2012年10月24日

アメリカの意地なのか何なのか

アルバート・ビアスタット《マーセド川,ヨセミテ渓谷》都美のメトロポリタン美術館展に行ってきた。基本的にはよくあるオールスター系・全時代系の展覧会で,今回は古代オリエントから現代アメリカまでと非常に幅広い。一応のテーマは設定してあって,自然の風景や動植物を題材・意匠としたもの,ということになっている。その関係で,絵画では風景画や静物画が多く,私の好きなジャンルが多くて楽しめたところはある。動植物がテーマとしているだけあって,工芸品も多い。

今回の特徴としては,メトロポリタン美術館展というだけあって,アメリカのものがちらほらと出展していたことである。あたかも,美術は旧大陸のものだけじゃない,我が国だって芸術の担い手・継ぎ手であるということをこっそりアピールしているかのようであった。風景画のところではクロード・ロラン,リチャード・ウィルソンときてハドソン・リヴァー派のトマス・コールが登場する。同じように,ライスダール,サルヴァトール・ローザと来てなぜかエドワード・ホッパー,そしてジョージア・オキーフが出てくる。古代からの工芸品がずらっと並べば,その掉尾を飾るのはティファニーである,というように。その意味では,よくある「とりあえず豪華に全部並べてみた」だけでは終わらせない工夫がしてあるように見えて楽しめた。もっとも,展覧会の挨拶や宣伝,キャプションでこうしたことをアピールした文面は見られず,私が勝手に読み取っているか,本当にこっそりアピールしたかっただけなのか,いずれかではあるのだろうが。

まあ,見たいものは見れた感じで,特にハドソン・リバー派の作品は日本での知名度不足もあり,HPで強調されていなかっただけあって,来ていること自体を全く知らなかった。これが見られたのは僥倖であった。今回の画像は,代表的なハドソン・リヴァー派の画家のアルバート・ビアスタットのもの。そういえば,イスラーム世界の羅針盤の原型であるアストロラーベの実物を初めて見た。あとはまあ,ミーハーだけどゴッホの糸杉はやっぱりすごかったかな。

深いことを考えなくても,普通のオールスター系としてもまずまず価値のある展覧会ではあると思う。ただまあ,そういうのに飽きてる人には素直には勧めがたくもあり。その意味では,いっそのこと本当に大テーマを「旧大陸VSアメリカ合衆国」にしてくれたほうが,美術ファンとしては行きやすかったし勧めやすかった。作品数は130点ほど。写真や工芸品がやや多いものの,油彩画だけでも十分な量があり,見応えはあった。