2008年03月24日

大相撲春場所2008

何ともしまらない横綱決戦だった。しかしあれこそ朝青龍の勝ちパターンであって、立ち合いの当たりは白鵬のほうが良かったのもあり長期戦にもつれこんでいたら白鵬が勝っていただろうから、仕方の無い展開だったのかもしれない。しかも白鵬はなぜか自分の得意な右四つではなく、朝青龍の得意な左四つに組みに行くという絶望的な失策を犯しているため、弁解の余地が実はほとんど無い。そして左手をきめられたまま小手投げ、負けるべくして負けた。ではなぜ左四つだったのか?本人は「あれも作戦のうちだった」とか言っているが、私は緊張ゆえのことではないかと思っている。精神的な神経の細さ、そこが今後の白鵬の弱点ではなかろうか。それ以外の千秋楽の取組はいっぱい裏でやり取りがあったんだろうなと思わせるものが多かったが、そこは大相撲の伝統なので気にしない方向で行きたい。

力士全体を通して気になったのは、どんどん立ち合いが悪くなっているということだ。張り差しの流行は必ずしも悪いだけとは思わないが、あまりにも全員繰り出しすぎていて見飽きるし、そもそもあれは変化と同程度にはマナー違反なわけであって多少自重する精神が無いとダメだ。大体、そこまで絶大な威力があるとは思えない。確かに成功すれば相手はひるむが、頭を低くして当たれば逆に張り差した側が一転吹き飛ばされる。もちろん、頭を低くすると今度は変化に弱くなるから、ちょうど三つ巴になっているからこそおもしろい。だからこそ主軸はあくまで普通の立ち合いであるべきであって、今場所のような張り差しだらけの立ち合いは気分が悪くなる一方だった。ただし、張り差し流行の原因である朝青龍がとうとう審判団に注意され、それ以来張り差しがあからさまに減っているので、今後流行も廃れていくのではないかと思いたい。


各力士総評。「若手陣が伸びてきてる中で大関陣の高齢化が進み、力を発揮しきっても今ひとつの成績」と先場所書いたが、今場所はさらにその傾向が強くなった。来場所か再来場所辺り、千代大海や魁皇は純然たる実力差で負け越してもおかしくない。ただ、若手力士の実力が数人同時に伸びてきているため、彼ら同士でつぶしあってしまい、結局誰も二桁勝利できない、という状態にも陥りつつあるため、案外と大関の誕生は遠くなりそうだ。そして、やはり朝青龍と白鵬は頭抜けているため、この二人が悠々と優勝争いをするという展開も変わりそうにない。

琴光喜は前半の不調がほんとに謎。最初から朝青龍を倒したときくらいの強さでがんばってくれれば今場所の「荒れ」も若干収まっていただろうに。しかもその前半と後半の調子の差が目に見えない(=ケガ等ではない)から、予想する側としては困る。千代大海と魁皇はまああんなもんだろう。千代大海には殊勲賞をあげてもいいと思う、大関だけど。琴欧洲にはノーコメントで。

安馬には一言だけ、太れ。琴奨菊はその調子でがんばって。でも、いい加減対策される気がするなぁ。稀勢の里は実力としてはすでに大関陣を超えているのにどうも勝ちきれないのは、相撲経験の差だろう。取組を見ているとそんな気がする。最善の行動を選んでいないというか。まあ勝ち越しして安心した。次は雅山、時天空辺りから取りこぼしが無いように。豪風は上位に来るのが早すぎた。

朝赤龍、彼も実力派ではあるのだがどこか目立たないのは朝青龍の影に隠れているからか。若いとは決していえないが、一応「大関を狙う若手陣」の一人ではある。鶴竜は今場所残念ながら負け越したが、まあ大して番付下がらないだろうし、まだまだ若い、期待できる。まずは三役へ。まあそのためには、やはり稀勢の里か琴奨菊か安馬辺りにさっさと大関になってもらって、空席になる必要があるわけだが。

若ノ鵬、今場所はおとなしかったのに最終日で駄目押ししてケチがついた。このまま強くなると二代目朝青龍になりそうな気がするなぁ。しかも来場所は番付編成上の問題で星の数以上に昇進しそうだから怖い。大きく負け越して素行が荒れる、なんてことにならなければいいが。同じくヨーロッパ系の黒海は今場所大きく勝ち越した。しかも好調時の彼らしい前に出る押し相撲が多かったのですばらしい。それだけに最終日、しかも三役揃い踏みの後の魁皇戦だけ引いてしまったのは画竜点睛を欠いた。来場所はかなり番付が上がるが、かなりがんばれると思う。

自分が絶賛応援中なのは把瑠都だが、これだけ勝つとは正直思っていなかった。特に栃煌山、黒海、千代大海に勝ったのは評価できる。見るからに相撲がうまくなった。栃煌山も11勝に心からおめでとうと言いたい。豪栄道もとりあえず勝ち越した。彼らは「次の若手陣」かな。あ、局所的に話題の千代白鵬は負け越してました。残念。



2008春場所
この記事へのコメント
終わってみれば番狂わせの少ない場所となりました。序盤の大関陣の大崩れだけが目立ったかも。
豪栄道は地元で母親が引率してきたという小学生達が声を揃えて応援していた日が印象的でした。物言いがついて取り直した日でした。きわどい勝ち星でしたが、あの日の豪栄道はアドレナリンが出まくっていたと思います。
Posted by EN at 2008年03月29日 10:11
全体的にすっ転んだら誰も目立たなかったってパターンですかね……
いっそ平幕が優勝してくれたほうが良かったかも。そのほうが春場所らしい。
何人かの友人には「もう把瑠都優勝でいいよw」と言った覚えがあります。

豪栄道に限らず、そういう日は力士を気合入るでしょうね。
中継を見ていると結構地元の小学生応援団が来てますから、一種の恒例行事なのでしょう。ほほえましいですよね。
地元力士の応援も相撲観戦の楽しみの一環だとは思うんですが、実はあんまり琴光喜を応援してない自分もいたりします(苦笑)
それこそあの星の取り方じゃあねぇ……
Posted by DG-Law at 2008年03月29日 19:29