2007年07月01日

第108回「風景画論」ケネス・クラーク著

美術史学上の大著。風景画を卒論に考えている以上避けられない道だったが、いかんせん厚いのと、自分の研究分野であるドイツロマン主義がたった数行で終わっているという事実からなかなか部分的にしか読んでなかった。美術史の大家の著作だが、風景画を象徴・事実・幻想・理想の四つに分類するところから始まるなど、どちらかといえば美学的な色彩の強い本であった。そのせいではないのだが(美学の本だって読みやすいものはある)、語り口がまどろっこしく読み手への意識があまり感じられない。

大家らしい書き方というのか、断定するところが多く、自分の知識不足なのかクラーク氏の大胆な提言なのかは区別がつかないが、首をかしげることが多かった気がする。さすがにターナーとコンスタブルを語る部分は意気揚々としていてその辺りはさすがにおもしろかった。まあ風景画を研究しようと考えている人は読んだほうがいいとは思うが、それ以外の人が手に取る必要は無いのではないだろうか。同じ著者の本なら、もっとおもしろいものがあるはずだと思いたい。特に『ロマン主義の反逆』はこれから読む予定である。

なお自分が読んだのは改訂版で、改訂版の前書きで著者が「各章数行足したのみ」と述べているが、その数行が重要だったりするらしいので、ぜひとも改訂前のものを一度手にとって見たいものだ。


風景画論


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