2009年03月31日

最強の不知火型力士

今回最大の焦点は、朝青龍の敗因だろう。まず、朝青龍は先場所に今までのスピードとテクニックに頼った取り方から少しばかり変えてきていたように思えた。そして今場所どうするのか、そのまま路線変更を続けるのかと思っていたら初日、全盛期を思わせるスピード相撲に戻っていて驚いた。だからこそ前半には抜群の安定感をほこっていたのだろう。

しかし、やはり衰えが隠せなかったのは九日目の把瑠都戦以降だ。把瑠都戦で思わぬ大相撲になったがために、強引に押し出した。その結果そこで左ひじのケガを再発させてしまった。要するに、全盛期の戦い方をするにはすでに身体のあちこちがついていかず、それでも強行すると最も痛めている左ひじへの負担が大きくなりすぎるということなのだろう。十日目から十四日目は大関陣相手に2-3と負け越している。つまり、左ひじを痛めた朝青龍は関脇か小結程度の実力しかない。二桁勝利を続けるだけならもう1、2年は闘えそうだが、優勝を目指すとなると次の場所での取り口変更が鍵になってくるだろう。「一場所一番限定」の、封印された邪気眼のような左ひじを抱えての白鵬とのマッチレースは、把瑠都や日馬富士の存在を考えるに辛すぎる。

逆に白鵬は文句の付け所が本当にない。特に今場所は「左上手をとれば確実に負けない」という必殺技を手に入れたため安定感が違った。それだけに他の上位陣は白鵬に対し左を取らせないように必死に立ち回っていたが、最終的に取られて負けていった。唯一惜しかったのは琴欧洲で、彼だけは完全に左を刺されないまま土俵際まで白鵬を追い詰めた。しかし寄りきろうとした瞬間に(左上手をとられ)うっちゃり気味に投げられた。今の白鵬を倒すならあの戦法しかないのかもしれない。全勝優勝は本当に立派。来場所もこの調子なら、いよいよ白鵬も認めていい。いや、すでに不知火型最強の力士で大横綱ではあるのだが。


その他、今回全く影の薄かった力士たちについて。琴欧洲は前述のようにまあ頑張った。二桁取ったし、白鵬を唯一あわてさせた。あとは旭天鵬、時天空辺りの取りこぼしとしか言えない負け方を無くせば優勝争いに絡めるだろう。負けるときは立ち合いが異常に不用意である。先場所も十勝していて、安定感は出てきたかもしれない。日馬富士も序盤は不安だったが、終わってみると彼らしい立ち合いが多かったと思う。しっかりと前まわしをとってから力を入れて欲しい。あわてると自分から飛び出してしまい負けやすい。魁皇は勝ち越しが決まったあとの相撲振りがあまりにも無気力すぎて怒りを覚えた。琴光喜はもはやどうでもいい。朝青龍に勝ったのは奇跡で本来なら負け越していたし大関も陥落していた。千代……大…海……?そんな大関いましたっけ?

関脇に移って、把瑠都。白鵬と朝青龍戦で大きな見せ場を作ったという意味ではほめられていいし、白鵬の優勝を大きくアシストした存在とも言える。負けた相手の名前を見るに順当に負けたと言ってもよく取りこぼしをしなかったという意味では偉い。ただ、せっかくの「クレーン」を持っているのだからここで安住してほしくはない。稀勢の里は本当に芽が出ないなぁ……まっすぐ当たりすぎるのがよくないのかも。あと、インタビュールームで不機嫌すぎるのはどうかと思う。

豪栄道は稀勢の里に代わり覚醒した。こういう前へ進む押し相撲な力士は見ていて気持ちがいい。技能賞を受賞していたが(しかも二回目)、あれって技能なのだろうか。旭天鵬は印象に残らなかった。なんとなく負けてった感じ。上位に来るとあっさり負けるようになったなぁ。このまま前頭中位に定着してしまうんだろうか。

北勝力にはどうせなら15敗してほしかった。鶴竜は応援してたので二桁勝利は嬉しいが、今場所はちょっと変化が多かったかも。豊ノ島は何とか勝ち越したがケガが酷すぎて動きがにぶい。なんとかしないと、来場所は大負けフラグが立つ。豊真将は本来の取り口が戻ってきた。七枚目で11勝は立派だが、問題は次。高見盛は負け越しが単純に残念だった。17時の男がまた遠のく。出島も負け越しか……年齢かのう。無様に前のめりに倒れる印象が強くなってきた。

朝赤龍は番付から言ってもっと勝つと思っていた。朝青龍同様衰えてるのかな。取組を見てるとそう思えなくも無いところが悲しい。阿覧と千代白鵬は十勝しているが全くそんな印象がない。だから三賞の声もかからなかったのだろう。阿覧は番付的に次はかなり上位に上がってくるが、対抗できるかは相当に疑問である。山本山は毎日おもしろい相撲をありがとう。嘉風戦でまわしが取れかけたときは爆笑した。しかし今場所の山本山は、先場所デブらしい負け方をしていたのに比べれば随分と工夫が見られたように思える。自分の身体についていけずにずっこける、というのはかなり減少した。ひょっとしたら来場所はもっと大きく勝ちこせるかもしれない。



今回は的中率高い自信がある。そのまま整除したら前頭十三枚目に五人並んだのには若干閉口したが。

2009年春場所


この記事へのコメント
ロボのことも思い出してあげてください
Posted by kome at 2009年03月31日 20:26
あ、書いてあった。

しかしあれだけ連日盛り上がっていた(就活のはけ口として)日刊DGスポーツ(苦笑)も文章にまとめるとこんなにコンパクト(失笑)になるんですね。
Posted by kome at 2009年03月31日 20:30
これでも幕内下位の力士はだいぶ大雑把にしか書いてないんだぜ……十分長い?そんなもんは知らん。
それはそれとして、これ以上しっかり書くとなると本格的にテレビチューナーとHDD増設を敢行し、PCでキャプチャしながら見るしかないな。
しかし、そこまでやってしまうとnixが本格的に(期間限定)大相撲ブログになってしまう気が。
これそういうブログじゃないから!うちはもっと広く浅く雑食だから!

ちなみに、今場所は書き漏らしがあるのでもう一回何か書く予定。
Posted by DG-Law at 2009年03月31日 22:28
横綱と大関以下の実力差が詰まっていかないような場所でした。
琴欧洲は前半の一部と後半の一部だけ見違えるような取り組みだったのが不思議です。
栃煌山と豊真将は勝ちっぷりが良かったですね。岩木山もどうにか勝ち越せて何より。
土俵外の不祥事もそろそろ打ち止めにしてもらいたいところですが……。
Posted by EN at 2009年04月01日 08:24
朝青龍が弱体化しているという意味では実力差が詰まっていっているのかもしれません。
琴欧洲は本当にとりこぼしがねぇ。毎場所言ってますが。立会いの集中力なんでしょうか。
豊真将の勝ちっぷりは気持ちよかったですね。栃煌山は若干相撲内容に疑問もありますが。あとはやはり、今場所は豪栄道でしたね。
若手力士で活躍したのはこの三人だと思います。いや、白鵬もまだ24歳なので若手ではあるんですがw

土俵外の不祥事といえば、八百長裁判には勝ちましたね。
勝てて当然ではありましたが……残された傷は深い。
Posted by DG-Law at 2009年04月01日 13:37