2021年03月29日

2021年三月場所:大阪でやらない三月場所

昨年は大阪で実施したものの無観客,今年は観客は数を制限して入場させたが東京開催と,二年連続でイレギュラーな開催となった。昨年は五月は開催中止となったが,今年はさすがに実施できるだろうか……

今場所こそはカムバックした2横綱が中心に展開するかと思いきや,直前になって鶴竜が休場を発表,白鵬も二日目までとって三日目前に休場を発表した。鶴竜の引退については後日に1記事立てて書きたい。白鵬は名古屋場所に進退をかけると言っているのなら,現時点では余計なプレッシャーをかけない方がよいと思う。今場所に出場した二日間が連勝だったのは大きい。

そうなると優勝争いは朝乃山・貴景勝・照ノ富士辺りが中心になるのは序盤から明白であった。そこに割って入ってきた高安には期待がかかり,一時は単独首位となったが,優勝へのプレッシャーがかかった途端に弱くなるという兄弟子譲りのメンタルの弱さが見えて敗退,最終的に3大関全員を撃破した照ノ富士が優勝した。3場所で33勝規定で生涯に二度大関に昇進したのは魁傑以来2人目で44年ぶり,間が22場所あいたのは当然ながら史上最大,再大関を優勝で決めたのは史上初,序二段まで下がった力士による大関昇進も史上初,関脇以下の地位で優勝3度も史上初と記録ラッシュである。個人的には高安も照ノ富士もどちらも応援していたので終盤は心中複雑であった。照ノ富士については称賛するしかないが,高安の初優勝も見てみたかった。その他の力士も含めた全体的な雰囲気はどことなく低調で,土俵が充実しているここ2・3年では最も平凡な内容の場所だったという印象が残った。

こうなると照ノ富士は綱取りの期待がかかるが,そうなるとやはり膝が心配で,特に今場所は以前の悪癖である引っ張り込む相撲がよく見られたので負担が大きかったと思われる。これに関連するが立ち合いでとにかく脇が甘く,「最悪もろ差しで中に入られても,自分には極め出しか小手投げがある」という甘えがまだどこかにあるのだと思う。千秋楽の貴景勝戦を見ていてもそうだが,照ノ富士は突き押しでもけっこう取れるので,四つに組めなかったら突き放すくらいの対応でよいのではないかという気はした。四つに組んでさえしまえば,天下無双の膂力と,現在の大相撲では最高レベルのテクニックがあり,おそらく全盛期の白鵬を持ってこないと太刀打ちできる力士がいない。実は白鵬・照ノ富士戦は照ノ富士が前に大関だった時代にしかなく,直近4年ほどは取組が無い。白鵬はおそらく突き放して組まないように持っていくと思われ,今の白鵬でいいから,白鵬の引退前に取組を見てみたいところ。


個別評。大関陣。朝乃山は不調そうに見えても10勝5敗にまとめてしまうところに,四つ相撲の安定性を感じる。その四つ相撲で照ノ富士に全く勝てないのはちょっと残念だが,照ノ富士が完璧すぎるので,ここを改善するよりも照ノ富士以外に取りこぼさないことを考えた方が綱が近くなりそう。貴景勝は無難な出来。正代は大関取りの時の防御力が無く,伸び悩んでいる。来場所カド番。

三役。(正代以外)全員勝ち越したために枠が空かず,渋滞が置きている。本来であれば2横綱が全員なぎ倒して2敗ずつするはずなので負け越しが出るのだが,横綱不在が長引くとどうしてもこういうことになる。照ノ富士は上述したのでパス。隆の勝は可も不可もなく。御嶽海はいつもにも増して日毎の出来の差が激しかった。私の観察力が足りていないだけかもしれないが,立ち合いまで「今日はどちらか」わからないのは極端である。大栄翔は,関脇以下で優勝した力士は来場所負け越す可能性が高いというジンクスを破っての勝ち越しで価値が高い。突き押しの力士は多いが,あれだけ圧力が立ち合いの出足に偏っている力士は珍しい。最後に高安は,立ち合いの圧力そのままで押し相撲もとれるし,左四つを作っての四つ相撲も上手いし,時間をかけて長期戦に持ち込みスタミナで勝つという変則相撲もとれ,隙がかなり少なくなってきたのだが,プレッシャーがかかる場面になると途端に脆くなるのは本当に……まあ,再大関は可能性が高いと思う。来場所・再来場所も二桁勝てるだろう。

前頭上位。宝富士と阿武咲は思った以上に大敗であった。宝富士は他の伊勢ケ浜勢が好調だっただけに肩身が狭そう。全く左四つにさせてもらえず,差し負けるか押し負ける場面が目立った。阿武咲はやっと家賃が払えるだけの地力がついてきたのかなと思ったら,そうでもなかったという。若隆景は技能賞に値する見事な技巧相撲で10勝した。やっぱり今場所も離れて取る相撲が多く,土俵際の逆転劇も多かった。明生も10勝で敢闘賞。組んでも押し相撲でも取れるというのはやっぱり有利である。志摩の海は照ノ富士を破っている割に,いつの間にか11敗と大敗していた。低い姿勢で押していくのが持ち味だが,相手も低かったり突き起こされたりしてけっこう押し負ける場面が多かったかなと思う。

前頭中盤。10勝した翔猿は技能賞をあげてもよかったと思う。機敏な身のこなしで白星を量産したものの,動きすぎて自滅するパターンもあった。それも含めてやはり嘉風の相撲に似ていると思う。豊昇龍も技能賞レベルの技能を見せていて,特に投げ技・足技の切れ味は素晴らしい。足技は時天空レベルだと思う。しかしパワーで押し負ける場面が多く,8勝にとどまったのが三賞に届かなかった理由だろう。あとエンジンのかかりが遅くて序盤の5日間に弱い傾向があるのは何故なのか。逸ノ城はやる気がある場所に見えたが普通に負け越していた。中に入られて負けるという巨体力士の典型的なパターンが多く,もうちょっと対策をとってほしい。琴ノ若はパワーが強く,それを活かした四つ相撲は良いのだが,相撲が単調でもうちょっと工夫が欲しい。翠富士は肩透かしのタイミングが読まれていて大敗した。

前頭下位。碧山が11勝で敢闘賞,家賃が安かったための大勝だが,千秋楽は高安を破って展開を面白くする活躍を見せた。最後は英乃海は翔猿の兄で,兄弟幕内を達成した。翔猿に引きずられてか好調で(まあ部屋が違うのだが),右四つの典型的なあんこ型の力士である。けっこう差し勝って右四つになるのが得意で,前頭中盤でも家賃を払えそうな雰囲気がした。  続きを読む

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2021年03月28日

高校世界史での「董仲舒」と「五経博士」の扱いについて

高校世界史深掘りシリーズ。「前漢の武帝の時に,董仲舒の献策によって五経博士が設置され,儒学が実質的に官学化された」という説明は,受験世界史で昔からなされてきた。しかし,この説明には専門家から疑義が提出されている。五経博士の設置は班固の『漢書』が典拠となっているが,すでに儒学が官学化されている後漢代の視点からの歴史書となっているので,儒学官学の時代を長く見せようという班固の意図が働いていて,信憑性が低い。現在の歴史学では,武帝代に存在が確認できる博士は『詩経』『書経』『春秋』に限られること,五経博士がそろうのは早くても武帝の三代後の宣帝期であることが指摘されている。儒学の官学化の時期は「官学化(国教化)」の定義の揺れとともに議論があるが,儒学の官学化が完成した時期は前漢末から後漢前期に求められている。武帝代はそうした動きが始まった時期には違いないものの,完成した時期としては支持されていない。全体として言ってしまえば,これらは武帝代を聖域化したかった班固による捏造であり,董仲舒は便利に使われたということだ。ただし,中国思想史の上では董仲舒は災異説を唱える等,重要な地位を占めていることに違いはない。参考文献はいろいろあるが,手っ取り早いものとして『漢帝国―400年の興亡』(渡邉義浩,中公新書,2019年)を挙げておく。
漢帝国―400年の興亡 (中公新書)
渡邉義浩
中央公論新社
2019-09-13



してみると,高校世界史上はどうすべきか。私見では,無駄な用語を減らす観点から言えば,また王莽の簒奪を過剰な儒教への傾倒よりも外戚の専横の文脈で処理する傾向が強いことを踏まえて,「董仲舒」と「五経博士」は教科書から削っていいという判断になるだろう。特に董仲舒は「舒」の字が一般に使用される漢字でなく,この漢字を暗記させるために高校生に少なくない負担がかかっていると感じている。一方,儒学の官学化についてはその後の中国史への影響を考えると削除はできず,「武帝代が出発点であった」とぼかすか,逆に「王莽が簒奪に利用したのを経て重要性が高まり,光武帝代までに完成した」として武帝の事績から外すか,いずれかが妥当であろうと思う。

以上を前提として,現行の教科書・用語集の表現を確認する。いつもの5冊+山川の『用語集』と『詳説世界史研究』。

【儒学の官学化は武帝代/五経博士には言及しない】
山川『詳説世界史』『新世界史』:
 「武帝の時代には,董仲舒の提案により儒学が官学とされ(中略)儒学の主要な経典として五経が定められ」
 「(五経は)時期により相違があるが,一般に『易経』『書経』『詩経』『礼記』『春秋』をいう。」 
※ 両教科書は一言一句同じ文言。また,五経博士には一切言及無し。
→ 良く言えば堅牢,悪く言えば保守的な山川としては不思議な感じのする折衷案で,董仲舒の提案という記述は残しつつ,五経博士には一切言及しないという姿勢。


【儒学の官学化は武帝代/五経博士にも言及する】
東京書籍:
 「董仲舒などの儒家の意見を採用して国家体制の維持に努めた。このため儒家の思想は,国教(儒教)の地位を獲得し,その教えは国家の正当な学問(儒学)として発達した。」
 「武帝は董仲舒のすすめにより,『易経』『書経』『詩経』『礼記』『春秋』の5書(五経)を重要な経典と定め,それらの教授を主宰する五経博士を置いた。」
帝国書院:
 「漢の支配が安定する中で,皇帝権力を正当化する天命思想をもち,上下の秩序を重んじる儒家思想がしだいに支配層に受け入れられるようになった。武帝の時期に,董仲舒ら儒家官僚の勧めで官学とされた儒教は,やがて新代にかけて定着し,以後2000年近くにわたって王朝を支える政治思想となった。」
 「五経博士…五経を教授する学官」「五経…最重要の経書『詩経』『書経』『易経』『春秋』『礼記』」
→ 記述が古いまま放置されているパターン。これは完全にまずい。

山川『用語集』:(丸数字は用語集頻度)
 董仲舒А崋学の官学化などを武帝に献言した前漢の儒学者。(中略)儒学を皇帝の支配の正統化に役立てる学問に体系化した。」
 儒学А嵒霙襪里箸董仲舒の建言により官学とされて以降,中国の皇帝制度を支える政治思想となった」
 五経ァ崋学の経典として漢代に定められた五書。一般に,『易経』『書経』『詩経』『礼記』『春秋』を指す。」
 五経博士「五経の解釈と教授をおこなう官職。董仲舒の建言により,武帝のとき設置された。」
→ 山川の内部対立再び。教科書2冊の配慮をぶち壊す記述である。どうでもいいが「建言」と「献言」が混在していて,使い分けているようにも見えない。


【儒学の官学化・国教化は武帝代〜前漢末/五経博士に言及する】
山川『詳説世界史研究』:
 「儒教が中国で国教の地位を獲得していくのも武帝期以降のことであり,一般に董仲舒の献策により武帝が五経博士をおいて儒学が官学となったとされている。五経の内容は時代とともに変わることがあるが,主としてこの時代に重視されたのは『詩経』『書経』『儀礼』(もしくは『礼記』)『春秋』『易経』である。もっとも,武帝自身は儒教の教えに従順であったわけではなく(中略)前漢後半の100年を通じて儒教はしだいに皇帝権力にも浸透していった。とくに第10代の元帝は,父親の宣帝が「家を滅ぼす」と心配したほど熱心な儒教の崇拝者となった。」
 「武帝の死から半世紀が過ぎて社会の疲弊が露わになってくると,儒家に期待が集まるようになり,儒家から宰相になる者が増えた。」
→ 官学化と国教化を区別した上で,儒学が官学化したのは武帝期だが,儒教が国教化したのは前漢末ということを言いたいのだと思うが,ちょっとわかりにくいというか,高校生に理解できる文章ではないと思う。ただ,説明としては面白い。一方,五経博士の設置については教科書より用語集の表現に近く,まずい内容。


【儒教の国教化は前漢末以降/五経博士には異論をつける】
実教出版:
 「武帝が董仲舒を信任して五経博士をおき,郷挙里選を実施すると,儒家思想をもつ官僚がしだいに勢力をもつようになった。前漢末ごろから儒学が人民統治の基本となり,やがて国教(国家の正統的教学)として儒教が成立した。」
 「儒教の成立時期については,前漢末,王莽期,光武帝期などの諸説がある。」
 「五経とは,一般に『詩経』『書経』『易経』『礼記』『春秋』の五つの儒家の根本的な経典をさす。ただし,武帝期にこれら五経すべての博士を設置したことには異論もある。」
→ 儒教とは宗教化した儒学であると定義した上で,成立を前漢末以降に置いている。また官学化という言葉を用いていない。これは独自性が高い上に特にわかりにくくもなく,優れた記述と言える。五経博士については,おそらく見識ある人が正確な情報に基づいて教科書を執筆したが,編集側から「受験対策として五経博士を入れてほしい」と懇願され,苦肉の策で「異論もある」と入れたのではないか。


【余談】
ところで,五経の並びが各教科書で微妙に違うのにお気づきだろうか。
1.山川『詳説』『新』『用語集』・東京書籍
             :『易経』『書経』『詩経』『礼記』『春秋』
2.山川『詳説世界史研究』:『詩経』『書経』『儀礼』(もしくは『礼記』)『春秋』『易経』
3.帝国書院       :『詩経』『書経』『易経』『春秋』『礼記』
4.実教出版       :『詩経』『書経』『易経』『礼記』『春秋』

1の並びが一番オーソドックスで,伝統的な並び順である。2・3・4の並びはあまり見ない。ただ,私が高校の時に覚えた順序は3だった気がするのだが,多分に語呂の問題である気がする。特に『詳説世界史研究』が理由なく順序を動かすとは考えにくいので,2・3・4の並びについて何か知っている人いれば教えてほしい。簡単に調べた範囲ではWikipedia等の出典の怪しいところにしか順序の理由は見当たらなかった。


【まとめと感想】
実教出版の記述が最も良く,比較にならないほど優れている。そして実教出版がこう書いてくれていることで,五経博士や董仲舒を出題している入試問題に対して疑義を申し立てることが可能になった。ありがたいことだ。実のところ私自身,五経博士についての異説は聞きかじっていながらも,深くは知らなかったし,教科書がこうなっているというのも知らなかったから,意識して調査していなかった。過去何年分か,目立つ大学に絞って再調査の必要があるかもしれない。たとえば今年の6番(早稲田大の法学部)の問題の,料択肢は,この点でも不備がある。これは私の反省点である。

次点を無理に挙げるなら山川の『詳説世界史』と『新世界史』になろう。不透明なら書かないほうがよいという方針は悪いことではなく,用語集頻度を下げて入試に出にくくするという副次的な効果もある。五経博士を完全に抹消したのは英断だろう。まずいのは東京書籍と帝国書院の教科書で,経済に強い東京書籍と,派手な新説に強い帝国書院であるが,かえってこういう古典的な分野には弱い印象が強まる結果となった。こういうところでも気を抜かずに情報の更新をしてほしい。  
Posted by dg_law at 17:00Comments(6)

2021年03月27日

2021受験世界史悪問・難問・奇問集(国立大編)の落ち穂拾い

先週公開した記事の,追加調査や読者の反応を経た補足。それほど大した内容ではないが,それなりの分量になってしまったので補足しておく。

1.共通テスト第2日程
まんま同じ地図が収録されている日本語論文がある(が論文名は忘れた)という読者の指摘があった。それが事実なら,問題文の「『パン=ヨーロッパ論』所収の地図を加工したもの」は大学入試センター自身が加工したようにしか読めないので,問題文が誤読させる文になっていて良くない。また,普通に考えると出典表記が必要である。名古屋大が前に『興亡の世界史』所収の地図を出典不掲載のまま利用したのと同じで,引用の条件を満たしていない。入試問題は著作者に事前に許諾を得ないまま著作物を利用することが可能だが,引用の条件は守る必要がある。私自身がその論文を確認しているわけではないので濡れ衣の可能性があるから,現時点ではあくまで可能性として指摘しておく。


3.東京外国語大
指摘そびれ。ドイツ語の原文にせよ問題文の和訳にせよ,西暦1796年2月9日と同日の嘉慶元年1月1日に譲位が行われたかのように読めるが,清朝の改元は踰年改元であるので,乾隆帝はこの日に譲位したわけではない。実際に乾隆帝の譲位は西暦1795年10月15日。つまり原文も2つのミスがある。もうどうしようもない。


4.一橋大
ついでにゲーテやその周辺情報が教科書でどの程度載っているのか調べてみた。例によってlivedoorブログはExcelで作成した表を直接貼り付けられないので,図での表示になるのはご容赦願いたい。

ゲーテ教科書調査


一橋大のあの問題にまともに対抗しうるだけの情報があるのは実教出版の教科書だけではないかと思う。次点だと古典主義の説明を省いている東京書籍がかえって都合が良い。しかし,大多数が使っていると思われる山川の『詳説』と帝国書院の説明だとゲーテは完全に古典主義の人なので,情報が足りないどころか誤誘導にすらなっている。かろうじて用語集の説明が割とまともなのが救いか。あと,『詩と真実』第三部の引用部分の周辺を読んでみたものの,結局『ゲーテとその時代』で入手できた知識以上のことは書いていなかった。この問題のために『詩と真実』岩波文庫の4冊,『ゲーテとその時代』に『文化と経済』と合計6冊買ったのだが,まだ解決に至っていない。


7.大阪大
まず指摘そびれ。麒麟を引いている人物は飼育係(馬丁)であって,正式な朝貢使ではない。朝貢使に付随する人物にあたるので,厳密に言えばそもそも「使節」ではない。絵に「使節」は映っていないと考えるとその時点で解答不能の出題ミスになる。とはいえこれはちょっとかわいそうな解釈で,ここでいう使節とは朝貢使の随員・私的な下僕,留学生や朝貢品の人夫などを広く含めたものであろうから,その意味でならこの飼育係も「使節」であろう。しかし,この指摘そびれを書いていて気づいてしまったのだが,問題文の情報および調べてみた範囲の情報で言えば,この飼育係はキリンを受け取った後に中国側が用意した人物であるという可能性が捨てきれず,この場合は「使節」の定義をどう拡張したところで当てはまらない。問題文が解答不能な出題をしているということで出題ミスになる。

もう一つ,これは完全に余談だが,阪大の文学部の美術史の教授が,國華賞を受賞していた。國華賞は日本・東洋美術を対象とした美術史学の研究に対して与えられる最高権威の賞である。その論文の内容が「香雪美術館にある《レパント戦闘図屏風》で描かれている戦闘の場面は,レパントの海戦ではなく別の戦闘なのではないか」というもので,阪大があの入試問題を出した年度に,2014年の千葉大の問題にかかわる論文が阪大の教員が受賞したというのは奇遇というほかない。それにしても,場面がレパントの海戦ではない可能性が生じるなら,あの千葉大の問題は完全に崩壊したことになる。7年前にはまだレパントの海戦で疑いを持たれていなかったから,そこを当てこするのはかわいそうなところで私もするつもりは全く無いが,学術的調査が不十分で定説のない作品を大学入試で出題するのは避けるべきということを改めて実証する機会になったということは強調しておきたい。

私は本企画抜きで興味がある内容であるので,大学図書館に入れるようになったら上述のパン=ヨーロッパについての論文とともに探して読んでみます。やっと予約すれば入れるようになったらしいので。  
Posted by dg_law at 17:06Comments(2)

2021年03月25日

ニコ動の動画紹介 2020.4月上旬〜2020.4月中旬



Twitterで初めて見た時に「SOCIAL DISTANCE」のところで腹筋がよじれるほど笑った。これはフロアーぶち上がりですわ。



カメ五郎がボイロ動画(しかも東北イタコ)を上げていてちょっと驚いた。内容はいつもの感じ。




Cities:Skylinesで変な街を作るたいたぬさんがまた何か始めたぞと思ったら,タイトル通りだった。シリーズ2回目にして本領を発揮する過酷な街づくりである。隕石落下と同時に毎回「I Don't Wanna Miss a Thing」が流れる天丼芸で段々と腹筋が耐えられなくなっていく。Requiescat in pace.






「薄紅」に続いて本人が歌唱。良い歌声だなぁ。



たべるんごのうたブームの陰で流行していた「お天気ヤクザ」シリーズの始まりである。しかしこの頃はまだ穏当だった。



イルミネの面々が凶暴化(?)していくのはここから。



たべるんごのうたブームが本格化し,それが週マスで顕在化した週。久々に「週マス激戦週リンク」がついた。



たべるんごのうたブームで活躍していたらすくPの本職,デレマス曲(よしのん関係)のオーケストラ化。



上半期20選ノミネート。わんさかPによる,たべるんごのうたブームとは無関係な選挙応援作品。シンガソングライターPの本領発揮。



同じくわんさかPによる,砂塚あきらへの応援歌。こちらはAIシンガーきりたんによる。

  
Posted by dg_law at 12:00Comments(0)

2021年03月20日

2021受験世界史悪問・難問・奇問集 その2(共通テスト・国公立大編)

昨日の続き。今年は共通テストと阪大・一橋大の計3問のせいで公開が1週間遅れ,おまけを作る気力が消滅したと言っても過言ではない。何なら一橋大の方はまだ原稿が完成しておらず,後に追記するか別記事を立てる可能性がある。解説が非常に長くなったので,心して読んでほしい。

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Posted by dg_law at 19:30Comments(20)

2021年03月19日

2021受験世界史悪問・難問・奇問集 その1(慶應大・早稲田大)

今年も無事に公開に至ることができた。協力してくれる方々に感謝を申し上げたい。

<収録の基準と分類>
基準は例年とほぼ同じである。

出題ミス:どこをどうあがいても言い訳できない問題。解答不能,もしくは複数正解が認められるもの。
悪問:厳格に言えば出題ミスとみなしうる,国語的にしか解答が出せない問題。
→ 歴史的知識及び一般常識から「明確に」判断を下せず,作題者の心情を読み取らせるものは,世界史の問題ではない上に現代文の試験としても悪問である。
奇問:出題の意図が見えない,ないし意図は見えるが空回りしている問題。主に,歴史的知識及び一般常識から解答が導き出せないもの。
難問:一応歴史の問題ではあるが,受験世界史の範囲を大きく逸脱し,一般の受験生には根拠ある解答がまったく不可能な問題。本記事で言及する「受験世界史の範囲」は,「山川の『用語集』に頻度,任發いいらとりあえず記載があるもの」とした。


<総評>
例年だと上智+早慶で40〜45個くらいになるところ,今年はなんと17個に収まった。半分以下である。上智は0個だったので,本年は項目自体を立てていない。その影響もあって例年は3記事構成であるが,本年は2記事で済んでいる。減少した理由はいくつかあるが,明確な順に以下の3つが挙げられる。

1.例年だと上智6+慶應4+早稲田9の19日程あったのに対し,上智は2日程を残して撤退し,小論文や総合問題を主体とする入試に変わった。残った2日程も国立型の論述主体であり,極度の悪問が出づらい形式になった。早稲田は国際教養と政経学部が撤退した。結果として2021年は上智2+慶應4+早稲田7=13日程となった。要するに早慶上智の日程数が約2/3になったので,それらの悪問・難問の数が約2/3まで減るのは自然な流れである。
2.実は事前に文科省から「今年の受験生は高校が休校で学習が進んでいないから,入試問題は手加減しろよ」というお達しが出ていた。意外にも慶應がこれに従ってかなり易しくなったので,法学部以外は収録対象問題0問だった(なお法)。これにより慶應は例年4日程あわせて12〜13個の収録があったが,今年は5個だけであり,慶應だけで比較するなら完全に半分以下になった。ただし,早稲田はこのお達しをほぼ無視した様子。上智は前述の通り,入試制度そのものの変化の影響の方が大きいので,お達しは影響していない。
3.単純に早慶ともに作問側が巧妙になっていて,グレーゾーンからの出題は目立った印象。

しかしながら国立大は上述の文科省のお達しを完全に無視しているところが多く,本企画への収録が無い(つまりちゃんと高校世界史範囲を考えて作っている)東大や北海道大等も含めて,私の感触では難易度は全然下がっていなかった。正直に従った慶應大がバカを見た感じが。国公立大とは一体。

以下,本編。

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Posted by dg_law at 19:23Comments(27)

2021年03月13日

受験世界史悪問集についてのちょっとしたアンケートとお馬さんの話

今年の受験世界史悪問集について,ちょっとしたアンケートを行っているのでよければ投票してほしい。Twitterを持っていない方は本記事のコメント欄でもOK。分けてもいいかなと思うのは,例年見ていると大体初日にアクセスが集中していて,二日目以降がやや下がるので,ひょっとして分量が多すぎて読みきれていないのでは……と思ったためである。来週末に固めて投稿する場合は3/18-20,分ける場合は私大(早慶)編を3/19,国立編とおまけを3/25-26で投稿する予定。原稿自体は私大編は完全に完成していて,国立編は80%くらいの完成度。おまけはまだ構想中。



先にちょっとだけ話をしておくと,今年は早慶は比較的おとなしくて,国立はひどかった(ただし名古屋大は収録なし)。別記事のコメント欄で書いたが,上智大がほぼ全日程消滅してしまったので,代わりに明治大でもやろうかと思ったが,今週までに全日程の問題が収集できなかったので諦めた。しかし国立がひどすぎていまだもって原稿が書き終わっていない現状を考えると明治大はやらなくてよかったかもしれない。手が回らなくなっていた気がする。


これだけで終わらせるのも何なので,今大人気のあのアプリの話でも。私は家族の影響で競馬は幼い頃に見ていて,むしろ大人になってから見るのをやめてしまったというちょっと変なパターンの人間である。原初の記憶がメジロマックイーンとライスシャワーの春天,最後の記憶がダイワスカーレットの有馬記念と書けば,トレーナーさんたちはだいたい時期わかってくれるだろう。ということからわかる通り,アプリ版『ウマ娘』に登場する子たちはだいたい「原作」で把握している。スーパークリークとオグリキャップ以前がわからないのと,ゴールドシップが新しすぎてわからない(出てきてないけどキタサンブラックやオルフェーヴルも名前しかわからない)。あと,家族が「ステイヤーこそが真の名馬」という偏った思想を持っていた影響でマイラー・スプリンターはけっこうわからない。

そういう意味ではアプリ版はちょっと興味があるが,なにせ時間がない。ゲーム・エロゲが10本単位で積んであって,(雑誌で追ってるもの以外の)漫画はやっと4ヶ月前のものを読み始め,EU4とHoI4はそれぞれ一周やったところで年単位で手を付けていない,大相撲と美術館と登山(と温泉)だけは積むのができないので逆に消化できているという。仕事(本業)もぼちぼち忙しいし,上記の通り受験世界史悪問集も書いていれば,もう新しいコンテンツが生活に入る隙間はないので,まあ横目で眺めてます。そういう意味ではアイマスと同じポジションかも。まずゲームとエロゲを崩させてください。僕にオクトラをやる時間をください。

好きな子はライスシャワーです。「知ってた」って言われそうだけど,上記の通り「原作」でも好きだった馬なので。まあ,その辺の時代の原作ならそこそこ個人的エピソードがあるので,ブログには書けないけど,ウマ娘でのキャラ解釈とかと合わせて,リアル友人は会ったときにでも(飲み会が開きにくい社会状況ではあるが……まあいろいろ明けたら)。  
Posted by dg_law at 21:41Comments(4)

2021年03月08日

エロゲレビューまとめて(『Summer Pockets RB』他)

前回。約1年ぶりに。ネタバレは致命的なものは避けているが,無いわけではないので気にする人は慎重に読んでほしい。

扱っているのは『Summer Pockets Reflection Blue』,『消えた世界と月と少女』,『SaDistic BlooD』,『真愛の百合は赤く染まる』。

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Posted by dg_law at 12:00Comments(0)

2021年03月07日

次のエジプト人力士には「尼羅」と名乗ってほしい

・【大相撲の不思議】関取の四股名から「川」が消えたって知ってた!? (現代ビジネス)
→ 記事中に挙げられている近代化で川が環境汚染されてしまったために縁起が悪いとして避けるようになった説は眉唾で,別に理由がありそう。海や山に比べてスケールが小さいということだろうか。
→ 余談だが, なんでや徳瀬川おったやろと思ったがちゃんと言及されていて安心した。いまだもってあの人が八百長をやっていたとは信じがたいのだよなぁ。あと,私も他の人のブコメで気づいたことになるが,阿夢露がいたのでこれをカウントすれば2017年までは関取に「川」がいたことになる。これに言及していない本記事は片手落ちではなかろうか。記事末尾に「国技には不似合いな四股名を名乗る外国人力士」と書いているので,このライターは阿夢露などという四股名は眼中になかったのだろう。


・チグリス・ユーフラテス川が干上がる? 上流のダム建設で流量激減(AFP)
→ メコン川やナイル川でも同じことが起きている。メコン川はともかく,ナイル川やこれは下流域が乾燥地帯で,上流からの外来河川に頼っている地域であるので事態は深刻だろうと思う。ナイル川はさすがに干上がったという話はきかないが,元々が天井川で流路が変わりやすい川だったティグリス・ユーフラテス川は危ないだろう。古代文明を育んだ川であるだけにインパクトは大きい。地図からシャトルアラブ川が無くなったらアラル海の縮小並に巨大な変化になる。


・近世大名は城下を迷路化なんてしなかった(note)
→ 無料版範囲をざっと読んだけど,筆者の主張は非常に説得的だと思う。いろいろ考えると迷路化するメリットが無いし,現実に迷路化している事例があまりにも少ない。史料をさかのぼっていくと『盛岡砂子』という信憑性の低い史料が延々引用されているのは闇が深い。


・News Up ルーツは寺小屋?学校の掃除(NHKニュース)
→ 「実は毎日の掃除に関しては明確な根拠はないんです」というのは部活やPTAを思い出した。義務教育そういうの多いな。さすがに毎日の掃除に明確な根拠が無いのは予想外だった。
→ 身の回りを掃除する習慣をつけさせる意味でやるのは良いと思うが,確かに掃除機ダメなのは謎。 小学生には大きすぎるとか予算・電気代の問題はありそう。記事中に出ているがルンバでいいのではという解決はあるかも。  
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2021年03月06日

ニコ動の動画紹介 たべるんご特集(後編)

5月下旬以後。デレマス総選挙後でブームが落ち着いた時期。




ロ-ロ-氏。上半期20選選出。良い振り返り動画だった。分析も深くて正しいと思う。



ノノホォ氏。上半期20選選出。ボスがゆゆ様(桜のキャラで食いしん坊)で,弾幕もよく考えられていて面白かった。もう少し投稿が早かったら10万再生に到達していたと思われ,惜しい。



asari氏。上半期20選選出。選挙前にShort版が投稿されていた。Fullになって歌詞が良くなった,選挙後の傑作。



メルト氏。歌詞がいかにも選挙結果発表後で良い。



メルト氏2つめ。下半期20選ノミネート。たべるんごのうたクラシック部の後期の隠れた傑作。



メルト氏3つめ。下半期20選ノミネート。受賞のお祝いといえばこの曲。



わんさかP3つめ。上半期20選ノミネート。選挙後なので純粋な紹介になっている。作詞作曲歌動画全部自分。才能の塊。お前こそ辻野あかりの名誉プロデューサーだ……



taiga氏2つめ。下半期20選選出。本家そっくりの歌唱力がさすがはtaiga氏。この人も多芸である。



らすくP6つめ。下半期20選ノミネート。超大作感ある。



みおはす氏。名タイトル。ここまでの集大成のようなネタの詰め込み具合。  
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