2008年08月28日
そして明日の世界より− レビュー
これでおおよそ2007年の名作と呼ばれるものはプレイし終わったわけだが(しいて言えば後はインガノックくらい)、とりわけ熱い11月戦線の三作では、キラ☆キラ>ダメ恋>明日世界という結果に終わった。要するに、良作ではあるのだが前二者と比べると、疑問符の多い作品ではあった。好きな人は好きなんだろうなーというような。「いつもの健速乙だった」と言えば通じるレベルのエロゲーマーなら、回避しても別にそしられることはないと思う。健速を全く知らない人なら、まだやる価値はある。
ゲームの内容を要約するとして、ストーリーの大筋を説明するなら「あと三ヶ月で世界が滅びることになった中で、主人公周辺の人間関係が動いていくゲーム」ということになるだろう。わかる人にはわかるだろう言い方をするなら、『この青空に約束を』と『かにしの(本校側)』を足して二で割ったような雰囲気のするゲーム。
主人公はいつもの健速乙。すごく良い奴。自己犠牲の精神の塊。空気はかなり読める子。でも孤独には覿面に弱く、しかもそれを自覚していない。そして、恋心には極めて愚鈍。正直イラっと来たことも多かった。数ある健速の主人公の中でもヘタレと言ってもいい部類だったかもしれない。
シナリオもいつもの健速乙。個別ルートのラストは投げっぱなしジャーマンスープレックス。主人公の心に結論が付けば、そこがラスト。「物語」自体の結末なんてどうでもいい。見方によってはすごく尻切れトンボである。この辺は好き嫌いの別れるところだが、健速信者……いや、健速自身な皆様なら気にすることはないですよね。正直健速のゲームはどこで終わるかわからないハラハラ感がある。今回も青葉ルートは「マジここでおわんの!?」とひとりごちてしまった。
シナリオ全体を通して。すごく綺麗なお話。綺麗過ぎてあざとく見えるので、合わない人はたくさんいると思う。『この青空に約束を』や『AIR』があわなかったら回避推奨。また、健速のゲームらしくルートごとに設定された命題をゆっくりゆっくりほぐしていくことで話が進むので、テンポは正直悪い。冒頭で眠くなったら地雷判定して投げてくれてもかまわない。あとはもちろん、健速嫌いは当然回避するべき。これらにはじかれないなら、プレイしてみる価値はある。
ヴォーカル曲は豪華にも七曲。どれも良曲ではあるのだが、神かと言えばそうでもなく印象は薄い。良くも悪くも『Amazing Grace』に尽きるんじゃないか。個人的にこういう古い名曲を使いまわすのは好きで、うまいやり方だと思う。他の例だと、『きると』のグリーンスリーヴスは神アレンジだったと思う。いまでもあれはよく聞いている。
絵は植田亮。この業界に何人かいる不遇絵師の一人だったが、ようやく一発当てた感じ。最初見たときは夕陽以外髪長すぎで違和感があったが、慣れれば気にならない。思ったよりHシーンがエロく実用に耐えうるものだったので、大きな加点要素。あと、背景も自分でデザインしてるってマジですか。確かに立ち絵との一体感がすごいとは思った。
お勧め攻略順は、青葉→朝陽→夕陽→御波→ノーマル。意外だがノーマルエンドは話の出来がすごく良い上に、アフターと話がつながるので最後に。御波は他の三人と少し立場が違うのと、アフターに少しつながる話をするので、ラス前。朝陽と夕陽はどっちが先でもいいが、ルートとしてのテーマは同じなので連続でやるべき。重要度から言って、パッケージヒロインの夕陽を後回しにしてみた。そうすると、余った青葉が無難に先頭。
あとはこんな夏真っ盛りにやったせいで、セミの音が現実なのかゲーム内なのかわからなかったことくらいか。点数は80点つけようかどうしようか、というライン。仮にHシーンが手抜きだったら75点前後で悩んでいたと思う。『キラークイーン』は今積んでるんだが、その点数によって今後健速をデフォ買いするかどうかが決まる。これが『明日世界』レベルなら、外すことを考えなければならない。
以下、ネタばれ。クリアした人か、最初からやる気はないけどシナリオの概要は知りたい人だけどうぞ。
ゲームの内容を要約するとして、ストーリーの大筋を説明するなら「あと三ヶ月で世界が滅びることになった中で、主人公周辺の人間関係が動いていくゲーム」ということになるだろう。わかる人にはわかるだろう言い方をするなら、『この青空に約束を』と『かにしの(本校側)』を足して二で割ったような雰囲気のするゲーム。
主人公はいつもの健速乙。すごく良い奴。自己犠牲の精神の塊。空気はかなり読める子。でも孤独には覿面に弱く、しかもそれを自覚していない。そして、恋心には極めて愚鈍。正直イラっと来たことも多かった。数ある健速の主人公の中でもヘタレと言ってもいい部類だったかもしれない。
シナリオもいつもの健速乙。個別ルートのラストは投げっぱなしジャーマンスープレックス。主人公の心に結論が付けば、そこがラスト。「物語」自体の結末なんてどうでもいい。見方によってはすごく尻切れトンボである。この辺は好き嫌いの別れるところだが、健速信者……いや、健速自身な皆様なら気にすることはないですよね。正直健速のゲームはどこで終わるかわからないハラハラ感がある。今回も青葉ルートは「マジここでおわんの!?」とひとりごちてしまった。
シナリオ全体を通して。すごく綺麗なお話。綺麗過ぎてあざとく見えるので、合わない人はたくさんいると思う。『この青空に約束を』や『AIR』があわなかったら回避推奨。また、健速のゲームらしくルートごとに設定された命題をゆっくりゆっくりほぐしていくことで話が進むので、テンポは正直悪い。冒頭で眠くなったら地雷判定して投げてくれてもかまわない。あとはもちろん、健速嫌いは当然回避するべき。これらにはじかれないなら、プレイしてみる価値はある。
ヴォーカル曲は豪華にも七曲。どれも良曲ではあるのだが、神かと言えばそうでもなく印象は薄い。良くも悪くも『Amazing Grace』に尽きるんじゃないか。個人的にこういう古い名曲を使いまわすのは好きで、うまいやり方だと思う。他の例だと、『きると』のグリーンスリーヴスは神アレンジだったと思う。いまでもあれはよく聞いている。
絵は植田亮。この業界に何人かいる不遇絵師の一人だったが、ようやく一発当てた感じ。最初見たときは夕陽以外髪長すぎで違和感があったが、慣れれば気にならない。思ったよりHシーンがエロく実用に耐えうるものだったので、大きな加点要素。あと、背景も自分でデザインしてるってマジですか。確かに立ち絵との一体感がすごいとは思った。
お勧め攻略順は、青葉→朝陽→夕陽→御波→ノーマル。意外だがノーマルエンドは話の出来がすごく良い上に、アフターと話がつながるので最後に。御波は他の三人と少し立場が違うのと、アフターに少しつながる話をするので、ラス前。朝陽と夕陽はどっちが先でもいいが、ルートとしてのテーマは同じなので連続でやるべき。重要度から言って、パッケージヒロインの夕陽を後回しにしてみた。そうすると、余った青葉が無難に先頭。
あとはこんな夏真っ盛りにやったせいで、セミの音が現実なのかゲーム内なのかわからなかったことくらいか。点数は80点つけようかどうしようか、というライン。仮にHシーンが手抜きだったら75点前後で悩んでいたと思う。『キラークイーン』は今積んでるんだが、その点数によって今後健速をデフォ買いするかどうかが決まる。これが『明日世界』レベルなら、外すことを考えなければならない。
以下、ネタばれ。クリアした人か、最初からやる気はないけどシナリオの概要は知りたい人だけどうぞ。
隕石落下の大災害に際して、国がシェルターを作り五万人だけ助かります、その五万人は個人単位の厳正なる抽選です、と突然言われ、700人しか住んでないド田舎の孤島で、主人公だけが当選してしまう。ところが、主人公は今の環境を捨てることができず、その権利を放棄して島の皆と一緒に死ぬことを決意する。
というのがネタばれ部分の大まかな流れである。まず、野暮なつっこみを入れるとその救済計画は無理がある。「個人単位」の「ランダム」というのは、大災害後復興する気があるとはとても思えない。当然理系優先・技術者優先だろうし、家族単位での収容にしなければシェルター内での生活が成り立つはずがない。そこでの悲惨な孤独や混乱を予測して、本作の主人公のように辞退する人も多いだろう。重要なのはこの点で、ゲームのテーマ自体が「命よりも絆が大事」ということなのに、基礎設定がそれを思いっきりぶん投げているのである。本作の設定にはかなり無理があると言わざるをえない。まあ、健速氏は「世界が滅ぶ」「主人公だけ助かる」という状況だけほしかっただけで、その詳細は極めてどうでもよかったのだろうが、常識的に考えればゲームの根幹自体が崩壊する設定はあまりにもいい加減すぎた。正直に言ってこれには萎えた。
もう一つ。これも言ってしまえば全ての健速ゲーの否定になってしまいかねないが、
生 き ろ よ 。 いいからシェルター行けよ>昴
瀬戸口何とかさんや、だーまえさんのシナリオとは正反対で、環境や人間の絆、道徳倫理が崩壊するくらいならいっそ死ね、と。大事なのは想いや信念であって、現実世界ではない。潔いといえばそうなんだが、個人的にはやっぱり、何がなんでも生きていきたいかな。『SWAN SONG』や『CLANNAD』を人生(笑)というのなら、『明日世界』を人間賛歌というのは何か違和感がある。
以下、個別ルート別に。
青葉
女の子っぽくない女の子が、友情発恋愛行きのバスに乗るにはどうしたらいいのか、という話。まあよくある話の一つではあるが、けっこうひねりはきいていた。青山ゆかりといえばエロゲ界の釘宮理恵的な存在だが、ツンデレ以外の役では青葉は最高レベルの演技をしてくれたと思う。
朝陽
庇護してる側の人間も庇護されている側の人間も、実は支えあって生きてるんだよ、という話。これもまあよくある話。このゲームのヒロインは御波以外全員主人公に依存しすぎで怖い。青葉ルートでは本人が壊れかけてたし、このルートはまさかの夕陽が。「よりによってどうしてお姉ちゃんなの?」この台詞が全てだと思います。原理的には、夕陽の依存の仕方が一番ヤンデレに近い。途中、夕陽が部屋に閉じこもるわけだが、最近『クロハ』をやったばかりなので、「閉じこもりは爆薬でこじ開けろ!」と思ってしまった。
夕陽
メイン……ヒロイン……?パッケージヒロインという気も。夕陽は依存度は正直病気の領域である。これは地球滅亡関係無しに社会生活できないレベルで、普通にどん引きなんですが。まあ、ド田舎だから許されるのか。依存相手が主人公限定で、しかも今後何があろうともぶれないわけだが、それでも分類はメンヘラなんだろうか。よくわからない。このルートはとにかく親父がかっけぇ。男なら背中で語れ。なんでかここでちょっと泣いた。やってること自体は朝陽ルートと同じ。庇護される側も(ry
御波
立ち絵見た瞬間「俺の嫁」だと思いましたが、攻略したら軽く毒舌キャラでさらに俺の嫁でした。特に私服がとんでもなくかわいい。でっかいリボンが『月姫』のレンで好みの属性になった俺に隙は無かった。プールで泳ぐときリボンが外れるが、逆に不自然に見える。
シナリオに関して、というよりも御波のキャラ設定に関して。自分も何度かこのブログで書いている通り、幼い頃は虚弱体質でアレルギー体質も強く、特に幼い時は喘息で小学校休みまくっていたので、御波の良い意味での諦め方にはかなり共感するところがある。肺炎で死に掛かったこともある。命が短いから、と言うわけではないが、やはり身体が弱いと諦めざるを得ないものはたくさん出てくるわけで、特に小さい子供時代だと、それが精神的な成長に大きな影響を与えるわけで。そこで悲観するでもなく、「諦めてなるものか」となるほど積極的でもなく、できる範囲で積極的になろうとする風に考えるようになったという点は、間違いなく自分と御波の共通点だ。片岡ともの『ナルキッソス』の女の子にも重なる。なんだか、自分語りになってしまったがそんな感じだったので、尚更御波は他人事とは思えない。そんなシナリオだった。
『パンセ』の訳は健速オリジナルなんでだまされないように。それと、非常に気になった誤字として、聖書の立法者。律法者ですね。あと、「意外と瞳が大きいことがわかった」「塩素が残ってると髪の色が変になるぞ」って、ひょっとしてそれはエロゲ業界に対する自虐ネタなのか。ちょっと笑ってしまった。
ノーマル
ハーレムルートに見せかけて、じーちゃんルート。いや、親父ルートかもしれない。「誰にも望む全てを成し遂げることなんて出来ない。ではみんな諦めて首を吊るのだろうか。そんなことはない。諦めて死ぬ事無く、この場所に立っているのだ。」まったく同じフレーズを『こなかな』で読んだ覚えがあるが、健速の言いたいことは要するにいつでもそこなのだよなー、と。
というのがネタばれ部分の大まかな流れである。まず、野暮なつっこみを入れるとその救済計画は無理がある。「個人単位」の「ランダム」というのは、大災害後復興する気があるとはとても思えない。当然理系優先・技術者優先だろうし、家族単位での収容にしなければシェルター内での生活が成り立つはずがない。そこでの悲惨な孤独や混乱を予測して、本作の主人公のように辞退する人も多いだろう。重要なのはこの点で、ゲームのテーマ自体が「命よりも絆が大事」ということなのに、基礎設定がそれを思いっきりぶん投げているのである。本作の設定にはかなり無理があると言わざるをえない。まあ、健速氏は「世界が滅ぶ」「主人公だけ助かる」という状況だけほしかっただけで、その詳細は極めてどうでもよかったのだろうが、常識的に考えればゲームの根幹自体が崩壊する設定はあまりにもいい加減すぎた。正直に言ってこれには萎えた。
もう一つ。これも言ってしまえば全ての健速ゲーの否定になってしまいかねないが、
生 き ろ よ 。 いいからシェルター行けよ>昴
瀬戸口何とかさんや、だーまえさんのシナリオとは正反対で、環境や人間の絆、道徳倫理が崩壊するくらいならいっそ死ね、と。大事なのは想いや信念であって、現実世界ではない。潔いといえばそうなんだが、個人的にはやっぱり、何がなんでも生きていきたいかな。『SWAN SONG』や『CLANNAD』を人生(笑)というのなら、『明日世界』を人間賛歌というのは何か違和感がある。
以下、個別ルート別に。
青葉
女の子っぽくない女の子が、友情発恋愛行きのバスに乗るにはどうしたらいいのか、という話。まあよくある話の一つではあるが、けっこうひねりはきいていた。青山ゆかりといえばエロゲ界の釘宮理恵的な存在だが、ツンデレ以外の役では青葉は最高レベルの演技をしてくれたと思う。
朝陽
庇護してる側の人間も庇護されている側の人間も、実は支えあって生きてるんだよ、という話。これもまあよくある話。このゲームのヒロインは御波以外全員主人公に依存しすぎで怖い。青葉ルートでは本人が壊れかけてたし、このルートはまさかの夕陽が。「よりによってどうしてお姉ちゃんなの?」この台詞が全てだと思います。原理的には、夕陽の依存の仕方が一番ヤンデレに近い。途中、夕陽が部屋に閉じこもるわけだが、最近『クロハ』をやったばかりなので、「閉じこもりは爆薬でこじ開けろ!」と思ってしまった。
夕陽
メイン……ヒロイン……?パッケージヒロインという気も。夕陽は依存度は正直病気の領域である。これは地球滅亡関係無しに社会生活できないレベルで、普通にどん引きなんですが。まあ、ド田舎だから許されるのか。依存相手が主人公限定で、しかも今後何があろうともぶれないわけだが、それでも分類はメンヘラなんだろうか。よくわからない。このルートはとにかく親父がかっけぇ。男なら背中で語れ。なんでかここでちょっと泣いた。やってること自体は朝陽ルートと同じ。庇護される側も(ry
御波
立ち絵見た瞬間「俺の嫁」だと思いましたが、攻略したら軽く毒舌キャラでさらに俺の嫁でした。特に私服がとんでもなくかわいい。でっかいリボンが『月姫』のレンで好みの属性になった俺に隙は無かった。プールで泳ぐときリボンが外れるが、逆に不自然に見える。
シナリオに関して、というよりも御波のキャラ設定に関して。自分も何度かこのブログで書いている通り、幼い頃は虚弱体質でアレルギー体質も強く、特に幼い時は喘息で小学校休みまくっていたので、御波の良い意味での諦め方にはかなり共感するところがある。肺炎で死に掛かったこともある。命が短いから、と言うわけではないが、やはり身体が弱いと諦めざるを得ないものはたくさん出てくるわけで、特に小さい子供時代だと、それが精神的な成長に大きな影響を与えるわけで。そこで悲観するでもなく、「諦めてなるものか」となるほど積極的でもなく、できる範囲で積極的になろうとする風に考えるようになったという点は、間違いなく自分と御波の共通点だ。片岡ともの『ナルキッソス』の女の子にも重なる。なんだか、自分語りになってしまったがそんな感じだったので、尚更御波は他人事とは思えない。そんなシナリオだった。
『パンセ』の訳は健速オリジナルなんでだまされないように。それと、非常に気になった誤字として、聖書の立法者。律法者ですね。あと、「意外と瞳が大きいことがわかった」「塩素が残ってると髪の色が変になるぞ」って、ひょっとしてそれはエロゲ業界に対する自虐ネタなのか。ちょっと笑ってしまった。
ノーマル
ハーレムルートに見せかけて、じーちゃんルート。いや、親父ルートかもしれない。「誰にも望む全てを成し遂げることなんて出来ない。ではみんな諦めて首を吊るのだろうか。そんなことはない。諦めて死ぬ事無く、この場所に立っているのだ。」まったく同じフレーズを『こなかな』で読んだ覚えがあるが、健速の言いたいことは要するにいつでもそこなのだよなー、と。
Posted by dg_law at 12:00│Comments(0)│