2006年02月11日

第46回「絵画を読む イコノロジー入門」若桑みどり著 NHKブックス

美術史入門書。まなざしのレッスンよりかなり短く、一枚あたりの説明量が多いため非常に読みやすい。文章もウィットが聞いてておもしろい。けして笑えるわけではないが。ただし、美術史知識はほとんど常識レベルしか問われない代わりに、少々世界史知識は必要かもしれない。どうしても絵画の描かれた時代と絵画の関係が深いので、時代背景がわからないとなぜそう帰結するのかという論理がわからないかもしれない。そういう意味では、文系向けの入門書か。「まなざしのレッスン」とどっちがいい?と聞かれたら、答えに窮するところだ。

なお、登場する絵画は全て15〜17世紀の範囲、つまりルネサンスからバロック、古典派までである。副題のイコノロジーというのは図像解釈という意味で、まさしく「絵画を読む」行動と言えるだろう。たとえば平和の象徴は鳩というような寓意や、ヴィーナスの誕生というような絵の描かれた題材から絵画のメッセージを読み取る作業をイコノロジーという。15?17世紀の絵画はイコノロジー研究が発達しており、わかりやすいものが多いため、この時代に絞ってこういう副題をつけたものと想像される。紹介されている作品も有名で研究の進んだものばかりで、さすがとしか言葉が出ない選択だと思う。


絵画を読むーイコノロジー入門


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