2008年09月13日
大麻騒動
秋場所が始まる前に、大麻問題について。私見では、対応が性急すぎたように思う。問題をややこしくしているのは大相撲という競技の独自性と、大麻というもののややこしい立場である。
大麻(マリファナ)に関して。こちらは普通に自生している地域もあり、依存性も煙草や酒レベルかそれよりも低いとさえされる、麻薬としては中途半端な存在である。オランダでは取り締まられないというのは有名な話である。そのせいで酒嫌いや煙草嫌いからは「麻薬よりも中毒性が高い」という証拠にされているが、そんなのは大麻だけであるので、恥をかく前にそんな主張はやめたほうがいい。逆に、麻は生長が早く丈夫な繊維なので麻薬扱いして取り締まってるのは繊維業界の陰謀という電波を飛ばしている人もいるが、どうなんでしょうね実際。
そんななので日本の大麻を取り締まる法律も、所持は明確に罰するが使用に関しては規定が無い。しかも、0.5g以下の所持か、明確な初犯の場合は不起訴処分に終わることが多い。実際に、元若ノ鵬も、その両方の条件を満たしていたので、不起訴処分に終わった。露鵬、白露山の二人にいたっては、陽性反応は出ていても所持の物的証拠は見つかっていない。それどころか、「若ノ鵬と二力士の間で薬物的なつながりのある可能性は極めて薄い」という警察発表まである。二力士の「六月ロス巡業で吸った」という自白があり、家宅捜索までしておきながら、露鵬と白露山の逮捕に警察が踏み切る気配がここまで全く無いのも、そういった事情による。
一方で、大麻はドーピングの一種と見なされているという事実もある。少なくとも、日本反ドーピング機関(JADA)では大麻をドーピングと見なしている。この場合、物的証拠が無くても「選手とコーチの自己責任」において、陽性が出た時点で処罰することになっている。ドーピングとは故意他意は問わないからだ。しかし、幸か不幸か、大相撲協会はJADAに加盟していない。精密検査の依頼先がこの組織なので必ずしも関係が無いとは言いがたいものの、加盟していない以上、JADAの大麻罰則規定に従う必要はない。ちなみに、従った場合は「競技資格の三ヶ月から一年間の停止」だそうだ。
そうなると、逮捕という社会的制裁もなくJADAの規則でも直接には裁けないので、大相撲独自の罰則規定ということになるわけだが、もちろんそんなものは存在しないため急遽適当に理由つけて裁定を下すことになる。この新たに作られた罰則への理由付けがまた不明瞭で「大相撲は儀礼を重んじるスポーツで、力士には禁欲的なイメージがあり、それを汚された」とかわけがわからない。麻薬が反社会的だからでも、大麻がドーピングだから、という理由付けでもない。儀礼を重んじるのは確かだが、それが全く禁欲的につながらない。そもそも、力士が禁欲的なイメージとか初耳である。夜遊び上等じゃなかったんですかね、というのは冗談としても。
そして下された罰則が「解雇」。これはJADAの規定よりもよほどの厳罰であり、大相撲内の処罰としても、朝青龍のサッカーによる二場所出場停止や時太山死亡事件時に逮捕された力士の無期限出場停止、そして元若ノ鵬の解雇に比べても厳罰が過ぎる。実際彼らが吸っていたとしても、「解雇」という処分は十分に不当である。二力士の処分は、せいぜいJADAに準拠して六場所出場停止とそれに伴う番付降下程度にとどめておくべきだったのおくではなかったか。(実際、丸々一年休場したらどこまで下がるだろうか、三段目か序二段か。)
ついでに言えば、親方たちへの処分もよくわからない。大麻を麻薬扱いするなら力士の自己責任ということになるから、親方の責任は直接問えない。ドーピングとするなら、選手(力士)と相当の処分が必要であるから、かなりの厳罰になるだろう。仮に若ノ鵬の時と同様の処罰を下すならやはり二階級降格が妥当である。しかし、北の湖親方は事実上の一階級降格処分であり、露鵬の大嶽親方や若ノ鵬の時に比べても、異様に甘い(理事からのもう一階級降格に関しては、他の理事が引きとめたそうで)。しかも、先ほど書いたように二力士解雇の理由が「大相撲は儀礼を重んじる〜〜」という極めて不明瞭な理由であるので、結局二親方はどういう角で降格になったのかすらもさっぱり不明瞭である。
要するに、二力士は今までの相撲協会の怠惰な姿勢と身内に甘い体質からの脱却のための犠牲、スケープゴートにされたようなもので、とんだとばっちりである。白露山が北の湖理事長の弟子であったことも、協会としては不都合でもあり都合よくもあった。協会内の政争に利用されたという見方もできる。私も北の湖は理事長をさっさと辞めるべきだとは思っていたが、こんな形になるとは思っていなかった。若ノ鵬も露鵬も白露山も法廷闘争で大相撲協会を訴えるようだが、どんどんやってほしい。なりふりかまうべき状況ではない。明らかに不当なのだから。
というか、なんでもいいから秋場所だけはしっかり運営して欲しい。ファンの願いはその一点だけである。新理事長は超タカ派のようなので、場所の運営よりも綱紀粛正を優先しそうで、ちょっと怖い。
大麻(マリファナ)に関して。こちらは普通に自生している地域もあり、依存性も煙草や酒レベルかそれよりも低いとさえされる、麻薬としては中途半端な存在である。オランダでは取り締まられないというのは有名な話である。そのせいで酒嫌いや煙草嫌いからは「麻薬よりも中毒性が高い」という証拠にされているが、そんなのは大麻だけであるので、恥をかく前にそんな主張はやめたほうがいい。逆に、麻は生長が早く丈夫な繊維なので麻薬扱いして取り締まってるのは繊維業界の陰謀という電波を飛ばしている人もいるが、どうなんでしょうね実際。
そんななので日本の大麻を取り締まる法律も、所持は明確に罰するが使用に関しては規定が無い。しかも、0.5g以下の所持か、明確な初犯の場合は不起訴処分に終わることが多い。実際に、元若ノ鵬も、その両方の条件を満たしていたので、不起訴処分に終わった。露鵬、白露山の二人にいたっては、陽性反応は出ていても所持の物的証拠は見つかっていない。それどころか、「若ノ鵬と二力士の間で薬物的なつながりのある可能性は極めて薄い」という警察発表まである。二力士の「六月ロス巡業で吸った」という自白があり、家宅捜索までしておきながら、露鵬と白露山の逮捕に警察が踏み切る気配がここまで全く無いのも、そういった事情による。
一方で、大麻はドーピングの一種と見なされているという事実もある。少なくとも、日本反ドーピング機関(JADA)では大麻をドーピングと見なしている。この場合、物的証拠が無くても「選手とコーチの自己責任」において、陽性が出た時点で処罰することになっている。ドーピングとは故意他意は問わないからだ。しかし、幸か不幸か、大相撲協会はJADAに加盟していない。精密検査の依頼先がこの組織なので必ずしも関係が無いとは言いがたいものの、加盟していない以上、JADAの大麻罰則規定に従う必要はない。ちなみに、従った場合は「競技資格の三ヶ月から一年間の停止」だそうだ。
そうなると、逮捕という社会的制裁もなくJADAの規則でも直接には裁けないので、大相撲独自の罰則規定ということになるわけだが、もちろんそんなものは存在しないため急遽適当に理由つけて裁定を下すことになる。この新たに作られた罰則への理由付けがまた不明瞭で「大相撲は儀礼を重んじるスポーツで、力士には禁欲的なイメージがあり、それを汚された」とかわけがわからない。麻薬が反社会的だからでも、大麻がドーピングだから、という理由付けでもない。儀礼を重んじるのは確かだが、それが全く禁欲的につながらない。そもそも、力士が禁欲的なイメージとか初耳である。夜遊び上等じゃなかったんですかね、というのは冗談としても。
そして下された罰則が「解雇」。これはJADAの規定よりもよほどの厳罰であり、大相撲内の処罰としても、朝青龍のサッカーによる二場所出場停止や時太山死亡事件時に逮捕された力士の無期限出場停止、そして元若ノ鵬の解雇に比べても厳罰が過ぎる。実際彼らが吸っていたとしても、「解雇」という処分は十分に不当である。二力士の処分は、せいぜいJADAに準拠して六場所出場停止とそれに伴う番付降下程度にとどめておくべきだったのおくではなかったか。(実際、丸々一年休場したらどこまで下がるだろうか、三段目か序二段か。)
ついでに言えば、親方たちへの処分もよくわからない。大麻を麻薬扱いするなら力士の自己責任ということになるから、親方の責任は直接問えない。ドーピングとするなら、選手(力士)と相当の処分が必要であるから、かなりの厳罰になるだろう。仮に若ノ鵬の時と同様の処罰を下すならやはり二階級降格が妥当である。しかし、北の湖親方は事実上の一階級降格処分であり、露鵬の大嶽親方や若ノ鵬の時に比べても、異様に甘い(理事からのもう一階級降格に関しては、他の理事が引きとめたそうで)。しかも、先ほど書いたように二力士解雇の理由が「大相撲は儀礼を重んじる〜〜」という極めて不明瞭な理由であるので、結局二親方はどういう角で降格になったのかすらもさっぱり不明瞭である。
要するに、二力士は今までの相撲協会の怠惰な姿勢と身内に甘い体質からの脱却のための犠牲、スケープゴートにされたようなもので、とんだとばっちりである。白露山が北の湖理事長の弟子であったことも、協会としては不都合でもあり都合よくもあった。協会内の政争に利用されたという見方もできる。私も北の湖は理事長をさっさと辞めるべきだとは思っていたが、こんな形になるとは思っていなかった。若ノ鵬も露鵬も白露山も法廷闘争で大相撲協会を訴えるようだが、どんどんやってほしい。なりふりかまうべき状況ではない。明らかに不当なのだから。
というか、なんでもいいから秋場所だけはしっかり運営して欲しい。ファンの願いはその一点だけである。新理事長は超タカ派のようなので、場所の運営よりも綱紀粛正を優先しそうで、ちょっと怖い。
Posted by dg_law at 12:00│Comments(3)│
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この記事へのコメント
こんばんわ。
個人的には今回の処分、その結果自体は妥当だったと思っています。しかし、問題はDG氏の言うようにその結果を導くべき拠所が何処にも無い、という部分にあるのではないでしょうか。
薬物使用などに関する罰則規定が明確であればもうすこし透明な結果になったのではないかと思います。
国技としての相撲は「スポーツ」ではないということでしょうかね。良きにつけ悪しきにつけ。
あと、世間の眼が厳しいのは検査がクロだった=でも使用は否定、と言う部分が「虚言」と取られた部分も大きいのかなあ。法廷戦術的なやりかたが裏目に出たというか。
「何ヶ月か前、海外でやっちゃいました、ごめんなさい。てへー」だったらそれこそ謹慎程度で済んだんじゃないの?とか。
法に拠所を求めた兄弟側と空気に拠所を求めた協会側。世間は「空気」を取った、そんな印象を受けました。
個人的には大麻については酒や煙草と同レベルでの規制で充分だと思いますけどねー。
大麻が為政者に嫌われるのは酒と違ってダウナー系のドラッグは労働意欲を減退させる方向に働くからじゃないのかなー、とか思っています。
個人的には今回の処分、その結果自体は妥当だったと思っています。しかし、問題はDG氏の言うようにその結果を導くべき拠所が何処にも無い、という部分にあるのではないでしょうか。
薬物使用などに関する罰則規定が明確であればもうすこし透明な結果になったのではないかと思います。
国技としての相撲は「スポーツ」ではないということでしょうかね。良きにつけ悪しきにつけ。
あと、世間の眼が厳しいのは検査がクロだった=でも使用は否定、と言う部分が「虚言」と取られた部分も大きいのかなあ。法廷戦術的なやりかたが裏目に出たというか。
「何ヶ月か前、海外でやっちゃいました、ごめんなさい。てへー」だったらそれこそ謹慎程度で済んだんじゃないの?とか。
法に拠所を求めた兄弟側と空気に拠所を求めた協会側。世間は「空気」を取った、そんな印象を受けました。
個人的には大麻については酒や煙草と同レベルでの規制で充分だと思いますけどねー。
大麻が為政者に嫌われるのは酒と違ってダウナー系のドラッグは労働意欲を減退させる方向に働くからじゃないのかなー、とか思っています。
Posted by 紅茶の人 at 2008年09月13日 18:12
この話で思い出したのだが、何年か前に元全日本プロレスの嵐という
選手が大麻を所持していて、速攻で解雇されたうえに、永久追放処分された
ということがあったな。曰く、大麻には「痛みを和らげる」効果が
あるんだそうな。
まぁ、でも相撲協会の体質を問題視する動きがあるだけでもマシだな。
どこの団体とは言わないが、この体質を対岸の火事と見てほしくないっすねw
選手が大麻を所持していて、速攻で解雇されたうえに、永久追放処分された
ということがあったな。曰く、大麻には「痛みを和らげる」効果が
あるんだそうな。
まぁ、でも相撲協会の体質を問題視する動きがあるだけでもマシだな。
どこの団体とは言わないが、この体質を対岸の火事と見てほしくないっすねw
Posted by カシンの化身 at 2008年09月13日 22:40
>紅茶の人
大相撲がスポーツでも興業でもない宙ぶらりんな状態であること自体は、全くかまわないんですけどね。
だったら、きちんと独自の規定を作れ、と思うだけで。
そうですね、大麻を使用していたこと自体はさっさと認めるべきだったと思います。
現に、二力士に対して同情的で、休場処分でとどめるべきではないかという常識的な主張をした理事もいたそうですので、心象がよければ結果も変わったかな、と。
>カシンの化身
プロレスでもあったんだ。しかも解雇で永久追放処分とは(大相撲の場合は解雇=永久追放処分)。
痛みが和らげば格闘は全般的に有利だろうから、大麻はドーピング扱いなんだろうね。
大相撲がスポーツでも興業でもない宙ぶらりんな状態であること自体は、全くかまわないんですけどね。
だったら、きちんと独自の規定を作れ、と思うだけで。
そうですね、大麻を使用していたこと自体はさっさと認めるべきだったと思います。
現に、二力士に対して同情的で、休場処分でとどめるべきではないかという常識的な主張をした理事もいたそうですので、心象がよければ結果も変わったかな、と。
>カシンの化身
プロレスでもあったんだ。しかも解雇で永久追放処分とは(大相撲の場合は解雇=永久追放処分)。
痛みが和らげば格闘は全般的に有利だろうから、大麻はドーピング扱いなんだろうね。
Posted by DG-Law at 2008年09月14日 17:08