2006年11月12日

trueman show

マスメディア時代を象徴したような、大変奇妙な映画。ある男「トゥルーマン」が生まれたときから、24時間365日彼を撮影し放映し続けるという番組「トゥルーマンショー」。それだけならまだ誰もが思いつきそうなシナリオだが、この映画のすごいところはこの番組トゥルーマンショーは、「やらせ有」なのだ。

なんとこの番組、彼の今日中する町がまるごとセットである。天候もセットで、ときどき人工的な雨が降る。住人も全員役者で、彼の勤める会社もセット。もちろん、彼の妻も役者である。現実的に考えたら人権侵害とか言う前にとても採算が取れない番組なのだが(CM流している暇が無いしね)、そこら辺は「映画というフィクション」なので勘弁して欲しい、というのは虫が良すぎるだろうか。

最も衝撃的なシーンは、彼が生き別れた彼の父親と再会するシーンだろう。彼の父親はドラマのためにセットから連れ出されていたが、隙を見つけて戻ってきてしまった番組にとってイレギュラーな存在である。しかしそれさえもドラマ性を上げるためにでっち上げた「やらせ」にしてしまう。この一見すれば感動的な光景を、何台ものカメラが彼に見えないように隠れて放映しているシーンは、非常にシュールだ。

しかし、これだけ無理な番組はいつか崩壊する。この父親との再会を機にトゥルーマンに番組の事情がばれてしまい、彼は逃亡を図る。果たしてその結末は?ここでそれを書いてしまうのは野暮というものだろう。

この映画は少々古いものであるが、最大のポイントは昨年、同じく24時間放映し続けるサスペンスのテレビ番組「24」が始まり、そして大ヒットを飛ばしていることだろう。もっともこちらはあくまでテレビ番組であり、リアルタイムなサスペンスとしておもしろいのであって、トゥルーマンショーのようにテレビ番組をメタ的に取り扱っているわけではない。しかし、トゥルーマンショーが映画館で放映されていた10年前に、「24」のようなテレビ番組が放映されるなどということを、誰が想像できただろうか。そこを意識してみるのが、21世紀人の楽しみ方ではないだろうか。

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