供向けではなく大人向け,かつちゃんと面白くできているのはすごい。冒頭の「これからあなたには複数の法律トラブルに巻き込まれてもらいます」という雑な振りがかえってその後もこのノリで進みますという紹介とギャグを兼ねている設計で,ここからしてもう作り込まれている。紹介漫画はここをミスると固くなったりギャグが滑ってシュールになるので,難しいのだ。
→ 2話の話はネガティブ・オプション(送りつけ商法)も意識したものだろうし(ネガティブ・オプションの場合は契約書自体が存在しないが),3話の敷金のトラブルも近年よく話題になるので,内容も現代的だと思う。それはそれとして,5話の保証人の話とかかなり大きな変更だと思うのだが,この漫画を読むまで全く知らなかった。それほど周知されていないのでは。
→ 桃太郎は法律ネタで使いやすいのか,このネタを思い出した。


・インドカレー屋のサラダにかかっているオレンジ色のドレッシングの正式名称・販売店・レシピ(Togetter)
→ これは確かにちょっと気になっていた。ナンがほぼ日本に特有のインド料理というのを聞いていただけに。オチとしては半分予想通りで,ナンと同じくほぼ日本のインド料理屋に特有のドレッシングと言って良さそう。一方で,あまりに似通っているのでまとめて作っている製造・販売業者がいるのかと思いきや,そうでもなさそうという。確かに店ごとに微妙に味が違うのだが。要するに,インド料理屋のコミュニティで「この種のサラダドレッシングは日本人に受ける」的な情報は共有されているが,生産は各店舗ごとというのが真相のようである。意外。


・天気の子について書いたら監督に読まれた上にアンサー貰った話と、あの日とあるオタクに何が起こっていたのか。(セラミックロケッツ!)
→ 自分の感想でも使わせてもらった記事の,半年経った後の追記的な記事。新海監督に言及されて本当に良かったと思うし,それであの記事が完成されたなというのは読者としても思った。この記事自体もネタっぽく始まって最後の「あの映画とあの記事に至るちょっと前の話」で泣かせにくるのが,2000年代のエロゲっぽくてメタ的に良い。
→ 実際にこのストーリーが世間に受け入れられたのは衝撃で,ゼロ年代のエロゲ的想像力は十年経って,”そう意識はされずに”ちゃんと世間の一部になっていたのだなという感慨はある。新海誠本人は(至極当然ながら)そうとは意識せずに作ったというのが,余計にそう思わせる。最初に見終わった後の,新海誠の元カレ面した俺たちの「やりやがった! マジかよあの野郎」(杉元佐一の顔で)という心配顔は完全に杞憂であった。
→ ついでに半年ぶりに自分の感想とか例の記事とかを読んでみたけど,やっぱり原作(とコンシューマー版)があったという記憶しかないし,隠しルートの四葉ルートに入れなくて愚者の館で攻略を調べた記憶しかないし,徹夜でクリアして汗ばんだ手と淀んだ目でコンビニに朝飯買いに行った記憶しかない。あの集団幻覚はなんだったのか。なぜあの映画は2010年代の最後に,令和の初年度に,minoriが解散したその年に,公開されたのか。あまりにも,ベストタイミングだった。  
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2020年06月08日

今更ながらに実写版『ゆるキャン△』の感想を書いておく

実写版『ゆるキャン△』は,『咲-Saki-』の実写版が巷で言われているほど成功しているか? と思っている私でも,これは認めざるをえないほどの実写成功例だったと思う。無理に髪の色などを再現せず,逆にストーリーラインはあまりいじらずに雰囲気を重視したのが大変良かった。私は指摘されないとなでしこの髪の色がピンクじゃなかったのに気づかなかった。そのくらい演者が作品世界にマッチしていたと思う。

「原作再現度が異常に高い大垣」「油断すると美人になる大垣」のようなネタがコンスタントに投入されたのも好材料で,福原遥の志摩リンも主人公故にかえって注目されないが見事な陰キャ再現度だった。逆になでしこはそのままだと漫画的表現すぎるので,1話はそのきらいがあったが,2話以降は実はちょいちょい改変が入っていて自然な形になっていたのも良い調整。実写化失敗の最大の原因はキャストミス,次点でこういう調整であるので(『咲-Saki-』の実写版は私は後者のリアリティラインのミスがけっこうあったと思っている),どちらもミス無く通過したのは幸福なことであるし,制作陣の努力を評価していいだろう。なお,大垣については制作陣としても想定外の出来だったようだ。確かに,あれは予想したキャスティングだったという方がおかしい。
・『ゆるキャン△』キャスティングの妙、渾身の野外ロケで“化けた”実写ドラマ版。制作陣がこだわった「原作再現」の方法論とは?(エムオンプレス)

ただし,リアリティラインのミスについて一点だけ指摘すると,鳥羽先生の妹の「男と間違えられる」ネタをそのまま実写化したのは明らかにリアリティが無く,あれは声がなくて容姿もぼやける漫画だからこそのネタであるので,原作を踏襲しなくてよかっただろう。忠実な再現を期待する原作ファンの批判を気にしたのかもしれないが,そこは大胆にいってほしかった。

『ゆるキャン△』特有の要素で言えば,実写で見たいもの,美しい風景やキャンプめしをちゃんと再現できていたのも良い。ただし,これは順当に実写化すれば実現容易な部類のものであるので,制作陣の努力というよりかは『ゆるキャン△』が実写化向きの素材だったと評価した方が自然だろう。一方で原作には全く無かった要素ながら,入れて大正解だったのは「しれっと入り込むキャンプ系YouTuberひろし」ネタで,これは良改変だったと思う。『ゆるキャン△』が漫画ではなく実写の世界だったからこそ入れられたネタで,野クルの面々なら当然知っているというのはリアリティがあり,ひろし自身の「ゆるさ」も作品世界にマッチしていた。これもちょっと間違えると一気に世界観が崩壊する系統の改変であったので,お見事という他ない。  
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