2010年02月01日

今のニコマス衰退論争に足りていない3つの視点

どちらの味方とかそういう話ではなく、最近の議論には「……ひょっとして皆わざと手をつけてないの?聖域なのか?」としか思えないほど、不自然にスルーされる論点があるので、ここで提示しておく。


1、週マスでの数字

多様化は確実に進行しているが、しかし界隈の多様化と、良質の作品の伸びが極めて速いことは、全く相反するものではなく、共存可能な概念である。実際、08年、09年の前半はそういった形で進んできた。幻想郷ではないが、ニコマスはほとんど全てを受け入れ、Pにしよ見る専にせよ、その人数を増やし、繁栄を謳歌してきた。それでいて「わただもんげ!」意識を失わず、一体感のあるニコマス界隈というのは偉大ですらである。

しかし一方で、週マスの数字、特にランクイン可能圏内である30位のptsが徐々に低下している。07年〜08年頃ではおおよそ800pts必要だったのに対し、09年春以降は600pts程度で可能になり、最近では450ptsあればおおよそランクインできるようになった。ただしこれに関してはニコニコ動画のランキング仕様変更の影響も大きいため、一概に信頼できる数字とは言えない。

もう一つはトップ5に入るためのptsについて。これについては長らくおおよそ下がっておらず、統計的には2週に1週は1万pts超えの作品が登場し、トップ5圏内は3000ptsクラスがずらっと並んでいた。しかし、これも近年は11月第5週の3A07を最後に1万pts超えの作品はない(つまりここ二ヶ月間で一作も無い)。また、11月第1週以後の最近13週のうち5位水準が3000pts付近にとどまったものは、12月第5週2814pts、12月第1週が2940pts、11月第2週が3334ptsに過ぎず、残りの10週は大体2000pts付近、低いものは1000pts付近に下がっている。

また、GiGirさんの示した通り、それだけ多様化が進んでいるにもかかわらず、09年の推定総再生数は08年に比べて下がっている。私見ではあるが、これらの数字を、多様化とランキング仕様変更の二つだけで説明しきるのは、いささか暴論に感じる。ただし、無論のことながら、多様化の意義は認められるべきであろう。そもそも、私自身が架空戦記民だし。また、衰退論者をだまらせるには1万pts超えするような大作1つで十分なのではないか、ということもここで主張しておきたい。何より、「言説よりも一発の動画が威力を持つ」のがニコニコ動画である。

その意味で、そこまでは伸びなかったにせよ、infernoがあのタイミングで投稿されたことは非常に心強かった。まあ、逆にあれで1万pts行かなかったらどうすればいいんだ、という若干の落胆もないではないが。




2、衰退論が出るのは今回が初めてのことではない

それも、なぜか毎回決まったタイミングで勃興する。それがニコマス衰退論である。そのタイミングとは毎年1〜2月頃だ。08年年始の衰退論はL4U発売前の不安と、やはり週マス上の再生数の伸びなさ、そしてちょうどニコマス多様化が急速に進み、PV視聴者が架空戦記やノベマスに流れ始めていたこと、等が重なって起こった。アンケート結果に関する記事のほうでも書いたが、この頃の架空戦記バッシングの強さはとても強く記憶している。しかし、2月第1週、第2週にウッウーウマウマブームも重なって週マス激戦週が続き、まもなくMAD制作に特化したソフトL4Uが発売されて、衰退論を唱える人はどこにもいなくなった。その後、一応08年9月頃にも「ニコマスって東方やボカロに比べて再生数とか伸びてなくね?」って議論が界隈をにぎわせたが、こちらは勢いが他の御三家に比べて足りないという意見はあっても、衰退しているという提言はなかった。

09年年始の衰退論のほうは、新年会が盛り上がりすぎた結果の寂しさと、やはりSP発売前でニコマスから人材が流出するのではないか、という疑惑が界隈を覆っていたことから起きた。引き合いに出すのは何か悪い気もするが、はじCさんが炎上したのもちょうどこの時期である。どうでもいいが、この「未来はにぃ」が微妙に通じてなかったところに、当時のニコマスにおけるブロントさんの知名度の低さがうかがえた記憶がある。「今週の週マス一位もののワさん動画なことは早くも決定ですね。」も単なる煽りにとられてしまったんだろう。その後、まさか美希がブロンドさんと呼ばれることになろうとは、このとき誰も思ってなかっただろうけど。さて、この09年に起きた衰退論のほうも皆様知っての通り、なんてことはなく収束した。特にニコニ広告導入と「乙女」の影響は大きかったように思われる。

その意味では「どうせ今回もすぐに払拭されるだろう」という楽観視も可能であるし、私もそう思っている。ただし、今回の衰退論は1で参照したように、ある程度客観的なデータが伴ってしまっているという点が、厄介であるが。


3、アクティブな見る専が増えたこと

議論とは人数が増えれば増えるほど急進化しやすいものであり、また情報インフラの進化は情報伝播の速度を急激に上昇させ、これもまた急進化に一役を買っている。すなわち、現在のニコマスは2ch、ブログに加えIRCにtwitterまで備えており、議論をするには十分な土壌が育っている。この点は去年や一昨年とは比較にならない。

このような状況において、誰か一人がぼそっと「最近ニコマス見てないな」なんてつぶやけば、上記のような数字や周期的な衰退論もあいまって、途端に議論が始まってしまうのは目に見えている。この点を看過して、昨年や一昨年と比較をしても、なんら意味をなさないであろう。多少議論が沸騰したからと言ってあわてふためいていてはいけないのだ。そんな暇があったら動画見ろ。ただでさえこの間のアンケートで、案外ヘビーユーザーの皆でも見てないってことがわかったんだから。

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