2012年04月03日

ボストンからの里帰り

曽我蕭白《雲龍図》東博のボストン美術館展に行ってきた。ボストン美術館といえばフェノロサと岡倉天心が協力し,西洋随一の日本美術が集まった美術館である(それだけでなく東洋美術全体で優れているが)。今回は「里帰り」というテーマで,様々な日本美術が展示された。ただし,今回は物量押しではなく質の良いもので固めたきた形で,意外と数は少ない。というよりも実は92品しかないのだが,非常に長大な「吉備大臣入唐絵巻」と「平治物語絵巻」がそれぞれ1品扱いという影響もあり,じっくりと見れば2時間以上かかる,いつもの東博の特別展くらいの規模があると考えてよい。

来ているものは大きく章を分けて平安・鎌倉期の仏教美術・絵巻物,初期〜末期までの狩野派,刀剣と染織,曽我蕭白を中心とする江戸期の絵画といった感じ。比較的日本に残っていないものを選んで持ってきたという雰囲気がある。特に平安期の仏教美術はすごいコレクションであった。実のところ,仏像であれば平安時代以前のものも含めて数多く残っているのだが,仏画は保存状態の問題もあり数そのものが残っていない。が,ボストン美術館はけっこう所有している。それでも12世紀のものとかになれば東博の常設展でも見ることができるのだが,三桁年号の時代となると本当にないのである。で,今回8世紀の仏画が飾ってあったのだから驚いてしまった(保存状態は悪いが)。その他にも12世紀頃の仏画がゴロゴロと惜しげもなく展示されており,これだけでボストン美術館のコレクションのすごさが垣間見える。さすがは法隆寺の救世観音像を無理やり公開させた二人なだけあって,仏教美術に対する目は確かである(と少しの悪意を込めて)。

二つの絵巻は解説が細かくおもしろかった。鳥獣戯画や信貴山縁起絵巻もそうだが,こうした平安末や鎌倉期の絵巻物はどこかコミカルな傾向があるが,「吉備大臣入唐絵巻」もそうした類のものである。朝貢の大使として入唐した吉備真備が,唐の高官から受けた数々の嫌がらせを阿倍仲麻呂の霊に助けられて超能力でばったばったと解決するストーリーなのだが,誰だよこのストーリー考えたの。大体吉備真備が入唐したときまだ阿倍仲麻呂が死んでないので霊が出現するはずがない。もっとも,吉備真備の入唐当時は安史の乱の真っ最中な上に,阿倍仲麻呂は帰路に遭難して行方不明であるので(ベトナムに漂着していたことが後で発覚する),これが奈良時代当時作られた創作だとすると納得はできる。ちなみに,このときの嫌がらせに関連して吉備真備は『文選』と囲碁を習得し,帰国後の日本に伝えた,というこれらの伝来を示すストーリーともなっている。

狩野派の系譜もなかなかすごかった。こうしてずらっと並べてみると,やはり永徳・探幽あたりが変わり目だと思う。初期は完全な漢画で水墨画か色彩抑えめであったのに,永徳で濃絵が混ざり,江戸初期はそのまま続くのだけど探幽で再び洗練される。探幽後まで来るとカラフルでゴテゴテしてるはずなのに,個々の事物の描写や構図がすっきりしていてくどくない。西洋でもアカデミーの絵画が好きな自分としては,マイナーでも江戸時代中後期の狩野派はとても推しである。京狩野も良く,今回見た作品では狩野永納の《四季花鳥図屏風》が一番好きかもしれない。

最後に,曽我蕭白は日本にも良い物がたくさんあるのでボストン美術館だけがすごいわけではないものの,今回の展覧会のマスコット的扱いになっている感じもある《雲龍図》がやはり良かった(今回の画像)。いやしかし,あの龍はかわいすぎないか。こう,目の感じとかが。マジキチの呼声高い曽我蕭白にしては珍しくまっとうな大作であった。これがロゴになっていたトートバックを思わず買ってしまったが,このトートバックに使い道はあるのだろうか。


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この記事へのコメント
期間結構長いのね。入れ替えとかで酷いことになってなければそのうち……
Posted by kome at 2012年04月04日 08:36
6/10までだな。入れ替えは全くないので,そこは安心していい。

一応,名古屋ボストン美術館にも巡回はするが,そこでは入れ替えがあって出品作が減るっぽい。(まあ割とどうでもいい刀剣類と染織だけど)

東京で見るなら二回目だけど付き合うので,帰国後に連絡を入れて。
Posted by DG-Law at 2012年04月04日 11:00