2006年03月13日

第50回「サロメの乳母の話」塩野七生著 新潮文庫

サロメの乳母の話とタイトルについてはいあるが、基本的には塩野七生による短編歴史小説集である。この本を貸してくれた友人も言っていたが、『ローマ人の物語』のように重厚ではなく、ああいかにもおばさんだなあと思わせるような、井戸端会議の光景を髣髴とさせるような、軽い感じで書いている。この本が書かれた時点で、およそ45歳だったのだから、まさにというところだろう。それでいて記述はしっかりしているのだからすごい。さしずめ、「世界ゴシップ集」とでもしたほうが、正しいタイトルなのではないか。

この本の特色は実在していたか、していないかは別として、とある有名人の身近な人(馬が一頭いるが)が自分の半生を語る、という形で進んでいくことだ。たとえばオデュッセウスの妻やブルータスの師、ネロの双子の兄など、明らかに非実在の人物がかなりいる。あえて本人にはスポットを当てないことで、よりゴシップらしさがましていると言ったところか。

自称「日本人一の悪妻」である塩野七生の、別の一面が見られる本としておもしろい。『ローマ人の物語』と比べて軽いのなら、『イタリアからの手紙』と比べてより落ち着いている、といえるか。何にせよ、この人意外とお茶目である。塩野七生入門書としてお勧めしておく。


サロメの乳母の話


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