2006年02月02日
第45回「ローマ人の物語8 〜危機と克服〜」塩野七生著 新潮社
ローマの歴史家タキトゥス曰く「紀元69年は、ローマ史上最も存亡の危機となった年」であった。それもそうだ。なんせ、その1年間で4回皇帝が変わっており、ユダヤ人、ガリア人、ゲルマン人が同時に反乱を起こしたのだから。しかも、この時代にはスキピオやカエサル級の天才がいたわけではなかった。しかし、ローマはこの危機を乗り越えて生き延びる。そして、賢帝の時代へと繋げていく。それができたのは、アウグストゥスとティベリウスの作った「大理石の」ローマ帝国の基盤があまりにも完成していたからであった。だからこそ、ヴェスパシアヌスのような、天才とはいいがたい「秀才」レベルの皇帝であっても、十分帝国の建て直しが可能だったのである。
この巻は、ヴェスパシアヌスとその息子ティトゥスの活躍を中心に、このローマ最大の存亡の危機をローマ人たちがいかに切り抜けたか、そして先人の偉業はここに来ていかに役に立ったかが語られる。内乱が、ヴェスパシアヌスの力量自体も当然あるが、どちらかというと「勝手に」終息していく様子が、非常におもしろい。これが健全なシステムというものか、と関心させられた。
この巻に出てくる皇帝たちはけして歴史的に名高くは無いが、読めば必ず印象に残る個性的な皇帝が多い。「庶民派」ヴェスパシアヌス、賢君だが惜しくも夭折したティトゥス、必死の努力は見られるが結果を出せなかったドミティアヌス。今上がった名前に初耳の人も多いだろう。帝国が安定しているため、一見重大な危機に見える紀元69年の事件もなぜか安心して読んでいられる。ローマが存続するかどうかがかかっていた3巻や5巻とは、また違ったおもしろさがあると思う。
ローマ人の物語〈8〉― 危機と克服
この巻は、ヴェスパシアヌスとその息子ティトゥスの活躍を中心に、このローマ最大の存亡の危機をローマ人たちがいかに切り抜けたか、そして先人の偉業はここに来ていかに役に立ったかが語られる。内乱が、ヴェスパシアヌスの力量自体も当然あるが、どちらかというと「勝手に」終息していく様子が、非常におもしろい。これが健全なシステムというものか、と関心させられた。
この巻に出てくる皇帝たちはけして歴史的に名高くは無いが、読めば必ず印象に残る個性的な皇帝が多い。「庶民派」ヴェスパシアヌス、賢君だが惜しくも夭折したティトゥス、必死の努力は見られるが結果を出せなかったドミティアヌス。今上がった名前に初耳の人も多いだろう。帝国が安定しているため、一見重大な危機に見える紀元69年の事件もなぜか安心して読んでいられる。ローマが存続するかどうかがかかっていた3巻や5巻とは、また違ったおもしろさがあると思う。
ローマ人の物語〈8〉― 危機と克服
Posted by dg_law at 04:09│Comments(0)│