2008年09月02日

腹を空かせて行くことお勧め

サルガド《静物:虚栄》新美のウィーン美術史美術館の静物画展に行ってきた。正確な企画名は「静物画の秘密展」でありとにかく17世紀オランダ・フランドルの静物画押しのように見えるが、実のところ静物画の数はそんなに多くなく、まあ75点中半分程度といったところであった。そもそも、静物画展という割にビラの一番良いところに陣取っていたのはベラスケスのマルゲリータ王女の肖像画であるという時点で、この事態は想像にかたくない。展示の残りの半分はオランダらしい風俗画が多く、この間の牛乳を注ぐ女展といい、新美の学芸員の中にはオランダ風俗画に対し相当太いパイプを持った人がいるというのはほぼ間違いないことであろう。

オランダらしく知らない画家は多かったが今回は最大の目玉のベラスケスの保険がそんなに高額でなかったためか、平均的なレベルはそこそこ高く満足できた。これで今回ダメだったら二度と新美信用しないところだった。有名どころではベラスケス以外に、花のブリューゲルであるヤン・ブリューゲル(大)、ヤン・ステーン、画廊画で有名なテニールス(子)の他はややマイナーでデン・ヘッケ、ヘラルト・ダウ、ヤン・フェイト、ティルボルフと、何度かオランダ風俗画・静物画展に来ていればなじみがあるような感じのする面々であった。

目玉の一つにしているだけあって、サルガドのヴァニタス(今回の画像)は大作であった。ヴァニタスは大好きな絵画ジャンルの一つだが、私にはむしろ「人間の肉体は滅んでも、物は滅びない」というように読み取れてしまう。そして物には魂が残っているのだから、結局人間は滅んでいないのではないかと。特にヴァニタスは「栄光は過ぎ去るものである」という本来的な意味のために、金銀細工や時計、楽器が描かれることが多いが、これらの物のチョイスがまた崇高であると思う。これだからロマン主義は困る。

基本的に可も不可もない及第点の企画展であったので、久しぶりに西洋画の静物画が見たくなったなら、という程度にはお勧めできる。なお、珍しいことに今回の企画展は「東京新聞」主催である。


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