2006年07月05日

第67回「西洋美術史ハンドブック」高階秀爾・三浦篤編 新書館

『まなざしのレッスン』では教科書然としすぎていて、後から参照するには頼りない。『青の美術史』は当然ニッチすぎる。『カラー版 西洋美術史』は時代ごとの特徴をつかむのは得意だが、細かな作業には向かない。『西洋絵画の主題物語』はアトリビュートや元ネタを探すには便利だが、画家の年代や場所はごちゃまぜである。つまり、もう一冊くらい総合的な参照のできる西洋美術書が欲しくなったので買った。

どこにでもありそうな美術入門書っぽい作りなのに、高階秀爾、三浦篤両名は東大教養学部出身であり、書いているメンバーがその人脈なので実はものすごく豪華だったりする。作りがしっかりしていてとても読みやすい。ハンドブックの名の目的を果たしていると思う。

一方、ぽんぽんと専門用語が出てくるので入門書ではなく、中級向けといったほうがいいだろう。内容は完璧に伝記集。有名な画家を陳列し、それぞれについて長い人で2ページ、短い人では一行で説明している。登場人数はやや少なめで、本当に超有名どころを選んでいる。ところどころ、その時代区分の説明や「サロン」といった用語の説明が挟まっている。基本的に一枚の絵を解説するということは重視していない。そういった点でも、ある程度他の本や展覧会で絵を見ていて、挿絵を省いても想像できる人を想定して書いているのだろうと思う。

けっこう知らなかった事実や誤認していた事実を確認できて非常にためになった。特に専攻行く前に触れておいてよかったと思う。特に伝記的な情報は意外と欠けていたので助かった。大きさがもう少し小さければ、そしてもう少し分量があれば、本当に文句が無かったのだが。


西洋美術史ハンドブック


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