2008年02月09日

『世界で一番NGな恋』レビュー

主人公29歳無職バツイチで、メインヒロインが中学生ってそりゃダメだろ……常識的に考えて……とだれもが突っ込む設定。しかし丸戸には里伽子とさえちゃんというそれぞれ別方向で究極のダメな女を描いたという前例があるので何の心配もしてなかったが、良い意味で予想通りだったか。

ただ、灰汁の強さは際立っていた気がする。HERMITの丸戸作品を初めてやったのは自分もそうなのだが、「ああ、やっぱり丸戸節だなぁ」と思う一方で、あまりのテイストの違いに驚きを隠せなかったのも確かだ。「戯画での丸戸作品を期待すると肩透かし」という、世の丸戸信者が喧伝していた話は真実であった。それでも、個人的にはぜひこの作品をやる前に『パルフェ』『こんにゃく』には触れておいてほしいと思う。というよりも、『ダメ恋』をいきなりやると、きっついかも。

ちなみに、私はこの主人公がかなり嫌いなタイプである。すぐに謝る奴というのは結果的に事大主義者になりがちで、実際に彼は作中で何度もそのせいで大変な目に遭っている。特に、自分に能力があるのにもかかわらず、必要以上に卑屈になるのは最も許せないタイプの人間かもしれない。それでもこの主人公が許せるのは、それでいてハーレムを形成させるだけの、母性本能をくすぐるダメさ以外のものを持ち合わせていることと、ちゃんと作中で彼の卑屈さが直りつつある描写がなされていることだ。これは29歳の彼の、遅すぎた成長物語なのかもしれない。


あー、あと愛知県ネタ多すぎて地元民大勝利。風来坊の手羽先をくわえ、蓬莱泉「空」を飲みながらプレイすればいいと思うよ。愛知県民には本作品をプレイする義務があるわ。


以下、ネタばれ。


・夏夜
基本的に全てのヒロインは美都子との対立軸で動いていく。しかし夏夜の場合、分岐のタイミングが早すぎて、共通設定が固まらないうちに放り込まれたので、美都子の心情が今ひとつわかりづらかった。そのせいで夏夜の心情も必然的になんでそんなにギクシャクしてんの?って話になってしまい、丸戸にしては珍しく少々シナリオに殺されたキャラかもしれない。本作で最も失敗したところを挙げるならば、間違いなく夏夜シナリオの分岐ポイント。姫緒と同じくらいのタイミングにしておけば、絶対に化けた。キャラとしては非常に優秀なので、それだけに惜しい。まあ、夏夜さんの真価は振られてからってことで。さすが「2号ちゃん」。

・姫緒
一番「戯画」の丸戸らしいシナリオ,特に最後の逆転劇が。しかも,それがめちゃくちゃおもしろいから困る。どっちの丸戸がいいかと言われると,私には選べない。美都子シナリオみたいなドロドロの話もおもしろいし。しかし、あの3Pエンドは必要だったんだろうか。電話の真相をばらすための二周目の口実にしか見えないんだが。

・麻美
ある意味本作最大の犠牲者。でも「そんな理由かよ」と思ってしまったのは、やはり自分がまだ幼いからか。そこはもう正直に、このゲームが本来R-25くらいであるべきであって、早々に22歳なんかでやってしまった自分が悪いのかもしれない。美都子と分岐する前の超ドロドロした辺りはもう何か魂震えるくらい楽しかったし、各キャラの心情もよくわかって,丸戸の真骨頂と言える部分ではあった。

・美都子
この子を好きになれるかどうかは、このゲームの評価の分かれ道の一つ、とは誰もがレビューで書いている通り。でも、嫌いになれる道理は無い。良い子すぎて。もうね、「彼女の幸せを願うなら姫緒ルートか夏夜ルートに入っておくべきだった」とか、プレイヤーが謎の悩みを抱えだす始末。

最後のご都合主義な展開は、「おまけ」という章分けからして、丸戸にとってもどうでもよかったんだろう。でも一応ハッピーエンドで終わらせたいし、かつ穂香さんは出しておかないとまずいし、という事情でああなったんじゃないか。穂香さんをむかつくキャラに仕立て上げるのにまきいづみの声はあまりにも効果的だった。「マジその意見は無いわ」と思わせつつ、こっちにも負い目はあるというカタルシスの多いこのゲームで、最後の最後で一番そのカタルシスを味あわせてくれたという意味で、このおまけは秀逸だった。

倫子については意見が分かれているようだが、個人的には彼女に共感できる。はったおしたいという大多数の意見も理解はできるんだけど、そりゃあんな状況で彼女の立場だったら、何やってでも止めたくなるでしょう。最後、結局自分も剛志と付き合ってる辺りが、ほんと丸戸のキャラらしくて良い。

個人的には、『パルフェ』『こんにゃく』よりも高評価は下しにくい。ただしそれはBGMの使いまわしが多いとかHシーンがエロくないとか、まあある程度仕方が無いと言える理由でのことだ。しかし、不作と言われた去年においてエロゲー大賞を受賞する資格は十分にある、紛れも無い名作であった。

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