2010年05月07日
書評:『四畳半神話大系』『新釈 走れメロス』『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦著、角川・祥伝社・角川文庫
ツイッターで散々「明石さんかわいいよ明石さん」とかつぶやいてしまったので、今更ながらまとめておく。森見登美彦の作品は決まって共通点がある。京都が舞台だとか、主人公は必ず京都大学生でうだつの上がらない風采をしているだとか、しかも高確率で農学部生であるだとか、なぜかどれを読んでも城ヶ崎先輩と樋口さんと羽貫さんは登場するだとか、そんなんである。
しかし、逆にヒロインの場合、必ず黒髪の乙女であるという点しか共通点がない。なんというか、この「黒髪の乙女」という発想がとても童貞くさくてよろしい。しかし、その彼女らの性格は、意外と小説ごとに異なっていたりする。水尾さんも明石さんも、夜は短しの「乙女」も、それぞれ異なった個性を持つ。一番ドライなのは『太陽の塔』の水尾さんだろうし、実は一番とっつきやすいのは、間違いなく『夜は短し』の「乙女」だろう。
それでも何より、一番(私が)萌えるのは『四畳半』の明石さんである。森見作品最大の萌えキャラと言ってもいいし、今期のアニメ最高の萌えキャラと言っても過言ではあるまい。これまた森見登美彦らしい造形のキャラではあるのだが、彼女はいかにも我々「非モテ」にとって都合がいい。彼女自身がモテ男の思考では理解できない思考回路を持ち、かとって電波すぎない。それでいて、非モテの捻じ曲がった発想を理解するだけの柔軟性を持ち、そして我々の突飛な行動を「珍獣扱い」ではなく、真意を理解した上で楽しんでくれる。「黒髪の乙女」という外見は、美女でありながらモテとビッチがもてはやされる世の中の風潮には染まらないという意思表示であり、表象なのだ。これで我々が惚れないわけがなかろう。(そしてまた彼女は,「表象」とか言っちゃうプチインテリ層に受けがいいのである。ここに,主人公が京大生である意義がある。)
一応作品評も書いておく。実は女性があまり絡まない分、そして二次創作であるがゆえか、一番ケタケタ笑いながら読んだのは『新釈 走れメロス』である。このパロディっぷりはひどい。特に表題となっているだけあって、『走れメロス』は渾身の力作であった。怒涛のギャグの嵐である。森見登美彦入門編としても優れているので、まずはここから入るとよかろう。
『夜は短し歩けよ乙女』はやや冗長なところがある気はする。また、これは個人の趣味なのだが、森美作品では最も自分の好みから外れた「黒髪の乙女」ではあった。ただし、五作目ということもあり、李白さんや樋口さんが最も生き生きとしているのはこの小説であり、森見作品の中核といった雰囲気もあった。もっとも、私もまだ全作品読んでいるわけではないが。
総合すると最高傑作なのはやはり『四畳半神話大系』であろう。『太陽の塔』でもいいが、やはりあちらはデビュー作というだけあってまだ荒削りと言った感じがする。『四畳半』は二作目にあたるが、随分と読みやすくなっていた。話の筋はよくあるループ物ではあるのだが、叙述が巧みでループ物という使い古された題材をうまく用いているところに好感を持った。トドメが明石さんのキャラクターである。最後に一言言わせてほしい。明石さんに坂本真綾をあてた人、天才。
四畳半神話大系 (角川文庫)
著者:森見 登美彦
販売元:角川書店
発売日:2008-03-25
おすすめ度:
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夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)
著者:森見 登美彦
販売元:角川グループパブリッシング
発売日:2008-12-25
おすすめ度:
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新釈 走れメロス 他四篇
著者:森見 登美彦
販売元:祥伝社
発売日:2007-03-13
おすすめ度:
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しかし、逆にヒロインの場合、必ず黒髪の乙女であるという点しか共通点がない。なんというか、この「黒髪の乙女」という発想がとても童貞くさくてよろしい。しかし、その彼女らの性格は、意外と小説ごとに異なっていたりする。水尾さんも明石さんも、夜は短しの「乙女」も、それぞれ異なった個性を持つ。一番ドライなのは『太陽の塔』の水尾さんだろうし、実は一番とっつきやすいのは、間違いなく『夜は短し』の「乙女」だろう。
それでも何より、一番(私が)萌えるのは『四畳半』の明石さんである。森見作品最大の萌えキャラと言ってもいいし、今期のアニメ最高の萌えキャラと言っても過言ではあるまい。これまた森見登美彦らしい造形のキャラではあるのだが、彼女はいかにも我々「非モテ」にとって都合がいい。彼女自身がモテ男の思考では理解できない思考回路を持ち、かとって電波すぎない。それでいて、非モテの捻じ曲がった発想を理解するだけの柔軟性を持ち、そして我々の突飛な行動を「珍獣扱い」ではなく、真意を理解した上で楽しんでくれる。「黒髪の乙女」という外見は、美女でありながらモテとビッチがもてはやされる世の中の風潮には染まらないという意思表示であり、表象なのだ。これで我々が惚れないわけがなかろう。(そしてまた彼女は,「表象」とか言っちゃうプチインテリ層に受けがいいのである。ここに,主人公が京大生である意義がある。)
一応作品評も書いておく。実は女性があまり絡まない分、そして二次創作であるがゆえか、一番ケタケタ笑いながら読んだのは『新釈 走れメロス』である。このパロディっぷりはひどい。特に表題となっているだけあって、『走れメロス』は渾身の力作であった。怒涛のギャグの嵐である。森見登美彦入門編としても優れているので、まずはここから入るとよかろう。
『夜は短し歩けよ乙女』はやや冗長なところがある気はする。また、これは個人の趣味なのだが、森美作品では最も自分の好みから外れた「黒髪の乙女」ではあった。ただし、五作目ということもあり、李白さんや樋口さんが最も生き生きとしているのはこの小説であり、森見作品の中核といった雰囲気もあった。もっとも、私もまだ全作品読んでいるわけではないが。
総合すると最高傑作なのはやはり『四畳半神話大系』であろう。『太陽の塔』でもいいが、やはりあちらはデビュー作というだけあってまだ荒削りと言った感じがする。『四畳半』は二作目にあたるが、随分と読みやすくなっていた。話の筋はよくあるループ物ではあるのだが、叙述が巧みでループ物という使い古された題材をうまく用いているところに好感を持った。トドメが明石さんのキャラクターである。最後に一言言わせてほしい。明石さんに坂本真綾をあてた人、天才。
四畳半神話大系 (角川文庫)著者:森見 登美彦
販売元:角川書店
発売日:2008-03-25
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夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)著者:森見 登美彦
販売元:角川グループパブリッシング
発売日:2008-12-25
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新釈 走れメロス 他四篇著者:森見 登美彦
販売元:祥伝社
発売日:2007-03-13
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Posted by dg_law at 11:58│Comments(2)
この記事へのコメント
文庫版も数が揃ってきて手頃になりましたね森見作品。
個人的に「太陽の塔」は実写映画かなんかで見てみたい作品。クライマックスでエキストラに参加したい。
友人のキャラも結構変わりますよね。小津は無理があっても飾磨くらいなら居そうな気がする京大クオリティ。
コミックとアニメの樋口師匠のデザイン差はあれはあれでという感じで。
個人的に「太陽の塔」は実写映画かなんかで見てみたい作品。クライマックスでエキストラに参加したい。
友人のキャラも結構変わりますよね。小津は無理があっても飾磨くらいなら居そうな気がする京大クオリティ。
コミックとアニメの樋口師匠のデザイン差はあれはあれでという感じで。
Posted by kome at 2010年05月07日 21:26
そういうわけで、『きつねのはなし』とか持ってたら貸してくださいw
ちなみに、『歩けよ乙女』のコミックも読んでない。
友人のキャラもけっこう変わるけど、こっちはなんとなく「京大生にいそう」なキャラばっかりだからすごいな。
逆に東大生っぽいってどんなだと言われると「学部によってキャラが違う」ので、京大生からすると同じなんだろうけど。
ちなみに、『歩けよ乙女』のコミックも読んでない。
友人のキャラもけっこう変わるけど、こっちはなんとなく「京大生にいそう」なキャラばっかりだからすごいな。
逆に東大生っぽいってどんなだと言われると「学部によってキャラが違う」ので、京大生からすると同じなんだろうけど。
Posted by DG-Law at 2010年05月08日 23:10