2010年11月05日

意外と怖くない麗子像がいた

三菱一号館美術館の岩崎家のコレクション展に行ってきた。会期の末日であった。出品一覧を見ると,個人蔵以外は美術館の持ち主である三菱地所,さらに三菱重工,静嘉堂美術館,東洋文庫,麒麟麦酒,日本郵船といった感じ。そうそうたるメンバーである。出品は120点ほど。第一章の30点が明治期の日本美術で,山本芳翠,黒田清輝から梅原龍三郎まで。まあ,日本の美術様式がフランスから20年遅れで伝わってたことは確認できるだろう。ルノワール+野獣派な梅原龍三郎で1930年代だからなぁ。

第二章・第三章が静嘉堂及び東洋文庫からの出品で,最大の見所であるかもしれない。『周礼・鄭玄註』(南宋の写本)に始まり,『徒然草』(室町の写本),『日本書紀』(1599年の写本)等等。中でもやはり度肝を抜かれたのは『詩経・鄭玄註』(初唐写本),『文選集注』(平安中期写本)の国宝2点である。なお,鄭玄は後漢の大学者で,儒教関係の古い書物には大体この人の注釈が付いている(後漢末期はそういうブームだった)。『三国志』の正史にも演義にも登場したはずなので,三国志マニアは必ず覚えておくこと。

しかし,あんないい加減な大学受験以来の漢文ではあるが,なんとなく書き下し文的に読めてしまうから,東アジア文化圏すごい。やっぱ日本人として漢文の基礎の基礎くらい修めておいて良かったと思った。他では杉田玄白『解体新書』及びその元本『ターヘル・アナトミア』。『平定ジュンガル方略』(乾隆年間)はなんと満州文字で,生で見たのは初めてであった。これは絶対に読める気がしない。確かに元を辿ってくと明らかに感じではなくセム系っぽい雰囲気のする文字である。これは非常に貴重な体験であったと思う。

第四章は麒麟麦酒と日本郵船の戦前のポスター。まあ,今でもこのデザイン狙ってるポスターはよく見る,居酒屋とかで。第五章は西洋近現代美術。ざっと名前を挙げると,ミレー,ドガ,シスレー,ピサロ,ルノワール,モネ,セザンヌ,ヴラマンク,ボナール,ルオー,シャガールと言った面々。豪華なんだけど,正直あまり貴重な感じはしない。それは見飽きているというのもあるし,二・三章のインパクトには大分負けるかなとも思った。一つ,梅原龍三郎との比較でルノワールが飾ってあったのは良かった。あとはヴラマンクの絵は良かったかな。


今回で三菱一号館に行ったのは二回目だが,まだ開館して日が経ってないということもあり,この美術館は非常に「三菱」であり「丸の内」であるということにこだわっているように見える。今回もジョサイア・コンドルによる設計図が展示されていたし,丸の内の町並変遷をまとめたムービー(約3分半)が会場で流れていた。さらに,なぜか小岩井農場の特集展示まで存在していた。まあ自分が東大生だったというのもあり,三菱のこうしたプライドの高さ,自意識は嫌いではないし,筆頭に立って,丸の内の文化を支えていって欲しいと思う。


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