2007年07月31日

第111回「人造美女は可能か」巽孝之・荻野アンナ編、慶應義塾大学出版会

本書は2005年12月慶応大学文学部で行われた立仙順朗教授の退任記念シンポジウムの結果を一冊の本にまとめあげたものである。何をやりたいのかぱっと見さっぱりわからないタイトルだが中身はしっかりとした文学的研究書だ、ただ扱っているものがマラルメやジュール・ヴェルヌ、ポオにナボコフといったガチガチの面々から綾波レイに攻殻機動隊、ローゼンメイデンともうめちゃくちゃ範囲が広いということだけ、一般的な文学書とはかなり体裁を異にしている。

そんな本なので読む側に求められる予備知識もかなり幅広く、相当に読者層は狭いと思う。その分、自分のようなその狭い層に当てはまる人種にはたまらなくおもしろい本だ。ロマン主義芸術に登場する倒錯的な女性美と現代ヲタク文化の共通点を探っていったらおもしろいだろうな、とは思っていたが、まさかそれがこんなにも早く、こんなにも豪華メンバーで実現されるとは思いもよらなかった。

退任なさる立仙順朗教授はこの本を書くためにわざわざアリプロを聞き、攻殻を見、アキバにも踏み込んだとか。マラルメ研究者にそこまでされると、我々ヲタクの側がありがたすぎて恐縮してしまいそうだ。そしてきちんとそれを分析し本にしてしまったことに対しては、もう敬意を表するしかない。

このシンポジウムの、そしてこの本の最大の目玉は、アリプロの宝野アリカ女史が参加していることだろう。彼女のゴスロリ少女論はほとんど自分の思っているところと共通していてなんだか安心した。あれだけ情報の濃い歌詞を書いているんだから相当博識に違いないと思っていたが、さすがだ。まあそれでも、彼女の文章がこの本ではやや浮いていたというか、全く研究論文らしくないことは否めないが。

なんと言うか、慶応大学を見直した。うちでもこういうぶっ飛んだことやらないかなあ。私信としては、同じく狭い分野に生きているだろう人たちに是非手にとって貰いたい品である。



人造美女は可能か?


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この記事へのコメント
宝野アリカが参加したというシンポジウムに
ついては耳にしたことがあるね。
興味あるので、いずれ読んでみますわ。

自分の問題点は、そもそもロマン主義芸術あたり
に関する知識が少なすぎることなのですがw

P.S.卒論テーマが変わってしまう悪寒\(^o^)/
Posted by 紅ちゃ(あっつぃ) at 2007年07月31日 19:29
知識を増やすためにも読んでみるといいんじゃないかな。

卒論のテーマ変わるのかw
決まったらまたそっちの日記に書いてよ。
Posted by DG-Law at 2007年08月01日 15:33