2008年07月30日

キラ☆キラ レビュー

大変クソッタレ楽しませていただきましたファック!(お決まり)


クリアすると誰もが「俺ロックバンド始めるよ」とか言い始める作品。自分の友達の友達(=赤の他人)では実害も出てるらしい。恐ろしい影響力だ。実際、気持ちはわかる。この作品は本当におもしろい。

瀬戸口氏のシナリオということでどうしても『SWAN SONG』との比較になってしまうが、シナリオについてはネタばれで後述したい。一言で済ませるなら、相変わらず人間のダークな部分を描くのが得意だなと。単純に総評するなら、ありきたりだけれどキャラの感情の動きがリアルで、本当に生き生きと動いている。これって脚本で一番大事なことなんじゃないかな。

主人公の鹿之助は言う。「俺はシド・ヴィシャスは嫌いだ」と。ゲーム内で鹿之助が少しだけその理由を語るのだが、彼のこの発言の真意はけっこうゲームの根幹にかかわっているんじゃないかと思った。(身内ネタで恐縮だが、ついこの間、偶然henriとDiLと、「ta-kiをロッカーで例えるならシド・ヴィシャスじゃないか」ということを話したところだったので、妙なシンクロ。まあta-kiは人生自体がパンクだよね)


milktubの音楽も光まくってた。『キラ☆キラ』名曲すぎでもうすでに10回以上へヴィーループで聞いている。シンバルの音が耳について頭痛がしてきたけど自重しない。この間俺と音楽の方向性について語り合った人たちならわかってくれると思うけど、こういうの大好きなんだよね。





とりあえず、音楽好きなエロゲーマーはもちろん、「いや俺バンドとか興味ないし」とか言ってるツンデレなビッチさんもやればいいんじゃないかなファッキン。あ、ルートによっては超絶鬱展開なので(age作品級)苦手な人は注意してね。点数としては85点強かな。

以下、ニコニコで第二文芸部弾いてみた選手権巡回しながら書いたネタばれゾーン。うだうだ語ってますが、基本的に「とりあえず語尾にファックってつけろこのくそビッチども」とか言えるようになればそれでもう正解な作品かもしれない。オールクリアしてない人は絶対読んじゃダメ。そうそう、ライブツアーしてるのでご当地ネタが大量に出てくるけど、それもネタばれになりそうだから格納。

(21時頃追記)

ゲーム内で村上が語っていた通り「世の中の理不尽さに対して怒りをぶつけるのがパンク」だと定義するなら、確かにぶつけるにたる怒りの根源をd2bのメンバーの誰しもが持っている(それも第一章では誰も自覚してない)。バンドが完成するまでの第一章、それが好評を博しツアーに出かけた第二章、そしてその理不尽な現実が彼らに襲い掛かり、なんとかどうにか乗り越えるのが第三章。でも、第三章の乗り越え方がきらりルート一周目以外は全くパンクではない。きらりルート一周目の人気が一番高いのはそういう理由だと思う。実際あのシナリオが一番力強い。

でも実際のところ、考え無しとパンクってのは違うんだよね。人生は手堅く生きなきゃいけないからこそ、このクソッタレな世界にはパンクロックがあるんじゃないか。きらり1の鹿君のように生きてもいいし、他のシナリオのように生きたっていい。そこに音楽があればそれでいい。僕はこの作品をそんな風にまとめておこうと思います。


石動千絵
『キラ☆キラ』で一番好きなキャラというと千絵姉なわけだが、けっこう意外かもしれない。誰かには話したが、不幸っ子属性持ちなので千絵姉とかど直球だったりする。泣きボクロがたまらん。千絵姉かわいいよ千絵姉。大人版はもっとやばい。いや、このゲームのヒロインは全員不幸ではあるんだけれど、カッシーときらりは俺の求めている方向とはちょっと違う。なんていうか、千絵姉はアイマスの千早とだぶるんだよね。これに関してはまた別に何か書くかも。シナリオについては、いいところで終わりやがったな、と。あれ以上は蛇足。校歌絶叫で大泣きしたのは俺だけでいい。


樫原紗理奈

こういうお嬢様も割と好き。携帯放り投げたところで大笑いした。この子はやればできる子だと思ってました。シナリオに関してはやけにあっさり終わった印象だけど、これもあそこで切るのが正解かな。じじいマジツンデレ。海原雄山に張る。



椎野きらり

基本的にバッドエンド好きな自分ではあるが、きらりルートだけは本気で泣いた。感動の涙ではなくて、不憫すぎて泣いたのはエロゲプレイ史上初めてかもしれない。『AIR』でさえ感動のほうだったというのに。単に貧乏な子が身売りさせられる話なんてエロゲによらずそこら中どこにでもある陳腐な話で、それもかなり耐性のある自分がこれだけ凹まされたというのは、文章の持つ力なんだろうと思う。

ついでに言えば、実は一周目よりも二周目のほうがこたえた。一周目は、あれはあれで鹿之助はけっこう救われていると思う。鹿之助が実家に帰って、カーテンを開けて朝日を浴び、バンドの日々に戻っていくシーンでそれを確信した。「この、クソったれな世界に、精一杯の愛をこめて。」なんてのは、ある程度吹っ切った人間じゃないとはける台詞じゃない。それに対して二周目、きらりの父親が出てきて、彼の言動を「理解できてしまった」絶望感といったら、無い。早くこの時間が終わってほしかった。きらりの父親がリストカットしたときの鹿之助の心情描写が怖いくらい自分と同じ心理状態で、やられた。弁解不可能。ただまあ自分の場合、あの状況だったらさっさと見殺しにするほうに決心を固めるだろう。そんで、心に十字架背負って生きていくのだ。



そういえば、このゲームのモティーフはドストエフスキーで、とりわけきらりルートに関しては『罪と罰』で間違いない。主人公は罪を犯し、それを娼婦(といってもきらりは娼婦にならなかったわけだが)許しを請う。殺人の動機が借金、というところまでだぶる。特に、作中に登場するRPGがもろにドストエフスキーネタで、ゲームタイトル自体が「プレストプレーニエ・イ・ナカザーニエ(ロシア語でまんま『罪と罰』)。「僕は人類全ての苦悩に対して頭を下げる」という言葉は確か『罪と罰』のラスコーリニコフの台詞。「悪の老婆」を「鉄の斧」で「峰打ち」したら「あっけなく死んだ」とかもろすぎる。ゲーム中の登場人物リーザは『カラマーゾフの兄弟』で、「腐った長老の死体」もそれ。「踊るエカテリーナ」はわからなかった。「月の要塞」「月のペンダント」も元ネタがさっぱりわからなかったが、何かしらのドストエフスキーの作品からとってきてるんだろう。『悪霊』や『地下室の手記』を読んでない俺は隙だらけなんで、詳しい人はWikiでも作って解説してくださいお願いしますファッキン。しかし、こういう元ネタのRPGほんとに出ないかな。ドストエフスキーでなくとも、ゲーテでもカフカでもいいんだけども(この二人が例に上がってくる俺ドイツ厨乙)。

これは他人のレビューで読んで初めて知ったのだが、きらりシナリオで千絵がトルストイの某小説の一節を引用していたりだとか(浅学な自分は『アンナ・カレーニナ』しか知らないので気づかなかった)、そもそも「幸福は瞬間であって物語ではない」という鹿之助の言葉もドストエフスキーの『悪霊』が出典らしい。読んでねー。悔しいのでちょっと買ってくる。でも、瀬戸口氏のロシア文学に対するリスペクトが一番現れているのはこんな小ネタじゃなくて、物語自体が「理不尽」、この一点に尽きるんだよね。

一方批評空間で、「文体は村上春樹っぽい」と指摘してる人もいて、言われてみればそうかも。句読点の使い方と会話文が特にそう。やたら「ねぇ○○」から始まるのが目に付く。『SWAN SONG』ではそんなことなかったから、『キラ☆キラ』中に読んでたか、前から好きだったけど『SWAN SONG』では作品の雰囲気を考えて自重したか。

『SWAN SONG』との兼ね合いで行けば、やっぱり人間は相互不理解を乗り越えられないことをまたも強調している。というよりも今回のほうが随分直接的な描写が目立つ。ただ、『SWAN SONG』ではそれを絶望に持っていったのに対して、今回はきらりに「わかりあえなくたっていいじゃん!」と言わせているのはおもしろい。実にその通りだ。理不尽だからこそ、この世界は輝いているのだ。良いゲームのタイトルだ。(まあ『SWAN SONG』みたいな世界だとそうも言ってられないんだが)




ご当地ネタに関して。東海道民としては、浜名湖サービスエリアの背景CGの場所が一目でわかったし、名古屋・栄の観覧車(ヨン様が乗った奴)も出てきたし、何より「やろまい」で爆笑した。名古屋弁不自然すぎるww誰かもっとちゃんと演技指導してやるか現地民雇えよwww

京都、間之町五条は五条大橋と烏丸通りの間にある割と細い道で、何度か京都行ってるから通ったことありそうだがはっきりとは記憶に無い。今度京都に行くときは連れに「東本願寺行こうぜ」とかだまして聖地巡礼だな。大阪・なんばのアメリカ村は行ったことありますが、上野のアメ横を想定していくとマジしょぼすぎてびびる。

津山事件は実在する、ぐぐってみれ。岡山名物、「レンジでチンして食べるとうまいまんじゅう」は大手饅頭というらしい。誰か今度あっちのほうに行ったら買ってきて。熊本弁かわいい。沖縄出身の数年前有名になったインディーズバンドって、モンパチのことかな。鹿之助が幻想郷に行ったら「おしぼりを丸める程度の能力」になるんだろう、と思ってしまったのは俺だけじゃないはず。

最後に、鹿之助たちが行っていた初詣先は埼玉県の東武野田線豊春駅近くにある慈恩寺というところらしい。


(追記)
今調べなおしたら、瀬戸口氏へのドストエフスキーの影響はバフチンを踏まえたものじゃないかと言っている人がいて、あれはおもしろかった。その人のブログをざっと見ていたらこんなものを発見して笑った。ついでに、別のブログで、「『SWAN SONG』でラストが十字架なのも『罪と罰』ではないか。『キラ☆キラ』は神の救いの無いバージョンの『罪と罰』なんじゃないか」的なことを書いていた人がいて、今更ながら納得した(その記事)。あー。瀬戸口すげぇ。


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この記事へのコメント
おつおつー。
DG士には唐辺葉介「PSYCHE」もすすめておくよ!
グノーシスにも絵にも詳しいDGさんなら面白いレビューが書けると思うんだ。
Posted by 紅茶の人 at 2008年07月30日 19:20
ちょうどきらり一週目が終わったところでそちらのブログで知って、これはぜひとも読まなければ、と思いましたね。
真相が気になるところです。

しかし、挿絵が冬目景とは。自分の吸血鬼好きの一角は確実に『羊の歌』なんですよ。
Posted by DG-Law at 2008年07月30日 20:41
そのお二人のレビューは私も興味深く読みました^^)
冬目景は「イエスタディをうたって」や「ぼくらの変拍子」あたりの軽めのお話のほうが好きかなあ。「羊のうた」は名作だと思いますが、ややモノトーンすぎるというか。
Posted by 紅茶 at 2008年07月31日 00:26
エロゲを一作クリアしたら、一端自分のレビューを書きなぐって、その後に批評空間に言って目立ったのを読んで、「○○ レビュー」でぐぐって読んで、それを踏まえてレビュー書き直して、最終稿が投稿というのが自分の流れですね。今回のように、読み損ねを発見すると大変悔しい気分になります。負けた気分というか。

『イエスタデイ』は高校ではやりましたねー。ヲタ仲間皆で読んでましたよ。『サイカノ』とかと一緒に。

Posted by DG-Law at 2008年07月31日 01:11
ドストエフスキーが凄い、とはならないのですかね
Posted by 1 at 2013年12月28日 15:25
質問の意図がわかりませんが,ドストエフスキーがすごいのは当たり前です。
Posted by DG-Law at 2014年01月02日 04:27