2007年10月23日

第118回「文学を旅する地質学」蟹澤聰史著、古今書院

文学作品の中に地質学的な要素を見出し、それを分析しようという本。知っている人は知っている通り、ゲーテが地質学に詳しく地質学の勃興に貢献しているのだが、そのことも詳しく書かれていた。そこで自分の研究分野ともつながるなと思い購入。

著者が地質学の偉い人のようなので当然地質学よりの話が多く、どちらかといえば「この文学の舞台の地層は」という話が多かった。それはそれでかまわないのだが、地質学者に「文学も読もう」という意識で書かれているために私が読むには地質学の専門用語がさっぱりわからず、とてもハードルの高い本であった。というわけで、文学部の人間よりは理学部の人間に、「俺たちの研究はこんな風に全然遠い場所でフィーチャーされてるんだ」というのを確認する目的で読むことを勧めてみたい。

ゲーテの部分と宮沢賢治の部分が一番おもしろかった。それ以外の部分は、さすがに地質学と文学はかけ離れた分野すぎたか、という感じ。まあ地質学側の人間から見れば、もう少し感想が違うのかもしれないが。あと、出典元の文学はかなりあっちこっちに飛ぶので、網羅しようと思うのなら相当広範に読んでいる必要があることを付記しておく。まあ、各々の原作を知らなくても読める本ではあるが。


文学を旅する地質学