2008年11月24日
客席の寂しさはどうにかならないか
一年の締めくくりとしてふさわしい場所であった。ある意味では予定調和でありながらしっかりとファン心理を突いた展開でもあった。
特に、どうしてか上位陣の相撲内容がぴしっと締まってて良いなと思い見ていたら、稀勢の里と安馬が張り差しを完全に封印し、白鵬や他の力士も先場所までほどは使っていないということに気がついた。あとでスポーツ紙を読んだら安馬は大関取りの失点にならないよう、張り差しと変化を封印していた、と書いてあった。変化も張り差しも、確かに印象は悪い。おそらく大関取りではない稀勢の里にも、同じような心境があったのであろう。今場所は、あの安美錦でさえあまり変化した記憶が無い。
先場所を荒らした立ち合い厳格化は今場所になって落ち着いた。ルールが緩くなったというよりも、力士たちが慣れてきたという感じだろう。一方で、朝青龍に魁皇が休場していたのは惜しい。この二人が調子よく出場していれば、安馬の大関取りがかなり困難になっていただろう。
今場所印象に残った一番を挙げろと言われればやはり優勝決定戦なのだろうが、あれは当然過ぎるので他を考えると、千代大海・把瑠都の取組を挙げたい。千代大海相手なら組むところまで行けば確かにかなり楽勝ではあるのだが、組むまでが難しいし大海関は足技もあるのでさりげなく油断ができない。それらを全て踏まえた上で、把瑠都は組んで寄り切った。彼の成長が伺える一番であった。
今場所、最も文句が言いたいのは土俵についてである。色があからさまにおかしく、序盤から壮絶にひび割れを起こしていた。見苦しい以上に力士にとって危険である。実際、高見盛・鶴竜の取組で一部思いっきり崩壊し、鶴竜はそのせいで途中休場となった。直接ケガには結びつかなかったものでも、砂の粒が大きく踏ん張りがきかず、足腰の強さで相撲をとっている力士は序盤勝手がわからず苦戦していたようである。何よりも、安馬がそれに苦しまされていたのが不憫でならない。本来なら序盤の二敗もせず、初優勝もかっさらっていっただろうに。
各力士評。白鵬は順当に優勝した。しかし、初日弱い病はいい加減なんとかしてほしい。もはや治らないのかもしれないが。本割の安馬戦は明らかに力負けしている。全盛期の朝青龍ほどには、三役陣との力の差が感じられない。その意味では、横綱としての白鵬はまだまだこれからということか。今場所は土俵入りが以前と比べて少し綺麗になった気がする。
琴光喜に関しては(立会いが相変わらず汚いことを除いて)概ね文句は無いのだが、千代大海に負けた一番だけはいただけない。ひょっとして、あのときすでに互助会が働いていたのではないかと疑いたくなる。魁皇は……いよいよこれは致命傷か。琴欧洲は、もうどこか痛めているというよりも、単に弱くなってそうだ。
千代大海も可も不可もない感じであったが、千秋楽の琴欧洲との一番だけは観衆を萎えさせた。先場所に続き、互助会があからさますぎる、あんまりな負け方。プロならもっとがんばってごまかしてほしい。しかし、二場所連続で助ける側に回れるということは、やはり千代大海の地力は優れている。どうせなら助けて尚クンロク、ならかっこよかった。
大関取りに成功した安馬だが、実は危ないんじゃないかと場所前は思っていた。協会としては二横綱五大関にしたくはないだろうし、もうモンゴル人は必要ないとも考えていただろう。しかし、二場所連続準優勝含めての35勝では見送る理由がない。それも立会いの変化と張り差しを封印した上での、横綱を倒しての13勝とあっては、もはや見事という言葉以外ない。安馬はやはり練習量がずば抜けている。場所前に一日五十番稽古なんて、スポーツ科学なんて言葉の無かった昭和の力士でさえもなかなかいない(近年ではよく練習すると言われる白鵬でさえ、二十番程度)。いまだ身体が130kgに届かず速攻が決まらなかったときが若干不安定であるが、末恐ろしい。
把瑠都。最初は今場所大負けフラグかと思っていたが、六日目に豊ノ島を倒したところで覚醒した。前述の通りの千代大海戦は見事であった。当分白鵬、安馬には勝てないとしても、取りこぼしを減らせば毎場所十番は勝てると思う。安馬の次の大関は間違いないが、六大関はほとんど前例がない以上、誰かが辞めるのを待たざるをえない。
豪栄道と普天王、北勝力、栃ノ心の大負けは、残念ながら想定の範囲内であった。総じてまだまだ実力不足である(しかし、豪栄道には勝ち越してほしかった)。琴奨菊と豊ノ島、稀勢の里、旭天鵬は定位置に戻っていくだけである。来場所、時に稀勢の里は強かったときの調子が戻ってきており期待が持てる。
番付下位では、高見盛の勝ち越しに全大相撲協会員が安心したことだろう。彼一人で懸賞金の数が段違いだからだ。それも大勝ちしてくれたので、来場所はおろか再来場所くらいまで安心である。心配なのは豊真将の負け越し。全休明けで相撲勘が鈍っていたのだとは思うし、彼も足腰の強さで相撲をとるタイプの典型なので九州場所の砂の効果をもろにこうむったのではあるが、本来の実力からすると幕尻付近で負け越すような人ではなく、負け越すとは誰も思ってもみなかった。来場所の捲土重来に期待したい。
特に、どうしてか上位陣の相撲内容がぴしっと締まってて良いなと思い見ていたら、稀勢の里と安馬が張り差しを完全に封印し、白鵬や他の力士も先場所までほどは使っていないということに気がついた。あとでスポーツ紙を読んだら安馬は大関取りの失点にならないよう、張り差しと変化を封印していた、と書いてあった。変化も張り差しも、確かに印象は悪い。おそらく大関取りではない稀勢の里にも、同じような心境があったのであろう。今場所は、あの安美錦でさえあまり変化した記憶が無い。
先場所を荒らした立ち合い厳格化は今場所になって落ち着いた。ルールが緩くなったというよりも、力士たちが慣れてきたという感じだろう。一方で、朝青龍に魁皇が休場していたのは惜しい。この二人が調子よく出場していれば、安馬の大関取りがかなり困難になっていただろう。
今場所印象に残った一番を挙げろと言われればやはり優勝決定戦なのだろうが、あれは当然過ぎるので他を考えると、千代大海・把瑠都の取組を挙げたい。千代大海相手なら組むところまで行けば確かにかなり楽勝ではあるのだが、組むまでが難しいし大海関は足技もあるのでさりげなく油断ができない。それらを全て踏まえた上で、把瑠都は組んで寄り切った。彼の成長が伺える一番であった。
今場所、最も文句が言いたいのは土俵についてである。色があからさまにおかしく、序盤から壮絶にひび割れを起こしていた。見苦しい以上に力士にとって危険である。実際、高見盛・鶴竜の取組で一部思いっきり崩壊し、鶴竜はそのせいで途中休場となった。直接ケガには結びつかなかったものでも、砂の粒が大きく踏ん張りがきかず、足腰の強さで相撲をとっている力士は序盤勝手がわからず苦戦していたようである。何よりも、安馬がそれに苦しまされていたのが不憫でならない。本来なら序盤の二敗もせず、初優勝もかっさらっていっただろうに。
各力士評。白鵬は順当に優勝した。しかし、初日弱い病はいい加減なんとかしてほしい。もはや治らないのかもしれないが。本割の安馬戦は明らかに力負けしている。全盛期の朝青龍ほどには、三役陣との力の差が感じられない。その意味では、横綱としての白鵬はまだまだこれからということか。今場所は土俵入りが以前と比べて少し綺麗になった気がする。
琴光喜に関しては(立会いが相変わらず汚いことを除いて)概ね文句は無いのだが、千代大海に負けた一番だけはいただけない。ひょっとして、あのときすでに互助会が働いていたのではないかと疑いたくなる。魁皇は……いよいよこれは致命傷か。琴欧洲は、もうどこか痛めているというよりも、単に弱くなってそうだ。
千代大海も可も不可もない感じであったが、千秋楽の琴欧洲との一番だけは観衆を萎えさせた。先場所に続き、互助会があからさますぎる、あんまりな負け方。プロならもっとがんばってごまかしてほしい。しかし、二場所連続で助ける側に回れるということは、やはり千代大海の地力は優れている。どうせなら助けて尚クンロク、ならかっこよかった。
大関取りに成功した安馬だが、実は危ないんじゃないかと場所前は思っていた。協会としては二横綱五大関にしたくはないだろうし、もうモンゴル人は必要ないとも考えていただろう。しかし、二場所連続準優勝含めての35勝では見送る理由がない。それも立会いの変化と張り差しを封印した上での、横綱を倒しての13勝とあっては、もはや見事という言葉以外ない。安馬はやはり練習量がずば抜けている。場所前に一日五十番稽古なんて、スポーツ科学なんて言葉の無かった昭和の力士でさえもなかなかいない(近年ではよく練習すると言われる白鵬でさえ、二十番程度)。いまだ身体が130kgに届かず速攻が決まらなかったときが若干不安定であるが、末恐ろしい。
把瑠都。最初は今場所大負けフラグかと思っていたが、六日目に豊ノ島を倒したところで覚醒した。前述の通りの千代大海戦は見事であった。当分白鵬、安馬には勝てないとしても、取りこぼしを減らせば毎場所十番は勝てると思う。安馬の次の大関は間違いないが、六大関はほとんど前例がない以上、誰かが辞めるのを待たざるをえない。
豪栄道と普天王、北勝力、栃ノ心の大負けは、残念ながら想定の範囲内であった。総じてまだまだ実力不足である(しかし、豪栄道には勝ち越してほしかった)。琴奨菊と豊ノ島、稀勢の里、旭天鵬は定位置に戻っていくだけである。来場所、時に稀勢の里は強かったときの調子が戻ってきており期待が持てる。
番付下位では、高見盛の勝ち越しに全大相撲協会員が安心したことだろう。彼一人で懸賞金の数が段違いだからだ。それも大勝ちしてくれたので、来場所はおろか再来場所くらいまで安心である。心配なのは豊真将の負け越し。全休明けで相撲勘が鈍っていたのだとは思うし、彼も足腰の強さで相撲をとるタイプの典型なので九州場所の砂の効果をもろにこうむったのではあるが、本来の実力からすると幕尻付近で負け越すような人ではなく、負け越すとは誰も思ってもみなかった。来場所の捲土重来に期待したい。
先場所はかなり外しまくっていたわけだが、今場所も大して自信が無い。相変わらず原則どおりに割り振った場合、幕内2−5枚目付近と、8−10枚目付近がすかすかである。豊真将は残念ながら十両落ちであろうか。嘉風はすごい勢いで番付が上がるだろう。いいところで大勝したものだ。
Posted by dg_law at 14:00│Comments(0)