2010年04月18日
書評『ダメ人間の日本史』山田昌弘&麓直浩著,社会評論社
前回紹介したものの日本史版。64人の日本史に登場するダメ人間偉人を解説,仁徳天皇に始まり,三島由紀夫で終わっている。こちらもかなりブログの内容と重なっている部分が多く,というよりも書籍化の弊害でブログ版のほうが書かれている内容が濃い人物も何人かいる。世界史よりも身近で有名な人物が多いので,こちらのほうがとっつきやすく,読みやすくもあるだろう。
知っていておもしろかった人としては,やはり在原業平と小野篁のシスコン。特に小野篁は日本屈指のシスコンであると思う。後白河の好色っぷりは文化として歴史に残ってしまった。兼好法師,やはり彼は生まれる時代を700年ほど間違えた。足利尊氏は本当に謎の多い人間である。大杉栄さん,貴方は革命の前に,自分の身辺を整理してください。知らなかったところでおもしろかったものも挙げておく。まず,大伴旅人。世捨て人すぎて泣いた。酒は魔物である。次に,藤原定家。お前その小説無いわ……魔法中二バトルラブコメの作家だったとは驚きである。北里柴三郎,学生運動なんてしてたとは,人はわからないものである。柳田国男先生,のぞきは犯罪です。たとえ野外でも。
だが,日本史版のほうが評価は低くなると思う。理由は単純で,今回も人選に若干の難がある。いかに変態大国日本といえども,世界と対抗するべく同じだけの人数をそろえようとするとどうしてもインパクトの薄い人間まで引っ張り出してこざるをえなくなっているためである。世界史版のほうでも書いた通り,ダメ人間のバリエーションが少なく,日本史は単なる放蕩息子,金銭感覚の欠如者が多い。そして強引にこじつけられ,史実としての可能性が低い逸話によってダメ人間にされている人も何人かいて,本全体の信憑性を下げてしまっている。一条兼良や後水尾天皇は完全な「被害者」だ。前述の被害者の他,大久保利通や柳亭種彦,福沢諭吉,加藤友三郎は偉人ではあるが「ダメ」の内容のインパクトが弱い。黒田清隆は単なる短気のような気がする。
しかし,バリエーションを増やすのは世界史に比べると幾分か難易度が高いので,人数を減らして一人あたりの文章量を増やせばよかったのではないか。上記の知らなかったで挙げた面々や,またブログから大幅に省略されている兼好法師や国学者の連中には,一人10ページ以上割いても良かったのではないか。そのほうが本全体がおもしろくなったことだろう。
ダメ人間の日本史―引きこもり・ニート・オタク・マニア・ロリコン・シスコン・ストーカー・フェチ・ヘタレ・電波 (ダメ人間の歴史)
著者:山田 昌弘
販売元:社会評論社
発売日:2010-03
おすすめ度:
クチコミを見る
知っていておもしろかった人としては,やはり在原業平と小野篁のシスコン。特に小野篁は日本屈指のシスコンであると思う。後白河の好色っぷりは文化として歴史に残ってしまった。兼好法師,やはり彼は生まれる時代を700年ほど間違えた。足利尊氏は本当に謎の多い人間である。大杉栄さん,貴方は革命の前に,自分の身辺を整理してください。知らなかったところでおもしろかったものも挙げておく。まず,大伴旅人。世捨て人すぎて泣いた。酒は魔物である。次に,藤原定家。お前その小説無いわ……魔法中二バトルラブコメの作家だったとは驚きである。北里柴三郎,学生運動なんてしてたとは,人はわからないものである。柳田国男先生,のぞきは犯罪です。たとえ野外でも。
だが,日本史版のほうが評価は低くなると思う。理由は単純で,今回も人選に若干の難がある。いかに変態大国日本といえども,世界と対抗するべく同じだけの人数をそろえようとするとどうしてもインパクトの薄い人間まで引っ張り出してこざるをえなくなっているためである。世界史版のほうでも書いた通り,ダメ人間のバリエーションが少なく,日本史は単なる放蕩息子,金銭感覚の欠如者が多い。そして強引にこじつけられ,史実としての可能性が低い逸話によってダメ人間にされている人も何人かいて,本全体の信憑性を下げてしまっている。一条兼良や後水尾天皇は完全な「被害者」だ。前述の被害者の他,大久保利通や柳亭種彦,福沢諭吉,加藤友三郎は偉人ではあるが「ダメ」の内容のインパクトが弱い。黒田清隆は単なる短気のような気がする。
しかし,バリエーションを増やすのは世界史に比べると幾分か難易度が高いので,人数を減らして一人あたりの文章量を増やせばよかったのではないか。上記の知らなかったで挙げた面々や,またブログから大幅に省略されている兼好法師や国学者の連中には,一人10ページ以上割いても良かったのではないか。そのほうが本全体がおもしろくなったことだろう。
ダメ人間の日本史―引きこもり・ニート・オタク・マニア・ロリコン・シスコン・ストーカー・フェチ・ヘタレ・電波 (ダメ人間の歴史)
著者:山田 昌弘
販売元:社会評論社
発売日:2010-03
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Posted by dg_law at 12:00│Comments(0)