2011年03月28日

DEARDROPS レビュー

本作は私のプレイ歴の中では最も不遇な存在である。新作で買ったのでインストールしたのは発売直後,つまり昨年6月の下旬。にもかかわらず仕事の多忙と他作品優先(『俺つば』『俺つばAS』『そらいろ』『ねこFD3』『うみねこEP7・8』『祝祭のカンパネラ』)の結果,共通ルートが終わったのが9月下旬,一人目(かなで)クリアが12月下旬,二人目(りむ)クリアが2月上旬,コンプリートはやっとのことで3月上旬である。なんと半年かかった。これは私のエロゲ人生で初めてのことだ。しかし,レビュー書くのが難しい作品で,そこからレビューを書くためにさらに二十日も放置された。私は大体クリア2,3日後くらいにレビューを書いているので,これもまた新記録である。

プレイが進まなかったのは前述のように仕事が忙しかったこと,優先すべき他作品が多かったことが主要因であるが,本作が抜群に面白ければそれらは要因になりえなかったであろう。その意味で本作のクオリティの低さがプレイの遅さに現れたと言える。特に上述の通り二人目のクリアまでが異常に遅く,りむのクリアからコンプリートまでは逆にたった1ヶ月弱しかかかっていない。この進行状況の通り,共通ルートはつまらないし,かなでルートはげんなりする出来で冗長,りむルートは話がありきたりな上に異様に短く,ここまでは散々であった。ただし,弥生ルートと律穂ルートはおもしろかったので進みも早かったし評価もかなり挽回した。


総評として。『キラ☆キラ』や『BECK』と比較する気はプレイヤーの側になくとも,感想は必然的に「薄い」とならざるを得ない。何がって音楽やロックというものの描写や理解が。結果として本作で一番輝かないといけないキャラは本来権田であるはずなのだが,彼にスポットライトが当たるのは律穂ルートのみであり,共通ルートでの軽薄さと言ったらあんた何がしたいんだと。練習シーンやライブの文章も毎回同じで,音楽に造詣のある人が書いたのか?そしてbamboo本人はこれチェックしてたんだろうか,という疑問を抱く。

『キラ☆キラ』とは作品の雰囲気も目指してる方向も違うんだという擁護を目にするが,音楽やロックという基盤は同じはずだ。その基盤が崩れているのだから,その言い訳はかなり苦しい。キャラゲーとして評価するのであればまだわかる。シナリオのつまらなさに比べるとキャラは立っている。かなでが典型的な幼なじみキャラである以外,テンプレ的な性格付けは少なく,この点は素直に評価できる。批評空間に「たとえばサッカー小説がやはりサッカーに全く興味がないと楽しめなかったり、筆者のサッカー論と考えが合わなければ楽しめなくなってしまうように、音楽の好みによってこのゲームの好みが左右されると思う。」という意見があった。それには割と同意するが,しかしそれでも本作は凡作でしかない。

一つ,他の人のレビューでおもしろいと思ったのがとりくずかごさんのもので,確かにアンチ本質主義,音楽を象徴(あるいは芸術)として用いないための「軽薄さ」として描かれているのであれば,本作は納得がいく。そういう視点で評価することもありだと思う。でもって,アンチ実存主義な私が本作を気に入らないのも当然であろう。(それにしては律穂ルートはテンプレ表現であるにせよ神と戦っているような気はするので中途半端だし,前述の通り理解自体が薄すぎることへの疑惑はぬぐえない。後述のように,全シナリオで弥生ルートのような方向性にしておけば,「軽いが深い」を表現できたかもしれない。)


音楽はよく聞いてみると悪くないんだけど,音圧の設定をミスってるのかしらないが(音量を上げても解決しない),ボーカル曲がすごく聞きづらい。65〜70点くらい。以下,個別ルート評ネタバレ。

かなで:他のキャラが立ってる分,典型的な幼なじみすぎてキャラとしての魅力が弱い。加えてせっかく唯一のバンド外ヒロインだからそれを活かしたシナリオかと思いきや,律穂の風邪を理由にバンド入りする展開。その先も別にかなでがヒロインじゃなくても成立する話で(というよりも幼なじみでなくてさえ成立する),スガショー中心に話が進むためかなでの出番はない。誰か「このシナリオのかなでは死んでるよね」って指摘してやれよ。シナリオ構成的に律穂と対比させたかったんだろうけど見事なまでの失敗である。『しろくまベルスターズ』のきららなり『この青空に約束を』のさえちゃんなりを参考にして,メインコミュニティの外のキャラを配置することで可能になる描写を研究してください。スガショーマジ刺され損。あと細かいところでヨハンの設定・キャラが律穂ルートと違う点もね……過去遡及的生成というにはあまりにお粗末。


りむ:いくらなんでも幼すぎるだろう……これが他の学園物だとか抜きゲーだとかだったら納得したけどこれまがいなりにもバンド物ですよ。共通ルートや他ルートならばまだ納得できたけど個別ルートの出来がまた適当で短すぎる。書くことが何もない。

弥生:一番音楽してるシナリオ。人間大切にしてるはずでも,何かの拍子で自分が傷つけてしまうことはある。その大切さを再認識し取り戻そうとするシナリオ自体は非常にありきたりながら,ギターにスポットを当て,楽器とその身体性に着目した点は意外と他に見ないシナリオではないかと思う。ジャングルジムの上で弾く彼女は輝いていた。まさにYou're Guitar Princess!!

律穂:よく言えば王道,悪く言えばテンプレ。『BECK』まんまというのは腐るほど聞く本シナリオへの批判である。私自身,あからさまなパクリでなければ王道でもリスペクトでもかまわないという立場であり,本シナリオは王道と呼んで差し支えない程度によく出来ていると思う。

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