2008年11月22日
ロマンは金になるか?
町田市国際版画美術館のピラネージ展に行ってきた。ジョバンニ・バッティスタ・ピラネージとは18世紀中頃にイタリアで活躍した版画家であり、特にローマに残る古代遺跡を題材にすることが多かった。あえて太字で書くが廃墟は男のロマンである。とりわけピラネージの描く廃墟は古代ローマの遺跡であるので、それはもう心の琴線に触れまくりである。
ピラネージの版画は特徴的である。版画にも種類はいろいろあるわけだが、彼はエッチングのみで線が非常に緻密、そしてまるで油絵であるかのようにオブジェクトの立体感を出すのに長けている。ピラネージの描く廃墟はまるでその場に存在しているかのような、写真と見まごうごとき迫力とリアリティがある。今回の展示では今現在のローマの、その作品が描かれたのと同じ場所で撮られた写真が並べて展示されている。それによって景観が250年間あまり変わっておらず、保存されているのが確認できる。これはローマに行きたくなる。
しかし、ピラネージの真価は建物よりも小物の描写ではないかと思う。ピラネージはほぼ版画でのみ現代にまで名を残したが本職は建築家と考古学者であり、ローマで実際に発掘作業や発掘されたものの復元作業に携わっていた。そして、発掘されたものを修復して、グランドツアーに来ている貴族にそれを売りつけることで生計を立てていたようだ。ピラネージの版画は発掘作業における図面や、発掘品売却におけるカタログとして制作されたものがそもそもの由来であるものが多い。このカタログの出来がまたとんでもなく高レベルで、やや遠くから見ると写真そのものである。そりゃ貴族もカタログごと買いたくなる。そんな私もこの展示の図録を買ってしまった。
今回の企画には町田市全体がかなり力を入れているようで、町のイタリア料理店や町田市中央図書館などでも関連した企画を立ち上げていた。地方の美術館としては、発展性の高い試みではないかと思う。ただ、今回の展示は展示内容よりもその広報・宣伝に問題があったのではないかと思う。私自身、前に中国絵画展で町田市美術館に行っていなければ、ピラネージ展の存在を知ることもないままであったであろう。町田市の外で最大の玄関である新宿駅の小田急にすら全く広告が無い。
せっかくこれだけ力の入った展示で、今西洋美術館でやっているハンマースホイ展よりもよほど一般受けのする(=人が呼べる)ネタなのに、町田という立地では宣伝を増やさないと人は来ない。これは町田市としても東京在住の美術ファンにも非常にもったいないことだ。特に、美術館外の組織とあれだけ連携をしているのなら、旅行代理店なりにかけあってツアーを組んでもらうなど、もう一歩踏み出せばかなりの顧客は見出せたのではないか。昨今の美術館経営に、何かいろいろ言いたくなる企画展であった。
ピラネージの版画は特徴的である。版画にも種類はいろいろあるわけだが、彼はエッチングのみで線が非常に緻密、そしてまるで油絵であるかのようにオブジェクトの立体感を出すのに長けている。ピラネージの描く廃墟はまるでその場に存在しているかのような、写真と見まごうごとき迫力とリアリティがある。今回の展示では今現在のローマの、その作品が描かれたのと同じ場所で撮られた写真が並べて展示されている。それによって景観が250年間あまり変わっておらず、保存されているのが確認できる。これはローマに行きたくなる。
しかし、ピラネージの真価は建物よりも小物の描写ではないかと思う。ピラネージはほぼ版画でのみ現代にまで名を残したが本職は建築家と考古学者であり、ローマで実際に発掘作業や発掘されたものの復元作業に携わっていた。そして、発掘されたものを修復して、グランドツアーに来ている貴族にそれを売りつけることで生計を立てていたようだ。ピラネージの版画は発掘作業における図面や、発掘品売却におけるカタログとして制作されたものがそもそもの由来であるものが多い。このカタログの出来がまたとんでもなく高レベルで、やや遠くから見ると写真そのものである。そりゃ貴族もカタログごと買いたくなる。そんな私もこの展示の図録を買ってしまった。
今回の企画には町田市全体がかなり力を入れているようで、町のイタリア料理店や町田市中央図書館などでも関連した企画を立ち上げていた。地方の美術館としては、発展性の高い試みではないかと思う。ただ、今回の展示は展示内容よりもその広報・宣伝に問題があったのではないかと思う。私自身、前に中国絵画展で町田市美術館に行っていなければ、ピラネージ展の存在を知ることもないままであったであろう。町田市の外で最大の玄関である新宿駅の小田急にすら全く広告が無い。
せっかくこれだけ力の入った展示で、今西洋美術館でやっているハンマースホイ展よりもよほど一般受けのする(=人が呼べる)ネタなのに、町田という立地では宣伝を増やさないと人は来ない。これは町田市としても東京在住の美術ファンにも非常にもったいないことだ。特に、美術館外の組織とあれだけ連携をしているのなら、旅行代理店なりにかけあってツアーを組んでもらうなど、もう一歩踏み出せばかなりの顧客は見出せたのではないか。昨今の美術館経営に、何かいろいろ言いたくなる企画展であった。
Posted by dg_law at 12:00│Comments(0)│