2007年07月17日

ここにも昔中田がいたね

西洋美術館のパルマ展に行ってきた。パルマといえばチーズとハムだが、もちろん美術史上でもかかせない都市である。今回持ってこられたのはパルマが特に芸術的に輝いていた16-17cの名品たちである。時代的にはマニエリスムからバロック期ということになるだろう。

マニエリスムというのは直訳すれば技巧的という意味で、まあいろんな意味で偏執的な趣味のことを指す。第二次世界大戦前くらいまでの美術史ではバロックの初期とされていたようだが、あまりにも盛期バロックとは違うということで区別されるようになったようだ。ミケランジェロがマニエリスムの始まりで、カラヴァッジョが終わりくらいだと思う。一番有名なのは、エル・グレコか。

私はマニエリスムもけっこう好きである。あのななめった感じが耐えられないという話は聞くし、それも致し方なしと思うが、あの極端さはそれだけで一つの芸術であると思う、美しいかどうかは別にして。そしてああいったものがルネサンスの直後に誕生したということは、歴史というのはやはり反発の歴史なんだろうなということを感じさせる。

前半はメインがコレッジョで、彼がルネサンス様式からだんだんうねっていく様子が見て取れる。ただし彼の大作は壁画・天井画なわけで、本当に見たければぜひパルマへ!と言わんばかりに写真が掲載されていた。やっぱ行かなきゃダメかなあ。

凸面鏡の自画像で有名なパルミジャニーノもけっこう来ていた(やはり「凸面鏡」という物そのものがマニエリスムの象徴なのだろう)。後はスケドーニという画家もおもしろかった。若くして亡くなっているのが惜しい。

後半はいろいろありつつもやはりカラッチ一族が目立った。美術史の友人Kがアンニーバレ・カラッチで卒論を書くらしいので、一緒に見て説明をしてもらった。カラッチといえばカラヴァッジョのライバルだが、アンニーバレはカラヴァッジョよりもさらに静謐な表現に長け、バロック古典主義というどっちやねんとツッコミを入れたくなるような新境地を開いた。確かにこうして大量のマニエリスムを見た後に見ると全然違うことが見て取れるだろう。大仰な身振りながら均整が取れている。なお、アンニーバレの従兄弟のルドヴィーコ・カラッチの作品もあったが、彼はまだまだマニエリスムを引きずっていて、一族でもいろいろあるもんだと思った。


ところで、パルマ展と言いつつナポリのカポディモンテ美術館から持ってきたものが多かった気がする。小佐野先生曰く、両シチリアとパルマ公国が同じスペイン系統(ブルボン家)の統治になった折、超名品に関してはナポリに持ち去ってしまった結果だという。こういうことはよくあることではあるが、相変わらず強引なもんだ。

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この記事へのコメント
なんで金刀平羅宮展のレポートを書かないんだ?
先週に鬱を脱した記念にw見て来たんだが、障壁画の構造美(つまり、襖の一面一面
が独立した絵画として鑑賞可能でありながら、全体としてー部屋が完全に閉じられ
て全ての襖絵が見えているとき−巨大な一個の絵画として鑑賞可能な、という意味で)
に開眼してしまった。とくに、マイナー画家な岸岱の「柳の間」「菖蒲の間」にイカれた。
これはDG-Lawが見るべき美術だ。
 それと、だいたい生活の中の美(空間を裁断するきわめて実用的な生活調度が同時に
鑑賞に堪えうる美術であるという点で)はサントリー美術館でやるべきだと思っていたら、
秋に実際に屏風展をやるらしい。なんてすばらしいタイミングなんだ!
Posted by gussann at 2007年07月27日 18:10
まだまだ終わらないから行ってないだけだよ、当然あれは行かなくてはならない。というか、江戸中期の京都画壇が大好きな俺が行かないはずがない。本当は障壁画なら、現地に行って見るべきなんだろうけどね、建築物と一体として捉えるべきだろうから。

トプカプ宮殿の至宝も始まるし、何より東博で京都五山が始まるからね、この夏は見るべきものが多い。サントリー美術館はリニューアルしてから気合入ってすぎw鳥獣戯画展もやるし、目が離せない。
Posted by DG-Law at 2007年07月27日 19:56