2008年09月18日
第129回 『PSYCHE(プシュケ)』唐辺葉介著、スクウェア・エニックスノベルス
瀬戸口何とかさんのラノベデビュー作……でいいのかな。ラノベというにはラノベ然とはしていない。今のラノベはものすごく範囲が広くて、ほんとにくだらないものからエンタメ志向のもの、純文学にかなり近いものまである、と言われているわけだが、それでもなおこの『プシュケ』はラノベでありながらラノベという感じがしなかった。物語の性質上、主人公以外のキャラが全く立っていないのがその原因であろう。萌えも燃えも無く、あるのは一編の短いストーリーだけだ。
内容に関してはこれ以上書くとネタばれになるので差し控えるが、確かに瀬戸口さんらしいテキストであった。相変わらず「ねえ○○」は多いし会話文の一つ一つが長い。地の文は極めて淡々としている。ストーリーは割と意外な流れだった。まあ自分は『CARNIVAL』だけ未プレイなので、氏のエロゲでのシナリオ作りを全部知っているわけではないものの、『SWAN SONG』や『キラ☆キラ』に比べると随分とあっさりした話を作ったなと思った。
主人公の趣味が絵を描くことなので、マティスだとかルオーだとか後期印象派だとか。光の話もそうで、光の色と物の色は全然別物という話もちらっとしていた。絵とは関係無いけど、哲学的ゾンビとクオリアの話も割りと好きな話題で、思考訓練の好きな人にはたまらないネタだと思う。タイトルのプシュケは知ってる人は知っての通り、ギリシア語で「蝶」。蝶は東西を問わず魂の運び手という位置づけであった。この小説では当然、キーアイテムとして蝶が登場する。
で、これらの要素をどうストーリーに絡めてくるのかと思っていたらラストで綺麗にまとまった。あーなるほどね、と。これだけ短い話でこれだけ詰められるのは、さすがの構成力である。エロゲのときはだらだら長引かせるところもあったけど、あれは絵や音楽のことも考えて、ということだったんだろうか。逆に、本作ではあっさりしすぎて心配ですらある。
そんなわけで、瀬戸口何とかさんのファン以外でも、試しに読んでみるといいと思う。
PSYCHE (プシュケ) (SQUARE ENIX NOVELS)
内容に関してはこれ以上書くとネタばれになるので差し控えるが、確かに瀬戸口さんらしいテキストであった。相変わらず「ねえ○○」は多いし会話文の一つ一つが長い。地の文は極めて淡々としている。ストーリーは割と意外な流れだった。まあ自分は『CARNIVAL』だけ未プレイなので、氏のエロゲでのシナリオ作りを全部知っているわけではないものの、『SWAN SONG』や『キラ☆キラ』に比べると随分とあっさりした話を作ったなと思った。
主人公の趣味が絵を描くことなので、マティスだとかルオーだとか後期印象派だとか。光の話もそうで、光の色と物の色は全然別物という話もちらっとしていた。絵とは関係無いけど、哲学的ゾンビとクオリアの話も割りと好きな話題で、思考訓練の好きな人にはたまらないネタだと思う。タイトルのプシュケは知ってる人は知っての通り、ギリシア語で「蝶」。蝶は東西を問わず魂の運び手という位置づけであった。この小説では当然、キーアイテムとして蝶が登場する。
で、これらの要素をどうストーリーに絡めてくるのかと思っていたらラストで綺麗にまとまった。あーなるほどね、と。これだけ短い話でこれだけ詰められるのは、さすがの構成力である。エロゲのときはだらだら長引かせるところもあったけど、あれは絵や音楽のことも考えて、ということだったんだろうか。逆に、本作ではあっさりしすぎて心配ですらある。
そんなわけで、瀬戸口何とかさんのファン以外でも、試しに読んでみるといいと思う。

Posted by dg_law at 12:00│Comments(2)│
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この記事へのコメント
おー、読まれましたかー。
10月からはWebでも連載が始まるとのことで、期待したいところです。
http://www.square-enix.com/jp/magazine/ganganonline/
10月からはWebでも連載が始まるとのことで、期待したいところです。
http://www.square-enix.com/jp/magazine/ganganonline/
Posted by 紅茶の人 at 2008年09月19日 21:53
実は読んだのはもうけっこう前で、レビュー書いたのも割りと前なんだけどブログに載せる順番を考えていたらこんな時期になってました(汗)
連載始まるみたいですね。
今後、小説文体に慣れていったらどうなるのかが楽しみです。
連載始まるみたいですね。
今後、小説文体に慣れていったらどうなるのかが楽しみです。
Posted by DG-Law at 2008年09月19日 22:02