2005年07月06日

誰だって勘違いするもの

勘違いとは恐ろしいものだ。理解していると思っていたことが、誤解だったりする。慢心しきっているから、なおのこと恐ろしい。特に異文化間の勘違いは、より恐ろしい。確かめる術が無く、ひょっとしたら一生気づかない。


今読んでいる『銃・病原菌・鉄』に、以下のようなことが書いてあった。

「経済性より社会的ステータスが重要視され、その結果技術の受容性に影響することがある。……(中略)……日本人エリート層が、効率の良いアルファベットやカナ文字を利用せず、難解で書くのがたいへんな漢字を優先して使うのも、漢字の社会的ステータスが高いからである。」

※ 著者はUCLA医学部教授


このことが紛れも無い誤解であることを証明するのは、非常に簡単だ。ためしに上の引用文を全部ひらがなにしてみよればわかる。

「けいざいせいよりしゃかいてきすてーたすがじゅうようしされ、そのけっかぎじゅつのじゅうようせいにえいきょうすることがある。……(ちゅうりゃく)……にほんじんえりーとそうが、こうりつのよいあるふぁべっとやかなもじをりようせず、なんかいでかくのがたいへんなかんじをゆうせんしてつかうのも、かんじのしゃかいてきすてーたすがたかいからである。」

読みづらいことこの上ない。漢字は、アルファベット系言語における、単語と単語の間のスペースみたいなものだと思う。そうすることで、"a" や"the"や "is"といった単語にはあまり注意を配らずに読めるように、日本語でも漢字部分と語尾だけを飛ばしよみすれば、速読できる。非常にわかりやすい。

もちろん、難解な漢字が社会的ステータスのように扱われるということが間違っているわけでは無いと思うし,漢語が格調高い文章の特徴として扱われることはある。が,基本的には漢語を用いることでより厳密な議論をしやすくなるからであり,社会的ステータスは三の次くらいである。

少々悲しい勘違いをされていると思った。著者に権威があるだけに……ね。

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この記事へのコメント
むしろ日本人エリート層は難解な漢字よりも、日常ではあまり聞かない表現や
言い回しとか、婉曲的な文法の手法を多く使いたがる傾向にあるような気がする。
例えば二重否定とかね。婉曲的な言い回しをすることは大事だと思うけど、
言いたいことがあるなら、はっきり言って欲しいってのもあるよね。
でも、その婉曲表現の豊かさが日本人の美徳なのかもしれない。

PS.「ラーメン」についてだけど、『コナン』のトリックを少しひねって、
殺人事件の凶器にしてみたらどうだろう?
「日常では当たり前のように食しているラーメンすらも、このように殺人事件の
凶器として使われうるのだ。つまり、ものごとの本質というものは完全には捉えがたい
と言える。我々がこのようなラーメンの「狂気」に気づくことがなかったように、
ラーメンと言う「表象」を一面的なものとしてしか…」
みたいな感じで。ちょっと無理あるかなぁ…(苦笑)。
Posted by カシンの化身 at 2005年07月07日 00:44
婉曲とあいまいを好む国民性ですから(笑)
まあ俺は好きだけどね。確かに「はっきりしてくれ」と思う。
だから国民性からして、日本人は政治が下手なんだろう。

にしても「記憶にございません」は名言だよなあ…


>ラーメン
またけっこう意見がたまってきたから、今日当たりMI3を作るか。
しかし、ラーメンが凶器の殺人事件って聞かないな……確かに「狂気」は感じられるけどね(苦笑)発想は面白いと思う。
Posted by DG-Law at 2005年07月07日 15:09