2012年06月04日
書評『天使と悪魔』ダン・ブラウン著,越前敏弥訳,角川文庫
本作は『ダ・ヴィンチ・コード』同様,主人公はハーバード大学で美術史学(正確には宗教象徴学)を専門としているロバート・ラングドン教授で,宗教が引き起こした事件に巻き込まれるスペクタクル小説である。基本的に敵役がオプス・デイではなくイルミナティになっているだけで,話の本筋は大体同じである。実は『ダ・ヴィンチ・コード』よりも先に世に出ており,『ダ・ヴィンチ・コード』が売れたことでこちらも世界的に有名になった。ゆえに,本作がヒットしたので,同じ方式で書かれたのが『ダ・ヴィンチ・コード』と言ったほうが正しかろう。そして,後者のほうがキリスト本人を扱った分センセーショナルであり,より爆発的にヒットした,というわけだ。もっとも,本作も扱っている分野は相当に際どい。舞台はローマとヴァチカンで,サン・ピエトロ大聖堂が灰燼と化すか否かの瀬戸際で話が続く。
『ダ・ヴィンチ・コード』を楽しめた方なら間違い無く楽しめるだろうし,逆に言って,本作を先に読むことで『ダ・ヴィンチ・コード』の試金石にすることもできよう。本作の対立軸は信仰(狂信)と科学であるが,その落ちもなかなかおもしろい。科学は時として,その宗教が創始された頃には全く予期されていなかったことをなしてしまう。それは何も素粒子物理学だけがなせる技ではないのだ。どんでん返しではあるのだが,不自然さが少ない。そういえば本作も映画化されている。今度見ておこうと思う。
実はこのブログの第1回書評が『ダ・ヴィンチ・コード』だったりするのだが,当時と今では自分の美術史学的知識に大きな違いがある。で,時間が経ってて知識も違うからどうだったのかといえば,なんのことはない,やっぱりずば抜けておもしろかった。むしろ,美術史学的知識がある分,本作のほうが楽しめたところはあると思う。「サンティ」の罠や「聖女テレジアの法悦」などはまさにラングドンと同じ心境であった。もっとも,『ダ・ヴィンチ・コード』は読んだ直後にパリへ旅行して直接サン・シュルピス教会を訪れる機会を得たという幸運があったのだけれども,今回はローマ旅行が企画されているとかそんなことはなかった。と,私事はこれくらいにして。
天使と悪魔 (上) (角川文庫)
著者:ダン・ブラウン
販売元:角川書店
(2006-06-08)
販売元:Amazon.co.jp
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『ダ・ヴィンチ・コード』を楽しめた方なら間違い無く楽しめるだろうし,逆に言って,本作を先に読むことで『ダ・ヴィンチ・コード』の試金石にすることもできよう。本作の対立軸は信仰(狂信)と科学であるが,その落ちもなかなかおもしろい。科学は時として,その宗教が創始された頃には全く予期されていなかったことをなしてしまう。それは何も素粒子物理学だけがなせる技ではないのだ。どんでん返しではあるのだが,不自然さが少ない。そういえば本作も映画化されている。今度見ておこうと思う。
実はこのブログの第1回書評が『ダ・ヴィンチ・コード』だったりするのだが,当時と今では自分の美術史学的知識に大きな違いがある。で,時間が経ってて知識も違うからどうだったのかといえば,なんのことはない,やっぱりずば抜けておもしろかった。むしろ,美術史学的知識がある分,本作のほうが楽しめたところはあると思う。「サンティ」の罠や「聖女テレジアの法悦」などはまさにラングドンと同じ心境であった。もっとも,『ダ・ヴィンチ・コード』は読んだ直後にパリへ旅行して直接サン・シュルピス教会を訪れる機会を得たという幸運があったのだけれども,今回はローマ旅行が企画されているとかそんなことはなかった。と,私事はこれくらいにして。
天使と悪魔 (上) (角川文庫)
著者:ダン・ブラウン
販売元:角川書店
(2006-06-08)
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Posted by dg_law at 17:00│Comments(0)