2006年03月20日

第51回「イタリア遺聞」塩野七生著 新潮文庫

塩野七生エッセイ集第二段。主には『ヴェネツィア −海の都の物語−』を書いたときに、余分に調べてしまったことや書き損ねたことを中心に、エッセイとしてまとめている。文章は相変わらず。自分に至っては、もはや読みなれた感のある独特の筆致である。ネタがネタだけに、『サロメの乳母の話』よりは落ち着いているかもしれない。

この、おごるでは無い幅広い知識は、非常にためになる。現代の言葉を使えば、トリビアとしか表現できない無駄知識の結晶のような本だが、だからこそ読んでいておもしろい。ゴンドラはなぜ黒なのかとか、『オデュッセイア』のおもしろい読み解き方とか、まあそんな具合である。「この後は、『コンスタンティノープル陥落』でも書こうかしらん」と文中で述べていたが、この後本当に書くことになるとは思っていただろうか。やっぱりこの人、意外と御茶目である。

今作は、著者の旦那様の話がたくさん出てくる。イタリア人で医者、ということは判明した。この人も、著者に似てたがわず、歴史好きでお茶目なようだ。やっぱり夫婦は似るものなのだろうか。塩野女史自身は『サロメの乳母の話』で自分を「日本最高の悪女」と述べているが、確かに彼女の夫なんてものは、日本人には務まらないのかもしれない。


イタリア遺聞


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