2020年08月31日

奇しくも『エーゲ海を渡る花たち』の逆コース

・修道院所蔵の刀剣、5000年前のものと判明 伊ベネチア(CNN)
→ タイトルに「5000年前のものと判明」とあるのに,本文に「この合金は主に紀元前4世紀の終わりから同3世紀初めにかけて使われていたもので」とあって,どっちが正しいのかといぶかしんで原文に当たってみると,"the end of the 4th and beginning of the 3rd millennium BC" となっていたからタイトルが正しい。本文の方はmillenniumを盛大に誤訳している。
→ ついでに本文の末尾に「修道院の記録文書の調査担当者によると、刀剣は1886年の8〜9月、トルコのトラブゾンにある同じ宗派の聖職者組織から贈り物として届けられたという。」とあるが,トラブソンとヴェネツィアで同じ宗派? となってこれも原文の該当部分を読むと,"the monastery is home to the Mekhitarist friars, an Armenian Catholic congregation who settled there in 1717 " とあって,要するにアルメニア典礼カトリック教会の修道院だった。同じ宗派の聖職者組織間のやり取りであるから誤訳ではないが,宗派名を出さないのは誤解を招きやすく,そもそもこの訳者がカトリックと東方典礼カトリックの区別がついていないのではないかという疑惑にもつながる。
→ それはそれとして,東方典礼カトリックの中でもアルメニア典礼カトリックとは珍しいし,ヴェネツィアに18世紀初頭に修道会を設立していたというのも興味深い。その聖職者を介してトラブソンからヴェネツィアへ「中世の短剣」と信じられたものが送られたってだけでロマンが山盛りである。そこに,約120年も宝物として安置された後,21世紀になってから古代製,それも青銅器時代の初期のものと判明するなんてどれだけ属性を持ったら気が済むのか。5000年前のものとしては保存状態も素晴らしく,経歴から言っても聖性を帯びている。誤訳から調べ始めたものだが,これは調べてよかった。


・アニプレックスがノベルゲームを作る理由 ― 仕掛人は『サクラノ詩』で人生を肯定され、社内で“エロゲー大好き”をアピールし続けた元営業マン(電ファミニコゲーマー)
→ なんでまた今更アニプレックスがノベルゲームを,と思っていたら,けっこう個人の働きかけが強い企画だった。エロゲー黄金期を遊んできた人間かと思いきや,ちょっと後追いくらいの立ち位置で,2010年代にだって面白いエロゲーはあるんだぞという気概を持っている人だった。出てくるゲームの名前が,私の趣味とは合わないものも含めてすごく「ああ,エロゲーマーらしいエロゲーマーだ」ってわかるラインナップでちょっと笑ってしまった。この人も絶対『天気の子』見た後に例の幻想に捕まってたでしょ。これだけ語っていて,実際に作られた作品が10時間未満の比較的短編でしかも全年齢・Steam売りというのは極めて現代的である。というよりも,『天気の子』もまさにそうだったのだが,エロゲー黄金期に積み重ねられたあれやこれやのノウハウはそれなりに価値があるもので,それらがこうした”脱色”を経てコンテンツの最前線に戻ってくるのは,完全に傍から見ているだけオタクではあるが,やはり喜ばしいし現象として面白い。
→ で,これだけ熱意がある人がプロデューサーについて,アニプレックスの資金と人脈を駆使したゲームなのだから面白いのだろうと思われ,実際に批評空間を見ても2作品ともぼちぼち評判が良いのだが,『ATRI』の前に『サクラノ詩』を積んでいて,嘘屋作品がそこまで好きでもない自分にはプレイする機会がしばらく無さそうなのであった。身内・知人で誰かプレイした人がいたら感想を聞かせてください。


・中世の姿残す荘園遺跡の荘園領主募集 大分・田染荘(JAcom 農業協同組合新聞)
→ なかなか面白い試みだと思う。もうちょっとだけ詳しい歴史を知りたいと思って検索すると,あっさりこんなのが出てきた。こう言ってはなんだが,豊後高田市教育委員会がこんなに詳細に調べているとは思わなかった。国東半島という立地で宇佐神宮の荘園であったそうだが,戦国期に大友氏の支配下に入って宇佐神宮の大所領が解体され,豊臣氏の侵攻を経て江戸時代には島原藩の飛び地所領となったそうだ。近隣には,院政期の代表的建築物として名高い富貴寺大堂もある。この中世の宇佐神宮の所領だった頃から水田や水路の地形がほとんど変わっていないのであれば,確かに「荘園」を名乗っても許されるだろう。リアリティを追求するなら,年貢以外に”公事”(という名の特産品)の貢納もあったり,茶番的に購入者が宇佐神宮に何か納める必要があったりしたらより面白かったと思うが,さすがに面倒か。  

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2020年08月23日

ドラゴンの杖までパパスの剣で引っ張ったり

・「先生がオメガを倒したら宿題やってきてやるよ」と生徒が言ったので、わたしはゲームライターになった(Yuka S.|note)
→ ゲームライター菅原有香氏の昔話。良い話を読んだ。プレイヤーは主人公なのか,神の視点からの導き手なのかというのは古典的なテーマではあるが,確かにFF5では後者であって,かつ「プレイヤーはクリスタルだった」と言うべきなのだろう。また,こういう物語性のあるゲームだとやっぱりロマン枠はあるというか,効率とロマンの配分をどうするかも含めて,最も自分が楽しめるであろうプレイ内容をデザインするのがプレイヤーに与えられた権利である。誰がうってもダメージにさしたる差はない(しいて言えば基礎魔力が一番高いのはレナだったか)が,やっぱりシルドラはファリスに使わせたくなる(同様にフェニックスはレナ)プレイヤー心理は,FF5をやったことがある人なら誰しもが通っているデザイン選択であろう。
→ それはそれとして言うなら,オメガ討伐はやっぱり魔法剣サンダガみだれうちではありw,自分はそれであっさり倒してしまった。『こち亀』にも載っている信頼と実績の戦法である。自分がやった頃はインターネットは全然普及していなかったにせよ,すでにそれなりに情報が出回ってしまっていて,そもそも兄が先回っていろいろ教えてくれていたので,FF5の場合は自分で模索して探すということはなかった。それでも当時の攻略情報だと「ちょうごう」の強さは全然知られておらず,あれはインターネット普及後に復権したイメージである。サムソンパワーを先生に勧めてきた当時の塾の生徒たちはすごい。
→ しかし,ボスを倒すために試行錯誤を繰り返す楽しみというのは間違いなくあって,自分の場合だと,
○『FFT』のウィーグラフ一騎打ちをラムザのエール(Speedアップ)とチャクラで逃げ回って自分のSpeedが30くらいになってから一方的に殴る戦法
○『サガフロンティア2』で,サウスマウンドトップの戦いで偽ギュスターヴ軍を8ターン耐えきるための動き方(ついでに言うとエッグも攻略を一切見ずに倒した)
 あたりは攻略を見ずに完全に自力で思いついた事例で,すごい興奮しながらゲームをしていた記憶がある。最近はどうも詰まったら面倒になって攻略に頼りがちで良くないが,社会人は時間がないので許してほしい……


・東京五輪一年延期→古代ギリシャ的には「真のオリンピックイヤー」かつ400年に一度のキリ番(追記:さらに延期先の2021年7月23日は古代の元旦)(Togetter)
→ 東京五輪延期の陰で起きていたミラクル。紀元0年が無いから,前776年に始まったものを,1896年にリスタートすれば1年ずれるよなという単純な計算の話ではあるが,それがちょうど700期だけ綺麗に一致したのはミラクルというほかない。
・古代ギリシャ目線でここが変だよ現代オリンピック(アトロク『古代オリンピック特集』まとめ)(Togetter)
→ こちらのまとめも面白かった。「汚職と賄賂にまみれているのは,古代としては正しい」はそりゃそうなんだけどもw。


・文字化けでよく出てくる漢字の意味を調べて愛でる(デイリーポータルZ)
→ 最近文字化けもあまり見なくなったので,このネタは割とおっさんホイホイであるかもしれない。「鐚」は,鐚銭が高校日本史の撰銭令で出てくるから,実は読める人が多そう。「悤」は,確かに「聰」なら寺尾聰など人名でなら見ることがある。私がぱっと思い浮かんだのは当然ながら秋山聰。「悤」だと「忽」と同じ意味で「あわただしい」の意味になるのに,「聰」だと「聡」の旧字でむしろ「さとい」の意味になるのは面白い。賢い粗忽者も当然存在するので,余計に面白い感じはする。
→ 気になって同じようなことを考える人はいるようで,ニコニコ大百科にも同じような記事があった。こういう時にニコニコ大百科は謎に強い。
・縺(ニコニコ大百科)  
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2020年08月16日

日時指定された異世界へ(ロンドン・ナショナル・ギャラリー展)

ウッチェロ《聖ゲオルギウスと竜》Twitterで流れてきたTweetに「美術館とは,気軽に行ける異世界だった。日時指定で行けるようになっても気軽さがない」というものがあって,非常に強く同意していた。なんとなく美術館に行くのが億劫になっていたが,それを言語化できずにいたところであったので,まさに我が意を得た言葉であった。それでも異世界への思いは絶ち難く,重い腰を上げてイープラスのアプリを起動して,やっと行ったのが西美のロンドン・ナショナル・ギャラリー展であった。

本展は展示数が61点と少なかったが,非常に豪華だった。こういう海外の大規模美術館から借りてくる時は目玉展示が数点,後はまあ……ということになりがちであるが,今回は紛れもなく端から端まで目玉展示になるものがそろっていて,極めて満足感が高い。コロナ禍に巻き込まれて全然集客できていないのが非常にもったいない。ついでに言うと,宣伝もゴッホに偏っていたのはちょっともったいない。

第1章はイタリア=ルネサンス。いきなり最初にウッチェロの《聖ゲオルギウスと竜》が出迎えてくれる(今回の画像)。聖ゲオルギウスが描かれることがそれほど多くないので,彼といえばこれという作品。聖ゲオルギウスは竜を瀕死にした後,竜に生贄として捧げられていた姫とともに宮殿に連れて帰り,「キリスト教に改宗するなら,とどめを刺します」と告げたそうなので,姫が竜の首に繋げられた縄を持っているのだが,むしろこの縄のせいで「姫が飼っていたペットの竜を刺殺されているシーン」にしか見えない。それはそれで何か物語が作れそうな設定ではあるが。(FGOでゲオルギウスにお世話になった人はここで詣でておきましょう。

2枚めも豪華,カルロ・クリヴェッリの《受胎告知》。めちゃくちゃ急角度な一点透視図法は,それが定着し始めた頃のイタリアでは大受けだったのだろう。それだけに,透視図法を無視して天から降り注ぐ「受胎しろビーム」が非常に目立っていて,画題の面目躍如である。クリヴェッリの硬質な描き方も,建物が目立つ本作ではよくあっている。なお,本展の図録カバーは本作とゴッホの《ひまわり》の二種類から選択可能である。他にギルランダイオ,ボッティチェッリ,ティツィアーノと来て最後がティントレットの《天の川の起源》。これもこのギリシア神話の1シーンを説明する際にほぼ必ず言及される絵で,ここで見れたのは僥倖であった。

第2章はオランダ黄金期の絵画。レンブラントの自画像,フランス・ハルスの肖像画,ヤン・ステーンやテル・ボルフの風俗画,クラースゾーンの静物画とおなじみの面々が続く。フェルメールも1点,《ヴァージナルの前に座る女》が来ていた。本作の特異性は,フェルメール作品なのに画面の左側の窓がカーテンで覆われていて,残った部分も宵闇となっていて光が差していないことにある。2枚の画中画が置かれているのも珍しい。壁にかかっている大きな絵はディルク・ファン・バビューレンの《取り持ち女》と特定されているが,ヴァージナルにかけられた風景画は言及している文献が少ない(図録でも言及がなかった)。宵闇や画中画,加えてヴァージナルの手前に置かれたセッション用の弦楽器から,本作はまあそういう男女の密会の光景だろうとされている。本作が来ているとは知らなかったので,思わぬところでフェルメールのスタンプラリーが一つ埋まって嬉しかった。私はこれで23/37(22/35)点となった。

第3章はやっとナショナル・ギャラリーらしくイギリスの絵画。ヴァン・ダイクで幕を開け,レイノルズとゲインズバラに続いていく見事な構成。個人的に面白かったのがライト・オブ・ダービーによる肖像画があったことで,ライト・オブ・ダービーと言えば《空気ポンプの実験》等の科学実験や講義のイメージしか無かったので新鮮だった。当然ながら,彼も主要な収入源は近隣のジェントリや産業資本家の肖像画だったのだ。

第4章がグランド・ツアー。イギリス人貴族・富裕層の若者によるイタリアへの修学旅行であり,土産物としてイタリア現地の風景を写した絵画を購入するのが流行していた。ここもカナレットとグアルディというこの分野の二大巨頭の作品が展示され,カナレットはイギリス滞在中に描いたイートン・カレッジの風景画もあり,客層とニーズをよくつかんでいる。カナレットがイギリスに滞在していたのは初めて知ったのだが,9年間とかなり長い。やがてグランド・ツアー需要が増すと,イタリア人だけでなくフランス人のジョゼフ・ヴェルネやイギリス人のリチャード・ウィルソンなどもお土産系イタリア風景画に参入して人気を博した。ジョゼフ・ヴェルネやリチャード・ウィルソンの作品は本展の他に,西美の常設展に展示されているので合わせて確認したいところ。

第5章は少し時代が戻って17世紀のスペイン絵画。なぜこのような構成になっているかというと,イギリスのスペイン絵画受容がナポレオン戦争を契機としているからだそうで,であれば確かにグランド・ツアーの後に持ってくるのが正しい。ここもエル・グレコ,ベラスケス,ルカ・ジョルダーノ,ムリーリョ,スルバラン,ゴヤと錚々たる面々。スルバランの殉教した聖女シリーズを久しぶりに見た気がする。今回は《アンティオキアの聖マルガリータ》で,竜に丸呑みされたが奇跡によって龍の腹が割けたので脱出しえた,というすごい伝説を持つ。アトリビュートは当然竜になるので,本作でも竜を侍らせている……思わず侍らせていると書いてしまったが,聖マルガリータが羊飼いの格好をしていることもあって,これも竜が飼われているようにしか見えない。この竜,普通にかわいいんだよな……。ゴヤの作品はウェリントン公の肖像画。キャプションにある「表情がやつれて虚ろ」「スペイン戦役の苦労が表れている」という言葉の通りで,威厳に満ちながらもやつれている表情の表現が見事であった。

第7章は18世紀後半以降に隆盛したイギリスの風景画とその前史。クロード・ロランとプッサンの古典主義風景画に始まり,サルヴァトール・ローザとロイスダールの影響が入って次第にピクチャレスクに向かい,最後にコンスタブルとターナーが登場してロマン主義が流行する。クロード・ロランの作品は有名な《海港》シリーズの1作。十分に豪華ではあったのだが,個人的に風景画が一番好きなのでさすがにもうちょっと作品数がほしかったところ。コンスタブルの作品が1点だけというのは悲しい。

ラストの第8章はフランスの近代絵画。イギリスはラファエル前派が強かったこともあって印象派受容は遅れたが,それでも(前に展覧会が来ていたコートールド等ががんばったおかげで)そこそこのコレクションがある。今回の展示にいたのは新古典主義のアングルから始まってコロー,アンリ・ファンタン=ラトゥール,ピサロ,ルノワール,ドガ,ゴーガン,モネ,セザンヌ,そして最後にゴッホの《ひまわり》。ロンドン・ナショナル・ギャラリーにある《ひまわり》は画面全体が黄色で,他の《ひまわり》にも増して強烈なインパクトがある。こんなものを描いていたのだからアルルの時点ですでに病んでいるよなという思いが強くなる一品だった。


というように思わず作品を列挙して長々と書いてしまったが,これほどまでに美術史の教科書に載っている作品が多く展示された企画展は,それもわずか61点に凝縮されているものとなると本当に珍しい。自分のブログの過去ログをさかのぼって見ていっても,本展に勝てそうな西洋美術の企画展が過去5年でちょっと見つからなかった。日時指定になっているためにゆったり見られるのは,鑑賞者にとってはありがたい現象で,お盆休みを除くと意外にもチケットは取りやすく余っている印象である。2020年の西洋美術の企画展を1つだけ挙げろと言われたら間違いなく本展になるだろう。  
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2020年08月15日

ニコ動の動画紹介 2019.8月中旬〜2019.9月中旬




相変わらず斬新なルールを思いつくものだ。これは普通に面白いと思う。4人麻雀でやってもよさそう。



おやつ氏。ロマサガ2の初期乱数を固定するための行き着く先が冷蔵庫でスーファミ本体を冷やすの,面白すぎる。



ピロ彦氏。おやつ氏考案のチャートを限界まで最適化したとのこと。とんでもない記録である。ちょっと前まで,難攻不落だったFF5もとうとうサブフレームリセットには負けたか……とか言っていたのに。解説もめちゃくちゃわかりやすい。




tktk氏。下半期20選ノミネート。放クラが似合いすぎる。




カニル氏。下半期20選選出。透けm@sterという文化が復興したのはニコマス史上特筆すべきトピックスであろう。



たらひP。下半期20選選出。「さすがに9人は」というハードルを超えてきて視聴者感動。でも本当に無理しないでほしい。



メカP。下半期20選ノミネート。I don't know why you say ほわ…, I say 真乃.ってこっちが聞きたいよ。



メカP。こちらはまじめ人力ボーカロイド。



ぶれP。下半期20選ノミネート。人力ボーカロイドはこれにて引退とのこと。高精度なだけに作るのが大変だったのだろうな。



ぎょP。今考えると当時の衣装課金はまだマシだったな……えらい時代になってしまった。



Ya-maP。人力ボカロ上手い。



まとめられること前提で作ってるでしょこれ。だんだん様子がおかしくなっていくw。  
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2020年08月10日

無料観覧日,ソーシャル・ディスタンスを保つのが難しそう

・アメリカの二大政党は「保守対リベラル」の構図だけで分析することはできない / 西山隆行 / アメリカ政治(SYNODOS)
→ 相対的な社会的弱者の利益集団の連合体+いわゆるリベラル志向の人々という民主党と,それに対抗する勢力が大同団結した共和党という構図なので,いずれも党内が全く一枚岩ではない,という指摘。たとえば民主党は白人労働者と黒人・ヒスパニックはどちらも社会的弱者であるが,利益は相反するし,国会議員のレイヤーでも各法案に対して1割程度の造反が生じるという。
→ 現代社会はとにかく政治に求められる視点が多様で,にもかかわらず多様な集団を無理やり何かで線引して二つの勢力に割らざるをえないのが現代の二大政党制の持つ脆弱性とは言えよう。結果として,二大勢力それぞれの内部抗争が激化し,こぼれ落ちてきた人々の心を捉えるところからサンダースだったりトランプだったりが台頭したわけで,制度の疲弊は覆い隠せない段階来ていると思う。それでも二大政党制自体は壊れないのが面白い。この記事の前半部分で指摘されているように,すでに歴史が長く,地方の政治組織が確固たる地盤を築いていて,今更党が割れたり第三党が勢力を伸ばしたりというのができない環境なのだろう。自由の国も随分と硬直化している。これが250年の重みなのだろう。
→ 翻って本朝はというと,記事末尾で指摘されている通り,自民党はまさにアメリカ共和党的な大同団結状態で,内部にいろいろありつつも1党ではあるのに対し,野党は多党乱立である(さらに言えばここは”野党”であってリベラルではない)。この記事でアメリカでも民主党は割れやすいが,共和党は文句があっても結局トランプに投票した人が多かったとされているのと同じ現象が起きているが,社会的弱者は分断されやすいという傾向は一般にあると思われる。では本朝の野党もアメリカ民主党のように無理くり結束すればよいかというと,それは2009〜2012年の民主党政権で完璧に失敗したのでかなり難しくなった。返す返すも,あの政権の失敗は日本の政治風土に致命的な損傷を与えたと思われ,残念でならない。記事の最後の最後で,
>政治家の実際の政策的立場に大きな違いがないにもかかわらず、政策の違いに基づく政権交代の必要性を強調したのだった。このような無理のある枠組みで政治を展開させることに限界があったことが、今日に至るまで有権者が政治家、とりわけ野党に対し不信を抱いている一因ではないだろうか。
  と指摘されている点は大変に重く,これはネット上の自民党支持者が「野党は反対ばかりで提案が生産的ではない」という(事実に反した)批判を展開しているのと表裏一体である。


・世界のミュージアム入館料事情を探る(スペイン・アメリカ編)(美術手帖)
→ 確かに日本の大手美術館は「高校生(大学生)以下無料」は充実しているが,全員が無料になる日や無料になる時間帯を実施しているところはほとんど見ない。財源が無くて苦しいので,記事末尾にあるようなメンバーズ制を強化する等して,無料日を設定するのが日本的なやり方だろうか。また,最後に
>イギリス、ロシア等に目を向ければ、また別の解法も浮上するのではあるが(イギリス・ロシア編へ続く)。
  とあるので,後編を期待して待っていたのだが,半年経過しつつある。まだかな。


・廃れる鳥葬 伝統と変化のはざまで揺らぐ社会 ディアスポラ@南アジア(パールシー編) | 神と喧噪の南アジアから | 松井聡(毎日新聞)
→ パールシーといえば鳥葬であったが,都市化の影響がこんなところに。そもそもパールシーに残っているゾロアスター教の儀式に込められた意味は歴史の中で全く失われていて,コミュニティの伝統として残っているだけという話も(青木健の本で読んで)聞いたことがあるし,寂しくはあるが,こうした現代社会への適応から伝統は消えていくのだろう。タタ財閥が健在だからコミュニティが完全に消滅することはなさそうな気はするが。  
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2020年08月08日

全ファイナルファンタジー大投票の感想戦

・結果発表|全ファイナルファンタジー大投票(NHK)
ついでに便利リンク:FF大投票まとめ

作品部門から。FF7が1位では無かったのがちょっと意外だった。FF10なんだなぁ。同じくFF8も人気が高いと思っていたので,7位に終わったのも驚いた。FFTは人気が高い作品だが,「あれはそもそもFFなのか」というところで意見が割れる作品ではあり,そこが人気投票でネックになったと思われる。私自身,このナンバリングが並ぶ人気投票でFFTに入れていいものかどうかは逡巡した。

キャラ部門だと,クラウドがユウナに差し勝って1位,しかも3位にエアリスと想像通りの強さを見せた。ティファもザックスもトップ10にいて計4人いる。FF10はキャラゲーではあるが,FF7よりはストーリーが受けたという要素の方が濃いのだろう。FF10は主要キャラの最下位がキマリかワッカだと思っていたのだが,意外にもワッカがルールーに勝っていた。FF10-2は未プレイなのだが,この二人の順位が逆転するような何かがあったのだろうか。それ以外だとスコールが14位なのにリノアが35位というのに笑った。FF8の弱点はヒロインだったか。それでもFF8はスコールとリノアに票が集中した様子であり,ゼルやアーヴァインは世間的な人気の割に明らかに順位が低い。逆にFF6も魅力的なキャラが多いが,多すぎて票が分散したのは見て取れる。私はセリスに入れました。FFT最上位がアグリアスというのがFFTのファン層をよく表してますね,間違いない。私も入れました。

ボス&召喚獣部門は未投票なのでパス。

最後に音楽部門。1位は「ザナルカンドにて」でFF10の作品人気の原動力を見た。ストーリーとマッチしてたもんなぁ。私の投票先は,新しき世界(FF5),仲間を求めて(FF6),妖星乱舞(FF6),Eyes on me(FF8),Antipyretic(FFT),次点で入れられなかったのが決戦(FF6)と死闘(FF6)。お察しの通りFF6だらけになるからやめたのだが,FF6は名曲が多すぎる。5票じゃなくて1票だけと言われたら「仲間を求めて」にしていた。文字通り,どん底の状況から希望を持って仲間を再結集させる世界崩壊後のストーリーの流れに合っていて美しすぎる。「妖星乱舞」は長い長いラスボス戦にふさわしい大作で,トップ10に入っていなかったのは予想外だった。長すぎるのがダメか。

Antipyreticと新しき世界の順位が低いのは曲名の知名度の問題であろう。悔しいのでここに貼っておく。

FF6の「仲間を求めて」は世界は完全に崩壊してしまったが,ゼロから再生させるという希望を感じさせる曲になっているのに対し,FF5の「新しき世界」はエクスデスからこの第三世界こそが真の世界であることが告げられ,美しくも儚い詩情がある。これはこれで冒険の最後にふさわしいフィールド曲であろう。FF5といえばこちらにも「決戦」があるが,エクスデス戦限定の曲であるがゆえに,「死の宣告」や「ホワイトホール」の効果音の幻聴が聞こえてくるという意味では印象深い。


FFTはメインの旋律が複数の曲に使われているので,どのアレンジが好きかという話になるが,人気投票の結果を見てもここぞというバトルで使われたこの曲の人気が高いようだ。FFTはあまりにも醜い人間の政治闘争にあらがう物語であり,この曲も盛り上がるバトルというよりもストーリー上の重要なバトルで流れる印象が強い。人間の醜い争いは,それでも戦闘でしか決着がつかない。そんな切なさがある曲である。

逆に「この野郎アルガスこのやろう」という緊張感あふれる曲がこっち。これはこれで。

今度はこれサガ&聖剣伝説でやらんじゃろうか。  
Posted by dg_law at 21:00Comments(2)

2020年08月04日

雲取山にはこういう巨岩が無かった記憶

・「鬼滅の刃」の名シーン再現 奈良・柳生に熱視線(産経新聞)
→ この種の岩は登山中に,その山の名物としてけっこう見かける。自分が記憶にある範囲だと瑞牆山の桃太郎岩とか,金時山の宿り石とか。金時山は多分コスプレしても登れると思うが,瑞牆山は全くかなり厳しい。いや,桃太郎岩までなら何とかなるか? 記事中の場所の場合,危険なく来訪できるのがよいということかな。3ついずれもそうだが,日本人,きれいに割れた岩を見ると誰か偉人か伝説上の人物が割ったことにしたくなるらしい。
→ なお,記事名には思わずそう書いたが,別に炭治郎が修行してたの雲取山じゃないよな。あの山(作中での名称は狭霧山)はどこなんだろう。


・神社へのフィールドワークから判った、“存在しない偶像” 『神社巡りからみた埴安神』(東方我楽多叢誌 )
→ 造形神,自らの神像が無いというのは面白い。神像は仏像ほどには作られていなくて,形が定まっていなかったり,普通の人間のような容姿の神様なんていっぱいいるし,埴安神なんてマイナーなので無くても不思議ではない。とはいえ,よりによって造形神,という気はする。
→ 諏訪や比叡山のような代表的な聖地が無いので,とりあえずここに行けという聖地が無いのはちょっと寂しい。しいて言うなら福岡の神社なのだろうか。3ボスなら福島県の庭渡神社があるので明確なのだが。EXボスなら明日香村の橘寺になるだろうし,そちらから先に回っていけ,ということだろうか。


・扉の向こうに秘密の通路 70年以上放置 英議会議事堂(AFPBB)
→ 途方もなく気の長い話で,なんともイギリスらしい話だ。1661年は記事中にある通りチャールズ2世の即位の翌年,1807年はイギリスで奴隷貿易廃止が決められた年,1834年はイギリス東インド会社が商業活動を停止した年,1851年は第1回万国博覧会がロンドンで開催された年と,出てくる年号が全て世界史の話題にある。現在まで火災も改築も免れてきたのも奇跡的で,よく発見されたものだ。RPGの謎解きか,スパイ小説のネタに使えそうである。


・ブラジル帰りの鬼才「Mika Pikazo」インタビュー 極彩色に血を通わす極意(KAI-YOU.net)
→ 後編は有料。独特の色彩感覚を持つ人だが,ブラジル帰りというと榎宮祐氏もそうで,あの色彩感覚はブラジル由来のもの……と語るには例が2つしかない。しかし,そう言いたくなる共通点である。
→ このインタビューでも「アイデンティティはイラストレーターだが,仕事の幅が広がっていて,やっている仕事はアートディレクションになりつつある」ということが語れていて,この人の場合は先に独自の世界観があって,その直接的で最も身近な表現手段がカラフルなイラストだったということなのだろうと解釈した。こういう人がイラストレーターにアイデンティティがあるのは,なんとなく嬉しい。綿密な打ち合わせを好むというのも絵を見ているとわかるところで,対象への理解を深めて自らの世界観との接点を作り,現実のイラストに帰着させる能力の高さが真に稀有なのかもしれない。その接点が作りやすいのだろう,二次創作よりもオリジナルの方が映えるイスラストレーターであると思う。  
Posted by dg_law at 20:00Comments(0)

2020年08月03日

2020年七月場所:名古屋でやらない七月場所

名古屋でやらない七月場所,しかも千秋楽が8月に食い込み,観客数・声援制限というイレギュラー開催であった。展開もドラマチックで,白鵬優勝で固いと誰しもが思っていた矢先の白鵬休場,では朝乃山だろうと思われたが,幕尻の照ノ富士が実力で奪還した。照強が朝乃山を倒した援護射撃は,5年前の照ノ富士初優勝時の日馬富士の援護射撃を思い起こさせる。伊勢ヶ濱部屋の結束力はなんと美しいことか。しかし,何よりも照ノ富士の復活は喜ばしく,朝乃山との決戦に勝利したのを見て涙した好角家は,山根千佳さんを挙げるまでもなく,私を含めて多かろう。

先場所に続いて声援の無い本場所ではあったが,拍手の応援があっただけでもかなり違った。やはり盛り上がるタイミングで拍手が湧くのはよいし,下品なコールが無い分かえって落ち着いて見ていられたところはある。また,最も盛り上がった箇所ではどよめきが生じたのも耐えきれなくなった観客の感情が伝わって面白かった。協会の収入を考えなければ,しばらくはこのやり方でよいのではないか。

そうそう,今場所は照ノ富士が幕内に戻ってきたことで,とうとう平幕に元大関が4人そろうことになった。大関を陥落してもすぐにはやめない,どころか幕下以下に落ちてもまだ続けて良いと風潮が変わったことを象徴するかのような場所であった。すでに長らく若手の門番と化している琴奨菊やそのポジションにつきそうな栃ノ心,まだ落ちたばかりで再昇進をうかがう高安,史上最大の逆転劇を見せた照ノ富士と役者がそろっていて,幕内下位も見ていて面白かった。上位陣に限定するとちょっと寂しい場所であったが,幕内全体ではかなり熱気があり,相撲のレベルも高かった場所だったと思う。


個別評。白鵬は十日目までは本当に完璧な相撲ぶりであったが,十一日目に右足が滑って狂いが生じ,十二日目も右足が滑って負傷が決定的となった。加齢の危険性としか評しようがない。鶴竜は休場の判断が早かったが,あれなら開幕前に休場届を出しておくべきだったのではないか。貴景勝も明らかに馬力不足だったが,引き技がよく決まってカド番脱出まではこぎつけた。本音を言えば,カド番でなければもっと早く休みたかったのだろう。あのよく決まった引きが彼の地力の高さではあり,大関の地位にふさわしいことは証明したが,観客が見たい相撲は馬力の強さであって物足りない。

新大関の朝乃山は,こちらも十二日目までは11勝1敗でほぼ完璧な内容,優勝して来場所綱取りかと思われたが,照ノ富士に四つ相撲で完敗して歯車が狂った。右四つなら白鵬以外には負けようがないと思われていたところ,"元"大関に右四つで完敗したのはショックが大きかったのではないか。しかし,朝乃山は立ち合いで立ち遅れて右四つになれないことがたまにあることと,ここぞという一番で緊張して体が固くなることが2つの大きな弱点であったが,今場所は前者の立ち合いの失敗は激減していて,むしろ強く当たって右四つになれなくとも押し切ってしまうシーンすら見られた。見事な修正であり,収穫も大きい。後者はまさにそのハートの弱さを突かれて伊勢ヶ濱部屋二人に惨敗したが,一朝一夕に鍛えられるものでもなく,長い目で見守りたいところ。

三役。全員好調で,11勝で大関取りの起点になった人が3人もいる。とはいえ御嶽海は好不調の並が激しすぎて大関になれていないだけで,11勝はむしろ好調時の平常運転に過ぎないだろう。正代も今年の初場所以降の受け将棋ならぬ受け相撲が板についてきた印象。好不調の並が小さいので,このまま持続すれば御嶽海に先行して大関をとっても不思議ではない。彼らに比べて躍進の印象が強いのは大栄翔である。彼も2019年に急激に伸びた力士であったが,今場所に白鵬を倒したことでさらに一皮むけた印象を受けた。3人の躍進に期待したい。惜しくも9勝に終わり三役全員二桁達成ならなかった隠岐の海は,一人だけ35歳のベテランで,2019年9月に突如覚醒してとうとうここまで来た。最近,徳勝龍といい玉鷲・嘉風といいこの展開多くないか。異様に深い懐の深さを生かした引き技は見どころがあり,普通の引き技との違いが際立って面白い。

前頭上位。隆の勝は上位初挑戦で勝ち越しはお見事。彼もまた押し相撲に力強さがある。貴景勝に鍛えられた成果か。現時点では大栄翔に一日の長があるが,隆の勝もまだ伸びるだろう。「おにぎりくん」のあだ名に反して梅干しが苦手というエピソード,すき。一方,阿武咲は事前の予想に反して上位挑戦は跳ね返されてしまった。どうも最後の詰めが甘く,そこを押し切るだけの馬力が足りない。とはいえ引き技が上手いわけでもなく,他の押し相撲力士に勝てない原因になっている。どうしたものか。霧馬山も上位初挑戦で,6勝で終わったものの,印象は悪くなかった。左四つか離れて相撲を取り,実に器用に動き,千秋楽に宝富士を左四つからの右上手ひねりで破った相撲など実に見事だった。謹慎休場となった阿炎は……さすがにそろそろ本当に怒られるラインに来てしまったので,破滅する前に自省してほしい。それだけである。

前頭中盤。炎鵬はかなり対策が進められての10敗で苦しい。読まれているなら潜らずに横に動き回って送り出しを狙ったほうがいいのかもしれない。照強は14日目の朝乃山戦の足取りが神がかっていた。実際,今場所は低く入って押し込むか足取りという取り口が多く,上手くいっていた。一方でそのまま押しつぶされる相撲も多かったが,14日目は押しつぶされる前に足取りに成功したので良かった。石浦は右足首を痛めていて相撲にならず。玉鷲と妙義龍は上りエレベーターの10勝であるが,その年でまだエレーベーターをできているのがすごい。

前頭下位。元大関と佐渡ヶ嶽部屋がひしめきあっているカオス。若隆景が初日から5日連続で佐渡ヶ嶽部屋との取組が組まれて「びっくりした」とコメントしていた。佐渡ヶ嶽部屋は琴恵光が10勝,琴奨菊と琴勝峰が8勝で5人中3人が勝ち越したが,琴ノ若と琴勇輝は休場となり,団体戦としては五分五分の情勢。琴恵光は良い相撲が多かった。体重が135kgとそこまで重くない割に,右四つで組むとかなり力強い。新入幕の琴手計改め琴勝峰は,新入幕と思えない落ち着いた振る舞いで,膂力があるところも見せたが,相手の十分になられての敗戦が多く,まだ幕内に慣れていないのも垣間見えた。同じく新入幕,若隆景は,誰かが舌を噛む前に改名しよう(提案)。アナウンサーですらしばしば「わかたたたかげ」になってしまっていて,これは誰もが言えないんだなと。今私も口に出してみたが,見事に噛んだ。完敗である。若隆景は押し相撲だが,押す力が強いというよりもよく動き回って崩してから押すタイプで,照強や石浦が近い。これでこのタイプは3人めで,近年になって突然増えてきた印象であるが,メソッドが確立されたか。10勝はお見事。高安は初場所・3月と見る影もない状態で心配であったが,今場所は立ち合いの威力がかなり回復していて,この回復軌道なら来場所は上位でもかなり取れそうである。

最後に照ノ富士。大ケガをする前から「モンゴル由来の投げの巧みさ・パワーに,高校から来日して磨いた相撲の技術が合わさった,モンゴル出身力士の完成形」と言われていたが,今場所はまさにそれが光った相撲であった。四つ相撲の技量が突出しており,相手のまわしを切る技術,差し手を殺す上手の使い方が巧みで,ケガのない両腕の腕力で白星を積み上げた。大ケガをする前はその技術があるのに,安直にパワーだけで振り回し,膝に負担をかける悪癖があったから,力士としては現在方が完成しているとさえ言えるだろう。大関再昇進が現実味を帯びてきた。膝の大ケガゆえに守勢になると脆く,引き技はほとんど全く打てないという巨大なハンデの中,どこまでやれるのか,応援していきたい。


さて,本場所が中止となって空いた間に引退した力士のうち3人にコメントしておく。最初に栃煌山。もろ差しの名手で,はず押しでも相撲が取れた。2007年新入幕,2010年から17年にかけて長く上位に定着し,琴奨菊・豪栄道・稀勢の里と並ぶ大関候補として若い頃から名を挙げられていたが,この面々では唯一大関に上がれなかった。小結・関脇でしばしば二桁勝利するのだが,これが3場所続かない。最高が3場所計30勝で紙一重で届かず,大関取りの厳しさとはこういうものであろう。もろ差し・はず押しの前進力なら天下無双であったが,離れて取る相撲はおろかまともな四つ相撲でも弱体化する等さすがに相撲の幅が狭すぎたことと,「稀勢の里並」と評された心臓の弱さが響いた。また,160kg前後あった体重の割にはつり技にめっぽう弱く,把瑠都につり出しを決められた際にはNHK解説の北の富士に「シャケじゃないんだから(つられたらもっともがくべき)」と苦言を呈され,以降ネット好角家でシャケとあだ名されるという不名誉な称号も得てしまった(この件は引退後に北の富士が謝罪していた)。とはいえ,栃煌山のもろ差しになる上手さ,もろ差し・はず押しの突進力は眼を見張る物があり,2010年代の大相撲の名物であったと言えよう。

次に豊ノ島。典型的なあんこ型の体型で,太鼓腹を生かしたもろ差し・左四つの寄りが強かった一方で,体重の割に機敏で土俵際でしぶとく,逆転も多かった。場所ごとの好不調の波が激しく,稽古不足も時折指摘される等もあって,三賞受賞が10回に及ぶ一方で,関脇で勝ち越したことがない。典型的なエレベーター力士であり,番付上位の力士には地力の差そのままに負ける一方,若手力士を老獪に土俵際で突き落とす門番であった。

三人目は蒼国来。中国内モンゴル自治区出身というモンゴル人力士の変わり種である。蒼国来の相撲人生といえば,八百長事件裁判で,多くの力士が身の潔白を証明できず,あるいは諦めて土俵を去る中,裁判で粘り強く戦って復帰を勝ち取った。2011年3月から2013年5月までの約2年に渡って大相撲から引き離されたにもかかわらず,引退まで相撲を取り,荒汐部屋の親方にまでなった。今考えてもあの八百長調査は杜撰であり,27〜29歳という脂の乗った時期をつぶされた蒼国来は大きな回り道をさせられた。取り口はモンゴル人らしい投げ技の名手で,左右いずれかの下手が入れば下手投げ・寄り・つりと多彩に展開して攻め立てた。下手のこじ入れ方が強引でケガをするのではないかと心配する取り口であったが,ケガにはならず,肘の強さも才能と言えるのかもしれない。荒汐部屋で飼っている猫も話題となり,名物親方としての今後を期待したい。

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2020年08月02日

ニコ動の動画紹介 2019.7月上旬〜2019.8月中旬



とうとう1秒を割るTASが成立。任意コード実行を突き詰めるとこうなるんだなぁ。



おやつ氏。まだまだ続くアニメティカ革命。8/32も驚いたけど,1泊2日もなかなかのホラー。



これもおやつ氏でアニメティカ革命。



さっそくサブフレームリセットとアニメティカ革命を取り入れていくスタイル。




敵が攻めてこない&ファンタジーチックなfactorio。消費財を作って住民の幸福度を上げるのがゲーム目標になる。ファンタジーチックなせいで工業化が進んでも工業都市感が今ひとつ無かった。




プレイヤーキャラの死体を積み上げて道を作っていくタイプの謎解きアクションゲーム。どんどん謎解きのギミックが複雑になり,それにつれ死体の使い方が悲惨になっていくのが面白かった。




手描きなので本来NG集などあるはずがなく,「ドラマ撮影でよくあるNG集」というネタである。



同人でガラス彫刻はちょっと珍しい。





メカP。2019年は除夜m@sお休みで盆m@s投稿。歌詞がうますぎる。



機能美P。下半期20選選出。ニコマスのイベントあるあるの「オープニング作品のハードルが鳥居」は健在だった。機能美Pがまだニコマス作品を作ってくれたこと自体も嬉しかった。  
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2020年08月01日

「アニメ・マンガ・ゲーム舞台百選 2020 結果発表」に対する感想

・#アニメ・マンガ・ゲーム舞台百選 2020 結果発表(博物士)
2年おきに行われている投票。主催の大石玄氏はコンテンツ・ツーリズムの専門家……いや,主専門は労働法のようだけど。舞台探訪アーカイブもこの方の運営。1月に投票が行われ,結果が出ていたのであれこれ感想を述べておく。

1位の鎌倉・江ノ島は,そもそもが一流の観光地であって町並みが綺麗&多数の作品の聖地になっているので合算すると大量得票になるから,納得の結果ではあるのだが,個人的に好きな作品が1つも無かったので自分に対して驚いた。鎌倉に聖地巡礼として行ったのは,『ヤマノススメ』に登場していたという理由で行った鎌倉アルプスだけですね……

2018年1位の宇治は2位に,大洗は5位に。3位の長崎はアニメやゲームの聖地のイメージが無かったので意外だった。4位の豊郷は一度行ってみたいのだが機会に恵まれていない(頬付といつか行こうという話はしている)。『ゆるキャン△』の身延はもっと上位に来るかと思ったら7位と振るわなかった。同じく『ゾンビランドサガ』もかなり上位に来そうなイメージだったが17位とトップ10圏外(ただし『ゾンビランドサガ』は佐賀・唐津・嬉野温泉で分けてカウントされているので,足せば12票で11位まで上がる)。これらは聖地巡礼のハードルが微妙に高いせいかもしれない。逆にハードルが高い海外では唯一ヴェネツィアがトップ10に入っている。

11位以下では,沼津がトップ10から漏れたのが意外。2年前は5位だったのだが,『サンシャイン』もコンテンツとして長寿になってきた影響かな。同様に『ヤマノススメ』の飯能も,話が進むにつれて遠征が多くなってきて,作品の主要舞台が飯能じゃなくなっている影響はありそう。『言の葉の庭』『天気の子』の新宿が低いのは,新宿が日常の場になっていて聖地巡礼という雰囲気にならない人が多いから,知名度と聖地巡礼者の数とは比例せず低い得票でとどまっていると思われる。わずか2票の秋葉原もそうだろう。

私自身の投票は以下の通り。

全部自分で行った場所から選出した。諏訪が自分しか入れていないのは悲しい。おそらく,上位に来ている作品群からして,東方好きは客層が違って自分くらいしか投票に来ていないのではないか。聖地としてはかなり人気が高いはずだが……。2018年でも1票,2016年でも3票であった。逆に和倉温泉とストラスブールは自分しか投票してないだろうと思っていてその通りだったので,納得の結果であった。和倉温泉は一応作品を『痕』にしておいたのだが,『りゅうおうのおしごと!』でも良かったかも。というよりも,投票時は完全に忘れていたのだが和倉温泉をやめて「雲取山(鬼滅の刃)」にしておくべきであった。こうしていたとしても結局自分の1票だけだったようだが。他に惜しくも選外としたのは「パリ(乙女理論とその周辺)」。あまりエロゲの聖地巡礼ばっかりでもなと思って外したのだが,集計者が笑ってくれそうなネタとしては京都(有頂天家族)を外してこちらでも良かったかも。

なお,これに続くTweetで「飯能(ヤマノススメ),高尾山(ヤマノススメ),三つ峠(ヤマノススメ)……以下省略,というネタも考えたが,普通に集計妨害なのでやめました。」とつぶやいたのだが,このネタ通りに書くなら残り7つは富士山・金峰山&瑞牆山・谷川岳・雲取山・赤城山・筑波山・棒ノ嶺にする。というか,普通に『ヤマノススメ』限定で巡礼地の人気投票をしても面白そう。やっぱり富士山と天覧山と谷川岳の三つ巴の戦いになるのかな。  
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