2009年09月22日

第144回『伊勢神宮と出雲大社』新谷尚紀著、講談社選書メチエ

伊勢神宮と出雲大社の創立年代やその経緯、互いの関係性について、文献学(史学)、民俗学、考古学などの諸研究の成果を用いて真相に迫ってみたもの。著者自身は「民俗学は歴史学の一部」と主張しており、その意味で本書は民俗学の本ではなく、あくまで古代日本における神話と王権の構築に関する歴史学の本といえるだろう。

著者自身のセンスなのかポリシーなのか、はたまた編集者の指示なのかは知らないが、結論が序章に全部書かれていて、あとはそれを論証していくという方式は、とかく難解になりがちな本書においては成功していたように思う。

なのでここでも本書の魅力がよりストレートに伝わるようにネタばれしてしまうが、伊勢神宮の創立年代はどれだけ早く見積もっても壬申の乱の以後であるということ、それに伴って、出雲大社が大国主命を祀る「八百万の神々のふるさと」となるのも、平安時代に入ってからであること。そして実際のところ、記紀神話についても遣隋使を始めるまで影も形も存在していなかった、ということは目から鱗の落ちる話であった。しかも、本書はそれを最大限の説得力をもって論証しえたように思う。(細部ではまだ論証途中であることが見受けられる、推測的な描写もなくはなかったが。)

ところで、本書では直接触れられていないものの、伊勢神宮や記紀神話の成立が仏教伝来よりも100年以上遅れたものであるという事実は、私にけっこう大きな衝撃を与えた。だから思想的にどうこうというわけではないのだが、古代日本はまだまだ謎に満ちていて、知的好奇心を刺激される。


伊勢神宮と出雲大社 「日本」と「天皇」の誕生 (講談社選書メチエ)伊勢神宮と出雲大社 「日本」と「天皇」の誕生 (講談社選書メチエ)
著者:新谷 尚紀
販売元:講談社
発売日:2009-03-11
おすすめ度:5.0
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