2007年06月15日

第106回「明るい窓:風景表現の近代」横浜美術館学芸員著 大修館書店

近代以降の風景画の美術史というよりは、風景という概念についての、もっとメタ的な歴史をたどった本。そういう意味では自分の買った目的とはかなり齟齬があったが、自分の勘違いという非も認めるけども、正直あの序文では誤解されてもおかしくはない。買った目的と違うとはいえ試み自体は好きだしまあまあおもしろかったと思う。特に「近代」とタイトルに冠するだけあって風景表現おとナショナリズムの関連性や、そこに写真が登場した影響と植民地主義に関する考察など、研究の食指が動きそうなものが多かった。

しかし、いくつか不満点もある。まず、あえてこういう構成にしたのか知らないが、日本と西洋を行ったり来たりするわそれに伴って時代は飛ぶわで、すごく読みづらい。それに伴った事情もあり、そもそもテーマが大風呂敷だったというのもあり、全体的に文章が端折り気味でわかりにくいことはないものの読みづらい。何度か眠くなったことは確かだ。あと、オチが唐突。研究としてはそれでいいのかもしれないが、本としてはもう一箇所くらい山があるべきではないか。

そのオチのせいか単に本が売れたせいかは知らないが、続編が出ているようなので機会を見て読んでみたいと思う。


明るい窓:風景表現の近代


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