2010年04月10日
書評『ダメ人間の世界史』山田昌弘&麓直浩著、社会評論社
タイトル通りの本。著者は以前センター試験に潜む変態で使わせていただいたブログの中の人で,京大のサークル歴史研究会のOBである。詳しい経歴は本書に掲載されている。ブログのほうも大変おもしろいので,ぜひ読んでいただきたい。
さて,本書も大変おもしろい本で,63人ものダメ人間が収録されている。おおよそブログとネタが同じではあるので,愛読者にとっては半分くらい読んだことがある話だったりするが,別にそこはケチをつけるところではないだろう。著者たちのブログでも本人たちが書いていることだが,社会評論社などというお堅いところが,思いっきりな萌え絵表紙の本書を出版し,しかも多くの書店がサブカルコーナーではなく歴史コーナーに置くという奇っ怪な事態が発生している。これは『もえたん』が受験参考書コーナーに置かれていたことよりも驚きである。しかし,これも現代版スエトニウスだと思えば,ぎりぎり歴史書の範疇だろう(ということにしておきたい)。カバーイラストの人選も正解。しかもメイドにマルクスだからインパクトがある。売れるかどうかは別にして。
私も知っているところからまったく知らないところまで様々であった。王安石の不潔やルターのうんこ好き,デカルトの人形好き,そしてヘーゲルのラノベヲタはまったく知らなかった。でもヘーゲル,ルターあたりはなんか納得できる。あの人らそういう人種だしなぁ。挙げられた面々を見て思ったのだが,やはりドイツ人は日本人と並ぶ変態である。
ただしまあ,ケチも一応つけておく。まず,書籍の体裁はとられているものの,文体がブログのままで違和感がある。また,おそらく素でヲタ用語,2ch用語を使用していると思うのだが,それ自体はこういう本であるし,なんら問題ない。著者たちもガチでヲタなのだろうから。しかし,どうも吹っ切れてないというか,素人の演劇のような気恥ずかしさが感じられ,使い方としては正しいのだけれど妙な堅さが感じられた。いっそ全く使用しないか,もっとやっちゃった方向に振り切れてもよかったのではないかと思う。あと、ビスマルクを出したなら、鉄血演説は実は本人による後の創作である可能性が高く、自伝にしか根拠がないことも触れておいてほしかった。
もう一つだけ。人物の選出で,8割方は異論がない。ただし,「ダメ人間」の方向性が今ひとつ曖昧と言おうか,載せないでもよかったのではないかと思う偉人もいる。たとえば,リチャード獅子心王やイーデンは単なる人格破綻者や被害者ではなかったかと思う。また,ネタが恐妻家と女装癖に偏っており、若干バリエーションに欠ける。ベガルハやジャハンギールあたりは割とありふれた話で,ダメなネタとしては弱く感じた。代案としては,あとがきにあるキケロとルソーはやはり突出したへたれと変態だったと思う。陶淵明,李白があるなら杜甫もいいだろう。モーツァルトのような芸術家を挙げて良いのなら,やはりカラヴァッジョを推挙せざるをえない。あとはポンパドゥール夫人とか,もういっそルーデルとか。意外とまだまだ変態・ダメ人間はいる。ただし,地域的・時代的な偏りを少なく書いたということなので(しかもその選定でかなり苦労したとのこと),あまり意味のない指摘ではあるかもしれない。
ダメ人間の世界史―引きこもり・ニート・オタク・マニア・ロリコン・シスコン・ストーカー・フェチ・ヘタレ・電波 (ダメ人間の歴史)
著者:山田 昌弘
販売元:社会評論社
発売日:2010-03
クチコミを見る
さて,本書も大変おもしろい本で,63人ものダメ人間が収録されている。おおよそブログとネタが同じではあるので,愛読者にとっては半分くらい読んだことがある話だったりするが,別にそこはケチをつけるところではないだろう。著者たちのブログでも本人たちが書いていることだが,社会評論社などというお堅いところが,思いっきりな萌え絵表紙の本書を出版し,しかも多くの書店がサブカルコーナーではなく歴史コーナーに置くという奇っ怪な事態が発生している。これは『もえたん』が受験参考書コーナーに置かれていたことよりも驚きである。しかし,これも現代版スエトニウスだと思えば,ぎりぎり歴史書の範疇だろう(ということにしておきたい)。カバーイラストの人選も正解。しかもメイドにマルクスだからインパクトがある。売れるかどうかは別にして。
私も知っているところからまったく知らないところまで様々であった。王安石の不潔やルターのうんこ好き,デカルトの人形好き,そしてヘーゲルのラノベヲタはまったく知らなかった。でもヘーゲル,ルターあたりはなんか納得できる。あの人らそういう人種だしなぁ。挙げられた面々を見て思ったのだが,やはりドイツ人は日本人と並ぶ変態である。
ただしまあ,ケチも一応つけておく。まず,書籍の体裁はとられているものの,文体がブログのままで違和感がある。また,おそらく素でヲタ用語,2ch用語を使用していると思うのだが,それ自体はこういう本であるし,なんら問題ない。著者たちもガチでヲタなのだろうから。しかし,どうも吹っ切れてないというか,素人の演劇のような気恥ずかしさが感じられ,使い方としては正しいのだけれど妙な堅さが感じられた。いっそ全く使用しないか,もっとやっちゃった方向に振り切れてもよかったのではないかと思う。あと、ビスマルクを出したなら、鉄血演説は実は本人による後の創作である可能性が高く、自伝にしか根拠がないことも触れておいてほしかった。
もう一つだけ。人物の選出で,8割方は異論がない。ただし,「ダメ人間」の方向性が今ひとつ曖昧と言おうか,載せないでもよかったのではないかと思う偉人もいる。たとえば,リチャード獅子心王やイーデンは単なる人格破綻者や被害者ではなかったかと思う。また,ネタが恐妻家と女装癖に偏っており、若干バリエーションに欠ける。ベガルハやジャハンギールあたりは割とありふれた話で,ダメなネタとしては弱く感じた。代案としては,あとがきにあるキケロとルソーはやはり突出したへたれと変態だったと思う。陶淵明,李白があるなら杜甫もいいだろう。モーツァルトのような芸術家を挙げて良いのなら,やはりカラヴァッジョを推挙せざるをえない。あとはポンパドゥール夫人とか,もういっそルーデルとか。意外とまだまだ変態・ダメ人間はいる。ただし,地域的・時代的な偏りを少なく書いたということなので(しかもその選定でかなり苦労したとのこと),あまり意味のない指摘ではあるかもしれない。
ダメ人間の世界史―引きこもり・ニート・オタク・マニア・ロリコン・シスコン・ストーカー・フェチ・ヘタレ・電波 (ダメ人間の歴史)
著者:山田 昌弘
販売元:社会評論社
発売日:2010-03
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Posted by dg_law at 16:16│Comments(0)