2007年10月28日

エロゲ私的傑作選(2)

説明が長くなったので分割。やはり「知る人ぞ知る」よりは信者もアンチも多いゲームのほうが説明責任が大きいなと思う。その意味で、前回よりもプレッシャーあるわ。



6、 『MinDeadBlood』
これに関しては名作選のほうで割と語ったので割愛。視覚的な意味でのエログロの極致として、傑作選からも外しがたい。『輸血箱』はまあ……原作が神ゲーだと思った、私のような黒サイ信者はどうぞって程度。『ゴア』はMinDeadBloodに比べればだいぶ見劣りがするというのが私の意見。まだ『Extravaganza』やってないんだよね……体験版はすごくおもしろかった。院試が終わったらやらないと。『銃刀』は体験版をやって非常におもしろそうだったんだけど、FPS無理(反射神経的な意味で)。


7、 『Fate/stay night』
『Fate』は文学、とおっしゃる方々にはなんでこんなに低いんだと言われてしまいそうだが、面倒な議論はおいておくとしても、ドイツ語のくそ酷さを弁解してからそういうことは(ry

『Fate』のおもしろさは「大人用の少年ジャンプ」に徹したところにあると思う。要らないところまで設定にこだわってみたり、なんとなくかっこいいドイツ語を乱用してみたり、「努力」「友情」「勝利」してるところがいかにも少年ジャンプ。ドラゴンボール的と言ってもいい。そして那須きのこにはそういったジャンプ要素を、大人向けとして書き換えるだけの力があったし(設定の緻密さや物語のテーマ)、武内絵もそれにあっていたというのは間違いないだろう。演出も神がかっている。と同時に、そのジャンプらしさがこの作品の限界点だったんじゃないか。

ちなみに、『月姫』が那須きのこ最高傑作、『歌月』がその次。『らっきょ』はエロゲじゃないから評価不能、小説としては割とおもしろかった。『月姫』を入れなかったのは、同人作品だから。『hollow』は自分の中で失敗作。那須担当部分以外が酷すぎたし、那須担当部分にたどり着くまでが長すぎて間延びした。その意味でも『Fate/stay night』はあれだけ長かったのに全く間延び感無く40時間近く読み続けられたという意味でも、やはり偉大な作品である。仮に無理やり『月姫』をこのランキングにねじ込むなら、『MDB』と『うたわれ』の間くらい。


8、 『遥かに仰ぎ、麗しの』
これも名作選や個別の感想で十分語ってるので割愛。ただ付け加えるなら、この作品の分校と本校のバランスも、『AIR』的な意味での奇跡だったんじゃないかと思う。エロゲの女神様に微笑まれたんだろう。つまり、この作品の一番偉大なところは、中二病の肯定と否定を一つの舞台で両方やってしまっていることだ。


9、 『とらいあんぐるハート』シリーズ
これも個別に語ったことがあるので割愛。名作選には代わりに『わんことくらそう』が入ってるから問題なし。


10、 『Parfait –Chocolat second brew-』
丸戸作品よりもう一つ。別にこれは型月作品や鍵作品より丸戸を推してるってわけじゃなくて、単に鍵作品は入れるべき作品が全年齢だから、型月作品は同人だから、というそれぞれの理由で省かれているだけである。しかし、『こんにゃく』とは別に『パルフェ』をリスト入りさせたのは、二作品が全然別の方向を持っているからという理由もある。

『パルフェ』は欠点の少ない作品だ。極めてこぢんまりと、しかも薄味に仕上がっている。『こんにゃく』のとっぴさ、あざとさとは正反対だ。しかしそれでいてとても丸戸らしいなと思わせるのは、その計算高さ。ちゃんと里伽子をクリア順最後に回した場合の、彼女の正体が判明するタイミングと、その泣かせるタイミングといえばまさに「してやられた」。『こんにゃく』は号泣したが、里伽子シナリオはほとんど泣けなかった。涙腺よりも先に、一人の芸術愛好家としての脳が刺激されてしまったからだ。

『フォセット』の「里伽子抄」他に関しては、『こんにゃく』側に比べて必要性を感じない。まあ、不幸女属性がある人とか、カトレアにはまっちゃった人はやっておけばいいんじゃないか。私はもろに両方でしたが。『Chocolat』は後の二作ほどの完成度は無い。しかし香奈子シナリオは、里伽子好きならばやる価値がある。

そうそう、カトレアは偉大。なんせ、ツンデレ嫌いの俺に、ツンデレとして萌えさせたってこと、そしてツンデレ側のほうが精神年齢が高いのにちゃんとツンデレしてるってことを達成しているのだから。


11、 『サナララ』
これは名作選で語ったので割愛。やはり私的ねこねこソフト最高傑作にして、『沙耶の唄』と並ぶ短編最高傑作。


12、 『夜明け前より瑠璃色な』
多分多くの人は「このラインナップで最後これとは血迷ったかw」と思われただろうが別に血迷ってない。最後超展開でフィーナの説得とか論理適当じゃないか、という指摘は認めよう。俺もそう思う。ただそれは君が他の八月作品に触れていないからであって、お前『はにはに』や『プリホリ』の超展開っぷりを見れば、「超展開でオチを閉める」ってこと自体がオーガストのお家芸ってことくらい見えてくる。ちなみに私は『FA』でもどんな超展開を見せてくれるのかwktkして待っている。

それはそれとすれば、判子絵師べっかんこうの絵の安定感、ちゃんと聞かせる音楽に、特徴が無くて読みやすい榊原拓の文章とラスト以外は特に超展開の無いシナリオ、ちゃんとエロいHシーンと、『Parfait』並かそれ以上に隙の見当たらない作品になっている。そこはちゃんと評価してやるべきだと思う。加えて言うならエロゲ自体が商業的に売れそうで、かつこれからのメディア展開を見据えたような作品にしているところもしたたかで、自分はそういうところもけっこう評価してやりたい(赤松健作品が好きなのも、一つはそういう理由)。さすがは慶応大学出身者で固められた(という噂の)ブランド。ただまあ、八月作品にしろ赤松健作品にしろ、自分はグッズ一個も買ったこと無いけどね。


13、 『きると』
カーネリアン信者ゆえのリスト入りかと、今考えるとこっちじゃなくて名作選?のほうに入れるべきだった。でも『顔の無い月』がそこまで名作だとは思えない(主人公の性格が一貫してないし音楽や文章がそこまで良いとは思えない)、『ヤミと本と帽子の旅人』はやはりBGM無しというのが失敗だったし説明不足すぎる、テレビアニメの方がおもしろかった。

その意味で『きると』は安心できた。絵はすぎやま現象も西脇ゆうりも好きだったし(というか現象御大はカーネリ並に好き)、音楽もケルティックな音楽は最高だった。シナリオも際立っておもしろくはなかったが無難だった(『きると』以来片桐意由摩のファンになった)。

何よりもほめるべきはその総合性だろう。文章も絵も音楽も、南の島特有の雰囲気を出そうと目標が一致していて、その互いを助け合っている感じは他の作品を見渡してもなかなかない。そしてこの雰囲気というのが独特で最高に良い。たとえて言うなら『Fate/stay night』や『AIR』が最近のハリウッドの大作映画だとしたら、『きると』はさしずめ『ローマの休日』か『サウンド・オブ・ミュージック』か。むしろシェイクスピアの領域かもしれない。こういう雰囲気が好きな人には必ず殿堂入りする作品だろう。

なお、服作るために島中歩いて材料集めるゲームシステムは不必要だと思うが、『桃華月譚』のゲームシステム的なものを本当はやりたかったんだろうという意図は透けて見えた。そして『桃月』はそのシステムゆえに地雷になったんですがね……


14、 『いただきじゃんがりあんR』
名作選で語ったので割愛。近年パロディネタで爆笑といえば『つよきす』にお株を奪われてしまっているが、『いたじゃん』も十分負けてない。


15、 『家族計画』
ロミオ作品は入れない予定だったが、枠が余ったし別に強情を張りたいわけでもないので、鳥はこの作品で。なんだかんだ言っても、この作品をやって涙を流したという事実は変えようがないわけで。

『家計』の場合、設定としては奇抜なんだけど各キャラの行動原理が明確でちゃんとそれを描いているから、あまりそうは感じさせない(これに関しては『クロスチャンネル』も同様)。特に主人公の悲壮感はすさまじい。ただまあ、終始間延びした感じは否めないのと、やはり全体的にあざといなと。



仮に非エロゲ、同人ゲーをここに入れるなら、『ひぐらし』(推理ではなくエンタメとしては上級)、『月姫』、『アカイイト』、『Ever17』、『CLANNAD』、『Little Busters!』、『蒼い空のネオスフィア』辺りを入れる。どこの順位に入るかはご想像にお任せします。

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この記事へのコメント
どうもこんばんは。
非エロゲ編も気長に待っております笑。

私も顔の無い月とヤミと本と帽子の旅人は「何だか壮大なバックグラウンドがあるらしいんだけど、何だかよくわからん…」な気分のうちに終わっちゃいましたね。
Posted by toppoi at 2007年11月01日 03:33
>非エロゲ編
マジすかw このシリーズはあとI've30選で終わろうと思ってたんですがw

顔月は宗教なので理解するもんじゃないです。よくわからんけどすげぇでいいんだと思います。逆にヤミ帽は……完全に説明不足ですよねぇ(苦笑)
Posted by DG-Law at 2007年11月01日 18:32