2008年06月11日

『アオイシロ』レビュー

前にも書いたとおり、評価に困る作品であった。あまりにも褒めるべき部分と批判するべき部分に乖離が激しすぎる。以下、ネタばれ。あと、どうしてもとっぽいさんのレビューを意識して文章を書かざるを得なかったので、先に向こうを読んでおくことを勧める。


ナミーは俺の娘だと思ってましたが、訂正します。ナミーはコハクさんの嫁でいいです。なぜコハナミのSSが無いんだ。いや、コハオサもナミオサも好きですが。
全体を通して。どんなにベタ褒めしている人でもシステムが重い、やや使いづらいこと、そしてEDの数が多すぎることと、そのせいでEDの作りが雑になっていることだけは欠点として認めている。逆にとっぽいさんのように「地雷!」と叫んでいる人でも、Hal絵の美麗さとLittle wingの音楽の良さ、伝奇要素の使い方がアカイイトよりも格段に上手になっていることだけは、おおよそ誰もが褒めている要素であろう。私には、そのどっちも肯定することしか出来ない。基本的にどっちの意見もその通りであって、比重によって神だったり地雷だったりしてるだけなんじゃなかろうか。

(amazonの評価は高いが、書かれている文章を読むと「本当に貴方は高い評価してるの?」というのもちらほらある。逆にエロゲ批評空間は地雷判定者ばかりが書き込んでいて全く当てにならない。どっちも両極端。それにしても、いまだもってアオイシロレビューを書いているサイトが少なすぎて困る。)


シナリオに関して。今回の話は要するに、思惑・目的の違うそれぞれの登場人物が、互いの素性を知らず敵だと「勘違い」している状態から始まって、そこで勘違いを解いていくと実は敵はバーロー一人でした、ってことだ(バーローを主様に変えれば、『アカイイト』も大筋同じではある)。伝奇要素の入れ方も含めて、ネタばれの秘匿と解放、情報管理に関して、麓川氏は天才的だと思う。シナリオがつまんないという人は、「誰が」「今」「どういう勘違いを抱いて」「誰を敵だと思い込んでいる」か、「その人の勘違いが解けるフラグは何か」を主要キャラ全員、一々頭の中で表にしながら読み直してみれば、かなり印象が変わってくるんじゃないかと思う。

それだけおもしろい話で、しかもそれを支える要素がシステム以外不備が無いのに、なぜ80点与えられないかと言えば、やはり明らかな手抜きだろう。麓川氏自身がブログで弁解しているように、もうこれに関してはいかなる信者でも認めざるをえない点かと。特にナミルートとグランドエンドルートは酷かった。あの二つがコハクルートくらいの出来だったら、『アカイイト』級の名作認定できたのに。

伝奇要素に関して。今回は本当に漢字ネタと日本史ネタが多かった。こういうの大好きなので、ここで楽しめて本当に良かった。実は保美ルートと汀ルート終了時点でほぼ全容はわかってしまったのだが、さすがにまさか安徳天皇を女性化するとは思ってもみなかった。しかも義経フラグとは。これってけっこう大胆な史実の変更だと思うのだが。あと、馬琴ネタを使ってくるとは珍しい。しかも『八犬伝』以外となると、自分の知っている限りこういうノベルゲーでは初めてだわ。

システムに関して。確かに未読・既読判定が大雑把で通常のエロゲについているような既読スキップだけを使っていては大変に不便であるが、本作品にはスキップが全部で三種類あり、使いこなせばほとんど窮屈な思いをすることなく読み進めることができると思う。ただ、使いまわしの文章であっても別ルートなら未読扱いというのはちょっと。それもまあどっちかを未読スキップに割り当てれば済む話でもあるし。単に重すぎる、というのなら要求レベルが高すぎると思う。PS2の限界。もう『アオイシロ』がPCで販売されることを待つしか。


各ルートに関して。保美ルートは多くの人が最初にやるであろうことを考慮してか、設定の後だしが多かったのがもったいなかった。確かに『アカイイト』のように初日の夜から襲われるなんてことが無かった上に、ここで一気に説明しておかないと後のルートに差し支えるので仕方が無いのではあるのだが、唐突過ぎる感が先立って超展開に見えかねないかな。『アカイイト』の烏月ルートでも若干その気があったので気にはしていたが、直らなかったか。

汀ルートは、キスが正直余計だった以外に不満点は特に無し。しかし、棍に仕込刀、鋼糸とはどこぞの高町さんちみたいだ。棍は別の人であるにしても(亀かわいいよ亀)。カヤルートは他に比べてやけに短かった印象があるが、『アカイイト』の葛ルートみたいなもんだろう。全体を見通したときのワンクッションになる。コハクルートが一番良く出来ていた。一般的に言えば一番ネタばれの激しいルートだし、気合入れて書かれたんだろう。EDのコハク様かわいすぎるんだがどうしてくれよう。逆にナミルートとグランドエンドルートは、そりゃ無いよという出来。卯良島行ってからが本当にスカスカで困る。

点数を付けるなら75点強。80点以上にするには明らかな手抜きの部分が多すぎるし、70点未満にするにはもったいないくらいにはおもしろかった。(『アカイイト』は90点弱)





ここからはほとんどとっぽいさんへの私信になるので、他の人は飛ばしてくれても。向こうのWeb拍手やコメントでもよかったけど、長くなりそうなのでまあついでにここに。

『アカイイト』の魅力に関しては同感。ただ、『アオイシロ』も少なくとも活躍分散型、年表作成型としてはかなり良い出来していると思う。咲森寺時点での緊張感の無さと卯良島へ渡ってからのギャップは、メタ的に夢と現の境界を示しているんじゃないかと。元々浦島太郎ってそういう話だしね。『アカイイト』は経見塚自体がマヨイガだったから、現側の表現がED以外で皆無だったという違い。

ミギーはともかくとして、オサは割と人間出来てると思う。まあ、日高のり子の名演技に支えられている感は否めないとしても。ミギーも、少なくともサブキャラとしては光ってたんじゃないかな。良い情報管理要員だったと思う、彼女の緊張具合でシナリオ進み具合がわかる。横のつながりに関してはもう『アカイイト』がありすぎたとしか。まあグランドエンドルートがあまりにもいい加減だったのが、一番致命的なんだが。あれじゃ考察も何も。

分岐図について激しくたたいているが、個人的にはけっこう好きなもので廃止されると困る。単純に自分は埋めるのが楽しい箱庭体質だからというのもあるが、少なくとも『アカイイト』の場合は全く必要の無かった血液ゲージ(笑)と違って、無いとゲームが成立していない。あれは煩雑な選択肢と表裏一体のものであって、生かすも殺すも選択肢の側だと思う。

一般的なエロゲだと単なるフラグを立てるだけの存在になっているが、中には有効利用しているゲームもあるわけで、『アカイイト』ももちろんその一例だけど、『クラナド』はある意味その究極形態じゃないかと思う。だーまえが「『クラナド』延期の理由の大半はデバック」と言っていた分岐図は一度大阪のイベントで紙に印刷され展示されたそうだが、とんでもない大きさだったそうな。ゲームに分岐図が実装されていたらおもしろかったんじゃないかと思う。まあそういう意味では『アオイシロ』はデバック不足の未完成作品と言わざるをえないのだが、予算の都合もあるしあんまり文句も言えない。

ところで、ルートに入る選択肢が非常に単純なゲームとして『パルフェ』を挙げているが、あれはカトレアルートに入るためには実は尻を追っかけているだけじゃなくて、適度に由飛を選んでおかないとトゥルー入れない、という罠があるので決して単純な部類ではないと思うんだが。『トゥハート』も、俺の超古い記憶が確かならばあかりエンドはむちゃくちゃフラグ難しくなかったっけ?

マルチBADEND方式に関しては、『Kanoso』と『Fate』で慣らされた俺に隙は無かったと言っておこう。タイガースタンプ集めるの楽しくないですか皆様。いや、マジレスすると埋めるの好きな自分としては別に苦痛ではなかったが確かに「鬼切りの鬼」「赤い維斗」級のBADENDが無かったのは確かであって、多すぎて練られなかったと御大が言うのなら減らしてくれてもかまわない。ただ減らしたところで(ルートを減らしたら他のルートが充実するのが確実なのとは違って)他のEDが充実するとはあまり思えない。

ルートの封印管理に関しては自分からはなんとも。訓練されたエロゲーマーとしては「そんなもん読みが浅かったお前が悪いだろJK」になってしまう。「無闇やたらに増えたサブキャラの存在意義」はご自分で書かれている通り、「奈良陽子が経見塚に来た悪夢」であって、前述の通り卯良島にとっての咲森寺自体が、経見塚にとっての奈良陽子なんだからいてしかるべき。そのせいでメインキャラに対する書込みが薄くなったと考えるなら、『アオイシロ』の根本的な設定上仕方の無い話なので、諦めてもらうしかない。

典型的な展開、CGが増えたと思うのは同感。別に必要ない。「『アカイイト』が薄かった」という感想がたくさん届いたんだろうか。もっとも、『アカイイト』でのユメイさんも大概だとは思うし、ああいう「あざとさ」はあってしかるべきだと思うがwいずれにせよ、今回の吸血シーンはわざとらしいのが多かった。それは単純に不満。


むしろこっちのが長くなっちゃったけど、そっちのレビューを読んで思ったことはこんなところです。

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この記事へのコメント
どうもこんばんは。

トゥーハートはやってないのにテキトー書いてすいません。あとで直しておきます。まだアカイイトぐらいしかやってなかったときに、ギャルゲーについていろいろ検索していて、「な、何という身も蓋も味も素っ気もない親切設計・・・」と驚愕したんで書いてしまいました。パルフェは一二回しくっただけで他に迷わなかったんですが…。さっきメモ見たら攻略無しで3日でクリアしてました。無難に弾丸執事に直しておこうかな。

私が「選択肢」に嫌気がさすのはめんどくさいのもありますが、自分の中のキャラ像やフィクションに対して潔癖なのもあります。「羽藤の桂ちゃんなら迷わず血ぃあげるし迷わず飛び出すに決まってるじゃん」みたいな。う〜ん伝えにくい。

また来ます。
Posted by toppoi(サイト名がとっぽい。でハンドルがtoppoiっす、いちおう。) at 2008年06月11日 03:27
>アオイシロレビューを書いているサイトが少なすぎて困る
ttp://blnd.sakura.ne.jp/game/game036.html
ttp://newmoon1.bblog.jp/entry/429346/
は読まれました?お二人ともDGさん並みにオタ素養があって頭が切れる方です。ちなみにアカ仲間。
Posted by toppoi at 2008年06月11日 03:29
>HN
なるほど。今後気をつけます。

両サイトとも、もちろん存じております。
まあ『アカイイト』のときも広まるのが遅かったわけですし、気長に待ちましょうかね。
今ふと『アカイイト』当時、自分がブログ持ちではなかったことに気づいてちょっと驚きましたよ。『アオイシロ』待ち続けての大学生活だったんだなぁ……
Posted by DG-Law at 2008年06月11日 14:08
Fateのバッドエンドはバリエーションがあるし、少なくとも一歩間違えれば命を落とす緊張感や、サーヴァントと人間の格の違いを表す演出になっていたと思います。アオイシロの使い回しテキトー死亡エンドは見れば見るほどキャラのとんま振りに嫌気がさして、作品全体が茶番に思えてきました。
上にも書きましたが、私は分岐図の導入は、いらん選択肢・分岐・EDの増加を招き、ひいてはキャラの人間性を奪ってヘタレ振りを助長するものだと考えています。とりあえずアカイイトの分量で青息吐息になってアオイシロは完全にぶん投げた御大と、フラグ管理もろくに出来ず、飛ばしてはいけないイベントの判断もつかないスタッフが手を出すものじゃないです。

アカイイト当時は高校生…。う〜ん若かった。
Posted by toppoi at 2008年06月12日 03:32
上記の通り、分岐図を生かすも殺すも選択肢の側、だと思います。
分岐図不要論自体は理解・納得してますのでご安心を。
まあ、私は別に梢子が死にまくっても、とんまだとは思いませんでしたが……BADENDって基本的にそのキャラの気の迷いだと思ってますし。それこそFateでも「そこでその死に方はねーよw」ってのがそれなりにあったわけですし。
そんな中味のあるBADをいくつ作れるかってのがライターの力量なのかもしれませんね。

まあ、確かにぶん投げるくらいならコンパクトにしろよ、と思いますね。『アカイイト』規模で(会社の上・広報以外は)誰も文句を言っていないわけですしね。
Posted by DG-Law at 2008年06月12日 20:36
私は小山内梢子は大嫌いです。死んだはずのお姉さんのことが気に掛かりながら平然とスイカ割りをやり出す(どうでもいいミニゲーム風になっているのがまた無性に腹が立つ)ような奴は好きになれません。
咲森寺が日常側というのはもっともですが、それがつまらなくて中身がスッカスカでいい理由にはならないと思うんですよ…。ルーチンワークをこなすように、無感動に食って遊んで騒ぐだけ。見ていて面白くもなければ、キャラへの感情移入や性格把握に役立つでもなし、むしろキャラが空疎に思えてくる始末…。
バーローは平然と国境を侵犯してるし、フレンドリーに会話してるし…。一体あれは何だったんだ…。
Posted by toppoi at 2008年06月15日 03:28
なんだかDGさんに言ってもしょうがない文句まで言ってしまった…。申し訳ないです。

私もリトバスみたいなお遊びの選択肢が多いのは大歓迎です。ただアカイイトみたいな、重要なイベントを回避できてしまう選択肢や、キャラの人間性が著しく疑われるような選択肢は本当に勘弁してほしいです。そのイベントを見なかったせいで不当な評価を下す人もいるかと思うとやりきれなさすぎる。◇そこが肝ですからや◇寝顔を見られてを回避できちゃうとかありえねぇ…。

それと
>活躍分散型、年表作成型
これの意味が通じていたのが地味に嬉しかったです。
Posted by toppoi at 2008年06月15日 04:10
卯良島に行けるのは半日に一度なわけですし、行くべきかどうか迷っているような心境を抱いている時点なら、皆で遊んでいても別におかしくなくないですかね。
梢子の口ぶり(本当に口ぶりだから日高さんはすごいと思う)からして、言葉に発して初めて行くことを決意したようなところがありますし。

>重要なイベントを回避できてしまう選択肢
確かにこれは良くないですよね。
私は慣れてるんでそういうことは起きませんでしたが。
きちんとデバックしてほしいものです。
Posted by DG-Law at 2008年06月16日 07:17
初めまして、PHOOと言います。
いきなりで申し訳ないですが、ここのレビューを読んで、引用、ではありませんが少々僕のレビューに利用させて頂きましたので報告させて貰います。

http://cypress-mavelous-takehara.at.webry.info/200806/article_11.html

ここのレビューはとても参考になりました。
不味ければすぐ削除します。では
Posted by PHOO at 2008年06月24日 00:23
すみません、誤解を招くような書き方をしましたが、さっきのコメントに貼ったURLは僕のレビューで、

> ここのレビューはとても参考になりました。

はnix in desertis の記事のことです。
連投失礼しました
Posted by PHOO at 2008年06月24日 00:25
全く問題ないですよ。
むしろ使っていただければ嬉しいくらいです。
Posted by DG-Law at 2008年06月24日 04:06
はじめまして
レビュー読ませていただきました
個人的にはアオイシロには大した不満は無いのですが
エンディングの数を半分にして
ナミルートをグランドルートと一本化してその分内容を1.5倍くらいに増やしたら丁度良い塩梅だったと思います

個人的なことを言わせていただくと
私は壇ノ浦の近所に住んでいるので安徳天皇には思いっきり吹きました
ご当地ネタがあるとやはり嬉しいものですね
Posted by   at 2008年07月11日 02:02
>エンディングの数を半分にして
>ナミルートをグランドルートと一本化してその分内容を1.5倍くらいに増やしたら丁度良い塩梅だったと思います
あー、ちょうどそんな感じですね。
あの2ルートは完全に書きこみ不足なんですよね。
そうすると、全体としてみても良い感じにコンパクトになるんじゃないですかね。


>私は壇ノ浦の近所に住んでいるので安徳天皇には思いっきり吹きました
いいですよねご当地ネタw
私も実家が愛知なもので、あっちのほうのネタが出てくると腹抱えて笑います。
Posted by DG-Law at 2008年07月11日 02:26
彼はアカイイトをいたく気に入り、最高傑作として一方的なマンセーを敢行しましたが、
アオイシロがイメージと違う内容だとて、手のひらを返したように用なし宣言をしています。
これは皆が彼の株を大いに下げる一因になりましたね。
彼の物事を上辺でしか判断していないという、精神的幼稚さをも露呈する結果となり、
あらためてその底の浅さを垣間見ることになりました。
Posted by sai at 2009年01月11日 21:53
内心気に入っていないのに、それでも「続編だから」「百合だから」という理由だけで賞賛するほうが、
よほど不自然で、盲目的な信者的行為ではないですかね。
他の理由なら理解できますが、この手のひら返しをもって彼を責めるのはお門違いだと、前から思っています。
それと、次までは買う、と言っているので、アオイシロに対して完全な用なし宣言をしているわけではないんじゃないかと。

ただし、私もあそこまで手のひら返すことは無いのにとは思いますし、『アオイシロ』がそこまで悪い作品だとは思ってません。それは上記のレビューにも書いているところです。
彼の中での『アオイシロ』に対する期待が過度に高かったのが、その原因でしょうね。


下の二行に関して。精神的幼稚さは彼自身自覚しているところですし、周囲がどうこう言うことではないかと。
直接面識があるわけでもない相手に対してどうこうしようとするのはパターナリズムの信奉者の良くないところです。過度な世話焼きです。
私も数年前までそうでしたが。
Posted by DG-Law at 2009年01月11日 22:35